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綺麗な小屋なのです

 

 レイアウトで1位になったシモーナに連絡をして従魔達の置物が出来たと連絡を入れると平原の小屋にいるというので俺たちが持っていくことにする。どんな小屋になっているのか見たいしね。通話を終えるとそばにいたタロウとリンネが潤んだ目で俺を見つめてきた。外に出るんだろう?と言っている目だな。


「今から平原の小屋に行ってお前達従魔の置き物を渡したらそのまま小屋の外で魔獣を倒すぞ」


 そういうと2体の従魔達が尻尾をぶんぶんと振り回してくる。


「出撃なのです。やってやるのです」


「ガウガウ」


「外に出たら思いきっりやっていいぞ。でもその前に仕事だ」


「分かったのです。主のお仕事が終わるまでおとなしく待つのです」


「ガウガウ」


 そうそう、物分かりがいいぞ。俺は2体を撫でると尻尾をブンブンと振ってくれた。ランとリーファに留守番を頼んで自宅から渓谷の街のギルド経由で平原の小屋に飛んだ。


 小屋の中は想像以上に綺麗で立派な内装になっていた。


「綺麗なお部屋になったのです」


「ガウガウ」


「リンネとタロウのいう通りだよ。綺麗な小屋になってるよ」


 小屋の中には数組のプレイヤー達が新しいテーブルに座っていた。今までは丸いテーブルばかりだったが、丸いテーブル以外にS字のテーブルもいくつか置かれている。どちらも5人がお互いの顔を見ながら打ち合わせができる様になっていた。


 テーブル以外にも所々に観葉植物が置かれておりアクセントになっている。よく見ると観葉植物がテーブルとテーブルの仕切りの様になっていてお互いが見えない配慮がされていた。


「ここに置いたのか」


 小屋の扉の反対側の角にバザールで見た大きな木彫りのフクロウの彫刻が置かれている。


「タクさん、いらっしゃい」


 俺達が部屋の中を見ているとシモーナが声をかけてきた。


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


「こんにちは。頼まれていたのが出来上がったから持ってきたよ」


「ありがとうございます。こちらに置こうと思ってるんですよ」


 彼女が案内してくれた場所は小屋の窓の下だった。そこには背の低い棚が置かれていて中に鉢植えの花が綺麗に並べられている。


「ここ結構目立つ場所だね」


「だからここなんですよ」


 俺は端末の中の4体の置き物を彼女に渡すと1体ずつ棚の上に並べていく。レイアウトは彼女しかできないからね。自分たちの焼き物が並べられるのを見ているタロウとリンネ。2体とも尻尾を降りながら見ているので機嫌がいいのだろう。並べていると小屋にいたプレイヤー達が集まってきた。


「タクの従魔達の置き物か、こりゃいいな」


「いいわね。欲しくなっちゃう」


 棚の上に並べられた4体の置き物を見ているプレイヤー達


「主が作る置き物はバザールで買えるのです。皆バザールに来て買うと良いのです」


 リンネがちゃっかりと宣伝してくれているぞ。棚の上に並べ終えてそこから離れるとプレイヤー達が集まって見てくれている。とりあえずは好評の様で安心したよ。


「ありがとうございました」


「いえいえ、それにしても綺麗な小屋になったね」


「ありがとうございます」


「またアクセントで焼き物が欲しくなったらお願いしてもいいですか?」


「もちろん」


 俺とシモーナのやり取りを聞いていたタロウはガウガウと尻尾を振りながら答え、リンネは主に任せるのです。安心なのですと言っていた。



 シモーナと別れた俺達は小屋から外に出る。これからは戦闘だ。


「これからタロウに乗ってこの前の山裾に向かう。そこからは山裾に沿って進軍するぞ」


「ガウ」


「進軍するぞ、なのです。片っ端からぶっ倒してやるのです」


 うん、2体とも気合い十分でよろしい。タロウが両足を下ろすと俺が乗り、その前にリンネが座った。


「レッツゴーなのです」


「よし、タロウ、頼むぞ」


「ガウ」


 タロウが一吠えした。セーフゾーンの外に出ると一気にスピードアップして平原を突っ走る。風が気持ちいいんだよ。タロウも楽しそうに走っているし前に乗っているリンネも尻尾をブンブンと振ってご機嫌だ。途中で水牛の魔獣を見かけるがタロウのスピードに追いつかない。


 あっという間に反対側の山裾に着いた俺達、タロウから降りると無でろと身体を寄せてきた。


「タロウ、頑張ってくれてありがとうな」


「ガウガウ」


 身体をグイグイと寄せながら尻尾を振るタロウ。


「タロウは平気だと言っているのです。主を乗せて走るのは楽しいのです」


「そうか」


 少し休んだ俺達は山裾を北に向かって進みながら水牛を倒していく。こっちのレベルはまだ38だ。41や42の水牛は丁度良いレベルになっている。タロウもリンネも戦闘大好きな獣魔なので次々と倒して北に進んでいく間にレベルがようやく39に上がった。


「やっと上がったぞ」


「これでまた強くなったのです」


「ガウ」


 山裾を北に進んでいくとレベルが43の水牛が現れ出した。ただこっちも39に上がっている。2体リンクした時もあったがタロウとリンネが頑張ってくれて危ない場面もなく水牛の魔獣を倒した。


「この調子で日が暮れるまで頑張るぞ」


「やるぞ、なのです」


「ガウガウ」


 山裾を結構北に進んだ俺たちだが3つ目のセーフゾーンは見つからなかった。攻略クランや情報クランが見つけられないのに俺達が簡単に見つけられるはずはないよ。水牛のレベルは42が消えてレベル43が徘徊するエリアまで到達したところでこの日の活動を終えて転移の腕輪で自宅に戻ってきた。結局この日は神魂石はドロップしなかった。情報クランが言っている様に敵のレベルが45にならないとドロップ率は上がらないのだろう。


 自宅に戻ると留守番をしていたランとリーファが俺の両肩に座ってくれる。これが癒されるんだよね。タロウとリンネは外で暴れて満足したのだろう。タロウは精霊の木の根元、リンネはその木の枝に座ってリラックスしている。


 彼らはランとリーファに気を使ってくれているのだろう。2体はずっと一緒に活動をしていたので今は留守番をしていたランとリーファが俺のそばにいる時間だと。


 縁側でリラックスした俺はランとリーファを肩に乗せたまま工房に足を向けた。するとタロウとリンネも起き上がって同じ様に工房に入ってくる。


「主は焼き物を作るのです?」


「そうだよ。次のバザール用にお前達の焼き物を沢山作らないとね」


 バザールで買った皮のエプロンを身につけたのを見てリンネが聞いてきた。


「皆で主の仕事を見るのです」


 邪魔にならない場所、いつもの場所でタロウが床の上で座るとその背中にリンネとランとリーファが乗った。これもいつもの事だよ。土を固めて素焼きをし、取り出して色をつけてまた焼いてから取り出す。この繰り返しなのだが従魔達は飽きずにずっと俺の作業を見ている。


 従魔の置き物がどれくらい売れるのかは予想がつかないが折角買いに来てくれた人に売り切れですと言うのは申し訳ないので俺は頑張って焼き物を作った。


 その後も工房でバザール用の焼き物を作った結果、今までに作り溜めしていたのに加えて新しく焼いたのを合わせると200セット以上になった。これを端末の収納に納め、置き物以外にサラダボウルや一輪挿しなんかも作る。これで何とかなるんじゃないかな。


 全ての用意ができたのはバザールの前日だった。その間ずっと工房に籠っていた訳じゃない。インすると畑の見回りをしてから工房で合成。それが終わるとタロウとリンネを連れて街の外で戦闘をしていたんだよ。戦闘大好きなタロウとリンネと一緒に平原の小屋から外に出て水牛を倒して経験値を稼ぐ。


 戦闘が終わって帰還の腕輪で自宅に戻ってくると俺はタロウとリンネを前にして言う。


「とりあえずはレベル40を目指そう。40になったらタロウに乗って広い平原を走り回って次のセーフゾーンを探したいと思っているんだけどいいかな?」


 俺の言葉にタロウはガウガウと吠えながら尻尾を振ってくる。これは大丈夫そうだな。


「任せろと言っているのです。タロウは主を背中に乗せて走るのが好きなのです。リンネも頑張るのです。敵を蹴散らしてやるのです」


「そうか。お前達、頼むぞ」


 上級レベル40あれば俺たちでも45の水牛は倒せるだろう。奥に進んで戦闘になってもなんとかなりそうな気がする。なんせ2体の従魔達が優秀だしな。それに45の敵からは神魂石のドロップも良いそうだし、そっちも期待しちゃうよな。



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