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3つ目のセーフゾーン


 翌日自宅の畑の見回り、収穫を終えて農業ギルドへの販売を済ませ、次の種も巻き終えて畑仕事を終えた俺たち。そろそろ行くかと自宅から渓谷の街に飛ぼうかと思っていた時に端末が鳴った。クラリアからだ。


「主、お電話なのです」


「うん。ちょっと待っててくれるか」


 そう言うと縁側に座った俺の隣で腰を下ろすタロウとその背中に乗るリンネ。通話状態にすると彼女の声が聞こえてきた。


「次の街の情報が取れたのよ。山の街にはプレイヤーのレベルが50以上じゃないと門の中に入れないみたい」


 通話が繋がるなり彼女がいきなり言ってきた。


「どうやって知ったの?」


 彼女によると俺が以前レストランから取ってきた情報、次の街が山の街と呼ばれていてドワーフが多くいるという話は情報クランのメンバーは皆共有している。昨日のクランの中での打ち合わせの時、1人のメンバーが強化屋にはドワーフしかいない。彼らが次の山の街からこちらに来て仕事をしているという設定である可能性はないか?という話をしたらしい。


「それで今朝強化屋に顔を出して聞いてみたの。話をしたらメンバーの言う通りでね。彼らは山の街から渓谷の街にやってきているという設定になっていて、山の街へはレベル50からしか入れない様になっていることがわかったのよ」


 ただレベル44のプレイヤーにはこの情報は教えてくれなかったそうだ。情報を得るにはこちら側にもある程度のレベルが必要になると言うクラリア。


 そういえば強化屋にいたのは皆ドワーフだったな。次の街からの出稼ぎに来ているという設定になっているのか。ということは次の街でも強化屋があるってことかな。俺がそう言うと情報クランもその理解でいるそうだ。


「それで山の街の門については常に閉まったままらしいわ。こっちのレベルが50以上あるとドアをすり抜けられる仕様になっているって」


 土の街のエリアボスの前にあった鉄の扉みたいなものかな。あっちは鍵がないと奥に行けなかったけどこっちはプレイヤーのレベルが鍵の代わりになっているのかな。


 山の街の情報は俺が取ってきたこともあるので俺に教えてくれたそうだが。彼らによるとこの情報はプレイヤーに公開、売り出す予定と言っている。次の街の情報だから高く売れるだろう。


「タクは今レベル42?」


「そうそう。50まではまだまだだよ」


「私たちも46だからね。でも街への入場方法が分かったから後4つ頑張って上げるわよ」


「頑張ってくれ」


 通話が終わると待ってましたとタロウとリンネが起き上がって自ら転送盤の方に歩いていく。よっぽど外に出たいんだな。普段は俺の頭の上に乗るリンネも自分で縁側を歩いているぞ。


「主も急ぐのです」


 少し前を歩いているリンネが振り返って言った。


「分かった」


 リンネに言われて小走りになったよ。


 俺たちは自宅から渓谷の街のギルドに飛び、そこから平原の小屋に飛んだ。小屋には複数のパーティがいて打ち合わせなのかテーブルに座っている。彼らを横目に見ながら小屋を出るとタロウに乗って昨日の戦闘場所。レベル45の水牛がメインにいる場所まで走るとそこから水牛を倒しながら北を目指す。3つ目のセーフゾーンは平原の窪地にあるという話なので俺たちも山裾から少し離れた場所で戦闘を繰り返した。


 この日は3つ目のセーフゾーンを目指すと決めていたので午前中で狩場から引き返さずにそのまま水牛を倒しながら奥に進む。セーフゾーン周辺の水牛のレベルが47、48だと言っていたので倒す水牛のレベルをチェックしながら草原を北上していった。


 タロウとリンネは疲れ知らずというか連戦をしても平気な動きをしている。そのおかげで俺も蝉を張って格上に攻撃をしているが疲れたとは感じない。


 途中で山裾の魔獣がいない場所に移動をして休憩を取ることにした。腰を下ろすとタロウが隣に座り、リンネは膝の上に乗ってきた。万が一水牛が近づいてきてもタロウのレーダーがあるから安心だよ。


「タロウ、リンネ。疲れていないか?大丈夫か?サーバントポーションはあるぞ」


 俺はタロウとリンネを撫でながら聞いた。


「ガウ!」


「タロウは問題ないと言っているのです。主が撫でてくれたら元気になるのです。リンネも問題ないのです。いっぱい撫でるといっぱい元気になるのです」


「分かった。沢山撫でてやろう」


 2体を撫でながら草原に目をやると離れたところに水牛の魔獣が徘徊しているのが目に入ってくる。レベルは46だ。ただ違う場所にいる水牛のレベルは47だとAIのミントが教えてくれた。目的地である3つ目のセーフゾーンに近づいているのは間違いない。


 20分ほど休んだ俺たちは再び草原に出ると経験値を稼ぎながら北を目指す。途中でレベルが上がって俺たちは上級レベル43になった。神魂石も3つゲットしている。赤と紫と白の3種類だ。赤と紫は俺たちでも使えるが今のところ3段階目まで強化済みなので端末に保管しておく。次の街で石が必要になる可能性が高いからね。 


 レベル47の水牛が現れ出してしばらくしたころ、俺たちは草原の窪みの中にある3つ目のセーフゾーンに着いた。柵を見つけた時は思わず声を出したよ。タロウとリンネも大喜びだ。柵に囲まれているだけと言っても想像していたよりもずっと広いよ。これなら結構な数のプレイヤーが同時に入れる。6、7パーティくらいなら余裕じゃないかな。


「元気になる場所に着いたのです」


 柵の中に入るなりリンネが言った。タロウも尻尾をブンブン振り回してご機嫌だよ。この場所に情報クランと攻略クランの姿は見えない。彼らは奥に進んでいるか街に引き返したかどちらだろう。


 ここには転送盤がないのでこの日はここでログアウトすることにする。陽は大きく傾いているし、折角ここまで来てまた明日小屋から移動するのは時間がもったいない。


「今日はここでお休みする。明日はこの周りで水牛を倒して経験値を稼ぐぞ」


「ガウ」


「分かったのです。畑の見回りはランとリーファにお任せして問題ないのです」


 妖精達には申し訳ないけど明日の朝の見回りは頼むぞ。いずれにしても上級レベル50になるまでは次の街には行けない。毎日とはいかないがこうして3つ目のセーフゾーンでログアウト、ログインする日が多くなりそうだ。



 それからしばらく3つ目のセーフゾーンでログアウト、ログインを繰り返していると俺たちはレベル45になった。セーフゾーンで何度か情報クランと攻略クランのメンバーと一緒になる。彼らも50にあげるにはこのセーフゾーンをベースにしてそこから北に進んでレベルの高い水牛の魔獣を倒していた。俺たちが45になったタイミングで彼らはレベル48に上がっていた。感覚的にもう直ぐ46に上がるんじゃないかと思っていたので3つ目のセーフゾーン周辺の48の水牛を倒していると夕方に46にレベルアップした。


「よし!また強くなったぞ」


「強くなったぞ、なのです。主、でかしたのです」


「ガウガウ」


 レベルアップするとタロウとリンネも大喜びするんだよな。これは最初の頃から全然変わっていない。もちろん俺もレベルが上がるのは嬉しいんだけど、最近はインしている多くの時間をレベル上げに使っている気がする。次の街には行きたいけどこればかりだと飽きてきちゃうんだよ。特にこのエリアは今のところ敵が羊と水牛の2種類しかいない。レベルは違うが外見は同じで新鮮味もない。運営は意図的にそうしているんだろうか?だとしたら意地が悪いよな。次の街に入るのにもレベル制限をかけているし。


 とりあえず46になったところで俺たちは転移の腕輪で草原から自宅に戻ってくると、ランとリーファも呼んで4体の従魔達の前で話をする。


「今まではずっと外で頑張っていたけど、明日からは以前のペースに戻すぞ。つまり午前中は自宅で畑と工房。午後から外で経験値を稼ぐ。いいかな?」


 ランとリーファはサムズアップをし、タロウは尻尾を振りながらガウガウと吠えた。


「分かったのです。主の好きにすると良いのです」


「ランとリーファにはしばらく留守番を頼んでいたからな。明日からは一緒に畑仕事をしような」


 そういうと歓喜の舞を舞ってくれた。うん、癒されるよ。


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