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主がお休みと言えばお休みなのです

 80枚のNM戦から出るジョブ帽子は新しいエリアでも十分に使える優れものだ。なのでできればメンバー全員が持ちたいと思っているというスタンリーやクラリア。


「そう言うことで、またやるからヘルプお願いね」


「ヘルプというか俺も上忍の帽子狙いだからね、こちらからお願いしたいところだよ」


 NM戦の翌日の午後、いつもの4人が俺の自宅にやってきた。両クランとも今日は活動がオフの日だそうだ。俺は基本ソロなので休みたい時に休んでいるし、ログインしても自宅の工房で合成だけをしてログアウトする日もある。そこはソロだから自由度が高いんだよ。


 タロウを撫で回していたマリアも縁側にやってきた。俺から買ったジョブ帽子をしっかりと被っている。彼女によると街を歩いていると知り合いからジョブ帽子?と聞かれたそうだ。彼女はまだこの帽子で外で活動をしていないので性能についての検証はしていないそうだがAI経由聞いている情報だけでもかなりの優れものだとわかると言っている。


「パラディンと魔法使いの帽子の性能については明日公開するの」


「パラディン、ウォリアー、神官、魔法使い、盗賊。これらの帽子は出た。逆にまだ出ていないのはハンター、マスターモンク、そして上忍だ」


「俺たち以外で80枚のNM戦に勝利している連中もいるんだろう?」


「いるわよ。ウォリアーの帽子が出てるの」


 なるほど。出ていないのは人数が多くないジョブの帽子ばかりじゃないかという気もするがこれは偶々なんだろうな。


「ジョブ帽子の優秀さは皆が知っている。印章は消費するが、また挑戦しようと思っている。タクもやってくれるだろう?」


「もちろん」


 忍者の帽子、頭巾?俺も欲しいもの。彼らもメンバーの希望者全員に帽子が行き渡る様に何度も挑戦するつもりだと言っている。神魂石もドロップするけどやっぱり狙いは帽子だよな。印章を集めないといけないけど。


「タクは今日も外に出るのかい?」


「最近結構外で活動してたから、今日はこの自宅で工房に籠ろうかなと思ってるんだよ」


 聞いてきたトミーにそう答えると膝の上に乗っているリンネが顔を上げた。


「主、今日はお外で敵をぶっ倒さないのです?」


「たまには自宅でランやリーファと一緒にのんびりしようかと思ってるんだ」


「分かったのです。お家でのんびり過ごすのです。お休みは必要なのです」


 俺とリンネとのやり取りを聞いていたクラリアがリンネに顔を向けた。


「リンネちゃんは外に出なくても大丈夫なの?」


「大丈夫なのです。主がお休みと言えばお休みなのです。今日はのんびりする日なのです」


 聞き分けの良い子だと膝の上に乗っているリンネを撫でてやると8本の尻尾をブンブンと振ってご機嫌の様子だ。


「リンネもそうだけど、タロウやラン、リーファも皆タクに懐いているよな」


「クルミも懐いてるよ」


 スタンリーの言葉にそう返すと精霊の木の枝の上で休んでいたクルミが起き上がるとその場でクルッと一回転した。


「よくここまで優秀な従魔が揃ったもんだ」


 トミーが言った。


「他のプレイヤーもフィールドでテイムした虎や狼を育てているんだろう?彼らもレベルがアップするにつれて強くなってるんじゃないの?」


 そう聞いた俺にクラリアが答えてくれた。


「タクと同じ上忍のプレイヤーはほとんどが普段ソロで活動してる。上忍を含めてソロメインのプレイヤーの従魔は優秀だという評判よ。一方でパーティを組んでいるプレイヤーは普段は従魔をフィールドで呼び出していない。なのでレベルアップが遅いというのが分かってるの」


 確かにパーティプレイの中で従魔を呼ぶ事はできないだろうな。オフの日に呼び出してソロで倒すくらいか。


「でもフィールドでテイムした従魔は魔法が使えない。物理攻撃ばかりね。レベルが上がったことでジャンプできる高さが伸びたり、攻撃力がアップしたりはしているけど魔法が使える様になったという話は聞いてないの」


 だからタクの従魔は特別なんだよと4人が言った。


「当然なのです。主が一番なのです。一番強い主にお仕えしている従魔が皆優秀なのは当たり前なのです」


 膝の上に乗っているリンネが言った。


「こうやって話ができるのもリンネだけだしな」


 俺はリンネの背中を撫でながら言った。


「その通りだよ。皆規格外の従魔達ばかりだぞ」


 確かに規格外の従魔達が集まっている。ただ狙って手に入れた訳じゃない。前のゲームで敷かれたレールの上をひたすらに走っていくプレイばかりしていた反動からこのPWLではマイペースでやろうと決めて、やってきた結果が今だ。


 前のゲームではひたすらにレベルを上げて、他のプレイヤーよりもずっと強くなって、周りからは最先端攻略組のエースチームと言われ続けていた。外から見たらそうだけど、実態はリアルよりも厳しい時間管理や事前の予習。欠席すらも簡単にできない雰囲気。あるとき俺は一体何をやっているんだろう?と思ったことからそのゲームからフェードアウトした。


 今のPWLでは好きな事を好きな時にできる。ほとんどストレスがない。これが本来のゲームの楽しみ方なんだろう。


 ここにいる4人。彼らはこのゲームでは攻略の先頭のクランの幹部だが、ガチの攻略勢と言う訳じゃない。先頭を競い合っているのではなく、攻略が好き、情報を集めるのが好き、そんな連中が集まっているクランだ。両クランはしょっちゅうお互いに協力しあっている。だから俺も彼らとは気を使わずに付き合う事ができる。


 俺がそんな事を考えていると4人は島の北にあるダンジョンついて話をしていた。入り口でレベル75のカニがいるダンジョン、ボスは90じゃないか、いやもっと強いかもしれないぞ、なんて言っている。


「俺がヌシから聞いた話だと正解のルート、つまりボスに辿り着くルートは1つしかないって言ってたよ」


「つまり違う坑道に入っても結果的に正解の坑道に合流するというルートは無いって事だな」


「となると攻略には時間がかかりそうね」


「レベルが高い、時間がかかる。運営はここでもたっぷりと時間をかけさせるつもりだな」


 俺の言葉にトミー、マリア、そしてスタンリーがそれぞれ言った。


「ここにいるメンバー以外でダンジョンに挑戦したパーティはいるの?」


「まだいないみたい。途中の海岸の小屋にもまだ到達してないわ」


 島の北側は森の中を進んで行かなければならない。レベル70の敵がいるが視界が悪いのでプレイヤー側もそれなりのレベルが必要になる。そしてダンジョンの最初の敵が75であることは情報として公開している。となると72とか73まで上げてから島の北を攻略しようという流れになるんだろうな。


「皆慎重なんだな」


「そりゃそうだよ。ダンジョンの敵が強いのは分かってる。慌てて島の北まで行ってダンジョンに入ったところで何もできないからな」


 俺が言うとスタンリーが答えてくれた。


 その後しばらく話をして4人が帰っていった。彼らが帰ると俺はエプロンを身につけて工房に足を向ける。エプロンを身につけたとこで気がついた従魔達が俺の後をついて工房に入ってくる。クルミもしっかりタロウの背中に乗ってるよ。


「これから工房で焼き物を作るぞ」


「作るぞ!なのです。沢山作って沢山売るのです」


「ガウガウ」


 前回のバザールでは従魔達の置き物を買いたい人が買えなかった。次のバザールでは前回以上の数は出品しないとな。しかもクルミが新しく加わった。今までの流れから見るとある程度の数を作らないとまた買えない人が出てくるだろう。


 俺が作っていると従魔達が応援してくれる。それが励みになってログアウトまで結構な数を作ることができた。彼らに感謝だよ。


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