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クルミのおかげ?

 印章80枚のNM戦を行う日がやってきた。参加者が開拓者の街にある情報クランのオフィスに集まった。


 今回は俺たちは4名だ、なので他クランからの応援は1名となる。応援はスタンリーとトミーになった。


 攻略クラン、俺達、トミー

 俺達、攻略クラン、トミー

 情報クラン、俺達、スタンリー


 俺達と攻略クランが主催の時はトミーが助っ人として参加し、情報クランが主催の時はスタンリーが助っ人として参加することになった。とにかく短時間でケリをつける、火力重視なのは前回と同じ。


「作戦は前回と同じ。タクらと助っ人の組で1体を担当、早く倒した方がもう1体の戦闘に参加する。油断しないでいきましょう」


 俺の時の相方のパーティは前回が情報クランだったが、今回は攻略クランになっている。これは両クランの話し合いで決まった。俺はどちらでも問題ないよ。どちらもトップクランであるのは間違いないからね。


 俺は肩に乗っているクルミを抱くとその目を見ながら話かける。


「クルミは初めてのNM戦だ。頑張れよ」


 俺が話しかけると尻尾をこれでもかとブンブンと振り回してくる。それを見ていたリンネ。


「クルミはやる気なのです。主にいいところを見せてくれるのです」


「そうか。頼むぞ。でも無理はするんじゃないぞ」


「クルミちゃんのスキルに期待ね」


 マリアが言うと俺の肩の上で器用にクルッと一回転するクルミ。


「任せろと言っているのです」


 リンネが通訳してくれた。


 打ち合わせが終わると各自で移動し、NM戦の手前にある洞窟の小屋で集合することになった。


 俺達は自宅から渓谷の街の別宅に飛ぶと、市内を歩いてギルドに向かう。頭の上にリンネ、肩にクルミを乗せてタロウを横に従えて歩いている俺たちは目立つ。第二陣が渓谷の街に来ていることもあり注目浴びまくりだよ。


「あれがカーバンクルか?」


「リスみたい。すごく可愛い」


「いいなぁ、フェンリルに九尾狐にカーバンクルが従魔だなんて」


 街を歩いているとそんな声が聞こえてくるよ。恥ずかしいが気にしても仕方がない。ただタロウとリンネは尻尾を振って喜んでいる。


「主は有名なのです、いつも注目を浴びるのです」


「いや、注目を浴びているのは俺じゃなくてお前達だろう?」


「違うのです。主なのです」


「ガウ」


 いつもだが彼らはこれについては絶対に譲らない。相変わらずだなと思っていると肩に乗っているクルミも尻尾を振っていた。


「クルミもタロウやリンネと同じなのです。主が一番だと言っているのです」


 クルミ、お前もか。

 まぁ、嫌われるよりはずっといいけどね。


 渓谷の街の冒険者ギルドから土の街のギルド経由で洞窟の小屋に飛ぶと、スタンリーらの攻略クランのメンバーが既に来ていた。俺たちが小屋についた直後に情報クランのメンバーも飛んできた。


「渓谷の街の冒険者ギルドに入るのが見えていたのよ」


 彼らは俺たちの後ろを歩いていたらしい。俺は小屋の中から外を見てからクラリアに顔を向けた。


「中にも外にも見える範囲で他にプレイヤーがいないな」


「今はちょうど空白地帯になっているのよ」


 俺が言うとクラリアが言った。彼女によると第一陣はほとんどのプレイヤーが港の街のエリアを活動拠点にしている。一方で第二陣は攻略のトップを走っている連中が山の街に着いて経験値を稼いでいるところらしい。もうすぐ第二陣の連中もここに到達するそうだ。なので今はライバルがいない状態なんだと言う。


「ただジョブ帽子狙いでこのNM戦に挑戦している第一陣のパーティが時々来ている。今日はいないみたいだけどな」


 相変わらず情報クランは詳しい情報を持っているよ。


「そろそろ行きましょうか」


 クラリアの声で全員が小屋を出て広場を抜けて中央の洞窟に入った。奥にNM戦のフィールドに転送する転送盤が光っているのが見えた。


 今回印章を出す順番は攻略クラン、俺たち、情報クランとなっている。


「クルミ。俺の前に壁を出したら、ジャックスの前にも壁を作れるか?」


 そう聞くと問題ないとばかりに尻尾を振りながら頷いてくれる。


「問題ないのです。クルミはできる子なのです」


 それを聞いた俺は抱いているクルミの背中を撫でてやる。


「そうか。じゃあ壁を2つ作るんだぞ。タロウとリンネはいつも通りだ。頼むぞ」


「ガウガウ」


「任せるのです。主のために敵をぶっ倒してやるのです」


 リンネの威勢の良い言葉を聞いていた周りのメンバー。リンネがんばれよ、とか、期待してるぞとか声がかかるがそれに対しても問題ないのですと答えている。リンネとタロウはいつでもどこでもマイペースだよな。


「クルミ、魔法を使ったらリンネのそばにいるんだぞ。壁の張り替えは自分で考えてやってくれ」


 俺の腕の中でキョロキョロと周りを見ているクルミの背中を撫でながら言う。クルミにとっては見るもの全てが初めてだからな。俺が言うと分かったとばかりに尻尾を左右に振ってくれた。少しずつカーバンクルの意思表示が分かってきたぞ。


「主、クルミはリンネがしっかりと面倒を見るのです。任せるのです」


「おう、頼むぞ」


 そろそろ始めようというスタンリーの言葉で全員が立ち上がる。スタンリーが転送盤の上に立って消えたと思った次の瞬間、俺たちもフィールドに転移した。


「タクらは右のを、俺たちは左のをやる」


「分かった」


 スタンリーを先頭にしたフィールドに降りると俺たちは左に移動する。今日の俺はAGI重視の装備だ。このNM戦では1体の盾を受け持っている。蝉はあるがそれに加えて躱せる装備の方がいいんじゃないかと判断した。


 下に降りるとすぐにクルミが俺の前、そして隣のジャックスの前に魔法壁を作った。その後はリンネの後ろに下がる。うん、よくできたぞ。


 俺の遁術で戦闘が始まった。大きなリザードが突っ込んでくるのを躱しながら刀で身体に傷をつける。すぐにタロウとトミーがリザードの左右から攻撃を開始する。リンネはタロウと俺の間から顔に向かって精霊魔法を撃ち始めた。短期決戦なので最初から全力だよ。


 そうは言っても俺たちはすでに数戦経験すみだ。敵の挙動についても知っている。突っ込んでくるだけだ。それなら空蝉の術で回避できる。リザードはガンガン俺たちに攻撃してくるがその結果、クルミの魔法で俺たちに攻撃してくるダメージの1割が自分に戻っている。それが間違いない事が戦闘時間で証明されたよ。前回は確か40分弱で1体を倒したけど、今回は30分ちょっとで倒せた。何も言わなくても時間管理ができているのだろう、途中でクルミが魔法壁を貼り直していた。


 すぐに隣のリザードに移動するがこっちはすでに倒れる寸前だったみたいで合流してから5分も経たずに2体目も倒れて消えた。


『印章80枚のNM戦に勝利しました。戦闘時間35分04秒です』


「おおっ、随分と早く倒せたぞ」


 勝鬨を上げているとフィールドの中央に宝箱が現れた、スタンリーがそれを端末に収納すると俺たちは80枚のNM戦をする洞窟の通路に飛ばされた。


「早かったのね」


 現れた俺たちを見てクラリアが言った。


「35分で倒した。クルミの魔法壁、相当優秀だぞ。1割のダメージバックはでかい」


 スタンリーの言葉になるほどと頷いている情報クランのメンバー。唯一参加したトミーも慣れているという点を差し引いてもクルミがいた事で随分と楽になったと言っている。魔法壁の効果時間も10分から20分に伸びている様だ。

 

「クルミ、頑張ったな」


 戻ってくるとすぐに俺の肩に飛び乗ってきたクルミを撫でてやる。するとタロウも撫でろと身体を寄せてきた。もちろんリンネもだよ。俺は3体の従魔達をしっかりと撫でて労ってやる。


「パラディンの帽子が出たぞ」


 スタンリーが端末から取り出したのはパラディンの帽子だ兜に近い形をしている。AIのミントに聞くと敵対心大幅アップと盾スキルアップの効果があるらしい。盾スキルアップとは攻撃を受けた時にダメージの一部を受け流せるスキルらしい。これはパラディン必須の装備になるぞ。早速帽子をつけたジャックス。皆から似合ってると言われてまんざらでもない表情だよ。


 その後、俺が印章を提供し、最後に情報クランが印章を提供して80枚のNM戦を都合3戦したがいずれも35分前後で討伐に成功した。


 気になるドロップだけど俺の時は魔法使いの帽子、情報クランの時は再びパラディンの帽子が出た。残念ながら上忍の帽子は出なかった。欲しいアイテムが出ないのはゲームあるあるだよ。神魂石が全種類、そして緑石が2個あったからよしとしよう。


 ちなみに魔法使いの帽子はよくある鍔の広いとんがり帽子で精霊魔法スキルアップ、および敵対心マイナス効果が付与されている。本当にジョブ帽子は優秀だよな。攻略クランのマリアと情報クランのワビスケの2人の抽選の結果マリアが俺から買うことになった。


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