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洞窟の小屋

 山の街の奥の大きな洞窟の中で新しい魔獣を倒していた時に、あの平原の先は一体どうなっているんだろうか? そう思った俺はそれを確かめるためにこの日は午前中に自宅で農業と合成をすると午後から山の街に飛んで、そこから東門の外に出た。


「主、今日はこの平原で黒い水牛さんを相手にするのです?」


 門を出たところで頭の上に乗っているリンネが言った。タロウも隣で顔をあげて見つめてきている。


「そうだ。この平原の先がどうなっているのか確かめようと思ってね。だからここから北に向かって敵を倒しながら草原を探検するぞ」


「探検するぞ、なのです。タロウとリンネが水牛さんを蹴散らしてやるのです」


「ガウガウ」


 うん、2体ともやる気満々でよろしい。門の周辺の水牛はレベルが51程度だが正直これは今の俺たちの敵じゃない。山裾に沿って水牛を倒しながら北に進んでいくと、レベル53や54の水牛が現れ出した。先を見ると起伏がある平原が続いている。


 俺も従魔達も装備が充実しているので54の水牛は全く問題なく倒せる。俺たちは水牛を倒しながら平原の奥に進んでいった。プレイヤー達は山の街に着くと、そこを起点にして洞窟や、東門前の平原で経験値を稼いだり神魂石を狙ったりしているみたいで、北側のこの草原の奥には誰も来ていない様だ。周りに誰もいない。


 タロウに乗って一気に草原の奥に行くことも一瞬考えたんだけど、やっぱりゲームだし最初は自分たちで開拓しようと決めて攻略をしている。


 攻略が終わると転移の腕輪で戻る。そして次からはタロウに乗って前回攻略したエリアまで進んでそこからはまた歩きながら平原を北に進んでいく予定だ。それにしてもこういう探索の時には転移の腕輪が本当に便利だよ。


 戦闘をしながら北に進んでいくが、尻尾が8本になって6段階までスカーフを強化しているリンネの魔法は相手のレベルが53だろうが54に上がろうがレジストされずにフルヒットするし、タロウはスキルアップと6段階強化されたスカーフでこれまた一段と強くなっていた。山裾の岩の上からジャンプしてレベル53の水牛を一撃で倒した時はびっくりしたよ。


「タロウ、すごいな。ジャンプも凄いし攻撃力もすごいぞ」


 俺が言うとガウガウと吠えながら身体をすり寄せてくる。撫でてくれという仕草なのでしっかりと撫でてやると尻尾をブンブンと振ってくれる。


「リンネも頑張っているのです。主、撫でるのです」


「もちろん。リンネも頑張ってるのを知ってるぞ」


 2体の従魔達をしっかり撫でてやる。依怙贔屓はしないよ。午後からログアウトまで平原で魔獣を倒している間に俺たちはレベルが1つ上がって51になっていた。これでまた攻略が楽になる。そろそろ自宅に戻ってログアウトまで妖精たちも入れてのんびりするかな。神魂石は青と茶色の2つドロップしたけど残念ながら俺が欲しい色じゃなかった。


 周囲に水牛がいない山裾で休んでいると端末が鳴った。


「主、お電話なのです」


「おう。ありがと」


 相手はクラリアだった。


「まだ外で活動しているの?」


「いや、そろそろ自宅に戻ろうかと考えていたところだよ」


「こっちも今終わったの。攻略クランも終わったのよ。自宅にお邪魔してもいい?」


「了解」


 通話を切るとタロウとリンネが俺を見ている。


「いつもの4人が来るからこれから自宅に戻ろう。明日またここからやるぞ」


「ガウ」


「今日はお疲れ様でしたなのです。明日もやってやるのです」



 転移の腕輪で自宅に戻ると小舟の上で休んでいたランとリーファがやってきた。タロウとリンネ達と一緒に庭で遊びまわるのを縁側に座って見ている俺。妖精達はお留守番が多いからな。タロウとリンネもそれを知っているんだろう、家にいる時は一緒に遊ぶことが多い。


 しばらくするといつもの4人が庭にやってきた。マリアは早速タロウを撫で回している。リンネは俺の頭の上からいらっしゃいませなのですと挨拶をしていた。


「どうだい?新しい装備は?」


 お茶を配り終えると早速スタンリーが聞いてくる。


「優秀さを実感しているよ。タロウとリンネ達の従魔のスカーフも山の街で3段階、合計6段階まで強化したこともあるんだろうけど全然違うよ」


 攻略クランも情報クランもメンバーは全員が武器、防具を5段階目までは強化し、一部は6段階まで強化したのもあるらしい。


「東門を出た洞窟をずっと進んで行ったら大きな広場というか小さなカルデラと言うか、それがあってな。そこに柵に囲まれたセーフゾーンがあって小屋があるんだけどその小屋に転送盤があったんだよ」


「なるほど。セーフゾーンで転送できる場所か。森小屋や平原の小屋みたいなものなの?」


「おそらくあそこはただの小屋だろう。発展する程の大きさはないんだ」


 情報クランと攻略クランの見立ては同じであそこは転送ができるセーフゾーンという認識だそうだ。それでもそこでしっかりと休めて、かつ転送盤があるのは助かるな。ただ他の小屋と同じで転送できる先は山の街の冒険者ギルドだけだそうだ。ちなみにそのセーフゾーンの名称は『洞窟の小屋』と言うらしい。その小屋がある広場も結構広くて魔獣が徘徊しているそうだ。


「小屋の周辺の魔獣のレベルは56から57。装備や武器を強化していないと辿り着くのは簡単じゃない」


 彼らはレベル53だそうだ。アライアンスを組まずにそれぞれ5名のパーティで戦闘を繰り返して小屋にはたどり着いたが、神官と魔法使いの負担が大きかったそうだ。


「とにかく硬い敵が多いんだ。なので討伐に時間がかかる。必然的に後衛の負担が多くなる。タクなら装備がいいからレベル52あれば苦労せずに小屋まで行けるんじゃないの?従魔達も強化済みだって話だし」


 トミーがそう言うと他の3人も俺達ならそのレベルで行けるだろうと言う。ただこっちは今日やっと51になったばかりだ。小屋に行くのはもう少し先の話だよ。


「それでね、その小屋のある広場の囲んでいる山、その山裾の奥と左右、合計3本の洞窟が伸びているのよ」


 小屋のある広場を囲んでいる山裾に東、北、南方向に3つの洞窟がある。彼らは明日からその洞窟を探索するそうだ。情報クランは今の情報を2、3日のうちに公開するとクラリアが言っている。


「3本に分かれているのか。それはそれで楽しそうだな」



「タクは今日は門の外で経験値稼ぎをしていたの?」


 マリアが聞いてきたので俺は経験値稼ぎをしながら平原を北にずっと進もうと思っているんだという話をする。4人がこちらに顔を向けてきたので俺は続けて言った。


「あの平原がどこまで続いているのか、先はどうなっているのか。確かめるつもりなんだよ。もちろん北に進めば水牛のレベルが上がっているので結果的に経験値は稼げ、神魂石もドロップしている。経験値を稼ぎながら探索するつもりだよ」


「言われてみればあの先はどうなってるんだろうね。タクの予想は?」


「平原の左右に走っている山脈があの先で一緒になって行き止まりになっているのかなと想像している。ただ今日は水牛のレベルが53に上がったところくらいまでしか行っていない。もちろんセーフゾーンは見つかってない。転移の腕輪もあるしのんびりと探索するつもりだよ」


 転移の腕輪もあるしタロウに乗って逃げることもできると言うと精霊の木の根元で休んでいたタロウが寝ながらガウガウと尻尾を振っている。任せろという仕草だな。


「最初からタロウに乗って探索しないのね」


「それは考えてないんだ。最初はとにかく敵を倒しながら歩いて進む。そして転移の腕輪で帰還。次からは前回転移の腕輪を使った場所まではタロウに乗って移動して、そこからまた歩いて敵を倒しながら進む。木のダンジョンもそうやって攻略していたんだ。時間の短縮もいいけどやっぱり敵を倒して経験値稼ぎたいじゃない。時間と経験値をどうするかなと考えた結果、今言った様なスタイルがいいと思ってそれを続けているんだ」


 クラリアの言葉にそう返すとなるほど言われたよ。


 その後の雑談でこのエリアの上限は60っぽいという話をしているんだと4人から聞いた。仮に60が上限だとするとエリアボスのレベルは90前後。装備関係は全て6段階まで強化していないと厳しそうだな。


「その通り。そして神魂石のドロップはランダムだ。しっかりここででも時間をかけさせてくるよ」


 自宅を出る時に4人から平原の先の様子がわかったら教えてくれと頼まれた。それくらいはお安い御用だよ。


 彼ら帰った後、俺はしばらく従魔達と一緒にのんびりと過ごす。タロウとリンネも今日はたっぷりと戦闘をしたせいか、リラックスしているよ。


「主、明日も頑張るのです」


「明日も頑張るけど、その前にいつもの畑仕事をしてからだぞ」


「もちろんなのです。ランとリーファと一緒に畑の見回りをするのです。大切なお仕事なのです」


 その通りだよ。そう言って膝に乗っているリンネを撫でると8本の尻尾をブンブンと振ってくれる。ランとリーファも任せとけと俺の方にサムズアップしてくれた。



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