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コツコツやろう

 ダンジョンの攻略のついでに海で釣りをしようと思っているけど、今のレベルではなかなかダンジョンの奥には進めない。もう少しレベルを上げる必要があるということで、この日は午後から港の街の陸側の西から北に広がっている草原に繰り出した。


 街の西側のエリアはそのまま進むとセーフゾーンがあるのは知っているので、今日は街を出て海岸線を見ながら北に進んでみる。海の向こうにダンジョンがある島を右手に見ながら北上だ。


 街を出たあたりは他のプレイヤーもそれなりにいて、戦闘をすることもなく北に進んでいけるけど、戦闘がないのがタロウやリンネはご不満だよ。俺も皆西側、セーフゾーンにプレイヤーが集中しているのかなと思ってたけど、予想外にこちら側にも結構いるんだよ。


「主、敵がいないのです。お散歩なのです」


「ガウ」


「ここはプレイヤーが多いしな。それにここの敵は今の俺たちよりもレベルが下だぞ?」


「レベルは関係ないのです、手当たり次第にぶったおすのです」


 タロウとリンネを宥めながら北に進んでいく俺たち。ちなみにクルミは大人しく俺の肩の上に乗っている。


 のんびり歩いているけど、これはリンネの言う通りこれは草原をただ歩いているだけだ。レベル73以上の敵がいる場所まではタロウの背中に乗って移動するか。俺がそう言うとすぐにタロウが乗れとばかりに身体を落とした。その背中に乗ると北に向かって走りだす。今日はクルミ、リンネ、俺の順でタロウの背中に乗っているが一番前に座っているクルミはまともに風を受けているが視界が良いからだろう、尻尾を降りまくって大喜びしているよ。


 街から離れるとプレイヤーの数も減ってくる。と同時に敵のレベルも上がって70になってきた。そうは言ってもまだ見える範囲にいるのはヤシガニとオオトカゲだけだ。


 ある程度走ってタロウから降りると海岸線に沿って北を目指す。島はもう自分たちの背後になっていた。前をみるとはるか先に万年雪を被っている高い山々が見えているがそこまではかなりの距離がありそうだ。


「主、あの雪山を目指すのです?」


 リンネが聞いてきた。俺の頭の上に乗っているから頭の動きでどこを見ているのがが分かったのかな?


「そうだな。いつか行きたいな。でもあそこは遠いぞ。もっと強くなってからだ」


「分かったのです。敵をいっぱい倒して強くなるのです」


 そのまま進むとクマと獣人が現れ出した。レベルは72と今の自分たちと同じだ。クルミは毎回魔法壁を作ってくれる。もうすっかり慣れたみたいだよ。先に進むと73、74の敵のレベルになった。魔法を使う獣人が出ると従魔達の攻撃を控えさせて魔法を受けてみる。知りたいのはクルミの壁の効果。蝉を張っているので直撃はないので、10%分相手に跳ね返しているかどうかの確認だ。何度か魔法を使う獣人との戦闘で10%間違いなく相手にダメージを与えていることが確認できた。ミントからはクルミの能力について聞いていたけど自分でも確認しておかないと。


 街の北側はしばらくは起伏がある草原だけど、先に進んで獣人が出始めるエリアになると草原に加えて林が出てくる。今日は海岸線で草原のエリアをメインに戦闘をしたけど、次はもう少し内陸の方にも行ってみよう。


 夕方まで結構な数の敵を倒して経験値を稼ぐことができた。レベルは上がらなかったけど従魔達との連携がしっかりと取れる様になったので満足だよ。クルミは俺が蝉をタイミングで魔法壁を張ってくれる。魔法壁を作った後は大きめの尻尾をピンと立ててリンネの後ろでリンネと同じ様に四つ足で踏ん張るんだよ。うん、様になってるぞ。


 転移の腕輪で自宅に戻ってきた。従魔達も満足しているのか自宅に戻ってくると皆思い思いにリラックスしている。クルミは精霊の木の枝の上、タロウは木の根元、そしてリンネは縁側に座っている俺の膝の上だ。両肩にはランとリーファが座ってゆっくりと背中の羽根を動かしていた。


 のんびりしていると端末が鳴った。


「主、お電話なのです」


「ありがとう」


 相手はトミーだ。今日の活動が終わったのでこれからクラリアと2人で行ってもいいかという。もちろんOKして通話を切った。


「友達が2人やってくるよ」


「主のお友達はいつでも歓迎なのです」


 リンネがそう言うとタロウはお出迎えなのか庭に移動してきた。その背中にクルミが乗っている。


 しばらくすると庭にいつもの2人がやってきた。尻尾を振って歓迎するタロウとクルミ。


「いらっしゃいませなのです」


「こんにちは」


「やあ」


 縁側に座った2人にお茶と果物を置くと、このお茶が美味いんだよとトミーが言ってくれる。


「ランとリーファがお手伝いして作ったお茶は美味しいのです」


「そうだな。リンネの言う通りだよ」


 彼ら情報クランのメンバーはレベル75だ。聞くと攻略クランも同じレベルだそうで、両クランとも今は島の北のダンジョンを攻略しつつ、レベルを上げているそうだ。


 話を聞くと自分が攻略した場所の先まで行っている。ダンジョンに入って進むと分岐が3つ、どれを進んでもその先で分岐が2つ。俺はそこまでだが、2つのクランはその先に進んでいた。


「2つに分かれている分岐に入るとカニ以外にトカゲが出てくる。もちろん常時2体が固まっているんだ。レベルは77に上がる」


「分岐を進むごとにレベルが上がるんだ」


 俺が言うとその通りだという2人。ただレベル75でも77の2体リンクが結構手こずっているらしい。


「まず2体とも固い。それに常時複数体いるので倒した後の回復時間が短いんだよ。苦労しているんだ」


「正解のルートは1つだけだしね、手当たり次第の攻略になるのかな」


「その通りね。正解のルートを見つけるにはしらみつぶしに坑道を進んでいくしかないのよ。もし正解のルートを見つけて進んで行くと下に降りる階段があるのかもしれないし、あるいは別の何かがあるのかもね」


 俺たち以外でもダンジョンに挑戦しているパーティはいくつかあるが、まだ最初の分岐から少し進んだところらしい。彼らのレベルは72、73だそうだが皆苦労しているとクラリアが言った。単体は倒せるがリンクすると厳しい。情報クランは攻略したところまでの情報は公開しており、結構売れているそうだ。


「タクはレベル72か」


「こっちはインしている時は午前中はこの自宅で経験値稼ぎは午後だけだからね」


 レベルが上がるほど次のレベルに上がるための必要経験値が多くなる。今3つの差があるけど経験値としては相当の差があるってことだよ。2人が午後からの外の活動はダンジョンに出向いているのかと聞いてきた。


「いや、ダンジョンはレベルが高い。今は港の街の陸側を北に進みながらやってるよ」


「北方面は途中で探索を中止してるのよね。何かあったら教えてくれる?」


 街の西の草原にはセーフゾーンがあるが、北側はどうなっているのか。次の街に繋がる情報はあるのかなど分かれば教えて欲しいという2人。


「もちろん」


「主に任せると安心なのです」


 俺の膝の上に座っているリンネが言った。久しぶりにそのセリフが出たな。

 


 彼らが帰った後、俺は工房に入ってログアウトまで焼き物を作る。5体の従魔達も一緒に工房に入るといつもの場所で俺が焼き物をするのを見るんだよ。クルミもタロウの背中の上に座って作業を見ていて焼き上がった置き物を見ると尻尾をブンブンと振って喜んでくれる。もちろん、他の従魔も同じだ。


「これでまた主がウハウハになるのです」


「ガウガウ」


「もう少し作らないとな。あと少し頑張るぞ」


 俺が言うと皆尻尾を振って応援してくれたよ。これで頑張れるぞ。


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