キャンペーンの案内が来た
運営からキャンペーンの内容が発表された。
・期間中フィールド、ダンジョンで敵を倒した際に得られる経験値が従来の2倍になります。また、討伐に成功すると稀に宝箱が出現します。
・合成スキルの上昇率が上がります。
・釣りにおいては、従来よりも釣りやすくなります。
・全てのエリアにおいて印章のドロップ率が上がり、渓谷エリア以降ではそれに加えて神魂石のドロップ率が上がります
・期間中、街のショップで期間限定の特別商品が販売されます。戦闘用関連に限らず、それ以外のもありますので皆様であちこちのお店に顔を出してみてください。
・期間中、以下の場所に特別なフィールドが出現します。そこでは強力なモンスター(NM)との戦闘があります。出現するフィールドは以下の3箇所です。
①開拓者の街の郊外 (レベル60制限 10名)
②試練の街の郊外 (上級レベル25制限 15名)
③港の街の郊外 (レベル制限なし 20名)
この3箇所のNM戦に関してはトリガーは必要ありません。現地に複数のワープポイントがありますのでそこからフィールドに転移します。ただし一度戦闘をすると戦闘終了時より実際の時間で6時間は再挑戦できません。これは3箇所のフィールド共通となります。①に挑戦したあとは6時間の間は①、②、③に挑戦することはできません。
討伐に成功しますと参加者全員に同じ経験値が入り、宝箱が出現します。
・上記NM戦とは別にキャンペーン特別イベントも用意しておりますのでお楽しみに。
2週間に渡るキャンペーンの内容が書かれている。どれも楽しそうだ。
畑仕事を終えて端末をもう一度見ているとその端末が鳴った。
「主、お電話なのです」
「うん、ありがと」
膝の上に乗っているリンネにお礼を言ってから端末を見るとクラリアだ。
「運営からの案内は見た?」
「見たよ」
「今から私たちのパーティとスタンリーらのパーティ、10名でお邪魔していいかしら」
「ほい、了解」
しばらくして10人が庭にやってきた。いつもの4人以外はカーバンクルのクルミを見るのが初めてだ。
「これが噂のカーバンクルか」
「可愛いわね」
俺の肩の上に座っているカーバンクルのクルミを見て声を上げるメンバー達。クルミも尻尾を振ったり肩の上でジャンプしたりとサービス精神が旺盛だよ。
「可愛いスカーフね」
クラリアが言った。
「隠れ里のコンビニで買ったんだよ。クルミだけスカーフが無いからね。ただのスカーフだけど従魔のスカーフを取るまではこれで我慢してもらおうと思って」
クルミは持っている能力が高いので従魔のスカーフは効果が無いとAIが言っているけれども、やっぱりお揃いがいいと思うので、そのうちに印章100枚のNM戦に挑戦するつもりなんだけど、それまではこれを首に巻いておくのだと話をした。
「印章NM戦はいつでもお手伝いするよ」
スタンリーが言うと他のメンバーもいつでも声をかけてくれと言ってくれた。助かるよ。
「ありがとう。その時は頼みます。ところで今日は活動は無いの?」
縁側に座った彼らに聞くとどちらのクランも今日の活動は午後からだそうだ。
「運営からの案内を見たからね。タクの家で皆で予想をしようと言うことになったんだよ」
「なるほど」
もちろん俺は大歓迎だよ。
「主のお家でのんびりしながらお話をすると良いのです。広いお家だから大きな声を出しても大丈夫なのです」
俺の頭の上からリンネが言った。10名と人数が多いので洋室に案内して各自の前にお茶と梨を置いたところで雑談が始まった。皆が注目しているのは3箇所のNM戦と最後のキャンペーンの特別イベントだ。
「再挑戦への時間縛りはあるが、トリガーがいらないというのは助かるな」
「俺たち狙うのならレベル無制限だろう」
「第二陣の連中は上級レベル25制限がメインになるだろう。クランの仲間か情報が取れるな」
「それで第三陣がレベル60制限。うまく考えているわね」
皆思い思いに言っているのを聞いている俺。
「あとは特別イベントって何だろう」
俺が言うとそれも謎だよなと言う話になる。戦闘系かそれとも別系か。
「上記NM戦とは別に。と書いてあるので戦闘系だと思うのよ。でも普通にNMを倒す戦闘じゃない気がする」
なるほど。クラリアに言われてもう一度案内を見ると確かに上記NM戦とは別にと書いてある。
「今までとは違う戦闘スタイルになる可能性があるな」
「参加人数も書いていないのよね。人数制限がないイベントで戦闘系。どんなのかしらね」
彼らが話をしているのを聞くと参考になるよ。言われてみればその通りだと思うことばかりだ。
「他のゲームだとさ要塞に篭って敵を迎え撃つ防衛クエストみたいのがあるじゃん」
ワビスケが言うとあるあると言う声がする。
「でも参加人数に制限がないのに要塞に籠るって難しくない?逆に要塞にいる敵にプレイヤーが攻撃を仕掛けて大ボスを倒すイベントとか」
ルミが言うとそっちの方がありそうだなという声も出る。実際はどうなのかはキャンペーンが始まらないと分からないけど、こうやって色々予想するのが楽しいんだよ。
「報酬にタクみたいに従魔の卵とかないかな」
「あればいいよね」
「キャンペーンだから新しい従魔が増えてもいいタイミングではあるよな」
普段はクランとして活動をしているがこの中でも魔獣をテイムしているプレイヤーがいる。活動がオフの時に呼び出して街を歩いたり、フィールドに出て一緒に敵を倒しているという話を以前していた。
NM戦だ特別なイベントだ従魔だと話があちこち飛ぶけど雑談から何も問題ない。それよりも皆楽しそうにしているのが一番だよ。
「レベル制限なしのNM戦はタクにも協力を頼むよ」
スタンリーが言った。印章80枚のNM戦で20名は経験している。今度もそのスタイルで挑戦することで情報クランと話がついているんだと付け加えてきた。
「もちろんOKだよ。それはそれとしてさ、クラン単独では挑戦しないの?」
「いや、それもやるつもりだよ。6時間縛りがあるけど挑戦回数に制限はないからな」
「トリガー集めも要らないしね」
クランマスターの2人が言った。
クランとしてもやり、合同でもやるってことか。俺もその方が嬉しいかも。NM戦以外にショップ周りや合成や釣りもしてみたいし。もちろん経験値稼ぎもだよ。NM戦については彼らにお任せだ。こっちはソロだし時間の融通がしやすい。
ただレベル無制限だということでそれまでの間にレベルは上げておかないとまずいだろう。俺たちのレベルは73、彼らは76だ。少しでも差を縮めて置いた方が迷惑をかけないのは間違いない。
ショップの期間限定商品については、女性プレイヤーから私服や小物じゃないかと言った声が出ている。戦闘関連の武器や防具はまず出ないだろうという見ており、そうなると小物、アイテム関連になるんじゃないかと言う。
「珍しいデザインのなら買わないとね」
「そうそう。このチャンスを逃したら買えないってことでしょ?」
普段から私服を着る機会が多い女性達はそんな話をしているが男性はたいてい戦闘着のままだ。俺も服には興味はないが、小物には興味がある。
「俺は部屋に飾るアイテムなんかがあれば買おうかな」
「それも楽しいかも」
「クランのオフィスに良いのがあったら買ってくれよ」
スタンリーが言うと任せて!と女性陣の声がした。
午前中たっぷりと色んな話をした俺たち。彼らは午後からダンジョンに挑戦してくるそうだ。
「タクはどうするんだ?」
「フィールドで経験値を稼いでくるよ。少しでもレベルを上げておかないとね」
皆が自宅から出て行ったあと、俺はタロウとリンネとクルミを呼んだ。
「聞いていただろう?午後からは外で敵を倒すぞ」
そう言うと3体とも尻尾をブンブンと振ってくる。
「ぶっ倒してやるのです」
リンネが息巻いているよ。




