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釣れた、売れた


 次の日も畑仕事を終えてダンジョンに飛んだ俺たち。クラリアから指定された番号のルートを進んでいくが、結局行き止まりだった。ただダンジョンを攻略している途中でレベルが78に上がった。


 外れのルートからダンジョンの入り口に戻って、もう1つのルートに挑戦する前にヌシの近くに座って休憩していると、ダンジョンの中から情報クランのパーティが出てきた。知り合いを見つけてタロウもリンネもクルミも皆尻尾をブンブンと振っている。


「第3ワープが見つかったよ」


 近づいてきたトミーが言った。聞くとナンバリングをしていたルートの19番ルートが当たりだったそうだ。


 情報クランが作ったナンバリングで言うと、1番ルートが第1ワープ。11番ルートが第2ワープ。19番ルートが第3ワープ、そして32番ルートが第4ワープになる。


 そのワープの先はレベル80のトカゲゾーンになっていて2体が固まっている。


「俺たちのレベルが80。これで2体の対処がギリギリなんだよ。洞窟の幅がそう広くないので左右の動きができず制限を受ける。その先を進んだらまた分岐があって2つに分かれていた。そこまで行って引き返してきたんだよ」


「と言うことは、またいくつかルートがあって転送盤、ワープがあるのかね?」


 俺が言うとその可能性はあると言うメンバー。とりあえず経験値稼ぎもかねてまだ行っていないルートを念の為に探索するそうだ。それで全ルートを調べたところで、ワープまでのルート、地図を公開するという。


「期待はしてないけど宝箱があるかもしれないしね」


 なるほど。


 そう言うことで俺はとりあえずお役御免になった。彼らは少し休憩してから再び行き止まりになっているダンジョンの探索をするというので、その場で別れるとダンジョンの入り口から外に出る。


「これからどうするのです?」


 外に出て大きく伸びをしているとタロウの背中に乗っているリンネが聞いてきた。


「せっかくここにいるんだから釣りをしようか」


「やるのです。大物を釣り上げるのです」


 従魔達も釣りが好きというか、釣りを見ているのが好きなんだよ。クルミなんか水槽の中にいる釣った魚を飽きもせずにずっと見ているものな。


 海岸線を歩いていつもの釣りポイントの岩場に着くと釣りの準備をする。その間従魔達はいつもおとなしく待っていてくれるんだよ。


「今日も釣れるといいな」


「主は釣りも一番なのです。間違いなく釣れるのです」


「ガウガウ」


 クルミもその場でジャンプしている。彼らのためにも頑張らないと。俺はルアーを思い切り遠くに放り投げた。


 昨日の要領で竿を動かしていると直ぐに当たりが来た。ググッと竿がしなって持っていかれそうになる。釣れたのがわかると従魔達がそばによってきて海の方をじっと見る。


「主、しくじるのはダメなのです」


「分かってる。ちゃんと釣り上げてやるよ」


 ゆっくりリールを巻き上げて釣れた魚は70センチクラスのヒラメの形をした魚だ。これは初めてだな。


「平べったい大きなお魚さんが釣れたのです」


 水槽に入れると皆大喜びだ。再びリールを放り投げて竿を動かす。慣れてきたのか昨日よりも当たりがくるのが早い。今度は90センチのヒラマサの様な魚が釣れた。


「大漁なのです。すごいのです」


 タロウもクルミもこれでもかという程尻尾を振って喜んでくれている。ここまで喜んでくれるのなら、俺も頑張ろうという気になるよ。


 1時間程釣りをして8匹を釣り上げた。最後は1メートル近いマグロの様な大きな魚だった。水槽がいっぱいになったので引き上げることにする。


 港の街の釣りギルドに顔を出すとギルマスのセリさんが立ち上がって歓迎してくれる。


「タクだね。どうだい?釣れてるかい?」


「ええ。外海で釣れた魚を持ってきました」


 そう言うと見せてくれるかとギルドの中にある水槽を指差したのでその中に釣ってきた魚を入れる。2回の釣りで釣った魚が水槽に放たれるとびっくりした顔になるセリさん。


「こりゃまたいい魚ばかり釣ったねぇ、サイズもいい。タク、あんた釣りの才能があるよ」


「主は釣りも名人なのです」


「従魔の言う通りだよ。本当だよ。名人だね」


 釣りギルドのマスターが褒めてくれるのを聞いてリンネもタロウも尻尾を振っている。クルミはもちろん俺の肩の上でジャンプだ。しばらく魚を見ていたセリさんが全部ギルドに売ってくれるのかい?と聞いてきたのでお願いします。と言うと想像以上の金額で買い取ってくれた。


「どこのレストランに持っていっても売れる魚ばかりだよ。しかも桟橋あたりで釣れる魚と違ってサイズが大きい。これなんて滅多に釣れないからね。高くなるのは当然だよ」


 ヒラメっぽい魚を指さして言った。

 釣りが金策になるとは思っても見なかった。端末に入金を確認して店を出るときにセリさんからまた釣ってきておくれよ。と頼まれた。


「任せるのです。主がまた沢山お魚さんを釣ってくるのです」


「期待してるよ」


 釣りギルドを出た俺は1つ思い出した。そのまま桟橋から船に乗って再び島に渡る。タロウらは船に乗れると大喜びだ。


「主は、島に行ってどちらに参るのです?」


 外を見ていたリンネが振り返って聞いてきた。


「うん、忍具店に行こうとおもってね。煙玉を買うんだよ。あれは絶対に持っておいた方が良いって言われたんだけど買うのを忘れてたんだよ」


 島で下船するとその足でサツキさんがやっている『島の街忍具店』に顔をだした。


「タクかい、いらっしゃい。うん、似合ってるよ」


「ありがとうございます。今日は煙玉を買おうと思って」


「いい心がけだね。煙玉はいざと言うときにとても役にたつよ」


 サツキさんの話だとこの煙玉の使い方は2つあって1つは敵にぶつける。そうするとぶつけた周囲に煙が立ち篭って敵の視力を一時的に奪うそうだ。もう一つは自分の足元に投げて煙を起こしてその間に逃げる。文字通り相手を煙に巻くときに使える。


「敵にぶつけるとなるとやっぱり顔を狙わないと意味がないな」


「そうなるね。タクは手裏剣を使ってるんだろう?使っているのなら投擲スキルがあるから問題ないね」


 確かにそうだ。

 1個5万ベニーと高いが、4つ買った。釣りギルドに売った魚の代金もあるし余裕だよ。20万ベニーを支払うと毎度ありってサツキさんが言ったよ。


「装備やアイテムに金をケチらない。自分より格上の敵と対峙する時はこう言うアイテムが役に立つからね」


 確かにそれは間違いない。紙装甲の忍者、上忍なんて蝉が切れたら終わりだ。そんな時に目眩しでこの煙玉を使えば、その間に蝉を張り替えることも出来るだろう。

お礼を言って店を出た俺はそこから自宅に飛んだ。自宅に戻ってランとリーファと少し遊んだ俺は工房で焼物を作る。キャンペーン中はバザールには出品しないけど、キャンペーンが終わった時に多めに出品しようと今から作っておくことにする。というかこの期間でもバザールはやっているんだろうか。まぁ出品しないからどっちでもいいんだけど。


 エプロンをつけると何も言わずとも俺より先に従魔達が工房に入っていく。その中にはランとリーファもいる。5体の従魔が見ている中でその5体が並んでいる焼き物を作る俺。


 焼き上がったのを見るとキャンペーン期間中なのか焼物の仕上がりも良い。なかなかの出来だと満足していると従魔達も良い出来だということが分かるのか喜んでくれる。


「この調子でまだまだ作るぞ」


「ガウ」


「作るぞ、なのです」


 工房に篭って焼き物を作った俺。充分な数ができたとは言えないが今日だけじゃなくまた明日以降も作れば売り切れになることは避けられるんじゃないかな。欲しい人にはきちんと用意しないとな。


 この日はログアウトまで工房に篭ったよ。


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