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印章60枚NM戦

 印章NM戦をやるにしても、まず山の街の西門を出て広くて長い洞窟を通って、その先にある洞窟の小屋まで行かなければならない。朝のルーティーンを終えるとタロウとリンネを前にして俺は言った。


「今日は平原の水牛じゃなくて、街を出て洞窟の中を進んで小屋を目指すぞ」


「ガウ」


「分かったのです。どんな相手でもタロウとリンネでぶっ倒してやるのです。主はどんと構えているだけで良いのです」


「いやいや、俺も頑張るよ」


 本当にこの2体だけでやっちまいそうな雰囲気だよ。


 自宅から山の中の街に飛ぶと、そのまま西門から外に出て洞窟に入る。中に入ってみると結構な数のプレイヤー達がそこで魔獣を倒していた。この街の狩場はこの洞窟か門の外の平原になる。どうしても混雑するよ。逆に魔獣がいないので俺達はそのまま奥に進んでいくことができた。


「ぶっ倒す敵がいないのです」


「ガウ」


 戦闘がないのでタロウもリンネも不満気だよ。広い洞窟を奥に進んでいくとプレイヤーの数が減ってきた。必然的にPOPする魔獣と戦闘になる。今まで溜まっていた鬱憤を晴らす様にリザードに攻撃するタロウとリンネ。リザードやコウモリ、岩巨人などと遭遇するが、嬉々として敵を倒していくんだよ。俺は蝉を張って最初に遁術を唱えて魔獣のタゲを取るだけみたいだ。2体が喜んでいるのならそれでいいんだけどね、経験値も入るし印章も入ってきた。ただ神魂石は入ってこなかった。


 レベルは上がらなかったけどそれなりに数を倒した俺たちは危ない場面もなく広場に出た。広場って言ってるけど実際に来てみるとかなり広いよ。ここでも数組のプレイヤー達がレベル上げをしている。とりあえずセーフゾーンの中にある洞窟の小屋で転送盤を登録する。小屋の中にもプレイヤー達がいて俺たちが入ってきたのを見ると声をかけてきた。


「タクはレベル上げかい?それとも印章NM戦?」


「ここの印章NM戦に初挑戦しようかなと思ってね」


「タクと従魔2体か。がんばれよ」


「どうなるか分からないけど挑戦してみるよ」


 俺がそう返すとタロウはガウガウと吠える。


「主は負けないのです。敵をぶっ倒してくれるのです」


 リンネがそう言うと、そりゃ凄いな、頑張れよと小屋の中にいた人から激励されたよ。恥ずかしいがリンネとタロウの俺に対する過大評価は今に始まったことじゃない。挨拶をして小屋を出た俺たち。


「今から洞窟の奥に行くのです?」


「その前にもう少しこの辺りで敵を倒そうか。もう少しでレベルが上がるんじゃないかと思っているんだよ」


「分かったのです。タロウとリンネに任せるのです」


 小屋がある場所は広場というには語弊があるくらいに広くてあちこちにプレイヤー達がいるが魔獣の取り合いにまではなっていない。俺たちは人が少ない所に移動してそこにいるリザードを相手に経験値稼ぎをする。この辺りの敵のレベル57とか58だ。俺たちよりも4つ5つ程レベルが高いがこっちは装備系は充実しているぞ。NMもリザードだと聞いているのでここでその動きを理解しながら2時間ほど戦闘を続けているとレベルが上がって54になった。戦闘はきつかったけどなんとかなったよ。54に上がると戦闘が少し楽になった。よし、印章戦は60枚に挑戦しよう。クランによると印章60枚のNM戦はプレイヤーのレベルが60近くは必要だというが何事もトライだ。負けたら負けた時だし。


 タロウとリンネもレベルが上がって大喜びしている。彼らが強くなるのはソロの俺にとってもでかい。俺たちは一旦セーフゾーンの柵の中に戻ってそこでしっかりと回復をする。


「元気になったら右の洞窟を進んで強い敵を倒すぞ」


「ガウ」


「倒すぞ。なのです。やってやるのです」


 

 しっかりと休んだ俺たちは小屋があるセーフゾーンを出ると広場に徘徊しているリザードを倒しながら奥に進んでいき、3つある洞窟の右の洞窟に入った。洞窟に入るとそこには魔獣はいない。100メートル程歩くと洞窟が行き止まりになっていてその前に転送盤が光っているのが目に入ってきた。


「主、あれに乗って移動するのです?」


「そうだな」


 転送盤に乗ると脳内にアナウンスがあった。


『印章を60枚使って特殊戦闘を行いますか?人数は最大5名、時間は30分となります。NM戦をする場合は端末を光に近づけてください。専用フィールドに移動してから3分後にNMがPOPします』


 端末を近づけると転送盤が光出して俺たちはNM戦とのフィールドに飛ばされた。


 飛んだ先はサークル状の闘技場になっていた。今まで経験している闘技場よりもずっと小さい。円の周囲は岩になっていて逃げ場はない。倒すか倒されるかしないと出られないのは今までのNM戦と同じだ。時間制限があるのでぐずぐずできない。フィールドに飛ぶと自分が何も言わなくてもすぐにリンネが強化魔法をかけてくれる。俺は空蝉の術を唱えて分身を4体出した。こちらの戦闘準備は完了だ。


「もう直ぐ中央にでかいリザードが出るぞ。皆でぶっ倒してやろう」


「ガウ!」


「ぶっ倒すのです。リンネの出番なのです」


 こちらの戦闘準備が終わると俺の左にタロウ、右にリンネが立って敵がPOPするのを待つ。サークルの中央部分が光ってNMのリザードがPOPしてきた。このエリアで倒してきたリザードよりも2周り以上大きい。


「最初から全力でやるぞ」


「ガウ」


「任せるのです」


 NMがPOPすると直ぐ手裏剣を投げてファーストタッチを取る。リザードが自分に向かってきたのを交わしながら足を刀で切る。分身は消えていない、これなら避けられるぞ。


 タロウが横から強烈な蹴りを入れ、リンネが身体を震わせて精霊魔法を撃ち始めた。リンネは敵対心が低いから大丈夫だろう。タロウはリザードの尻尾の攻撃を華麗に交わしながら蹴りを入れる。俺も両手に持った刀で足や首にダメージを与えていく。ヘイトは俺が持っているのでリザードはずっとこちらを向いたままだ。その方がやりやすい。強化した武器とバンダナでほとんどの攻撃を避け、こちらの攻撃は確実にダメージを与えている。格上でここまで避けて、敵にダメージを与えられると楽だ。黒の神魂石万歳だよ。


 タロウが大きくジャンプをしてそのままリザードの顔を横から蹴り上げた。首から上がのけぞったところに俺の刀が首に、リンネの魔法が顔に命中する。リザードが顔を俺の方に向けたと思ったらまたタロウがジャンプして同じ様に蹴りを入れた。


「タロウ、いいぞ」


「リンネも褒めるのです」


「おう、リンネもすごいぞ」


 リンネは戦闘中でも変わらないんだな。ただ2体の従魔の攻撃がかなりのダメージを与えているのは間違いない。タロウの3度目のジャンプからの蹴り、そしてリンネの魔法、俺の片手刀が首や顔に命中するとNMのリザードがその場で倒れて光の粒になって消えた。するとその場に宝箱が現れた。結局蝉、分身は最初から終わりまでずっと4体のままで減らなかった。


『印章60枚のNM戦に勝利しました。戦闘時間は23分55秒です』


「主、勝ったのです。大きな宝箱が出たのです」


「ガウ」


 NM戦に勝って2体とも大喜びだよ。宝箱を開けるとそのままNM戦に続く洞窟の入り口から中に入ったところに飛ばされた。この通路は魔獣がPOPしない。


「何が入っていたのです?」


「ガウ?」


「ちょっと待て」


 端末を見ると30,000ベニーと神魂石が4個入っていた


「3万ベニーと石が4入っていたぞ。赤と茶と青と白だ」


 そう言うと赤色の石が出たのです。お金も出て主がお金持ちになったのですと喜ぶリンネ。タロウも尻尾をブンブンと振っている。


「主、もう1回やるのです。楽勝なのです」


「ガウガウ」


 なるほど。これなら連戦もできるんだな。60枚は人気がないのかこの洞窟には他のパーティはいなくて俺たちだけだ。


「よし。リンネのいう通り、少し休んだらもう1回やろう。タロウも大丈夫か?」


「ガウ!」


 任せろとばかりにしっぽをブンブンと振り回してくる。


 その後もう1戦やって今度は22分31秒と前回よりも短い時間で討伐できた。ただ2回目はベニーは同じだったが石は3個しかドロップしなかった。赤と青と紫だ。もちろん2回目もタロウとリンネが大活躍だったよ。


 石は少なかったけど、2戦やって赤が2個でたのでこれで刀を6段階、防具を4段階目まで強化できるぞ。


 2度戦った俺たちはそこから山の街に飛んでジグさんに頼んで階強化した。あと赤の神魂石2個で装備の強化が終わる。それにしても印章60枚のNM戦に2戦とも勝利できたよ。楽勝とは言えないけど特に危ない場面もなかった気がする。


 強化が終わると自宅に戻ってリラックスする。タロウもリンネも強い敵と戦闘をしたこともあって機嫌がよろしい。縁側に座ると膝の間に乗ってくるリンネ。タロウも今は縁側に上がって俺の横でゴロンと横になっていて、その背中にランとリーファが座っている。


「主は無敵なのです。何度やっても負けないのです」


「ガウガウ」


「タロウとリンネが頑張ってくれたから2回とも勝てたんだぞ」


 タロウとリンネを撫でながら褒めてやる。実際その通りなんだよな。レベル50で覚えたタロウのスキルとリンネの魔法の威力アップが凄すぎるな。2体の攻撃力がかなりのアップになっているのが今日のNM戦で証明されたよ。スタンリーらがギリギリで勝って、クラリアらは時間切れだったというNM戦を2回やってどちらも25分以内で勝利しているし。


「これからもよろしく頼むぞ」


「ガウ」


「任せるのです。タロウとリンネで主をしっかりとお守りするのです」


 俺はタロウの背中に乗っている妖精達に顔を向けた。


「ランとリーファはいつも家の畑をしっかり守ってくれているよな。ありがとうね」


 そう言うと任せろと2体の妖精がサムズアップして応えてくれた。


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