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森の中のセーフゾーン

 自宅に戻ってしばらくするとクラリアとトミーがやってきた。山の街には別宅がない。なので情報クランも攻略クランもログインとログアウトはこの開拓者の街のオフィスでしている。2人はこの街にある情報クランのオフィスで今まで打ち合わせをしていたそうだ。


「今日やっと3つ目のセーフゾーンが見つかったのよ」


 挨拶を済ませて縁側に座るとクラリアが言った。彼らによると3つ目のセーフゾーンは丘を降りた先にある森の中、東寄りの場所にあったらしい。


「森の中にあるんだがそこは草原になっていないんだよ」


 ん?どういう事?俺の表情を見たのだろう。トミーが続けて言った。


「俺たちは森の中にセーフゾーンがあるとすればそこは木が生えていない広場になっていると思ってたんだが、実際には森の中の一角が柵に囲まれているだけなんだ。近づかないと柵を見つけることができない」


「いやらしいな」


 俺がそういうと2人ともその通りだと言っている。ただゾーン自体は結構広いらしい。


「森の中に入ると従来の水牛はもちろんいるが、それ以外にゴリラの魔獣も徘徊している」


 セーフゾーン付近の水牛、ゴリラの強さは60と61だという。ちなみに情報クランと攻略クランの連中はレベル59に上がったそうだ。


「木々の間から水牛が突進してきたり、ゴリラが木の上から襲いかかってきたりするのよ。木のダンジョンの上層みたいなイメージね」


「なるほど。それは厳しいな」


 その後2人がその森について話をしてくれた。

 木の上にも注意をしながらの攻略になるのでレベル的には58はないと森の中を進むのは厳しく、しかも森は東西の山裾まであり、山裾を移動する方法は無い。つまり北に進むには高レベルが徘徊している森の中を進むしかないということになる。もちろん装備関係はフル強化済みという前提だよ。  


「タクはレベル56だっけ?」


 クラリアが聞いてきた。


「そう。もうすぐ上がると思うんだけどね」


「タクなら57でも森の中にあるセーフゾーンまで行けるだろう」


 装備系が充実しているから大丈夫だというトミー。クラリアも行けると言っている。個人的にはレベルが上がったら森の中には行くつもりをしていた俺。


「57になったら森の中に入ってみるつもりだよ」


 俺が言うとそうしろと二人が煽ってくる。


「主、ここは突撃するのです」


 そう言って俺の頭の上に乗っていたリンネが膝の上に移動してきた。


「ガウガウ」


「分かってるよ、次にレベルが上がったら突撃するぞ」


「するぞ!なのです。タロウとリンネに任せるのです、ガンガンやってやるのです」


「ガウ」


 相変わらずの2体だよ。


「今日3つ目のセーフゾーンが見つかった。その場所から北の山の方を探索すれば次のエリアに通じる何かが見つかるはずだと考えているの」


 クラリアのいう通りだよな。山の街から北に3つセーフゾーンがあった。となると山がつながった北側のどこかに何かがあるはずだ。次のエリアに続くルートか、まだ街があるのか。情報クラン、攻略クランはこのエリアの上限が60だろうとみているので山の裾まで行けば次のエリアに行くためのエリアボスがどこかにいるはずだと考えている。確かにそろそろ次のエリアになってもおかしくないよ。


 セーフゾーンの話が終わると山の街の奥にある印章NM戦の話になる。ジョブ帽子というアイテムが出ることがわかったので、情報クランと攻略クランとの間では前回と同様に俺と2体の従魔を入れた10名で80枚のNM戦に挑戦しようと話をしているそうだ。こっちは全く問題ないな。印章はまだ余っているし、上忍の帽子がどういうものか見てみたい。


 情報クランによると80枚の攻略方法はすでに販売しているが、今のところ自分たち以外で勝利したパーティはいないらしい。


「挑戦しているプレイヤーが少ないというのも理由の1つなの。80枚という枚数。10名という人数。強化をしっかりと済ませてレベルを上げてから挑戦しようと考えているプレイヤーが多いみたいね」


 印章80枚を消費するんだ。慎重になるのは分かるよ。誰だって80枚も使うのだから勝つ確率を上げたいだろうし。ただ俺たちは普通じゃない。特にタロウとリンネという規格外の従魔達がいる。俺達がイレギュラーなんだろうな。情報クランも攻略クランもタロウとリンネがいるから80枚に挑戦しようと言っているんだろう。それは理解できるよ。


 俺がそう言うとそれは一部正しいとトミーが言った。


「確かにタロウとリンネは超優秀な従魔であることは間違いない。でもそれに加えて上忍のタクがいるからだよ」


「蝉があるからね」


「蝉はもちろんだがPSも高い。一時的に盾をしてくれるから俺たちも安心できるしな」


「主は一番なのです。皆主を頼るのです」


 俺の膝の上に乗っているリンネが言った。隣でタロウもそうだそうだと言わんばかりに吠えている。俺がありがとうなと2体を撫でてやると尻尾をブンブンと振ってくれた。これが癒されるんだよ。


「トミーの言う通りよ。タクと従魔達が皆優秀だからこのレベルで80枚戦でも勝てているのは間違いないわね。ちなみにスタンリーやマリア、他のメンバーも皆同じ認識よ」


 当てにされているのなら頑張らないとな。


「ウォリアーの帽子との比較だとバンダナの方が上だよ。ただ入手手段はジョブ帽子の方が簡単じゃないかな。ダンジョンはクリアするとリセットされる、NM戦は印章があれば何度でも挑戦できる。バンダナを持っていないプレイヤーから見るとジョブ帽子は必須に近い装備であることは間違いないな」


「それに盗賊の帽子や神官の帽子の様にステータスじゃない効果が付与されている。そのジョブの人にとったらバンダナよりも嬉しいかもね」


 今のところ3つしか帽子が出ていないがその中でウォリアーの帽子は一部のステータスが上昇するが他の2つの帽子はステータスよりも特殊効果が付与されている。敵対心マイナスなんてステータスで調整できない。神官は間違いなく帽子を狙うだろうし、盗賊だってそうだろう。


 他のジョブの帽子の性能を知りたいと2人が言っているが俺も上忍の帽子ってのがあれば、その性能を知りたい。ステータスなら6段階強化済みのバンダナの方が優れているとは思うけど特殊効果があるのか、ないのか。これは気になるところだよ。


 80枚のNM戦に再挑戦するにしてもレベルを上げるのは必要だ。俺たちは翌日の午後、西の山裾の小屋から北に向かって水牛を倒して進んでいくと途中でレベル57に上がった。丘の上まで着くと眼下の森を見る。


「このままあの森の中に入るぞ」


「はいなのです。突撃なのです」


「ガウ」


 聞いていると森の中の東寄りに柵に囲まれているセーフゾーンがある。なので森には東側から入って真っ直ぐに北上する事にした。


「あの森の中には水牛の他にゴリラがいるそうだ。木の上にも注意するんだぞ」


「ガウ」


「タロウが任せろと言っているのです。リンネも任せろと言うのです」


 木のダンジョンの攻略で木の上から狙ってくる魔獣との戦闘は経験済みだ。それにタロウもリンネも気配感知の範囲が広い。不意打ちを喰らうことはまずないだろう。当然俺も空蝉の術を唱えて分身を4体出した。


 丘を降りて森の中に入るといきなり木の上からゴリラの魔獣が襲ってきた。ただタロウとリンネはそれより前に木の上にいるゴリラを感知していた。


「大きなお猿さんが木の上にいるのです」


 その一言でこちらはしっかりと準備ができる。森の中の地面には水牛もいるがこちらもタロウとリンネがしっかりと木々の間に隠れている魔獣を見つけてくれる。従魔が優秀なので分身はずっと4体出たままで減っていない。


 結構な頻度で接敵しているが、それらを倒しながら進んでいった俺たちは夕方に3つ目のセーフゾーン、森の中で柵に囲まれているエリアに着いた。


「元気になる場所に着いたのです」


「ガウガウ」


 セーフゾーンの周辺の敵はレベル60、61だが正直苦労する事はなかったよ。こっちは57だけどバンダナの効果、従魔達は50でスキルがアップしたこともあるんだろう。


「ここで少し休憩してからもう少し敵を倒すぞ」


「やったーなのです。ガンガン倒すのです」


「ガウ」


 戦闘好きの2体だからこちらから言わないとずっと戦闘をしていそうだ。このセーフゾーンでしっかりと休んだ俺たちはその後周辺で魔獣を倒して経験値を稼いでから自宅に戻ってログアウトした。レベルは上がらなかったけど印章数枚と神魂石を2つ手に入れることができたよ。


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