表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
218/282

山の街

 

 翌日から俺たちは平原の小屋から北に進み、3つ目のセーフゾーン経由で西の山裾を北上しながら水牛を倒すことにする。魔獣のレベルは49を超えて50になっているがこっちも49だ。それにタロウとリンネがいる。


 畑の見回りが終わったところでタロウとリンネに外に出るって言ったら大喜びだったよ。実際外に出ると2体が嬉々として水牛を倒しまくるんだよな。


「この調子でガンガンやるのです」


「ガウガウ」


 平原にいる水牛を倒しながら北に進んでいくと、山裾に頑丈な石の門が見えてきた。これが次の街への入り口だ。やっと目的地に着いたぞ。


「主、ここから中に入るのです」


「いや、こっちのレベルが50になっていないと無理だよ」


 俺とリンネが話をしている間に、タロウが門を通り抜けようとしてガツンと頭を打ってたよ。尻尾を垂らせて戻ってきたタロウを撫でてやる。


「痛かっただろう。あと1つレベルが上がると門を潜れるぞ。頑張ろう」


「ガウ!」


 尻尾をブンブンと振っている。うん、元気になってよかったよ。


 その後も門の近くの敵を倒しまくり、その日は3つ目のセーフゾーンでログアウトした俺達は翌日そこから再び平原に出ると門の近くにいる水牛を倒して経験値を稼ぐ。


 水牛を倒しまくっていた昼過ぎに脳内にレベルアップのアナウンスが来た。


「よし!レベル50になったぞ」


 俺が声を出したのと同時にタロウとリンネの身体が光だした。しばらくして光が消えるとタロウは今までよりも少し大きくなっていた。そしてリンネは尻尾が増えていた。


「主、リンネの尻尾が8本になったのです。やったーなのです」


 上級レベル50が従魔たちのステータスアップのタイミングだったんだ。大きくなったタロウが尻尾をブンブン振りながら身体を寄せてきたのでしっかりと撫でてやる。リンネも8本の尾をブンブンと振り回して大喜びだ。もちろんリンネもしっかりと撫でてやるよ。


 従魔達を撫でながら俺はAIのミントに聞いた。


『上級レベル50になったことでタクの従魔達の能力がアップしました。タロウとリンネは全てのステータス、能力がアップすると同時に、タロウは新しくジャンプというスキルを覚えました。今までよりも高く、遠くまでジャンプすることができる様になります。リンネはステータスアップと、尻尾が増えたことにより魔法の威力上昇と敵対心減少の効果が強くなりました』


 これはすごいな。俺が今AIから聞いた事をタロウとリンネに話をする。尻尾を振り回しながら話を聞いている2体の従魔達。


「タロウ、ジャンプしてみてくれるかい?」


 そういうとガウ!と一声吠えると山裾から上に向かってジャンプした。今までよりもずっと高くジャンプしている。3メートル以上はジャンプしているんじゃないかな?


「タロウ、すごいぞ」


「次はリンネだ」


「任せるのです」


 山裾から平原に出て、近くにいた水牛の魔獣に魔法を撃つと、今までよりも強力な魔法が水牛に命中した。誰が見ても今までよりもずっと強い威力だぞ。これも凄い。


 水牛の魔獣を倒して門の前に戻って来た俺たち。


「リンネは尻尾が増えた。そしてタロウもまた大きくなった。これでまた強い敵を倒すことができるな」


「ガウガウ」


「タロウが任せろと言っているのです。リンネも主の為に頑張るのです」


「これからも頼むぞ。では、この門を潜って新しい街に行こう」


「レッツゴー、なのです」


 レベル49の時にはぶつかっていた門だけど、50になるとスッと通り抜けることができた。門を抜けるとそこ洞窟になっていた。真っ直ぐな洞窟が奥に続いている。壁の両側に灯りがあるので中は暗くない。門があるということはここは街の中の扱いになっていて魔獣はいないはずだ。そう思いながら洞窟を進む。隣を歩いているタロウが普通に歩いているのを見て安心したよ。リンネは俺の頭の上に乗っている。尻尾が増えても同じ、いつもの定位置だよ。2体ともリラックスしているのが伝わってくる。


 洞窟の先が明るくなってきた。100メートル程洞窟を歩いた俺たちは洞窟の出口に出た。そこから見える景色は想像していたのとは大きく違っていた。


 目の前に盆地が広がっている。その盆地が全て街になっている様だ。ドワーフがいるから洞窟の街かなと想像していたけど、カルデラというのかな、周囲が高い山に囲まれている。見上げると空が見えていた。


「高いお山に囲まれている街なのです」


「そうだ。だからここは山の街と呼ばれているんだな。これもまた新しい景色だよ」


 洞窟を出た所から20メートル程スロープを降りるともう街の中だ。NPCが歩いているが。聞いていた通りにドワーフが多い。プレイヤーの姿もちらほらと見える。2つのクラン以外でもこの街に来ているプレイヤーがいるって話だったからね。


 新しい街に着いた。まずは冒険者ギルドに行って転送盤を登録しないと。


 カルデラの中にある山の街はは広くて、せせこましい感じはしない。歩いていると冒険者ギルドが目に入ってきた。中に入ると攻略クランの連中がいた。中に入ってきた俺たちを見て手を上げてくる。


「こんにちはなのです」


「ガウ」


「無事に辿り着けた様だな」


 5人のメンバーと挨拶を交わすとスタンリーが言った。


「やっとね。タロウとリンネにおんぶに抱っこ状態で経験値を稼いだよ。門を抜けて直接このギルドにやってきたところだよ」


「タロウもリンネも主の為に頑張ったのです」


 頭の上に乗っているリンネが言った。受付横にある転送盤を登録すると俺たちは攻略クランの連中が座っているテーブルに近づいた。すぐにマリアが椅子から立ち上がってタロウを撫で始める。


「タロウちゃん、大きくなってない?」


 わしゃわしゃと撫で回しているマリアが言った。


「そうなんだよ。従魔達も上級レベル50になった。そのタイミングでタロウは大きくなってリンネは尾が8本になった」


 そういうと俺の頭の上から降りたリンネが後ろを向いて尻尾を皆に見せた。皆本当だとリンネを見る。


「それと、50になってタロウはジャンプという新しいスキルを覚えた。リンネは魔法の威力アップと敵対心マイナスの効果アップだそうだ」


「従魔達がまた強くなったのか」


「タクの従魔達って本当に優秀ね」


 スタンリーとルミが言っている。俺もそう思うよ。この2体の従魔達は本当に優秀だ。だから助かっている。


 俺が彼らの隣のテーブルに座ると、タロウは早速床の上でゴロンと横になり、リンネは俺が椅子に座ると頭の上から膝の上に移動してきた。


 山の街だから大きな洞窟の様になっているのかと思っていたら予想外のカルデラ地形だったんだね。俺がそう言うと、攻略クランのメンバーも最初街の中に入った時にはびっくりしたと言っている。皆俺と同じイメージを抱いていたらしい。


「タクはこれから街の中を歩くんだろう。自分で色々と確認すれば良いが一つだけ言っておくとこの街では別宅は売っていない。レンタルオフィスも賃貸の個人宅もないんだ」


「そうなのか。街を広くするのが難しいからかな」


 俺が言うとゲーム的には可能だろうけど、この地形だから敢えてそうしているのかも知れないというのが彼らや情報クランの認識だそうだ。別宅はなくてもギルドの転送盤があれば自宅や別宅に移動できる。それに加えて転移の腕輪がある。別宅があれば便利だけど、無いのなら無いでこっちは問題ない。


 新しいこの山の街では情報は自分の足で集めたい。攻略クランは街の奥の山の中の探索をしているんだろうけど、それについては聞かないことにする。彼らもこっちの事情というか希望を知っているので攻略関連については言ってこない。助かるよ。


 俺は今から街を歩いて来るよ。と椅子から立ち上がるとそのまま受付でマップ作成クエストを受けた。ここ冒険者ギルドの受付のNPCは人族の女性だ。これもどの街でも同じなんだよな。


 攻略クランの連中に挨拶をして、ギルドを出た俺たちが次に向かう場所はテイマーギルドだ。


 山の街はカルデラの街、つまり街全体が丸い形になっている。今自分達が外から入ってきた所は場所的に言うと西だ。


 ギルドを出て街の中心部に歩いていくと中心部が公園になってた。そこから放射線状に東西南北に大きな通りが伸びている。公園にはドワーフや他の種族のNPC達が座ったり歩いていたりしているのが見えていた。


 タロウとリンネを連れて街の中をのんびりと歩く。目に入る範囲で武器屋や防具屋の看板は見えない。違う場所にあるのか、それともやっぱりこの街にも無いのか。強化屋は通りにあるのを見つけた。入ろうかと思ったがまずはマップ作成だ。


「人が少なくて歩きやすいのです」


「ガウ」


「まだ人が多く来ていないからだよ。というかお前、俺の頭の上に乗ってるだけだろう?」


「主の気持ちを代わりに言っているのです」


 相変わらずリンネは調子がいいよ。


 街の中をウロウロと歩いて見つけたテイマーギルドは街の北側にあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ