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チームワークを高めよう

 街から外にでると南の山を左手に見ながら西方面に進んでいく。この先にセーフゾーンがあるのは聞いているのでとりあえずそちら方面を目指して進みながら遭遇する敵を倒す作戦だ。ただ街の近くはレベル63、64なので、そのエリアはタロウに乗ってすっ飛ばすことにする。タロウが腰を下ろすと前にリンネが座り、その後ろにクルミが座る。最後が俺だ。クルミはリンネと俺との間にちょこんと座っている。


「タロウ頼むぞ」


「ガウ」


 一吠えするとタロウが草原を駆け出した。草原を進むとレベル67くらいになったところでタロウから降りて西を目指すことにする。今の俺たちのレベルより下なのでクルミの鍛錬にはちょうどいいんじゃないかな。


 そう思ってここから攻略を始めたんだけど、正直レベル差がありすぎて戦闘にならない。タロウとリンネがあっという間に敵を倒してしまうのでクルミの鍛錬にならないんだよ。なので再びタロウに乗って進んでいくと目の前にセーフゾーンの柵が見えてきた。


「ここは元気になる場所なのです」


 他にプレイヤーがいない柵の中でしっかりと休憩を取る。


「ここから先は敵のレベルが俺達よりも上になる。気を抜くなよ」


「ガウ」


「任せるのです」


 タロウとリンネはそう言い、クルミは肩から降りるとタロウの上に乗って尻尾をブンブンと振る。


「クルミも任せろと言っているのです」


「大丈夫か?」


「問題ないのです。主は心配性なのです」


 従魔達がそう言うのならこれ以上俺が心配しても仕方がない。クルミの実力はまだ不透明だけど、タロウとリンネが優秀なのは知ってるからな。


 しっかりと休むとセーフゾーンから出てさらに西を目指して進み出した。すぐに前方にクマの魔獣の姿が見える。リンネの強化魔法を受け、俺が刀を抜くとクルミが反射壁を出した。近づいていくとクマがこちらを認識して突進してくる。レベル70だ。クルミは魔法を唱えると基本俺から離れた場所、リンネのそばに移動して戦闘に巻き込まれない位置に立っている。


 突進してくるクマの攻撃を躱しながら刀で傷をつけて魔法と蹴りで倒すのだが、俺は蝉と素早さで攻撃を交わしているので実質ノーダメなのでクルミの効果がないと思っていたんだけど、それは間違いだった。クルミが張った反射壁に攻撃が当たるだけでその1割が敵にダメージにとして与えていることが確認できた。


 これは普通の敵はもちろん、NMやボス戦になるとかなり有効だ。印章NM戦でも効果があるか確認が必要だけど、効果がありそうな気がする。


 その後レベル71の獣人を相手にしたが。相手より先にタロウやリンネが敵を見つけてくれるのでタロウがダッシュで敵に向かっていく。魔法や矢を交わしながら一気に敵に近づき、リンネが魔法を撃つ。それで遠隔攻撃が打てなくなったところでタロウの蹴りやリンネの魔法で獣人が倒れた。


 何度か戦闘をしているとクルミを含めた全員の連携が良くなってきた。クルミを見ていると今のところは戦闘の前に反射壁を作っているだけだが、まだまだ他のスキルを持っていそうな気がする。


 セーフゾーンから西に進んだ山裾でレベル71から73の敵を相手にしていると俺たちのレベルが70になった。


「これでまた強くなったのです」


「そうだな。島のダンジョンに挑戦するか」


 レベルが上がったし、クルミが孵化した報告もある。


「行くのです」


「ガウ」


 クルミも俺を見ながら尻尾をブンブン振っているぞ。それを見る限りやる気満々だな。


「クルミも行くぞと言っているのです」


「決まったな。今日はこのまま夕方までここで敵を倒して明日島の北に行こう」


 それから夕方までしっかりと敵を倒して経験値を稼ぐ。敵のレベルは73が中心となり、時々74の敵も現れ出したが特に危ない場面もなく倒して経験値を稼げたよ。


 夕刻になって自宅に戻ってしばらくすると端末が鳴った。


「主、お電話なのです」


 俺の膝の上でリラックスしているリンネが言った。タロウは精霊の木の下で横になっていてその背中にランとリーファが座っている。クルミは俺の左肩の上だ。どうやら精霊の木の枝と、ここが気に入ってくれているみたいだ。電話の相手はクラリアでダンジョンまで行ってきたという。その報告も兼ねてこれから自宅にくるという連絡だ。


 庭からいつもの4人がやってきた。タロウは早速マリアに撫でられている。


「クルミちゃんもタクに慣れたみたいね」


「どうやら左肩が気に入っているみたいだよ」


 自分のことを言われているのが分かるのだろう。尻尾をブンブン振っている。


「カーバンクルの従魔、すでにプレイヤーの中で話題になっているぞ」

 

 公式掲示板で俺が新しい従魔を連れているのを見て、それが神獣のカーバンクルだという話で今公式掲示板が盛り上がっているそうだ。街で話かけられた時からそうなるだろうなと思っていたし、そうやって広めてもらった方が結局こっちも楽なんだよ。


「カーバンクルの入手手段の問い合わせも情報クランに来ているの」


「情報はいつ公開するの?」


「今日攻略クランと一緒に島の北に言ってヌシに会ってきた。それから個別にダンジョンに入って少し攻略してきたのよ。その情報をまとめて明日の午後には公開する予定」


 情報クランは俺の話を聞いた時にすでに売り出す情報をまとめており、今日裏付けをとったので一部加筆することで公開できるらしい。


 4人によるとランドトータスとは会って話もできたが、彼らには宝物というかアイテムは出さなかったそうだ。


「一番最初に島のヌシに会ったプレイヤーだけみたいだ」


「やっぱりそうなんだ」


 卵をもらった時にこの場所に最初に来たプレイヤーにとヌシが言っていたから多分そうだろうとは思ってたけど。


「ダンジョンはどうだった?」


 俺が聞くとそれにはスタンリーが答えてくれる。


「タクと同じでダンジョンに入ってすぐに通路の真ん中にレベル75のヤシガニがいた。それを倒して進むとまた同じヤシガニが通路にいた。俺たちはそいつも倒してから奥に進んだんだよ。奥に進むともう1体75のヤシガニがいて、そいつを倒した先で洞窟が3つに分岐していた。俺たちは左の洞窟に入った。するとヤシガニのレベルが76に上がった。1体倒したところで分岐まで戻って今度は真ん中の洞窟に入った。同じだった。その後右にも行ったがこれも同じ。3本の洞窟は見た限りどれも全く同じ、しかも敵の種類、レベルも全く同じ。今日はそこまで探索して戻ってきたんだよ」


「俺たち情報クランも全く同じだった。こっちも3本の洞窟に入ってみたんだが正直76になると簡単な戦闘じゃない。こっちも73にレベルは上がったがそれでも倒すのは簡単じゃない」


 2つのクランとも示し合わせた様に3本の洞窟の入口付近を調査したのか。それにしても敵のレベルが高いな。


「3本の洞窟の奥がどうなっているのか。まだ入り口付近なんだろうが、あのダンジョンは難易度が高そうだよ」


 トミーがそう言ってからその情報ももちろん公開するという。


「ダンジョンのある島の北に移動することがそう簡単じゃない。海辺の小屋まで行くのも苦労するだろう。森で視界が悪いしな」


 確かにそうだよな。俺はタロウレーダーがあるから普通に進んで行ったけど、木々の間から飛び出してくることが多かった。情報クランも攻略クランもレベル72で島の北を目指したが楽じゃなかったらしい。

 

 海辺の小屋まで辿り着ければ、そこを起点にして周辺の敵を倒して経験値を稼ぐということが出来るが、あの小屋に行くのも結構大変だぞと言っている。


 そして島の北にあるダンジョンだ。レベル75が最初の接敵となるのでいきなり死闘になる可能性もある。多くのプレイヤーは帰還の手段がない。ダンジョンから戻るにはまた海辺の小屋まで戻らなければならない。俺たちがまだ知らない場所にセーフゾーンがある可能性もあるが、今の時点ではそれが見つかっていないので、移動が大変だ。


「そういう事だからダンジョンの情報を公開してもすぐに挑戦するプレイヤーは多くないだろうと見ているの。情報は買ってくれるけど実際に攻略するかどうかは別よね」


「ところでタクはどうしてたんだ?」


「西のセーフゾーンまで行って、その周辺の敵を倒していた。聞いていた通りに魔法や弓矢を使う獣人がいたけど俺がタゲを取っている間にタロウがダッシュで敵に近づいて攻撃してくれるから楽だったよ」


「リンネも頑張ったのです」


 膝の上から忘れるなとばかりにリンネが言った。4人からはどっちの装備でやっているんだ?と聞かれたのでAGI装備でやっていると答える。ソロの場合ダメージを喰らわない方が良いだろうから少しでも素早く動ける装備がいい。ダメージソースは俺だけじゃなく、タロウとリンネもいるし。


「クルミちゃんの反射壁は遠隔攻撃や魔法でも有効だった?」


「少なくとも矢に対しては有効だった。確認できた。魔法については今日は俺が敵の魔法を受けることはなかったのでまだ分からないけどね」


 マリアに言うと羨ましいわねと言った。彼らは遠隔攻撃の敵にはパラディンが近づいていってヘイトを稼いで戦闘を開始するが、先手を敵に取られることが多いそうだ。


 彼らはダンジョンを攻略するにはまだまだレベルを上げる必要があるので明日は海辺の小屋か草原の西側で経験値稼ぎをするそうだ。


「タクはどうするんだい?」


「島のダンジョンに行くつもり。卵が孵化してクルミが出てきたことをヌシに報告しようと思っているんだ」


 そう言うと4人が確かにそれはやった方がいいだろうと言ってくれたよ。


「新しい情報を待ってるわよ」


「クラリアの期待に応えられるかどうかは分からないよ」


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