表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/294

印章NM戦で神魂石が出た


 翌日の午後、俺たちは山の街のギルドから西門を出た。その近くには数組のパーティが平原で水牛相手に経験値稼ぎをしている。


 彼らを見ているとタロウがその場で両足下ろし、リンネが前に乗った。


「主も乗るのです。レッツゴーなのです」


「よし」


 俺が乗るとタロウが起き上がって山裾に沿って北に向かって走り出した。しばらく走ると昨日レベル54の水牛を倒していたエリアに着く。ここからは戦闘しながら北上だ。


 水牛のレベルが54のエリアは今の俺たちなら問題ない。こちらの山裾から反対側の連なっている山々が見えている。


 54のエリアを北に進んでいくとレベル55の水牛の魔獣が現れ始めた。まだ時間はあるし、55でもまだ苦労しない。時計を見ると3時間以上この平原で活動をしている。昨日の活動時間と足すと6時間以上だ。今までの例から考えると、このエリアにセーフゾーンがあるとすればそろそろそれが見えてくる頃だ。


 俺たちは相変わらず山裾の近くを北に進みながら魔獣を倒していた。水牛のレベルは55がメインになっている。討伐自体はまだ大丈夫だがこの先になると安全とは言えなくなりそうな気がする。ただタロウとリンネは敵のレベルはお構いなしだ。リンネは体を震わせて強力な魔法を打ち続けているし、タロウは蹴ったり、ジャンプしたりとこちらも元気そのものだよ。


 こうして見ると本当に従魔達が優秀で助かっていると実感できるね。こっちは空蝉の術を唱えて両手で刀を振り回しているだけだけどそれで4つも格上の敵を倒せるのだから良しとしよう。今までも彼らに頼りっぱなしだったし。もちろんバンダナが強化されているってのも大きい。


 55の水牛を倒しながら進んでいると前方の山裾に柵が見えてきた。柵の中には小さな小屋まである。セーフゾーンだ。


「あの柵まで頑張るぞ」


「ガウ」


「頑張るぞ、なのです。主も気を抜かないのです」


「おう、分かった」


 そこから2体の水牛を倒して俺達は無事に柵の中に入った。倒した2体の内1体はレベル56だった。俺たちより5つもレベルが上だよ。何とか倒して柵の中に入った時はほっとしたよ。


「元気になる場所に着いたのです」


 リンネとタロウが尻尾をブンブンと振っている。中にいるだけで体力や魔力が回復しているのが分かるからだろう。


 そしてここにセーフゾーンがあると言う事はここから奥を探索する必要があると言うことになる。


 広い柵の中にある小屋を開けると床に転送盤があった。転送盤に乗ると山の街の冒険者ギルドに飛びますか?というウィンドウが出る。それと同時にこの小屋は『西の山裾の小屋』と呼ばれる場所だということが分かった。


 小屋を出て柵の中から北を見るが起伏のある平原が奥に広がっているが心なしか幅が狭くなっている気がする。気のせいかもしれないけど。俺が小屋から出るとタロウとリンネも一緒に外に出てきた。タロウは俺の横に立って体を擦り付けてくるので撫でてやる。リンネは俺の頭の上に乗ってきた。


「平原が少し狭くなっていると思わないか?」


 俺はその場で片手でタロウを撫でながら周りを見渡して聞いた。北に目を向けると起伏が大きくなっている。


「ガウガウ」


「タロウは主の言う通りだと言っているのです。リンネも同じなのです。石の門があったところよりも狭くなっているのです。主、ここから先に進むともっと狭くなるのです?」


 タロウとリンネも俺と同じ意見だ。


「どうかな。明日はそれを確かめるために奥に行ってみよう」


「ガウガウ」


「みよう、なのです。敵を蹴散らしながら進むのです」


 リンネの言う通りだよ。明日以降はこの小屋から奥を探検しよう。


 俺たちは小屋に戻ると、そこにある転送盤を使って山の街のギルド経由で強化屋さんに顔を出す。今日の戦闘で赤と紫の神魂石が出たんだよ。紫はもうリンネが強化を終えているので収納行きだが赤は俺が使える。


 強化屋に入ってジグさんに頼んで刀を強化してもらった。これで刀の赤色の強化が4段階目になった。レベルは上がらなかったけど1段階強化できたので満足だよ。


 タロウとリンネは6段階目まで終了、俺は片手剣の緑が5段階、赤が4段階、防具は赤が3段階までしか強化できていない。


 強化を終えて自宅に戻るといつもの4人にグループメッセージを送った。彼らはまだ探索中だろう。メッセージだと同時に4人に送信できるから便利だよね。


ー 山の街の西門から山裾に沿って北に7時間進んだところにセーフゾーンがある。セーフゾーンの名称は『西の山裾の小屋』そこには小さな小屋があり、その中に山の街のギルドに飛べる転送盤がある。


 メッセージを送ってからしばらくするとクラリアから返事が来た。今活動が終わったので山裾の街の俺の自宅に来るという。


 端末を閉じると従魔達にいつもの4人がこれから来るぞと言う。


「主のお家は広いから皆が来たがるのです」


 リンネが言うとタロウがその通りだと吠え、ランとリーファもサムズアップしている。広いのは間違いないからな。


 昨日も来た4人が庭にやってきた。


「遅くなって済まなかった。明日はオフの日でね、それで今まで印章NM戦を連戦していたんだよ」


「印章NM戦?」


 久しぶりに印章NM戦という言葉を聞いたよ。運営はここに次のNM戦のフィールドを用意したのか。


「洞窟の小屋がある広場を囲んでいる山裾の中に3本道が伸びているって言ってたでしょ?あの先にはそれぞれ印章NM戦のフィールドに飛ぶ転送盤があるのよ」


 奥に伸びている洞窟の中の敵のレベルが57、58になっているので情報クランと攻略クランは2パーティでアライアンスを組んで3本の洞窟を探索してそれぞれが印章NM戦へと続くルートになっていることを発見したらしい。


「左が印章40枚、中央が印章80枚、右が印章60枚を使ってやるNM戦。勝利すると神魂石が出るみたい。神魂石以外のアイテムが出るかどうかはまだ分からないの」


 クラリアの話では印章40枚に勝利すると神魂石が2個。印章60枚のNM戦は勝利すると神魂石が3個でたそうだ。この2つのNM戦は最大5名。印章80枚のNM戦は最大10名だが彼らは勝てなかった。なのでドロップがわからないが流れ的に80枚の印章NM戦からも神魂石はドロップするんじゃないかと予想している。聞いている限り俺もそう思うよ。


「通路を探索していると全ての通路がNM戦の入り口になっていると分かったんで2つのクランで今まで印章NM戦をやってたんだよ」


 山の街の奥は印章NM戦のフィールドに続いていたのか。


「印章40枚のNM戦は今の俺たちのレベル53で倒せる敵だ。装備がしっかりしていればいける。この小屋の周辺の敵よりも少しだけ強い感じだ。60枚はギリギリの勝利だった。80枚は敵の体力を削りきれずに時間切れで追い出されたよ」


「俺たち情報クランは40枚のNM戦には勝利したが、60枚の印章NM戦は時間切れになった」


 トミーが言った。40枚と60枚は30分制限、80枚は60分制限だそうだ。80枚のNM戦は時間切れで強制退出。印章NM戦の場合は負けてもデスペナルティがない。手持ちの印章が減るだけだ。勝つとアイテムの他に経験値とベニーも入ってくる。


 ここにいる4人の感覚だと60枚の印章NMは最低でも56レベルは必要だろう。レベル差よりも短時間で倒す必要があるので火力を上げないといけないらしい。80枚は確定ではないがレベル60近く必要じゃないかという話だ。もちろん装備と武器を6段階強化済みという前提でのレベルだ。制限時間が短いので火力を上げないと難しいと彼らが言っている。


 出てくるNMはどれもリザードだが印章が40枚のよりも60枚のリザードの方が大きくて強くなっていて、80枚はさらに大きくなったリザードが2体現れたらしい。


 山の街の西門から洞窟の中、そして小屋がある広場周辺で経験値を稼いでレベルをあげてから挑戦する様にしているんだな。ドロップが神魂石というのもいかにもだよ。ゲットしたらすぐに山の街で強化できるということか。魔獣や採掘以外に印章NM戦という供給先を用意してきたんだな。


「黒の神魂石を作るために全種類集めるのにもNM戦は有効になるかもね」


 クラリアが言ったがなるほどそうだよ。ただ彼らによると、とりあえずお試しでそれぞれのNM戦に挑戦したが神魂石のドロップについては40枚で2個、60枚で3個と決めつけるのは早いと言っている。


「10戦ほどして全てが2個、3個の石のドロップなら確定でいいけど、40枚は2戦、60枚は1戦しかしていないから決めつけできないのよ、ひょっとしたら40枚で1個か2個、あるいは2個か3個という可能性もあるでしょ?だから今は確定させない」


 公開する時も石のドロップ数についてはしっかりと注釈をつけるそうだ。


「洞窟の小屋の奥にある洞窟というか通路が全てNM戦だったんで、じゃあ次のエリアはどこにあるんだという話をしているところにタクからのメッセージが入ってきたんだよ」


 スタンリーが俺に顔を向けて言った。


「なるほど」


 聞かれるままに俺は今日の平原の北に進んだ時の話をする。西の山裾の小屋の周辺の水牛のレベルが55と56だというと4人から驚かれたよ。


「バンダナを含めたタク装備が優れているのと優秀な従魔達。だから辿り着けたんだろうな。普通なら51のレベルで56の水牛を倒すのは簡単じゃないぞ」


「タロウとリンネが優秀だからね」


「バンダナ以外にタクの空蝉の術もね」


「主は一番強いのです。タロウとリンネもしっかりと主をお守りしているから問題ないのです」


 待ってましたとばかりに膝の上のリンネが言った。4人からはそうだね、リンネちゃんとタロウちゃんの主が一番だよね。そう言われてその通りなのです、なんて言ってる。タロウもその通りだと尻尾をブンブンと振っている。


「つまり次のエリアへ行くには平原を北に進んでいかないと見えてこないということだ。俺たちも明後日はまずは西の山裾の小屋を目指すことにするよ」


「西の山裾の小屋という名前なら、反対側に東の山裾の小屋もあるかも?」


 マリアが言った。確かに西と名付けているのなら東もありそうな気もする。


 印章NM戦に挑戦するにしてもレベルアップは必要だ。ならば洞窟ではなくて平原で水牛を倒しながら北に進むのが効率的だろうと言うスタンリー。情報クランもNM戦の情報は公開するが、自分たちも平原の北に目指すことにしたと言っている。


「NM戦で神魂石が出るのはプレイヤーのモチベーションが上がるでしょう。印章が必要だけどしばらく印章を使うNM戦がなかったから大抵のプレイヤーはそれなりに持っているはず。40枚の印章NM戦の連戦が主流になりそうよ」


 確かに勝てる確率が高いNM戦を連戦するのが堅実な方法だよな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ