表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
270/277

お誘いが来た

 キャンペーンは中盤に差し掛かっていた。俺は外で経験値を稼いだこともあってレベルが79になった。ただ79になってもクルミに変化はない。カーバンクルのスキルアップはランダムなのかも知れない。タロウとリンネについても同じだ。そろそろ2体の従魔もスキルが上がっても良いタイミングではある。


 ダンジョンはあれ以来挑戦していない。まずはレベルを上げないとと思ってここ数日はもっぱら港の街の陸側を北にいった所で81から82の敵を相手にしている。この辺りまで来ると敵が獣人や熊になり、獣人は魔法や矢を撃ってくるが、蝉と反射壁のおかげで問題なく倒せていた。港の街を出てから真っ直ぐに北上した場所で経験値を稼いでいるけど、ここらは草原で、右手が海、左手は草原の先が森になっている。起伏があって遠くまで見渡せない場所だ。ずっと北には万年雪をかぶった山々が見えているがあそこに行くにはまだ随分と距離がありそうだ。そして、今のところ北方面にセーフゾーンや小屋は見つかっていない。


 西にはセーフゾーンがあったので正解のルートはあちらなのかも知れないが、その情報は公開されているので西方面はプレイヤーが多いはずだ。それが証拠にこっち側には誰もいないぞ。俺たちはタロウに乗って駆けて移動できる反則技を持っているが、普通なら歩いてここまでくるだけで結構時間をロスするだろう。今の目的はレベルを上げることなのでライバルがいないこの場所は最適だよ。


 この場所で2日頑張った俺たちはレベルが80に上がった。

 80になったときにクルミの身体が光ったのでAIのミントに聞いてみると、反射壁の効果が13%になったと教えてくれた。スキルが上がるタイミングとそのスキルの効果については決まった法則がないのか。あるいは一番最後に従魔になったのでレベルが上がる度に調整が入って俺たちと同じレベルに合わせてきているのか。いずれにしてもAIが教えてくれないのでこれはレベルが上がって検証していくしかないんだよ。


 タロウとリンネは最近は光らないがミントによるとレベルが上がると、それに合わせて威力が増加しているそうだ。この辺りはプレイヤーと同じかな?リンネの尾はまだ8本だけど、これもそのうちに9本になるだろう。でもいつなのかな?そろそろだとは思うんだけど。


 外での活動を終えて自宅に戻ってのんびりしていると、連絡が来てほどなくいつもの4人がやってきた。端末を見ると彼ら4人はレベルが82になっている。


 俺がお茶を配っている間にマリアはしっかりタロウを撫で回しているよ。これもいつもの事だ。マリアが縁側にやってくるとタロウも縁側に上がって俺の隣でゴロンと横になる。その背中にランとリーファが座り、クルミは俺の左肩、リンネは膝の上に乗ってきた。


「タクとダンジョンで別れた後、俺たちはダンジョンに戻ったんだ。その結果、ダンジョンはワープ地点までの全ての洞窟の探索は終了したが宝箱は見つからなかった」


 お茶を飲んだトミーが教えてくれた。あの後情報クランと攻略クランのメンバーを集めて洞窟を探索したらしい。宝箱があるとしたらもっと奥、先になるのだろうと言う4人。


「となると次は4つのワープ地点から奥の探索になるのかな」


「当然そうなるが、こっちのレベルがまだ足りない気がするんだ。85位まで上げておかないと本格的に奥に進めないだろう」


 スタンリーが言っている。ワープがある分岐地点で79の敵がいて、その奥は80だ。確かに85位まで上げておかないとしっかり探索できないだろうな。敵の種類だって変わるかも知れない。色々なことを考えるとレベルを上げておくに越したことはない。


「なのでとりあえず今日の調査で分かった所までまとめて情報を公開することにしたの。ダンジョンは皆興味があるので結構問い合わせも来てたのよ」


 ダンジョン探索はゲームの醍醐味の1つだ、俺も含めて皆興味があるよね。情報クランは4つのワープがあるルートまで公開する予定だという。


 情報の公開はするものの、ダンジョンの転送ワープより奥の攻略にはレベルが必要だということで彼らはここでダンジョン攻略から離れてレベル上げをするそうだ。西方面のセーフゾーンから先の山を目指していく予定らしい。セーフゾーンがあるんだからそっち方面の攻略を進めるのが王道だよな。俺の場合は急いでいないのとライバルが少ない方が良いので北に進んでいるけど、これは少数派だろう。


「北方面はタクに任せていい?何か情報があったら教えてくれるかしら」


「もちろん。ただ今のところは北に進むと敵のレベルが上がるだけで出てくる魔獣はクマや獣人といった西のセーフゾーン周辺にいる敵と変わらないよ」


 情報クランのメンバーがセーフゾーン近くにいた熊の魔獣のテイムに成功したそうだ。カニやトカゲは人気がないのよとクラリアが言っている。うん、なんとなく分かるよ。


「それはそれとしてだ、今日はさ、タクと一緒に無制限NM戦をやろうと誘いに来たんだよ」


「おっ、是非お願いしますよ」


 スタンリーの話を聞いて思わず背筋を伸ばしたよ。HQの装備狙いの無制限NM戦。聞いたら結構な数のプレイヤー達が挑戦して勝利しているそうだ。レベルが上がり、装備が充実してきているのだろう。


「調べたら全ジョブの装備が出たわ。上忍もSTR系の装備が出たわよ」


 やっぱりあるんだな。これはモチベが上がるよ。


「タクのところに上忍の装備の売り込みの話は来たの?」


 マリアが聞いてきた。俺は首を左右に振る。そもそも上忍の装備がドロップしたと言う話も今初めて聞いたところだと答える。


 彼らはこれから売り込みがあるかも知れないと言っているが、その時はどうしようかな。彼らが金策として売り込みにきているのであれば俺が買い取るのもありだ。お互いにウインウインになりそうだし。第二陣の上忍は装備を買うお金がないだろうし、売り込みに来るのなら俺のところになるのかな。


「その売り込みの話だけどさ、大前提としてHQの防具っていくらくらいするものなの?」


「ジョブで値段に差があるんだけど店売り価格で1,500万から1,800万ベニーの間ね」


「店売りでそれか。高いな。でもHQならそうなるのかな」


 今来ている65装備の装束が650万。それのHQになると倍以上になる。そう思っていると他の3人もHQだからそれくらいが妥当じゃないかと言っている。店で買い取る場合は店売りの80%なので、そこから定価を計算してやり取りをするのがプレイヤーの間で値段を決める時の基準として一般的になっているそうだ。まともに買うと2,000万前後の装備になるよ。AGI系とSTR系の2種類を買って揃えたら4,000万だ。いい値段するな。


 その金額なら、第二陣の上忍、いや上忍以外のプレイヤーでも厳しいだろう。第一陣でもポンと払えるプレイヤーは少ないはずだ。だから皆NM戦に挑戦するんだな。


「俺たちはおそらく明日中には83に上がると思うんだ。なので明後日の午後からどうだい?」


「分かった。こっちは80に上がったばかりだから明日1日で81にはならないと思うけどいいかな?」


 皆は全く問題ないという。4人によると今のところNMのレベルは95前後で固定されているのでこちらのレベルが上げれば上がるほど討伐が楽になるそうだ。2週間の期間限定のNMだからレベルは固定なのかな。


 NM戦の話が落ち着いたところで、今日クルミが80になって反射壁のダメージバックが13%になったという話をする。皆驚いたけど、その中で一番驚いたのはクラリアだ。


「規則性がないわね。でもタクが今言った通り、一番最後に仲間になったクルミちゃんのレベルというかスキルをタクらに合わせるために調整しているのかもね」


「いずれにしてもクルミの反射壁は有効なのは間違いない。タクらで4枠使うからあとの16枠はこちらで決めさせてもらうよ」


 もちろん俺に異存は無い。お任せしますよ。明後日の午後4時に港の街から出たところで集合になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ