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ジョブ帽子

 リックが挑発スキルを使って1体をサークルの左側に引っ張り、俺がもう1体に火遁の術を唱えてサークルの右側に引っ張って戦闘が始まった。左右に分かれると目の前の1体に集中する。リザードの正面に立って両手に持った片手剣で顔や足に傷をつけていく。


「リンネ、顔を狙え」


「はいなのです、食らえ!なのです」

 

 敵対心が低いリンネが早速精霊魔法を撃ち始めた。他のメンバーはいつでも攻撃できる体勢で待機している。


「行くぞ」


 状況を見ていたスタンリーが言って全員での攻撃が始まった。完璧にタゲをキープする必要はないだろう。それよりも火力で押し切りたい。時間制限があるからそれが正解だろうな。


 俺は両手に武器、刀を持っているので手数が多い。今のところはしっかりとタゲを取っている。リザードは突進したり尾を振り回して攻撃してくるが、4回に3回は避けることができている。これならいけそうだ。


 俺の左側に立っていたタロウがリザードの腹に強烈な蹴りを入れている。スタンリーが剣を振ってダメージを与えているし、ダイゴも蹴りや突きを繰り出している。

 

 リンネはリザードの顔を集中的に狙っていた。命中する度に顔を左右に振るので隙ができる。スタンリーとダイゴ、タロウがそのタイミングでしっかりとダメージを与えている。


「10分経過」


 隣でもう1体を相手にしているクラリアの声が飛んだ。そのタイミングで蝉が剥がされたので張り直す。10分持ったのならリキャストは問題ない。


 NMは体力は多いが特殊攻撃をしてこない。火力重視が正解だよ。その後も蹴りや魔法、剣を振り翳して攻撃を続ける。途中からは身体を動かして尾で払う様な行動をしてくる。その間は離れ、また近づいて攻撃するということを繰り返す。


「20分経過」


 またクラリアの声が飛んだ。分身はまだ2体ある。目の前の大きなリザードの動きに慣れてくると避けられる回数が多くなった。ただNMの動きが遅くなったということはない。相変わらず突撃や尾の振り回しをしてくる。

 

 30分経過という声がした直後、NMが突然突っ込んできた。分身が1体剥がされるが、突っ込んでくるのが俺なら蝉で対応できる。タゲはなんとしてもキープしておきたい。両手で刀を振り回しながら蝉が切れるとすぐに張り直す。ただ急な突撃以外に特殊攻撃はしてこない。リンネの強烈な魔法が顔にあたった直後、皆で周囲から攻撃するとNMが倒れて光の粒になって消えた。


 俺たちは1体を倒した。すぐに左に移動する。


「40分経過」


 合流するとクラリアの声がした。


 情報クランのメンバーが対峙していたもう1体を10名で攻撃する。彼らもしっかりとダメージを与えて体力を削っていたおかげで合流してからしばらくするとリザードが倒れて光の粒になって消えた。


『印章80枚のNM戦に勝利しました。戦闘時間52分04秒です』



「よっしゃ」


「勝ったぞ」


「勝ったのです。主が勝ったのです」


「ガウガウ」


 メンバーはもちろん、タロウとリンネも大喜びしてるよ。サークルの中央に現れた宝箱に端末をかざすと俺たちは80枚のNM戦の入り口まで飛ばされた。そこには留守番をしていた攻略クランのメンバー3人が待っていた。


「勝ったぞ」


「おおっ、やったな」


 俺は入り口に飛ばされるとすぐに寄ってきたタロウとリンネをしっかりと撫で回してやる。


「タク、中身は何が入っていた?」


「そうだ」


 クラリアに言われて端末を見る。


「宝箱を手に入れてウハウハなのです」


 頭の上に飛び乗ってきたリンネが言ってるぞ。タロウもリンネも宝箱が大好きだからな。

 

 端末を見ると宝箱の中には石と帽子が入っていた。それとは別に50,000ベニーが報酬として入っている。


「えっとね、神魂石が7個。色は赤、緑、茶、白、青、紫の全種類があるな。茶色は2つある。それとこれだよ」


 端末から取り出したのはベレー帽だった。AIのミントに聞くと盗賊の帽子というらしい。


(盗賊が装備すると不意打ちのリキャストが短くなり、同時に不意打ちのダメージがアップします)


「すごい帽子ね」


 クラリアが言った。彼女や他のメンバーもAIに聞いたんだろう。


「ジョブ専用帽子があるのか。これはモチベーションが上がるぞ」


「神魂石も全種類が出てるのね」


 ドロップを見て皆テンションが高くなっている。


「1パーティが1体を相手にし、他のメンバーでもう1体を倒す戦法でいける。あと2戦やってしまおう」


「特殊攻撃もない。体力が多いだけのNMだ」


 スタンリーとトミーが言うと周りからもその通りだ、いけるぞ。と声が出る。


 その後情報クラン、攻略クランの順でNM戦をしたがいずれも勝利したよ。3回目になると慣れてきたのか戦闘時間も50分を切った。


 3戦3勝した俺たちはその場から転移の腕輪を使って開拓者の街に飛ぶと、俺の自宅に集まることになった。打ち上げは俺の自宅で、いつの頃からかそんな流れになっている。こっちは全く問題ない。


「主のお家は広いのです。リラックスできるのです」


「リンネちゃんの言う通りね」


 先に家に戻ってお茶の準備をしているとNM戦に参加した10名がやってきた。今日は洋室で打ち合わせをすることになった。


 戦利品はいずれの場合も神魂石が全種類出た。攻略クランの時は7個だったが情報クランの時は8個出た。そしてアイテムについては攻略クランの時は神官の帽子、これは回復魔法の威力アップと敵対心がやや減少するという効果があるそうだ。帽子の形はクロッシェと言われている形をしている。情報クランの時にはウォリアーの帽子が出た。こっちはバケットハットだ。帽子は攻撃力アップと素早さがアップする効果がついている。


 3戦で盗賊の帽子、神官の帽子、そしてウォリアーの帽子がドロップしていた。 


「これは挑戦する価値があるNM戦ね。神魂石はもちろんだけど、ジョブ帽子が初めてドロップしてる。今回出ていないジョブの帽子もあると考えるのが普通よね」


 クラリアが言うと皆が大きく頷く。


「印章は必要になるが80枚のNM戦をやると全種類の石が出る。300個を貯めるルートがここにもあると言うことにもなるな」


 単純に考えると石の手持ちがなくてもこのNM戦に50回勝利すれば揃うということだ。印章は4,000枚必要になるけど。


 印章はまだあるのでこのメンバーで引き続き80枚のNM戦をやろうという話になる。個人的には上忍の帽子ってのがあるのかどうか知りたい気持ちはあるんだよな。ただ能力的にはバンダナの方がずっと効果が上になるんだろうけど。


 そんなことを考えているとトミーが帽子をかぶろうとしても被れないと言った。


「バンダナをしていると帽子が被れないな」


「なるほど。でも性能的にはバンダナの方が優秀になるのか?」


「どうかな。ジョブ帽子だから隠れ機能があったりして」


 全ステータスアップのバンダナと攻撃力と素早さがアップする帽子。どっちが優秀なのかはトミーが2つを装備して比較することになる。


「ところでタクはその盗賊の帽子をどうするつもりだい?」


 スタンリーが聞いてきた。個人的には使えないからクラリアにあげようかと思っていると言うと彼女がそれはダメだという。


「アイテムショップで値段を確認して。その値段で買うわ」


 帽子は譲渡可のアイテムなので店売りが可能だ。今回のNM戦に参加したメンバーの中で盗賊ジョブはクラリアだけだ。彼女によると不意打ちのリキャストの短縮とダメージアップは盗賊、シーフなら是が非でも欲しい機能だという。


「シーフの時の不意打ちのリキャストは5分、盗賊になってそれが3分になった。その帽子でまた短くなるのなら是非欲しいわね。盗賊の間で取り合いになる帽子よ」


 攻略クランの時に出た神官の帽子はメンバーのルミが身につけることになった。


「これは嬉しいわね。回復魔法の威力アップと敵対心減少は神官に取ってありがたい装備よ」


 早速帽子をかぶっているルミ。周りからも似合っていると言われて満更でもなさそうだ。確かに似合っているよ。


「これは石よりもジョブ帽子狙いで連戦したいところだ。ただタクは強化済みのバンダナを持っている。特に欲しいものがないんじゃないか?」


「いやいや、石はこれからも使うかもしれないし、経験値は入る。上忍の帽子があるのなら欲しい。それで他の帽子が出たらメンバーに売れる。やらない理由がないよ」


 俺がそう言うと周りから商売人だなと笑われたよ。俺が参加した方が回数をこなせて皆に装備が行き渡るチャンスが増えるのなら問題ないね。普段から両クランにはお世話になってるし。


 また挑戦しようと一旦解散したあと、俺たちと情報クランのメンバー5名はそのまま開拓者の街に繰り出してアイテムショップに顔を出した。


 盗賊の帽子をいくらで買い取ってくれるのかと聞いたら640万ベニーになります。という答えが返ってきた。


「800万か。それくらいの価値は十分あるわね」


「確かにな。効果を考えたら見合いの値段になってるんじゃないかな」


 情報クランは金持ちが多いんだな。アイテムショップを出て彼らのオフィスによってその場で720万ベニーをもらって帽子をクラリアに渡した。これは以前にNM戦で出た装備を定価の1割引きの値段で身内に売った時と同じだ。


 俺はもう少し安くすると言ったんだけどクラリアが1割引きでも十分にメリットがあるのでそれ以上値段を下げる必要はないと言ったのでそのままだったよ。ちなみにウォリアーの帽子も販売価格にすると800万だった。帽子は一律同じ値段なのかもしれない。


「タク、ありがとうね」


「いやいや、こっちこそ」


「主がまた大金持ちになったのです」


「ガウガウ」


 タロウとリンネは大喜びしてたよ。


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