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キャンペーン前日


 キャンペーンが始まるまで、外でちまちまと経験値を稼いだ俺はレベルが2つ上がって75になった。クランの連中は78になったそうだ。


 75に上がった時に再びクルミの全身が光った。AIのミントによると反射壁の効果が10%から12%に上がったらしい。これは嬉しい。


「クルミ、また強くなったぞ」


 褒めてやるとその場でジャンプして喜んでくれた。タロウとリンネも尻尾を振って喜んでいる。ソロとは言いながらタロウ、リンネ、そしてクルミの従魔達といつも一緒に活動している。自分と違って彼らは強くなると新しいスキルを覚えることがある。これが普段の活動において大助かりなんだよ。


 

 明日からキャンペーンが始まるという前日、その日の活動を終えたいつもの4人が開拓者の街の自宅にやってきた。タロウを先頭に従魔達がお出迎えをしてくれる。


「いらっしゃいませなのです。主のお家でたくさんお話しをすると良いのです」


「こんにちは。じゃあリンネちゃんの言うとおりたくさんお話しするわね」


「はいなのです」


 リンネがクラリアと話をしてくれている間にマリアはしっかりとタロウを撫で回している。タロウも尻尾をブンブンと振ってご機嫌だ。ランとリーファは俺の左右の肩に乗っていてクルミは今はリンネの背中にのっていた。これは珍しい、思わずスクショを撮ったよ。


 皆が来るのが分かっていたので縁側にお茶と果物を用意しておいた。


「タクは明日からどう動くんだい?」


 お茶を飲んだトミーが聞いてくる。タロウを撫で回していたマリアも少し遅れて縁側にやってきた。挨拶が終わると、タロウは精霊の木の根元でゴロンと横になっていて、その木の枝にクルミがいる。ランとリーファは俺が作った小舟の上に並んで座っていた。そしてリンネは俺の膝の上だ。ゆっくりと8本の尻尾を振ってリラックスしているよ。うん、うちの従魔たちはいつもマイペースだ。


「とりあえず始まりの街から順にショップに顔を出してみようかなと思ってるんだ。期間限定のアイテムってのに興味があるんだよ」


「始まりの街から順に回るの?」


 そう言ってクラリアが俺に顔を向けた。


「そのつもり。個人的には使える、使えないは関係なく期間限定アイテムをコンプしようと思ってるんだ」


「主とあちこちお散歩をするのです」


 膝の上のリンネが尻尾を振りながらフォローしてくれる。


「そう言う事になるな」


 彼らはまずは合同でレベル無制限のNM戦に挑戦するという。そこからはフィールドで経験値を稼ぎながら印章と神魂石のドロップ狙いだそうだ。


「レベルを上げることで島のダンジョンの攻略が進む。キャンペーンの恩恵をしっかりと受けようと思ってるんだよ」


 攻略クランとしたら当然だろう。一方で情報クランは合同でNM戦には挑戦するがそれ以外だと所属しているメンバーをパーティ単位にしてそれぞれの街に行って情報を集めるそうだ。


「キャンペーンが始まって最初の2日間が勝負なの。その間にしっかりと情報を集めて公開するつもりよ」


 彼らは彼らで情報クランとしての仕事をする。PWLで遊んでいるプレイヤーの間での情報クランの評価は高いのは俺でも知っている。情報が正確で嘘がない。推測の時はしっかりと推測だと注釈をつけて公開する。何よりも得た情報を自分たちだけのものにせずに皆に公開する点などが高い評価を受けている理由だ。


 2日間で集中的に調査をし、情報を公開する。3日目からは攻略クランと同じくフィールドで経験値を稼ぎながらダンジョンにも挑戦する予定だそうだ。もちろん、その間にも新しい情報があれば公開するスタンスだとトミーが言っている。


 案内に書いてあった特別イベントはおそらくキャンペーンの後半にあるだろうと言う4人。うん、俺もそう思う。ただ突然始まるのか、それとも何か兆候があるのかまでは分からない。


「いずれにしてもある程度のレベルは必要になるだろうな」


 俺もショップ巡りをしたあとはフィールドに出て経験値を稼ぐ予定だ。せっかく2倍になるんだ、少しでも経験値は稼ぎたいよ。ただ、そればっかりと言うのもいやなので釣りもするつもりでいる。場所は決まっている、島の東側の海だ。大物釣りに挑戦だ。



「そうそう、レベル75になったらクルミのレベルも上がったみたいで、反射する割合が上がって10%から12%になったよ」


 報告を忘れてたよ。思い出した俺がそう言うと4人全員が驚いた顔をして俺を見て、そのまま顔を動かして木の枝にいるクルミを見る。


「それはすごいな」


 すぐにトミーが反応した。


「レベルが2つ上がると2%アップ?」


「それはまだ分からない。でも今までは効果時間だったのが今回は反射壁の効果アップだった」


「10%でもすごいのに12%、しかもまだこの割合が増える可能性がある。流石に神獣カーバンクルだな」


 スタンリーが感心しているが、俺もそう思う。


「主の従魔は皆優秀なのです。当然なのです」


 膝の上に乗っているリンネがどうだと言わんばかりの口調だよ。


「そうだよね。リンネちゃんもタロウちゃんも優秀だよね」


 マリアがそう言ってもリンネは平然と、当たり前なのです。なんて答えてる。あながち間違いではないけど。


「タクと一緒にやる20名のNM戦が楽しみだな」


「確かこの前のNM戦で、アライアンスを組んでいたら別パーティでもクルミの反射壁が有効だったよな」


「その通りだよ」


 それから4人がどんな構成が一番クルミの能力を有効に利用できるのか話している。とは言ってもだ、こっちはすでに4枠潰しているのであと1人しかいない。皆はやっぱりパラディンを入れた方がいいかな、なんて言っている。その辺はお任せするよ。 


 いずれにしても2つのクランが合同でNM戦に挑戦するって話なので、その結果をみてからもう一度相談しようと言うことになった。


 港の街があるエリアは広い。街もまだ1つしか見つかっていない。そんな中で今回経験値が2倍になるキャンペーンをやってくる。このエリアの上限、三桁かもしれないぞとトミーが言った。


「十分にあり得る話よ。レベルが80以上になって活動範囲が広がったところで次の街が見つかるかもしれない」


 なるほど、確かにエリアは広い。北のずっと先に雪を被っている山が見えているがそこまで行くのは相当距離がありそうだよ。西はまだセーフゾーンの少し先くらいまでしか行けていないけどそっち方面もまだまだ広い。おまけに起伏があって森や林がある。なかなか簡単には攻略させてくれないよ。レベルのエリア上限が三桁のケースの可能性は十分ある。


「このキャンペーンが終わったらレベルが上がるだろうからダンジョンはもちろん、エリアの探索も広がるだろう」


「新しい街はどのあたりにあるんだろうね」


 スタンリーとクラリアがそう言っているが、新しい街には皆興味があるよね。神魂石はこのエリアでもドロップしているけど、それを使う店が港の街の中にはない。となるとこのエリアの他の街で石が使える店があると考えられる。それが強化屋なのか、はたまた別の店なのかは分からないけど。


 ここにいるメンバーは全員が港の街で買うことができる防具と武器を揃えたそうだ。今の時点で揃えられる最高の装備を持っていることになる。もちろん俺もだ。


 このゲームではそのエリアで用意できる最高の武器や防具を身につける前提での攻略になっている。街の周辺ではそれ以外の装備でも経験値を稼ぐ事はできるがそのままでは次のエリアや街には進めない。レベルが上がる程その傾向が強くなる。


 従い、今自分たちがいる港の街で揃えられる装備を全て揃え、その上でレベルをあげて攻略することになる。幸いに俺は情報料やバザールでかなりの入金があってお金には困っていないが、そうでない場合には金策が必要となり、多くのプレイヤーが合成や釣りでお金を稼いで装備を購入するという流れになる。PWLはレベルだけ上げても攻略が簡単にならない作りになっている。


 情報クランは情報を公開、販売することでクランとして大きな収入があり、その利益をクランメンバーに還元することで装備系を充実させている。一方攻略クランの最大の収入源は情報クランへの情報の販売だそうだ。合同で調査した場合は公開した情報を2つのクランで等分しており、それ以外でも先行組として得た情報を情報クランに流して情報料を得ている。攻略クランもクランとして得た収入はメンバーに還元している。


 聞いているとその辺りはお互いにうまく協力しあっているみたいだ。


 明日からキャンペーンだ。俺もできるだけインしよう。


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