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海釣りをしよう

 この日、午前中の自宅でのルーティーンを終えた俺達は船で島に渡って船から降りるとそ桟橋にいるNPCを見つけると近づいていって声をかけた。


「ここで釣りはできますか?」


 声をかけると人族のNPCのおっちゃんがこっちに顔を向けた。


「釣りなら向こうの端にある2つの桟橋なら大丈夫だよ。あそこは船が停まらないから」


「ありがとうございます。ところで自分の小舟で海に出て釣ることはできるんです?」


「できるがせいぜいここから50メートル程だよ、ブイが浮いているのでそこまでは大丈夫だ。そこから先は海流が流れているので小さな船は入れないんだよ」


「ありがとうございます」


 船に乗って少しは出られるみたいだ。


「主。お船に乗って釣りをするのです」


「ガウ」


 タロウもリンネも船が大好きだからな。


「まずは桟橋で釣ってみよう。それから船に乗るぞ」


「分かったのです。沢山お魚さんを釣るのです」


 NPCのおっちゃんに言われた場所に移動する。他に釣りをしている人はいないので貸切状態だよ。桟橋の先端に座ると釣り竿を海に向かって投げた。座っている俺の隣にタロウが座り、リンネはタロウの背中に乗っている。


 竿を投げ入れるとすぐに当たりが来た。引き上げると20センチほどの魚だ。


「釣れたのです!」


「ガウ」


 魚が釣れるとタロウもリンネも大喜びだよ。もちろん俺も嬉しい。入れ食いとまではいかないけど、それでも結構な頻度で当たりがくる。


 10匹ほど釣った所で桟橋に船を出した。それを見て尻尾をブンブンと振って大喜びする従魔達。


「乗っていいぞ」


「はいなのです」


 タロウとリンネが乗ってから最後に俺が乗って船を沖に出した。海釣りをするので今までの様な櫓は使えない。船尾に1本だけオールをつけてそれを左右に動かしながら少し桟橋から離れた所に船を停めた。前方にブイが見えている。あそこから先は行けないんだな。

 

 竿を投げるとすぐに当たりがきた。引き上げるとサイズも30センチほどと桟橋で釣っている魚よりも大きい。


「大きなお魚が釣れたのです」


「そうだな。桟橋よりもこっちの方が魚のサイズが大きいぞ」


「大きな魚をガンガン釣るのです」


「ガウガウ」


 釣れるたびに大喜びする2体の従魔達。桟橋よりも当たりも多く、サイズも大きめだ。結構な数を釣った所で桟橋に戻ってくるとさっきのNPCのおっちゃんが話かけてきた。


「釣れたかい?」


「大漁なのです」


 俺の代わりにリンネが答えてくれた。


「そりゃよかったな。さっきも言ったけどここの桟橋はいつ釣りをしてもいいからな」


「ありがとうございます」


 せっかく島に来ているので釣りが終わるとそのまま北門から街の外に出る。釣りの時は大人しくしていたタロウとリンネだけど、戦闘となると元気になるんだよな。


「ガンガン敵をぶったおすのです」


「ガウ」


 そう息巻いているけど、実際にこの2体の戦闘能力はすごいんだよ。今はレベル63なので森の奥に進んでいて、相手のレベルは66から67に上がったけど討伐に全く苦労しない。自分自身もバンダナでスキルがアップしているのもあって敵の攻撃を避けるし、こっちの刀もそれなりのダメージが出る。


 森の中で2時間程戦闘を繰り返してから俺達は転移の腕輪で港の街の別宅経由で釣りギルドに顔を出した。


「結構釣れたね。しかもどれも良いサイズだよ」


 端末から取り出した水槽を覗き込んでいるギルマスのセリさん。


「お船に乗って釣ったのです」


「なるほど。それでだね。桟橋より沖の方がサイズが大きくなるんだよ」


 釣った魚をギルドで買い取ってもらったんだけど想像以上に良い値段で売れた。


「サイズが大きいからね。街のレストランに高く売れるよ。これからも釣れたら持ってきてくれるかい?このサイズならいい値段で買い取れれるよ」


「お願いします」


 釣りギルドを出て港の街の別宅に着くと隣の庭からマリアがやってきた。早速タロウを撫で回している。今日の活動が終わった所らしい。少し遅れてスタンリーも隣の庭からやってきた。庭にあるテーブルに座ると早速膝の上にリンネが飛び乗ってきた。


 彼らは陸側を探索していてレベルは64になっている。こっちは63になったばかりだ。


「もうすぐ装備が更新できるじゃない」


「そうなんだよ。なので明日も頑張る予定だ。タクも島でレベル上げかい?」


「それもしてるけど、今日は釣りをしてきた」


「主は釣りの名人なのです」


 早速リンネがフォローしてくれる。


「釣りか」


「海でお魚を沢山釣ったのです。ウハウハなのです」


「釣った魚を釣りギルドで買い取ってくれるんだよ。自作の小舟で沖に出て釣りをしたら大きなサイズのが釣れてね。高く買い取ってくれたよ」


「タクは相変わらずゲームを楽しんでるよな」


「ソロだからね。攻略のトップを走る訳じゃない」


「その割には俺達と一緒に先頭を走っているイメージがあるが」


「私もそう思う」


 マリアが同意しているよ。


「主は何をやっても一番なのです」


「ガウ」


 ここで黙っているとリンネがまた何を言い出すか分からないので俺は話題を変えた。


「陸側の攻略は進んでるの?」


「情報クランと手分けをして探索しているんだけど、なかなかセーフゾーンが見つからない」


 陸側の北側と西側に分けて2つのクランで探索をしている。ただスタンリーによるとどちらのエリアも草原なのだが起伏があったり、小さな林になっている所があったりと必ずしも視界が広い訳ではないそうだ。そして出てくる魔獣は相変わらずトカゲとカニだと言っている。彼らは最初のセーフゾーンまでは魔獣はこの2種類じゃないかと予想している。


「島の北の森はどんな感じ?」


 マリアが聞いてきた。


「ずっと森が続いている。鬱蒼とした森じゃなくて陽が差し込んだりもしているんだけど風景は変わらないよ。変わるのは魔獣のレベルだけだね」


「お互い、しばらくはセーフゾーンを見つけるために、エリアを闇雲に探索するしかなさそうだな」


 普通に考えたら攻略は陸側で俺達が活動をしている島は混雑回避の狩場だろう。セーフゾーンがあるのかどうかはまだ奥まで探索していないので不明だけど1カ所くらいはありそうな気もする。


 港の街も毎日の様にボス戦をクリアしたプレイヤー達がやってきていて随分と賑やかになってきていた。街を歩いてもプレイヤーが多く、中には従魔を連れて歩いている人たちもいる。


 そんな中でもやっぱりタロウとリンネは目立つんだよ。タロウはまた身体が大きくなったし、リンネは街の中を歩く時は大抵俺の頭の上に乗っている。当人達は周囲を全く気にしていないのか、いつもマイペースなんだけど歩いていると周りから声をかけられる。


「タロウちゃんよ、大きいわね」


「リンネちゃん、可愛い」


「2体ともスカーフが似合ってるわよね」


 特に女性のプレイヤーから声をかけられるたびに尻尾をブンブンと振って応える2体。バザールでもそうだけど愛想がいいんだよな。ただリンネが尻尾をブンブンと降ると首の後ろがこそばゆいんだよ。もちろん言わないけどね。


「お前達は人気者だよな」


 通りを歩きながら言うとタロウはガウガウと歩きながら身体を寄せてくる。


「主が有名だからタロウも有名だと言っているのです。リンネも同じなのです。一番有名なのは主なのです」


 それはないだろうと思うけどこの2体の俺推しは今に始まったことじゃないから黙っているとリンネが頭の上から声をかけてくる。


「主はどちらに向かうのです?」


「うん、この前行ったレストランだよ。ご飯を食べてから家に帰ろうと思ってね」


「お仕事の後は沢山食べるのです」


「ありがとな」


 通りを歩いてレストラン『マール』を見つけるとウッドデッキに上がる。すぐに給仕さんがやってきた。彼女は前回もいたので俺達のことを覚えていてくれて一旦奥にひっこむとすぐにオーナーのマーフィーさんがやってきた。


「おお、タクと従魔達、久しぶりだな」


「こんにちはなのです」「ガウガウ」


「こんにちは。島に渡って教えてもらった『ブルーオーシャン』に言ってレスリーさんの料理を食べてきたので報告がてら夕食を食べにきました」


「島のあいつのレストランに行ったのかい。そりゃありがとう。奴は元気だったか?」


「ええ、お元気でしたよ。料理も美味しかったです」


「そうかい、そりゃよかった。あいつは俺の次に料理が上手いからな」


 そう言って大きな声で笑うマーフィーさん。相変わらず豪快だよ。


「それで攻略は順調かい?」


 ひとしきり笑った後でマーフィーさんが聞いてきた。


「慌てずにぼちぼちやってます」


「なるほど。マイペースが一番だよな」


「主はいつもマイペースなのです。それでもいつも一番なのです」


「ガウガウ」


 膝の上に乗っているリンネが言うとタロウも隣でブンブン尻尾を振って吠えている。


「一番か、そりゃすごいな。プレイヤーさんは攻略が仕事だ。引き続きがんばれよ」


 そう言って注文を聞いて厨房に戻っていった。もちろん、この日の海産物も料理もすごく美味しかったよ。


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