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主は休憩タイムなのです

 港のギルドから船で島に移動すると、そこの桟橋から海辺の小屋に飛んだ俺たちは今釣りポイントにいる。俺の横にある水槽には大きな魚が1匹入っていて、クルミがその中を覗き込んでいる。


「幸先がよいのです。この調子なのです」


「うん、頑張るよ」


 一投目で大きな魚が釣れた。リンネじゃないけど幸先が良い。二投目を海に投げると従魔達がルアーを目で追って顔が左から右に動く。クルミは水槽を覗き込んでいた。


 ルアーが沈むと竿を上下左右に動かして当たりを待つ。2回目は当たりは来なかったがその次、3回目はルアーを入れてしばらく竿を動かしていると当たりが来た。竿が大きくしなる。竿がしなると従魔達が応援してくれる。教本に書いてある通り慌てず、時に力を抜いたりリールを巻き上げるのを止めたりしながら魚を弱らせてゆっくりと時間をかけて、最後はぐいっと竿を引き上げて釣りあげた。この前釣ったヒラメの様な形をした魚だ。


「平べったい大きなお魚さんが釣れたのです」


「ガウガウ」


 こんな調子で2時間ちょっと釣りをして10匹ほど釣り上げた。釣果は上々だよ。転移の腕輪で港の街に戻った俺たちは釣りギルドで釣り上げた魚を買い取ってもらう。


「いいサイズのばかりだ。うん、これは高く売れるよ」


 釣りギルドのギルマスのセリさんがそう言って全部買い取ってくれた。また釣ってきておくれよという声を聞いて釣りギルドを出ると一旦自宅に戻る。縁側に座ると肩にはランとリーファ。頭の上にクルミ、膝の上にリンネ、そしてタロウは縁側に上がると俺の横に足を下ろして身体をグイグイと押し付けてきた。フェンリルですっかり成長して精悍な表情なんだが甘えん坊なんだよな。


「しばらく休憩してから宝探しに行くぞ。今日は最後の日だ、いいアイテムが出るといいな」


「主ならやりとげるのです。問題ないのです」


「ガウガウ」


 クルミは頭の上でジャンプし、ランとリーファは肩から飛ぶと俺の前でサムズアップをしてくれた。


 縁側でのんびりしているとクラリアとトミーが庭に入ってきた。軽く手を上げて挨拶する。タロウも相手がマリアじゃないので俺の隣で横になったままだ。ただ尻尾はブンブンと振っているよ。


「いらっしゃいませなのです。主は今は休憩タイムでのんびりしているのです」


「こんにちは。休憩タイムだけどお邪魔していいかな?」


「問題ないのです。主のお友達はいつでも大歓迎なのです」


「ガウ」


「オフィスから?」


「そうそう。俺たちもこの街の情報クランのオフィスにいたんだよ。打ち合わせが終わって端末を見たらタクがいるからさ。次の活動まで時間があるし、お茶を飲みに来たんだよ」


 そう言う事ならと俺は縁側から立ち上がるとクラリアとトミー、そして自分の分のお茶と梨を用意して縁側に座った彼らの横に置いた。トミーはすっかりこのお茶が気に入ってくれている。今もうまいなと言いながら飲んでいる。


「港の街の北の森の中にセーフゾーンの小屋、大森林の小屋が見つかったってプレイヤーさんが情報をくれたのよ。その小屋でタクと従魔達に会ったって言ってわよ」


 トミーと同じ様に美味しいと言ってお茶を飲んでいたクラリアが湯呑みを置いてから言った。


「その通り。聞いたら彼らは西のセーフゾーンから北上して森に入ってあの小屋を見つけたってリーダーのスマイルが言っていたよ。俺たちは海岸線を北上してそこから西に進んであの森に入って小屋を見つけたんだよ。俺たちが小屋に入ったら彼らがすでに中にいたんだ。俺は海岸線を北上したがそれはタロウの背中に乗って駆けて行ったからな。普通なら西のセーフゾーン経由で北上するのが正式なルートなんだろう」


 そう言うと二人がその通りだと言う。西のセーフゾーンから北上すると約4時間から5時間であの小屋にたどり着くそうだ。


「小屋に来る途中でレベル87に上がったって言ってたよ」


 俺が言うと頷く二人。情報クランによればレベル87のプレイヤーがそこそこいるそうだ。このキャンペーンでしっかりと経験値を稼いでいるんだろう。もちろん情報クランも攻略クランもレベル87だ。


「キャンペーン期間中はエリアの探索を中止していて、明日から再開するんだけど。この大森林の小屋が見つかったことで次の街が思っていたよりも北にあるというのが情報クランの中での推測になってるの。私たちもこれからNM戦までの間にその小屋に行くつもりなの。明日以降はそこを拠点に西と北方面の探索になりそうね」


「それ以外にダンジョンの攻略もある。また忙しくなるよ」


 そう言っているが二人ともそれが楽しいんだよと言わんばかりの表情だよ。エリアが広くて調べることも多いので攻略クランと手分けしてやるそうだ。俺はレベルが84だから残念ながらダンジョンの探索には協力できそうもない。


「タクはレベル84と言っても実質86か87はあるだろう。普通にダンジョン攻略ができるんじゃないの?」


 6段階強化のバンダナとHQの腕輪。装備もHQになった。レベル2つ分くらいはあがるだろうが3つ分は言い過ぎだよ。


「あの小屋を見つけたスマイルに聞いたら87になってやっと小屋に辿り着けるレベルだと言ってるの。86のままだったら小屋まで行けるかもしれないがキツイだろうってね。そう考えるとタクの実質レベルは87以上。タクは小屋に行くまで特に苦労しなかったんでしょ?」


 そう言われて見たらギリギリの戦闘をしたという感じじゃないな。俺がそう思っていると俺が言うより先に膝の上に乗っているリンネが言った。


「楽勝だったのです」


「ほらっ、リンネちゃんもそう言ってる。やっぱり88くらいはあるわよ」


「小屋の周辺の敵のレベルが89だったな。でも言われてみれば苦労したという感じはしなかった。楽勝とまでは言わないけどさ。なんと言っても俺の場合は従魔達が皆優秀なんでね」


 そう言うとタロウがガウガウと吠えながら身体をグイグイと寄せてきた。


「タロウは主が一番強いと言っているのです。クルミもリンネもそう思うのです」


 そう言ってくれるのは嬉しいんだけどな。でも従魔が優秀なのは間違い無いぞ。


「89の敵を相手にして楽勝だったと言えるのであれば実質88以上だろう。スマイル達は89を倒すのも簡単じゃなかったと言っている」


 情報クランは彼らの話と今の俺の話をまとめて小屋の情報を公開するそうだ。推奨レベルを87以上にすると言っている。


「推奨レベルって言ってもこっちが勝手に設定しているだけでプレイヤーの自由なんだけどね。でもレベルどれくらいで行けるのか?という問い合わせがあるので推奨ってことで公開しているの」


 プレイヤー側の立場に立って情報を公開するというスタンスは最初の頃から変わっていないんだよな。だから皆彼らの情報を信用するんだろう。


 無制限NM戦は順調に勝利しているそうで、今日の夕方に最後の一戦をやる予定だという。今日が最後の日ということでNM戦の転送盤があるエリアはどこも賑わっているのだと教えてくれた。


「プレイヤーに聞いたらキャンペーンは好評だよ。不満を言っているプレイヤーはほとんどいない。運営も期間限定で良いものを出したりと色々考えてくれている」


 普段はドロップが厳しいものをキャンペーン期間中に多くドロップさせたり、レアな装備を出したりとプレイヤー側が飽きない様に色々と考えていて、それがプレイヤーからみてもメリットが多いってことで好評なんだろうな。


「この期間にしっかりとレベルを上げたり、石や印章を集めようと考えるプレイヤーが多かった。合成組もスキルアップの特典をしっかり享受したみたい」


「それでレベルに関係のない宝探しか。うまく考えているな」


「全くだ。プレイヤーの中には次のキャンペーンはいつだ?なんて言っているのもいるみたいだ」


 トミーが笑いながら言った。気持ちは分からんでもないけど、流石にそれは気が早すぎるよな。


「タクはこれから宝探しかい?」


「そう。最後の挑戦だよ」


 そろそろ活動の時間だと縁側から立ち上がった二人。


「主は最後に大当たりの宝箱を開けるので楽しみに待つのです」


「そうなんだ。じゃあ期待してるわよ」


 そう言って二人が庭から自分たちのオフィスに戻っていった。


「さて、俺たちは宝探しに行くぞ」


 俺も縁側から立ち上がった。


「ガウ」


 と言ってタロウが庭に降り、リンネが頭の上に、クルミが肩の上に乗った。ランとリーファは留守番は任せとけとサムズアップしてくれる。


「行くぞ!なのです。大当たりの宝箱が主を待っているのです」


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