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NM戦は卒業なのです

 次の日にいつもの4人にグループメッセでSTR系のHQの忍者の装束を買ったと連絡をすると4人が活動の前に俺の自宅にやってきた。


「なるほど。良かったじゃないか」


 話を聞き終えるとスタンリーが言った。他の3人もよかったねと言ってくれる。2,000万で買ったというと4人が自分たちでもそうすると言っている。レア物だし値切る必要はない、定価で買うのが普通だよなという意見だ。うん、俺の考えと同じだ。昨日自宅に戻ってから店に顔を出して店売り価格を確認していた俺。彼らが言っていた値段、1,600万で買い取るって言われた。疑っていた訳じゃないけどこういう確認は必要だよ。


「それでタクは欲しい装備が2つとも手に入ったけど、NM戦はどうするつもりなんだ?」


 スタンリーが聞いた。俺は昨日の装備を買った時点で今後の無制限NMには積極的に参加しないと決めていた。


「それについてはそっちに判断をお任せしようと考えているんだ。攻略クランと情報クランのメンバーの中で、挑戦したいと思っているメンバーがいるのなら彼らを優先してもらって全然構わない。個人的には俺達がいなくても勝てるだろうし、クランでやってくれたらいいかなと思ってるけどね。もちろん、ヘルプが必要ならいつでも参加するよ」


 クラン内部の事情までは分からないが俺と従魔達が参加することで4名のクランメンバーが参加できなくなっている。装備はともかく経験値や多少とはいえお金も手に入るNM戦で装備が揃った俺が積極的に参加しても良いとは思えないんだよ。どうするかと4人が話あっている。しばらくしてスタンリーが顔を俺に向けた。


「じゃあこれから後のNM戦は俺たち両クランだけでやっていいか?」


「もちろんだよ」


 こっちは上忍のHQ装備をゲットするのが目的だ。それが手に入ったことで自分の目的は達成されている。キャンペーンの最初の頃と違ってプレイヤーのレベルも上がっているし今では普通に勝利できるだろう。


 4人からは悪いなと言われるけど全然問題ない。


「主は欲しいものを手に入れたのです。なのであとはお任せなのです」


 膝の上に座っているリンネが尻尾を振りながら言った。 


「リンネの言う通りだよ。俺は残り2日、今日と明日は宝探しと経験値稼ぎをするよ」


 NM戦の話が終わったところでトミーが公式の映像の件は知っているかと聞いてきた。やっぱり知っているんだな。情報クランだから当然なんだろうけど。


「昨日装備を売ってくれた連中から聞いたよ。俺と従魔で挑戦した25制限のNM戦の動画がアップされているって」


「公式の掲示板が大騒ぎになってるわよ。15名のNM戦をタクと従魔3体、4枠で倒したって。フィールドでも話題になってる」


 ここにいる4人によると、楽だという25制限であっても普通ソロというかプレイヤーと従魔だけで挑戦しようとは考えない。しかもそれに勝利しているって事でとんでもない事をやっているという評価だそうだ。


「でもさ、俺と従魔で行けるぞって言ったのはここにいる4人だからな。一度やってみるかとダメ元で挑戦したら勝っちゃった。こんな感じだよ」


「勝っちゃったって言っているけど簡単じゃないわよ。タクの動画を見てから1パーティ、5名で挑戦したプレイヤー達が数組いたんだけど全て負けてる。聞いたら皆開始10分以内で全滅したって」


 クラリアが教えてくれた。パラディン1人だと厳しいだろうな。こっちは素早さの能力が高いタロウに1体を任せたのと、クルミの反射壁があるからだろう。もちろんリンネの魔法の威力は言わずもがなだ。


「公式に上がっている動画からはクルミの能力は分からない。そこは謎になっている」


「魔法を撃っているんだろうという認識みたいよ」


 スタンリーとマリアが補足で説明してくれた。自分の事を言われているクルミが肩の上でジャンプしている。魔法を撃っているのは間違いはないからな。


「どっちにしてもまたタクの株が上がってるぞ」


「またって何だよ、またって」


 俺がそう言うとリンネが当然なのですと言った。タロウもガウガウと吠えているしクルミもジャンプしている。相変わらずの俺推しだよ。


「タクは第3陣のプレイヤーの中でもすっかり有名になっているわね」


 いやいや、勘弁してよ。そう言っても4人はもう無理だなと冷たい対応だ。



 宝箱の情報があったら教えてくれと言って彼らが自宅から出ていった。彼らはこれからNM戦をして、夕方にもう1戦する。装備がメンバー全員に行き渡るといいな。


 彼らが帰ったあとは畑の見回り、収穫をしてから港の街に飛んだ。あと2日の間に少しでも経験値を稼ぎたい。いつもの通りタロウにのって海岸線を北に走った俺たち。レベル85の獣人を見かけるとタロウから降りて戦闘タイムだ。


 今までは倒しながら北上していたけど、今日は倒しながら西方面、森がある方向を目指してみる。森の方がレベルが高そうだという気がしたからだよ。装備もHQになっている。強めの敵に挑戦する時期だと思う。


 草原で10体程倒すとレベルが83に上がった。


「主、強くなったのです」


「ガウガウ」


 俺のレベルが上がると従魔達のレベルも上がる。もちろんクルミもだよ。ただ、83ではクルミに変化はない。まだ確信はないけど、タロウとリンネはレベルが上がるとそれに応じて強くなるが、クルミの場合は全身が光った時に数段階上がる感じなのかな?


 今はクルミには変化はなかったけど、13%のダメージバック、20分の有効時間。これは十分に戦力になっている。敵を倒しながら森の中に入ると大きな熊と獣人だが、それらのレベルが84、時に85が出てきた。今の俺たちにはちょうどいい狩場かも知れない。


 森の中をうろうろして敵を倒している俺たち。森は広くて奥にずっと続いている。山裾まで伸びているのかどうかは木々が多くて分からないが、ここはレベルを上げるにはよい狩場になりそうだよ。午前中はしっかりと経験値を稼ぐ事ができた。最後はレベル86の獣人を相手にしたが、問題なく倒せていた。従魔達は優秀な上に、自分もHQ装備に変えたからかも知れない。AGI系とSTR系の装束を着替えながら戦闘をしたが、どちらもその素晴らしさが実感できた。レベルが3つ上程度であればSTR系の装束でもそれなりに避けてくれる。そしてAGI系になると攻撃の手数が増えた。敵のヘイトを稼ぐにはAGI系の装備が優秀で、同じ時間で多くのダメージを稼ぐのはSTR系が良いかもしれない。装束以外に素早さが上がるHQの腕輪、そして6段階強化済みのバンダナもある。途中でレベル86の魔獣が2体リンクしたけど、それも問題なく倒せている。もう少し奥、レベル87くらいを相手にしても良いのかもしれないな。


 ライバルがほとんどいないので狩り放題な森の中、敵を倒すと不規則だけど神魂石や印章がドロップする。俺が印章が出た。とか、神魂石が出たとか言うと大喜びしてくれる従魔達。


「主、ガンガン倒してガンガン集めるのです」


「ガウガウ」


「そうだな。ライバルも少ないから敵を倒しまくろう」


「やってやるのです」


 結局午前中いっぱい港の街の北にある森の中でひたすら敵を倒した俺たち。自宅に戻ってくると満足したのか3体の従魔達はすっかりリラックスしている。


「主、お昼からは何をするのです?」


 膝の上に乗ってゆっくりと尻尾を振っているリンネが言った。


「うん、午後はまず宝探しをするぞ」


「するぞ、なのです。宝箱をたくさん見つけてウハウハになるのです」


「ウハウハになるといいな」


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