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レベル以上?


「タクってレベル50だったよな?」


「そうだよ」


 スタンリーに答える。俺たちはたった今ロックゴーレムという岩の魔獣を倒したところだった。身長は2メートル程で全身が岩でできていている。攻撃は腕の振り回しと蹴りだけなのだが岩の魔獣なので硬い。レベルは53でこの洞窟だと最も低いレベルだそうだ。


「俺たちよりも動けてる気がするんだよな」


「そうそう、実質レベルは53とか54くらいあるんじゃない?」


 自宅で話をした翌日の午後、俺たちは11名と2体というアライアンスを組んで山の街の東門を出て進んだ先にある大きな洞窟の中にいる。


 東門を出るとすぐに山の入り口になっており、幅30メートル、高さは20メートル以上の大きな洞窟が奥に伸びていた。これなら複数のパーティが並んで活動しても大丈夫そうだよ。


中に進んで最初に遭遇したのが今倒したロックゴーレムという魔獣だ。攻撃は単調で硬い腕を振り回し、足で蹴ってくるだけで、試練の街に移動する時にいたエリアボスのジャイアントゴーレムと似ている。ただこちらは狂騒状態にはならないけど。


 そのロックゴーレムを倒して魔獣が光の粒になって消えたタイミングでトミーとクラリアが言ってきた。自分自身でも以前よりはかなり動けていると思っているけどレベル53とか54は言い過ぎだろうと思っているとタロウの上に乗っているリンネがその場でミーアキャットポーズになる。


「主は一番強いのです。岩の魔獣さんでも何も問題ないのです」


「ガウガウ」


 タロウもそうだと言わんばかりだ。周囲の仲間達は従魔達も分かってるじゃない、なんて言っているよ。


「53とか54は言い過ぎじゃないの?皆と同じくらいじゃない?」


 俺がそう言ったが周りは違うな、俺たちより強いぞ、なんて言っている。


「装備の強化がダイレクトに戦闘に反映される。レベル50でこの街に来た時の状態だと東門の奥にいる硬い魔獣の討伐は易しくない。門の前の平原でレベルをあげるか、この街で数段階の強化が必要になる。これは俺たちがすでに公開している情報なんだ」


 トミーが教えてくれた。確かにレベル50だけのままだとこの硬い魔獣の討伐は難しいだろうな。


「俺たちも当然この街で装備を一部強化した。ただタクはバンダナだけで全ステータスをすでに6段階上げている。見ていると最低でも3つはレベルが上になっている気がするよ」


 マスターモンクのダイゴが言った。隣で見ているから間違いないぞと付け加えていた。いずれにしても運良く手に入れた黒い神魂石で強化できた装備だ。これを利用しない手はないよな。


 新しい狩場にはロックゴーレムの他に今までにもいたリザードの大型版やコウモリ等がいる。姿は以前見たのと同じだけど当然レベルが高くなっている。魔獣のレベルは53以外に54もいる。


 アライアンスを組んで2時間ほど狩りをした俺たちは山の街に戻ってきた。2つのクランも一旦休憩するそうだ。ちなみにこの2時間程の狩りの間に神魂石が2つドロップしている。


 この街には別宅やレンタルハウスがないので俺たちは街に戻ると、ギルドの中にあるスペースを利用させてもらう。他のプレイヤー達は外に出ているのかギルドの中には俺たち以外には誰もいなかった。


「広い洞窟が奥まで一本道になっていて、休憩できる場所が今のところない。敵のレベルも上がっている。今は慎重に探索を進めているんだ。そのうちに洞窟に変化、分岐があるだろうと思ているんだけどな」


 西門の前の平原にいた魔獣と比べるとレベルが2つは上がっている。先ずは街でしっかりと強化してから攻略しろと言う事かな。俺がそう言うと皆その通りだと頷きながら言っている。


 クラリアの話では、神魂石のドロップ率については敵のレベルが45以上になると上がっているが、山の奥の洞窟の魔獣相手で更に上がったたとは言えないそうだ。つまりドロップ率に変化はない。


「この先、強い相手になると分からないけど、今のところ石のドロップ率に変化はなさそう」


 その後しばらく雑談をして、俺たちは自宅に戻ってきた。彼らはもう少し東門の先で探索するそうだ。自宅に戻るとお留守番をしているランとリーファを労ってから、エプロンを身につけて工房に移動する。俺がエプロンを身につけると4体の従魔達が後からついてくるんだよな。相変わらず飽きないらしい。


 新しい原料を使って形を作り、それを窯で焼いて出来あがった素焼きの状態を見ても土が変わったことで仕上がりが良くなっている気がする。


「今までのよりも綺麗なのです」


「リンネもそう思うか?」


「タロウとラン、リーファもそう言っているのです」


 そちらに顔を向けると皆尻尾や羽根を振っている。


 これに釉薬を塗って再度窯で焼いて出来上がった置物はポーズは今までと同じなんだけど何というか落ち着いた風合いに見えるんだよ。土と釉薬を変えるだけで違いが出るのは新しい発見だ。


 その後もバザール用に従魔の置物や食器を焼いたがどれも今までよりもいい感じに出来あがった。原料、土は大事だよね。日本でも各地でそれぞれ特徴のある焼き物があるけど、皆その場所の土をうまく使って作っているんだということがわかるよ。


 ゲームでは午前中は自宅、午後は外という基本はできるだけ崩さない様にしている。農作業は安定した金策になっているし、ランとリーファとも一緒にいないとね。


 この日も午前中の自宅での仕事が終わるとタロウとリンネを連れて山の町に飛んだ。ギルドの中には2組のプレイヤーがテーブルに座っていた。


「これから攻略かい?」

 

 転送盤の近くのテーブルに座っているプレイヤーが声をかけてきた。俺が答える前に俺の頭の上に乗っているリンネが答えてくれる。


「洞窟の中の敵を蹴散らしに行くのです」


「ガウ」


 2体の従魔達が答えると、頑張れよと言ったリーダーっぽい狼族の男性が俺に顔を向ける。


「タクと従魔達ならあそこが狩場になるんだな。あの洞窟の魔獣は硬くてレベルが高いだろう?俺たちはまだこの街で強化ができてないんだよ。だから東門から出た平原の水牛で経験値を稼ぎながら強化石狙いなんだよ」


 なるほど、山の街に来たからって全員が西門の奥でやる必要はないよな、彼らが言っている通りに奥の魔獣のレベルは高いし。


 俺たちも別に東門に拘る必要はないよな。平原もありだよ。そう思いながらふと思った。あの平原の先はどうなっているんだろう?ずっと平原ってことは無さそうな気がする。どこかで行き止まりになっていると思うんだよな。その場所がどうなっているのか見てみたい。奥に行けば水牛のレベルも当然上がるだろうし、経験値稼ぎにもなるんじゃないかな。


「主、何を考えているのです?」


 ギルドの中で立ち止まって考え事をしていると頭の上から声がした。


「ごめんごめん、行こうか」


「参るのです」


「ガウガウ」


 とりあえず今日は西門の先の洞窟だ。この前はアライアンスだったから俺たちだけでどこまでやれるかを確認しないと。


 まだプレイヤーの数が多くないからか、それともさっき会った彼らの様に平原でレベル上げをしながら神魂石のドロップを狙っているのか。西門から洞窟に出ると他のプレイヤーの姿を見ない。2大クランは洞窟のもっと奥でやっているんだろう。


 実際洞窟で戦闘を始めると俺とタロウとリンネで問題なく魔獣を倒せる。敵のレベルは53とか54でこっちは50だけど苦労せずに出会う魔獣を次々と倒していた。装備の強化の恩恵を受けまくりだよ。


「主、この調子でガンガンやるのです。無敵なのです」


「ガウ!」


 タロウとリンネもスカーフを2段階強化している。それとレベルアップで従魔そのものの能力がアップしたこともあり全く危なげがないんだよ。西門を出てから洞窟の中にいるロックゴーレムやコウモリ、リザード等を相手にしたけどどれも問題なく倒せることができる。装備の強化の効果は絶大だね。


 夕刻まで洞窟の中で魔獣を倒しまくった俺たちはレベルは上がらなかったけど白と紫の神魂石を手に入れた。これでリンネのスカーフを強化できる。


 ただクランの連中が言っている様にしっかりと休める場所がない。これは今までの平原とか他の狩場でも同じだったんだけど、ここは洞窟の中ということもあって逃げ場というか避難所がない。魔獣を倒すとポップするまでの間に短い休憩をとるくらいしかできないんだよな。ずっとこのままって事はないだろうからこの先に行くと洞窟が広くなっているか、それともセーフゾーンなんかがあるんだろう。


 洞窟の中で転移の腕輪を使って山の街に戻ってくるとその足で強化屋に顔を出した。カウンターには黒の神魂石を強化してくれたここの責任者のジグさんがいて、店の中に入った俺たちを見ると向こうから声をかけてくる。


「タク、強化した新しい装備はどうだい?」


「いやもうすごいですね。ここまで差があるのかとびっくりですよ」


「そりゃそうだろう。全ステータスが6段階上がるんだ。当然だよ」


 そう言ったジグさんに紫の神魂石を渡してリンネが身につけている従魔のスカーフ強化を依頼する。


「わかった。少し待ってろ」


 奥に引っ込んだジグさんが数分後に戻ってきた。


「これでばっちりだ。タクの従魔達は2体とも6段階目まで強化できたな。後はタクの刀と防具だけだな。頑張れよ」


「頑張りますなのです」


 ジグさんが言った後で俺が言う前にリンネが答えてくれたよ。もちろん俺もがんばりますと言ってから強化屋を後にした。


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