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3つ目のバンダナ


 インすると自宅でいつものルーティーンをこなし、それが終わると西の山裾の小屋に飛んで経験値を稼いでいる俺。経験値以外に印章や神魂石もたまに手に入るけど残念ながら赤色が出ないんだよね。ただレベルは53に上がった。


 情報クランは山の街の奥の広場にある洞窟の小屋とその先のNM戦のフィールドの情報を公開している。印章NM戦では40枚のNM戦が人気だそうだ。


 また西の山裾の小屋の情報も公開している。この小屋の周辺の水牛のレベルが56ということ、水牛は体力が多いこともあり、安全を見て54以上になったら小屋を目指そうという流れになっているそうだ。なのでこの小屋でクラン以外のメンバーをまだ見ていない。俺たちみたいに51で挑戦するのはレアなんだろうな。何といっても従魔達が優秀過ぎるんでね。


 小屋があるセーフゾーンで休んでいると攻略クランのメンバーがやってきた。北で探索をし、腕輪で一旦山の街に戻って休んでからこの小屋に飛んできたそうだ。小屋の中に入ってくると皆が思い思いに腰を下ろす。


「情報クランは今日は木のダンジョンに挑戦している。今日あたりボス戦じゃないかな」


 なるほど。あのメンバーならボス戦は問題ないだろう。あのダンジョンはボスよりもそれまでのフロアの造りの方がいやらしいよ。13層、14層はきつい。そこを乗り越える力があるパーティならボス戦は問題ないだろう。


「それでスタンリーらは平原の先、北方面に探索に行って来たんだろう?」


 俺が言うとメンバー達が皆頷く。


「ここから北に進むと起伏が盛り上がって丘になっている。そこまで行ってきた。その丘の上から見ると丘を降りた草原の先には森があるんだよ。その森の先で左右の山が繋がっているのが見えた」


 北に行くと丘になっていてその先がこの場所よりも低くなっているらしい。なのでここからは起伏のある草原しか見えない。この小屋から先の景色を高低差を使って隠しているんだな。


「まだ2つ目のセーフゾーンは見つかっていないが、必ずあるはずだ。でないとここから丘を降りて森を越え、正面の山のある場所まで1日では行けないくらいの距離がありそうなんだよ」


「主とリンネがタロウに乗って走ればあっという間なのです」


「ガウガウ」


 リンネが言うと、タロウもそうしろと尻尾を振っているよ。


「いや、そうかも知れないけどレベルが高い敵が沢山いるから行ったとしてもすぐにやられてしまうぞ。もっと強くなってからだ」


「タクの言う通りだ。平原の先の丘の上で水牛のレベルが57と58だ。しかも常時最低でも2体固まっているんだよ。俺たちでもギリギリだったよ」


「分かったのです。もっと強くなってから突撃なのです」


 その通りだよとリンネを撫でてやる。それにしても先に行くと高レベルが固まっているのか、結構きつそうだな。


 彼らは今日は平原の西側の山裾を北に進んで丘の上まで行ってきたので、明日は東の山裾に沿って行けるところまで行くと言っている。


「経験値は入る、神魂石や印章もドロップする。なによりもライバルがいない。戦闘はきついが楽しいぞ」


 スタンリーのパーティのパラディンのジャックスが言うと他のメンバーもその通り、楽しいと言っている。同じ場所で敵を倒すのではなく戦闘をしながら攻略をするのが彼ら攻略クランだ。楽しいのが一番だよ。


 一旦街に戻るという彼らと別れた後、俺たちはもう少し小屋の周辺で水牛を倒して経験値を稼いでから自宅に戻った。


 ログアウトまで自宅で4体の従魔達と遊んでいるとメッセージが来た。クラリアからで今からパーティメンバーでこっちに来てもいいかと聞いてきていた。もちろんOKだよ。


 返事を打ってしばらくすると情報クランのクラリアのパーティメンバー5名が家にやって来た。見るとトミーの頭にバンダナが装備されている。ボス戦に勝利したみたいだな。


「いらっしゃいませなのです。主はリラックス中なのです」


「お邪魔しますね。タクはリラックス中だったの?」


 庭に入ってきた5名。クラリアが聞いてきた。


「さっき平原から戻ってきたんだよ。それよりも木のダンジョン。クリアしたんだな。おめでとう」


「ありがとう。タクの情報もあったしね。ボス戦よりも14層がいやらしかったわ」


「そうだろうね。このメンバーならボスのゴリラはそれほどいやらしくないだろうし」


 俺は全員に畑で採れたお茶と梨を出した。これが好評なんだよ。トミーなんかお茶を飲みに来るくらいだし。精霊の木と妖精達がお世話をした農作物は格別だよ。あまり俺の自宅に来ないリック、ユーリ、ワビスケの3人も相変わらずこの家のお茶と果物は美味しいよと言ってくれる。そう言われると作り手としては嬉しいものだよ。


「主の畑のお茶も果物も美味しいのです。遠慮なく食べに来るとよいのです」


「トミーは暇になるとお茶を飲みに来てる。リンネも言ってるが、こっちはいつでも歓迎するので時間があった顔を出してよ」


 トミーが俺はクランの活動がオフの時には結構お茶飲みに来てるんだよと言うと他のメンバーもじゃあ俺たちも寄せてもらうよと言った。もちろんこっちは問題ない。メンバーとはすっかり顔馴染みだし、タロウやリンネ、ランとリーファも愛想が良い。リンネはいつでも大丈夫なのですと言い、タロウとランとリーファは尻尾を振ったりサムズアップしている。


「それでトミー、バンダナの効果は確認したの?」


 トミーの頭に巻いているバンダナを見て聞いた。


「もちろんだ。木のダンジョンの攻略の後、平原に飛んで水牛を少し倒してみたんだ。自分で使ってこのバンダナの凄さを理解したよ。実際に使ってみると想像以上の優れものだよ」


 そう言ってバンダナを手で軽く叩く。


「スタンリーも言ってるけど、動きや一撃の威力が以前と全く違っているのよ。側から見ていても分かるくらいね」


 クラリアが言い、他のメンバーも身体の動きが全然違うし大剣の鋭さや強さが増していると言っている。俺はソロなのであくまで体感ベースだけど、近くにいる他のプレイヤーから見ると違いが一目瞭然らしい。


「全てのステータスがアップしているのが実感できる。強化してない状態でもすごいアイテムだが、タクのバンダナはそこからさらに6段階強化されている。とんでもない代物になっているぞ」


 確かにバンダナを強化してから戦闘がずっと楽になっていた。タロウやリンネも成長しているからそっちの効果もあるんだろうと思ってたけど、バンダナ自体で自分自身もかなり強くなっているんだなと改めて実感したよ。


「木のダンジョンをクリアしたから平原の北の探索に戻るの?」


「そう。経験値を稼ぎ、石や印章を狙いながらの探索だよ」


「タクは山の街の奥の印章NM戦に挑戦したの?」


 神官をやっているユーリが聞いてきた。


「まだだよ。今レベルが53なのでもう少しレベルが上がったら、一度挑戦してみようかなって思ってる」


「タクのバンダナは6段階の強化済みでしょ?レベル以上の実力があるのは間違いないんだから40枚じゃなくて60枚に挑戦したら?従魔達も強いし」


「そうは言ってもさ、こっちは俺とタロウとリンネだよ?5人じゃないんだよ?」


 そう言うと周りが問題ないないとけしかけてくるよ。


「ユーリの言うとおりだ。40枚は余裕だろう。ひょっとしたら60枚も余裕かもな」


「いや、トミー、流石に60枚が余裕だということは無いだろう」


 俺はそう言ったけど彼はニヤリとしてまぁ一度挑戦してみたらと言う。印章は余っているし負けても何も問題はない。彼が言う通り挑戦してみるのもありだよな。


「主は一番強いのです。相手が何でも問題ないのです」


 膝の上に乗っているリンネまでけしかけてくる。


「そうだな。一度皆で挑戦しようか」


 俺がそう言うとタロウもリンネも尻尾をブンブンと振り回した。彼らは今日はダンジョンを攻略していたので攻略クランの連中とは話をしていないというので、俺がさっきスタンリーらから聞いた話を彼らにする。


「なるほど。森があってその先で左右の山がつながっているのね。となるとそこに行くまでにあともう1つはセーフゾーンがありそうね」


 話を聞き終えるとクラリアが言った。同じ読みになるんだな。だからのトップクランか。


「攻略クランの連中もそう言っている。明日は東の山裾に沿って北に進むそうだよ」


「私たちはまずはその丘の上に行ってみましょうか」


 情報クランは方針が決まった様だ。タクはどうすの?と聞かれたのでとりあえず一度印章NM戦に挑戦してみるよと言う。


「タクと従魔達なら勝てるわよ」


「ドロップは総取りになるよな」


 なんて声がかかるけど神魂石にしても勝たないと貰えない。彼らが53の時に勝利した40枚の印章NM戦はなんとかなりそうだ。ただ印章60枚の方は最低でもレベル55の5名は必要だろうと言われているが、こっちは強化済みのバンダナがある。さて、どっちに挑戦しようかな。


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