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がっぽり儲けてウハウハなのです

 週末のバザールは自分の想像以上だった。200セット以上準備した従魔達の置き物が閉店前に全部売れちゃったよ。他の食器類もほとんどが売れた。


「がっぽり儲けてウハウハなのです」


 売り物がほとんどなくなった夕方、お気楽リンネがそう言っているがまさにその通りだよ。1セット50,000ベニーの従魔達の置き物が200セット売れたってことはそれだけで1,000万ベニーだよ?それに食器類も売れた。この日の売り上げは1,200万以上になった。原価は安いから物凄い利益率だ。


 結局また従魔の置き物を買うことができないプレイヤーがいた。本当に申し訳ない。



 バザールが終わった翌日の昼頃にクラリアとマリアが自宅にやってきた。今日は両クランとも活動がオフの日だそうだ。彼女達はオフだということで私服を着ている。普段ジョブ装備しか見ていないから新鮮だよ。聞くとこの服は試練の街の服屋で買ったらしいがそれ以外にバザールで買った服も持っているらしい。いつも忍装束でたまにエプロンをする俺とは大違いだよ。


 縁側に座った彼らにお茶と果物を用意すると俺も縁側に腰掛ける。ついさっきまでマリアに撫で回されていたタロウが縁側に上がると俺の隣でゴロンと横になった。そこにランとリーファが飛んできてタロウの背中に乗る。リンネは俺の膝の間で横になった。


 バザールの話になって置き物が全部売れたっていう話をしたら2人ともそれは当然だと言う。


「タロウちゃんとリンネちゃん、それに妖精。タクの従魔はどれも大人気よ。最近になって一軒家を持てるプレイヤーもかなり多くなっているし、家に飾りたいと思うのは当然ね」


 クラリアの話を聞いてそういう理由もあるのかと納得したよ。この周辺も畑付きの家が随分と増えている。畑を持っていなくても家を買ったプレイヤーはもっと多いだろう。彼らが自宅の置き物として買っているのか、なるほど。


「あとは口コミね。従魔の置き物を買った人が知り合いに言ったり見せたりして私も欲しくなるってパターン」


 SNSみたいなものだな。


「主が作った置き物は人気があるのです」


 膝の上に座っているリンネが言うと2人がその通りよねと言う。


「まだまだ売れると思うわよ。いい金策になるじゃない」


「ウハウハなのです」


 マリアの言葉にリンネが言っている。確かに金策にはなるが俺はそれ以上に売り切れ状態を早く解消したいんだよな。申し訳なくてっさ。


「当分の間は多めに作った方がいいわよ」


「分かった」


 2人のアドバイスにそう返事はしたが自分は焼き物ばかり作る訳じゃないけどね。


「ところでバザールに神魂石の売り物は出たの?」


 俺はずっと店にいて他の売り場を見て回る時間がなかったから2人に聞いた。


「出品されていたわよ。カテゴリー『その他』やっぱりあそこが神魂石の販売エリアだったわ」


 情報クランは神魂石の売り物が出るかもしれないとその他のエリアをチェックしたところテントが4つ、4店舗で石を売っていたそうだ。マリアは既にこの情報をクラリアから聞いていたのだろう。黙って頷いている。


「彼らに聞いたら皆採掘から出たんだって言ってるの。戦闘からも出ているけど恐らく売り物にせずに自分たちの強化に使ったんでしょうね」


 ただどの店舗でも置かれていたのは3つとか4つ程だったらしい。まだまだ流通してないんだな。


「値段をチェックしてみると茶色(VIT)と青(DEX)の石が100万とか105万、他の色は110万とか120万。こちらの予想していた価格レベルだった。1店舗だけ300万以上で売りに出していたけど結局その高い店舗の石は1つも売れずで、他の3店舗の石は全部売れたみたいよ」


 いくら欲しいと言っても100万の石の隣で300万で売り出されたたら買わないだろうな。その人は目論見が外れたってことだ。あるいは元から売る気がなかったか。


「今回のバザールで神魂石の相場ってのができたのかな?」


「どうかしら。もう1、2回やれば落ち着いてくるんじゃない?」


 情報クランと攻略クランはレベル45の水牛を倒しているのでそれなりに神魂石を手に入れているがメンバー全員の強化が終わっていないのと第二陣用においておくので外販する気はないそうだ。


「タクはあと何だっけ?」


 マリアが聞いてきた。


「赤色が2つ」


「それ以外の石が手に入ったら売るつもり?」


「いや。幸いにもお金には困ってないしとりあえず持っておこうかなと思ってる。この先新しい装備で使えるかも知れないし」


「私達もその可能性もあるだろうと考えているの。もちろん石が要らない新しい装備が出るかも知れないわよね。でも神魂石がこのエリアだけで終わっちゃうと決めつけるのはどうかなって」


 普通ならそう考える。となるとバザールとかで石を外販する人は少ないかも知れないな。皆関係ない石でもとりあえず抱え込むプレイヤーは多いだろう。


「ところで平原の攻略は進んでるの?」


 最近両クランとは会っていなかったので聞いてみた。


「3つ目のセーフゾーン。これがまだ見つかっていないの」


 クラリアが答えてくれた。

 彼らはどちらのクランもレベル44になっており、共同で平原を調査しているのだがエリア広大なこともありまだ見つけられていないそうだ。また草原は北に行くと丘というか起伏がきつくなっていて周囲の見通しも悪くなっているそうだ。そして魔獣の水牛のレベルは高くなってくる。


「3つ目のセーフゾーンはあると言うのが私たちの認識。だから今は草原を探索しているところ。でももし見つからなかったら探索場所を山裾に切り替えてそこをひたすらに北に進んで次の街を探すということも考えているの」


 探索をすっ飛ばすということか。でもそうなると休みなしで進むんだよな。連続ログインに引っかかるんじゃないかな。


「逆に連続ログインの警告が出たら3番目のセーフゾーンがあるということになるわね」


「そう言うこと」


「なるほどね」


 彼らは明日から再び草原の北の探索をするそうだ。


「タクはどうするの?一緒に来る?」


「いやいや、こっちはまだレベル39だよ。とりあえずは午前中は畑仕事と合成、午後はタロウとリンネとで平原で経験値稼ぎかな。もちろん急に予定が変わることもあるだろうけど今考えているのはこんな感じ」


 戦闘があると聞いて横になっているタロウとリンネが尻尾をブンブン振り回した。お前達、今から外に出るんじゃないからな。

 

 45の敵を倒せる様になるのが当面の目標だよ。俺がそう言ったら2人から40になったら行けるって言われたよ。


「タクには空蝉の術がある。タロウちゃんもリンネちゃんも超優秀な従魔でしょ?39だときついかも知れないけどレベルが上級40になったらそれほど苦労せずに倒せるはずよ」


 この辺りの感覚は俺には分からないが攻略の最前線を走っている2人なら感覚的にわかるんだろう。いずれにしてもまずは40まであげないとね。



 2人が自宅から出て行った後、俺はタロウとリンネ、ランとリーファを前にして言った。


「さっき彼らにも言ったけど明日からは畑の仕事と工房の仕事。それをやってから外に出て経験値稼ぎをするからな。いいかな」


 ランとリーファはサムズアップをし、タロウはガウガウと吠えている。


「主のやりたい事をすればいいのです。戦闘になったらタロウとリンネに任せろなのです」


 本当にお前達が頼りなんだよ。



 翌日からは従魔達の前で宣言した通りログインするとまずは畑の見回り、収穫、納品、そして種まき、水やりとしてからイチゴのビニールハウスで従魔達が遊び回るのをのんびり鑑賞する。それが終わると工房に入って焼き物の作成。これで大体午前中の活動が終わる。そうそう39になったからもう一度テイマーギルドに顔を出したけどNPCの対応に変化はなかった。次は40になったら顔を出そう。


 午後になると妖精達に留守番を頼んで渓谷の街のギルドから平原の小屋に飛んでから平原に出て経験値稼ぎ。


 1週間近くこのパターンを続けて俺たちは上級レベル40になった。


「レベルが上がったぞ。40だ」


「ガウガウ」


「主、でかしたのです。これでまた強くなったのです」


「その通りだ。俺もお前達もまた少し強くなったよ」


 やっと上級レベル40になった。明日からは平原の探索をしよう。俺は近くに魔獣がいない北の山裾でレベルアップをしたタロウとリンネを撫でながら話をする。


「次からはもっと奥に行くんだけどその時はタロウの背中に乗って移動したい。きっとこの先にセーフゾーンがある。俺たちはその場所を探すぞ」


 俺が言うとタロウが尻尾を振ってガウガウと吠える。


「タロウは自分に任せろと言っているのです。主とリンネを乗せてこの平原を走り回るのは何も問題ないのです。リンネも主と一緒に元気になる場所を探すのです」


「頼むぞ。途中で魔獣から逃げられないとなったらタロウ、リンネ頼むぞ」


 従魔達頼りという自分のスタイルは変わらない。実際にこの2体は強いしな。こっちは蝉を張って避けるのが仕事だ。


「任せるのです。ばっちこいなのです」


 リンネとタロウがやる気満々だ。これなら何とかなりそうだよ。


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