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驚くことではないのです

 2週間に渡ったキャンペーンが終わった。情報クランによるとキャンペーンはプレイヤーから好評だったそうだ。


 キャンペーが終わった翌日、朝俺がログインするとしばらくしていつもの4人が自宅にやってきた。昨日は自宅に戻って黒の神魂石が宝箱から出たとグループメッセージを入れてそのままログアウトしたんだよ。


「それにしてもやっぱりタクは持っているプレイヤーなのよね」


「そうそう、最後にあんなレアアイテムが入っている宝箱を開けるなんて、持っている人じゃないと無理よ」


 クラリアとマリアが言っている。


「主だから当然なのです。驚くことではないのです」


「ガウ」


 膝の上に乗っているリンネがいい、縁側に上がって俺の横で身体をくっつけて横になっているタロウも尻尾で縁側を叩きながら当然だと吠えている。クルミは何度もジャンプしているし、ランとリーファは空中でサムズアップをしている。


 情報クランは今日の午前中に宝箱の中身の一覧を公開するそうだ。もちろんプレイヤー全員がクランに協力してくれた訳じゃないが、それでも多くのプレイヤーが教えてくれたので公開に踏み切ったと言っている。


「神魂石、これは普通の6種類の石ね。これについては5つ入っていたのが一番多くて、印章は5個入っていたのが一番多かった。アイテムとしては精霊のバンダナ。これが5つ出ているの」


「バンダナが5個出たのか。そりゃすごいな。それと印章が5個が最大なのか。俺が開けた宝箱もそうだったな」


「タクが5個取った。それ以外のプレイヤーの中にも5個印章が入っていたと教えてくれた人が結構いたわ。でもうちらの調査で6個以上あったという人がいないのよ。なので最大5個」


 印章に関しては俺は一番多く入っている箱を見つけたということか。神魂石は俺は2個だった。武器と防具は結局出たという話を聞かなかったそうだ。さまざまなレベルの人がいるからだろうというのがというか情報クランの予想だ。スタンリーとマリアも頷いている。


「武器、防具の代わりにアイテムはバンダナ以外にもNQの腕輪が出てるの。力、素早さ、体力、魔力量アップ、遠隔命中アップ。これらはどのレベルでも使えると言うことで人気があるアイテムになってたわよ」


 運営は最大公約数というか、できるだけ皆が使えるアイテムを宝箱の中に準備したみたいだ。情報クランは木のダンジョンボスが落とすバンダナが大当たり、NQの腕輪と神魂石、印章が中当たりアイテムというイメージを持っていたらしい。


「そう思ってたら黒魂石でしょ。もう圧倒的にそれがレア中のレアアイテム、大当たりになったわよ」


 バンダナもかなりレアだけど手に入れようと思えば木のダンジョンに挑戦してボスを倒せば手に入る。一方黒の神魂石は6種類の石を合計300個集めた上で8,000万ベニーを準備しなければならない。どう考えても黒の神魂石の方がレア度が高いよな。


 俺以外からは黒魂石の話は出ていない。出たら話題になっているはずだ。クラリアがそう説明してくれた。情報クランと攻略クランのメンバーも宝探しをやったが、攻略クランのメンバーの1人が森の精霊のバンダナを宝箱からゲットしたそうだ。それ以外は印章、普通の神魂石、そしてポーション類、NQの腕輪はメンバーの誰もゲットしていないらしい。


「その黒の神魂石はおそらく次の街にある強化屋で使えるだろう」


 ただ今までだと渓谷の街の強化屋で3段階、山の街の強化屋で更に3段階と一度に6段階上がっていない。次の街に強化屋があったとして6段階上げられない可能性もある。


 俺がそう言うと皆その可能性はあるなという話になった。


「いずれにしても次の街に強化屋があれば確認してくれる?」


「分かった」


 キャンペーンのNM戦、目の前にいる両クランの合同での挑戦は結局全戦全勝だったそうだ。そりゃそうだろう。装備も多くのメンバーにしっかりと行き渡ったと言っている。


「それで俺たち攻略クランはダンジョン攻略に戻る。情報クランは大森林の小屋から先のエリアの探索をして次の街を探す。手分けしてやることになった」


「スタンリーらにはダンジョンをお願いして、ルートを探しつつ行けるところまで奥に進んでもらうつもりだよ」


 スタンリーとトミーが言った。分担するんだな。聞いたらもう直ぐ88に上がるだろうということだ。それならダンジョンの攻略もエリアの攻略も進むよ。こっちはまだ84に上がったばかりだから協力できそうにはないな。


「いや、タクの84は十分戦力になる。ひょっとしたらヘルプをお願いするかもしれない」


「主のヘルプは完璧なのです。いつでもお願いすると良いのです」


 膝の上のリンネが言っているぞ。それを聞いた4人がじゃあ頼もうかな、なんて言っている。


「問題ないのです。タロウとクルミとリンネもお手伝いするのです。何も問題はないのです」


「リンネ、あまり安請け合いするんじゃないぞ。こっちはまだ84なんだからな」


 リンネを撫でながら言うが問題ないのです。の一点張りだ。マリアなんてリンネちゃんの主は強いものね、なんて言って煽ってくるし、勘弁してほしいよ。


 彼らはダンジョンとエリアの開拓、俺はとりあえずいつも通りのPWLライフを送るつもりだ。


 数日後、畑の見回りが終わったタイミングでトミーが情報クランの活動前にお茶を飲みに自宅にやってきた。週に数度こうやって1人でやってきては縁側でお茶を飲んで雑談をする。活動の前に来ることもあれば、活動が終わってログアウトまでここでのんびりとすることもある。


 うちの従魔達もトミーが1人でやってくるのにもすっかり慣れているので最初のお出迎えをした後は皆思い思いの場所で休んでいるよ。俺とトミーが縁側で話をしている間は家の外に出たり合成をしないってのを知っているからな。情報クランは大森林の小屋からとりあえず西方面を探索しているが今のところ街は見つかっていないが、経験値稼ぎにはなっていると彼が言っている。彼らはレベル88になっていて、今はレベル90の敵を相手にしているそうだ。


「ところで、昨日クランとして宝探しのまとめの情報を公開したが反響が大きかったぞ。黒の神魂石が宝箱から出たという情報は相当インパクトがあって、今プレイヤーの間ではその宝箱を開けたのは誰だろうという話になっている」


「バンダナだって相当だろう?」


「もちろん。そっちも盛り上がっている。ただバンダナについては宝箱から見つけたプレイヤーが自ら名乗り出ているんだ。装備をしているところを見られたら分かるだろうし、周りから言われる前に自分から先に言っているんだよ」


「頼むから俺の名前は出さないでくれよな」


「それは大丈夫だ。知っているのは2つのクランのいつものパーティメンバーだけだ。箝口令もひいているそこは安心していい」


 今までもクランの連中は黙っていてくれたし、彼らなら大丈夫だろう。


「タク、いいか。ほとんどのプレイヤーは、黒の神魂石が初めて出たと思っている」


 ん?どういうこと?


「タクが特別引換券を使って黒の神魂石を手に入れたと知っているのは両クランの一部のメンバーだけだ。ほとんどのプレイヤーは俺たちが公開した情報は知っているが、それは黒色の神魂石の入手方法を情報クランが公開したものだと思っている。そりゃそうだろう。神魂石を6種類、300個集め8,000万ベニーを支払う。こんなのが出来るプレイヤーはいないはずだ。しかも俺たちが山の街に着いたと思ったらすぐにこの情報を公開している。そんな短期間で300個集まられる訳がない。情報クランがどこからか黒の石の入手方法を手に入れて公開してくれたと思っているんだ。誰も黒色の石を手に入れた奴がいるとは思っていないんだよ」


 言われてみればそうだよな。今回宝箱から黒の神魂石が出た、黒の神魂石が初めて登場したと思っているんだ。


 俺は確かにと頷いた。


「俺がバンダナを持っているのは知られているけど、それが6段階強化されているのはほとんどのプレイヤーが知らないんだよな」


「そう。だから初めての黒の神魂石が宝箱から出たと大騒ぎになっているんだよ」


 そう聞くと納得したよ。納得というのも変だけど、とにかく大騒ぎになっているというのは分かった。


「タクは普段はソロだ。だから気が付かれることもないだろう。ただ世間がそうなっているってことは知っておいた方が良いと思ってな」


「分かった。色々ありがとう」



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