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レベル65装備を手に入れた

 1週間後、島の森で魔獣を倒していた俺達は念願のレベル65になった。


「よし!レベルが上がったぞ」


「ガウ!」


「やったぜとタロウが言っているのです。リンネもやったぜと言うのです」


 俺達は北門から島の街に入るとそのまま忍具店に足を向けた。『島の街忍具店』に入ると奥からサツキさんが出てきていらっしゃいと言って俺たちを見る。


「レベル65になったんだね。おめでとう。この店の商品を買えるよ」


「主は何を買うのです?」


 頭の上からタロウの背中に移動したリンネが俺に顔を向けて聞いてきた。


「それなんだけどさ、幸いにお金はある。だから両方のセットを買おうかなと思ってるんだ」


「主はお金持ちだから欲しいものは何でも買えるのです」


「そうかもしれないな」


 2セット買うのは前から考えていた事だ。上忍の65装備は素早さ(AGI)が上がるセットと力(STR)が上がるセットがあり、刀も同じだ。2種類の装備と武器が売られている。値段はどちらも同じで刀が1本500万、装束は650万だ。


 今までは装束はSTRで刀はAGIとSTRを1本ずつ持っていたけど、今度は思い切って2セットを装備して使い分けようと思っている。


 森の忍具店のシーナさんが言っていたけど忍者、上忍なんて攻撃を躱しながらコソコソと動くジョブだ。AGIを上げるのがいいんだろうけど、バンダナを6段階強化しているので2つ3つのレベル差ならほぼ同格扱いになる。となるとAGIを上げなくても素である程度避けてくれると思うんだよね。その場合は一撃のダメージを上げるSTR装備の方が戦闘時間の短縮になる気がするんだよ。そのあたりは2セット買って実践で感覚を掴もうと思ってる。


 俺は自分が思っていることをサツキさんに話した。


「いいんじゃないかな。お金があるのなら2セット買うのがいいよ。タクが言う様にTPOで使いわけりゃいい。装備や武器でこれが正解ってのがないからね。どっちの装備を身につけたとしても、その6段階強化済みのバンダナを持っているタクはレベル以上の実力があるのは間違いないからね」


 サツキさんも2つ買って使い分けたら良いと言ってくれた。まぁお店の人だから沢山買えと言うんだろうけど、助言は助言だよ。これで決まりだ。


 1セット1,650万ベニーの装備を2セット買ったので3,300万を支払う事になったけど幸いに金はある。俺はまずAGIセットを身につけた。装束は濃い紫色だ。刀も柄の部分は装束と同じ濃い紫色になっている。


「主、似合っているのです」


「ガウ」


 タロウとリンネも褒めてくれる。次にSTRセットを身につける。こっちは黒色だ。


「こちらも似合っているのです。どちらも似合っているのです」


「ガウガウ」


 タロウとリンネが尻尾を振りながらそう言うとサツキさんも似合ってるよ、それにしっかり強くなっているのが分かるねと言ってくれた。


「忍靴はこれだけですか?」


 店の中にある棚に並んであるのは刀、装束の他に靴も売っているが、俺が以前に履いていた靴と同じで特殊効果がない靴だ。価格もかなり安い。 


「忍靴は今タクが履いているのが一番いいね、この店というかこのエリアには靴は売ってないんだよ。忍術も新しいのは置いてないね」


 先のエリアに行けばあるのかもしれないがここではないと言う。となると今のところ

俺は自分が持つ事が出来る最高の装備をしていることになる。


「タクは神魂石は持ってるのかい?」


「ええ、持っています」


「できることなら売らない方がいいよ」


 とだけ言ってきた。そこから先は何も教えてくれないが、この先で使い道があるということだ。俺は分かりましたと返事をして店を出ると再び街の北門から外にでた。買い替えた装備を試してみたい。


 タロウとリンネは再び外に出て魔獣を相手に出来るので大喜びしているよ。


 新しい装備はどちらも以前の装備との差が一目瞭然だった。AGI系の装備は自分の動きが早くなって相手の攻撃を避けるし、STR系の装備は刀のダメージが増えている。


「主がまた強くなったのです」


「ガウ」


 タロウとリンネも分かるのだろう。魔獣を倒すとそばに来て体を寄せてくる。


「うん、自分でも実感できるよ。これで森の奥に進めるな」


「進めるのです。森の奥の強い虎さんや狼さんを蹴散らすのです」


 タロウもリンネも今から奥に行く気満々だがこの時間からだと遅い。攻略は明日以降にしようと俺達は森の中から転移の腕輪を使って開拓者の街の自宅に戻ってきた。


 自宅でお留守番をしていたランとリーファがタロウとリンネらと一緒に庭で遊んでいるのを縁側に座って見ていると端末が鳴った。


「主、お電話なのです」


「ありがと」


 遊んでいても電話連絡は自分の仕事だと思っている様だ。相手はクラリアだった。俺のレベルを見たらしく、もう少ししたらそっちに行ってもいいかと聞いてきた。もちろんOKだよ。


 通話を切ると遊んでいる4体にいつもの友達がやってくるぞと言うとランとリーファはサムズアップをし、タロウはガウと吠え、リンネはタロウの背中に乗った。


「主のお友達を歓迎するのです」


 背中に乗ったのは歓迎するポーズだそうだ。


 しばらくするといつもの4人が庭に入ってきた。リンネはタロウの背中に乗ったままでいらっしゃいませなのです。と挨拶をしている。マリアがタロウに近づくとリンネは背中から飛び降りるとそのまま俺の方に走ってきて頭の上に飛び乗ってきた。4人が皆新しい装備になっている。人のことは言えないが皆お金持ちなんだな。それよりも装備の差が実感できるってことは65装備が相当優秀な装備だってことだよな。



「タクのレベルが65になったのを見たんでね」


 トミーが言った。そう言う彼らは全員が68になっていた。相変わらずレベルが高いよ。


「主がまた強くなったのです」


 頭の上からリンネが言うとリンネもだろう?と聞かれてそうなのですと尻尾を振りながら答える。俺は4人にお茶と梨を出すと彼らと同じ様に縁側に腰を下ろす。リンネが頭の上から膝の上に移動してきた。タロウも縁側に上がって横になり、その背中にランとリーファが座った。


 スタンリーが俺の装備を見て早速買い替えたのかと言った。


「上忍の装備はAGI系とSTR系の2種類なんだけど、結局両方買ったよ」


 ちなみに今はAGI系の濃い紫の装束だ。


「タクはお金持ちだからね」


 クラリアがそう言った後で両方揃えられるのならその方がずっといいわよねと言った。クラリアは迷った末、65装備はDEXが上がる武器、防具で揃えたそうだ。


「ソロ活動よりもパーティで動くことが多いしね。それとやっぱり不意打ちのダメージアップが魅力的なのよ。ジョブ帽子で不意打ちのリキャストが短くなってるのもあってまずはDEXにしてみたの」


彼女はDEX系のセットを買ったがAGI系も揃えるつもりで短剣だけは買ったそうだ。


「6段階強化済みの装備も強いと思っていたが、65装備はそれ以上だった。同じレベルの敵を倒しても討伐する時間が全然違うんだよ」


 ウォリアーのスタンリーとトミーはSTR系の新しい装備だが、トミーはDEX系の装備も買う予定だと言う。彼は大剣使いだからな。命中を考えているそうだ。それぞれ自分のスタイルに合わせて装備を揃えているよ。マリアの魔法使いは魔力量が増える装備と魔法命中が増える装備があるそうで、彼女は魔力量が増えるローブに魔法命中があがる杖を買ったそうだ。


「お金が貯まったら両方揃えるつもりよ」


「やはり2種類あれば両方揃えるという流れになるのかな?」


「使い分けをする事になるだろう。神魂石で強化できそうだしな」


 トミーが言っているが確かにこの先、新しい装備を強化する強化屋はあるだろう。敵のレベルも上がっていく中でこちら側も選択肢を増やして準備しておいた方がいいよな。


 彼らのレベルが上がったことで港の街の外の盆地の探索は進んでいるが、今のところはセーフゾーンは見つかっていない。草原にも起伏や森があるので視界が必ずしも良いとは限らないらしい。


「草原の中になければ山裾かもしれない。なので情報クランは南の山裾、俺達が前のエリアからやってきた洞窟の出口付近から山裾に沿って西に進む予定で、攻略クランは引き続き草原の探索を続けるつもりだよ」


「普通に考えたらセーフゾーンがあって次の街があるはず。盆地の広さがわからないんだけど相当広いみたいなの」


 スタンリーとクラリアが説明をしてくれる。探索は簡単じゃなさそうだ。


「俺達は新しいエリアに来たばかりだ。攻略が簡単じゃないのは織り込み済みだよ」


 攻略クランも情報クランも簡単じゃない状況を楽しんでいる様に見えるな。ゲームだから楽しめばいいんだよ。


「島の北側はどうなってる?」


「今のところ森しかないね。今日65にレベルが上がったのでまた奥まで探索できる様になった。タロウとリンネに頑張ってもらって島の北の端まで行ってみるつもりだよ」


「タロウとリンネがばっちりと主をお守りするのです。問題ないのです」


「ガウガウ」


 俺が言うと膝の上に乗っていたリンネが言い、隣で横になっているタロウもその姿勢のままガウガウと吠えた。


「タロウとリンネがいるから安心ね」


 クラリアの言葉に我が意を得たりとばかりにリンネがミーアキャットポーズになった。


「主をお守りしながら敵をぶっ倒してやるのです」


「頼むぞ」


 そう言って撫でてやる。

 島の方は森以外に何もなさそうだけど、お互いに何か新しい情報が入ったら共有しようということになった。


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