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西の山裾の小屋

 翌日、俺たちは山の街から西の山裾の小屋に飛んだ。この小屋の周辺は水牛のレベルが56に上がった辺りだ。ちょっと強めだけど俺たちの経験値稼ぎにはちょうどいい。セーフゾーンが近くにあるから安心できるしね。


 午後から夕方まで小屋の周辺で敵を倒していると俺とタロウとリンネのレベルが52に上がった。緑色と白色の神魂石、印章が1つドロップしたよ。緑が出たのでこれで片手剣の1本を6段階目まで強化した。あとは赤色を5個集めないといけない。52になったら小屋周辺の水牛の討伐が少し楽になった。ただまだ北に進むのは不安なので明日もこの小屋周辺で水牛を倒そう。あと2つ程レベルを上げないと不安だ。


 キリのいいところで平原から自宅に戻ってきた俺たち。早速ランとリーファがやってきたので従魔達としばらく遊んでから工房でいくつか従魔達の焼き物を焼き上げたタイミングでトミーが1人で自宅にやってきた。今日はオフの日だと言っていたからな。


 工房から出るとちょうど向こう側から片手を上げて庭に入ってくたトミー。俺もそうだがトミーもいつも戦闘服だ。女性プレイヤーの様に私服を着ている姿を見たことがない。これはスタンリーもそうだな。男性プレイヤーは戦闘服で十分だろう。一方女性プレイヤーはせっかく私服があるのならそれを着てみたいということなのかな。


「フレンドリストを見たらタクが自宅にいたんでね」


「いらっしゃいませなのです。お一人様大歓迎なのです」


 どこでそんな言葉を覚えたんだよ。リンネの言葉にトミーも笑いながらお一人様で邪魔するよ。なんて言っている。


「平原で経験値稼ぎをしてきたのかい?」


 縁側に腰掛けると彼が聞いてきた。もちろん自分の畑で取れたお茶と果物を彼に出してるよ。


「そう。西の平原の小屋をベースにね。おかげでレベルは52になって、緑の神魂石も1個ゲットできたよ」


 お互いの強化状況を言い合うと、トミーは大剣はすでに6段階強化済みで防具は5段階だそうだ。こっちは片手剣の緑は6段階、赤の刀は4段階で防具の赤はまだ3段階だよ。


「武器、防具はまだとしてもだ、タクの場合はバンダナが6段階強化済みだろう?。それがでかいよな。しかも腕輪も確か素早さと力の腕輪がHQだ」


「確かに。バンダナは優秀だし、腕輪もHQ。それに加えて従魔達も優秀だから小屋周辺の56の水牛も倒せているのは間違いないね」


 そうでないと自分より5レベル上の敵を倒すのは簡単じゃないって俺も分かっている。


「後1つか2つレベルが上がったらソロで60枚の印章NM戦に挑戦できるんじゃないか?」


「そうかも」


 ちなみに情報クランと攻略クランのメンバーは皆レベル54になっている。

 

 情報クランが公開した山の街の奥にある印章NM戦の情報は予想通りプレイヤーの間で飛ぶ様に売れている。ただ公開されている情報の中でたとえ40枚の印章NM戦であっても装備を強化していないと勝つのは簡単ではないという文言もあり、プレイヤーはレベルを上げつつ強化石を集めることに注力しているそうだ。


「いくら神魂石が出ると言ってもNM戦に勝たない限りは手に入らないからな。そこは慎重になるだろう」


 そう言ってからところでタクは印章を何枚持っているんだい?と聞いてきた。俺は昨日の時点で印章の数を数えていたので600枚以上あると答えると多いなと言われたよ。ほとんど使ってないからね。


「タクはNM戦をあまりやっていないしな。俺たちは今でパーテイ5名で650枚程だ。山の街のNM戦で100枚以上使ったからな」


 彼らはレベルも高い。それだけ数多くの魔獣を倒しているのだから俺よりも多く持っているのは当然だ。ただ印章NM戦よりも今は平原の北の探索の方に興味がある。探索を続ければレベルが上がって結果的に40枚や60枚のNM戦での勝率があがるだろう。武器や防具を強化するために急いでNM戦をしなくても良いと思っている。6段階強化済みのバンダナは神装備になっているよ。


 トミーによると木のダンジョンの攻略を再開しているそうで13層をクリアしたところらしい。あと2つだ。レベル制限はあるが彼らならクリアしてくるだろう。


「それでダンジョンクリアの報酬のバンダナは誰が装備するか決めているのかい?」


「ああ。一応俺が装備する事になっている」


 パーティで話をした時に、リーダーのクラリアが、最初のバンダナはトミーかリックが良いんじゃないかとう話になって、リックから俺じゃなくて、トミーが装備すべきだとい言ったそうだ。リックに言わせるとパラディンよりもウォリアーが装備した方がパーティの戦力の底上げになると言ってくれたらしい。そういえば攻略クランもバンダナを装備しているのはウォリアーのスタンリーだな。


「バンダナは譲渡可だ。最初は俺が装備するとしてもだ、いろんなメンバーが交代で装備して違いを比べたらいいと思っている。大事なことはパーティとして誰が装備するのが一番良いかということだからな」


 情報クラン、攻略クランの連中は皆常識人だ。ゲームだから何でもありという考え方じゃなくてリアルと同じで人としてのルールを守り、その上でゲームを楽しもうとしている。だから戦利品の分配でも揉めないんだろう。


「そうは言ってもまだバンダナを手に入れた訳じゃない。15層のボスを倒してクリアしないとな」


 トミーはそう言ってから笑った。


「タクはソロだから手に入れた戦利品の分配を気にすることもないよな」


「前のゲームではレアアイテムの取り合いでギスギスした経験が何度もあるからね、それが嫌だったからこのPWLではソロでやっている。ゲームを楽しめているよ」


「主は嫌なことがあるのです?」


 俺の膝の上に座ってトミーのやり取りを聞いていたリンネが聞いてきた。


「このゲームではないよ。周りはいい人ばかりだし、タロウとリンネ、ランとリーファ。皆と仲良く楽しくやっているからね」


 俺がそういうと8本の尻尾をブンブン振って喜んでいる。タロウや妖精達も同じ様に喜んでくれているよ。実際その通りだ。PWLをして不愉快な思いはしたことがない。むしろ毎日が楽しい。


「明日は俺たちもスタンリーらも平原を北に進むつもりだ。次の小屋の場所が分かっているのでそこを目指して行けるしな。うまくいけば明日中に西の山裾の小屋にたどり着けるんじゃないかな。小屋を見つけたらその周辺でレベルを上げながら木のダンジョンに挑戦する予定だよ」


 彼らなら西の山裾の小屋への移動は問題ないだろう。木のダンジョンも近い内にクリアしてくるだろう。攻略クランと情報クランの実力を知っている俺が言うから間違いないぞ。


 情報クランはまだ平原の奥の情報は公開していない。自分たちがそこに到達した後で公開する予定だが、公開の準備はすでに出来ているそうだ。


「この情報が売れたらまたタクがお金持ちになるな」


「主がまたウハウハになるのです」


「そうなったらいいな」


 彼の言葉に反応するリンネ。確かにここ最近金に困ったことがない。使うよりも入ってくるベニーの方がずっと多い。これがリアルだったら嬉しいんだけど。


「タクが見つけてくれた山裾の小屋、それから考えると次のエリアは平原の先のどこかから通じていると言う事だろうな」


「俺もそう思うよ。山の街はこのエリアをクリアするために準備を整える街、そう言う位置付けになっているんじゃないかな」


「主、エリアボスを探してそいつをぶっ倒すのです」


 俺とトミーのやりとりを聞いていたリンネが顔を俺に向けて言った。タロウもガウガウと吠えている。


「気持ちはわかるがまだ俺たちはレベルが低いし、強化も終わっていないだろう?もう少し平原のエリアで頑張ってからだぞ」


「タクが言う通りだ。俺たちもリンネもタロウももっと強くならないとエリアボスを倒せないぞ」


 トミーがそばにいる2体の従魔達に言った。


「分かったのです。主、明日も水牛さんを沢山倒して強くなるのです」


「そうしよう」


 俺はすぐには印章NM戦に挑戦せずに、まずはもう少しレベルを上げる方に軸足をおく予定だ。強くなることでNM戦の勝率も上がるし、平原の水牛を倒せば神魂石がドロップする。そっちの方が早く石が揃う気がしているんだよな。


 翌日、俺たちが西の山裾の小屋を中心にしてその周囲で水牛を倒していると、攻略クラン、そして情報クランのメンバーが相次いで小屋にやってきた。彼らは途中でレベルが上がって55になっていた。


「小屋があると分かっているからモチベーションが保たれる。それにしても山の街の東門を出てから6時間ちょっと。結構厳しい場所に作ってあるな」


 セーフゾーンで休んでいる時にスタンリーが言うと、他のメンバーからここへの移動はレベル55以上を想定しているんじゃないかと言う声が出た。山の街で55まで上げるともう少し移動時間が短縮できるということか。なるほど、いろんな意見を聞くのは参考になるよ。


「ここからだとまだ北の端が見えないのね」


 北に顔を向けていたクラリアが振り返って言う。小屋から北は平原が続いているが先になるとこれまで以上に起伏が大きくなっていた。左右の山は少し幅を狭めながら北に伸びていた。俺が山の幅が少し狭くなってきているという話をすると、皆もそれに気がついていていずれ左右の山がどこかで一緒になるんだろうと言っている。


 彼らもこの小屋で転送盤を記録し、その後は3つのパーティがそれぞれバラバラに動いて周辺で活動する。神魂石の赤がドロップしたので、活動終了後に山の街で片手刀を強化した。これでSTRの刀を5段階目まで強化することができた。タロウとリンネの強化は終わっている。自分はあと赤い石が後4つ必要だ。



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