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小屋のレイアウトが決まった


 情報クランが主催した小屋のレイアウトのコンペ、渓谷のエリアにある平原の小屋のレイアウトが決まった。結局途中から1位だったデザインがそのまま逃げ切った形になった。これから半年間はこのレイアウトにして半年後にまた情報クランが投票をするそうだ。


 自分が投票したレイアウトは残念ながら採用されなかったけど上位の作品はどれに決まっても良いくらいにレベルの高い内容だったと思っている。美的センスがない自分には絶対無理だよ。


 新しいレイアウトの設定が終わったら見に行こうと思っていたら、AIのミントが許可を求めているプレイヤーがいますと脳内で言った。ん?いつもの2人じゃないんだと思いながらもOKすると、庭に3人が入ってきた。クラリアとトミーの後から自宅にやってきた人族の女性は神官のローブを着ている。


「ガウガウ」


「いらっしゃいませなのです」


 タロウとリンネの挨拶の後で俺が挨拶をするとクラリアが女性を紹介する。神官の女性もこんにちはと言って頭を下げてきたのでこちらも同じ様に頭を下げる。


「彼女はシモーナさん。上級レベル36の神官で今回投票で1位になった小屋のレイアウトのデザインを考えた人なの」


「初めまして、シモーナです」


「タクですよろしく。こっちがタロウ、こっちがリンネ。あそこにいるのがランとリーファ。俺の従魔達です」


 そう言うとタロウはガウガウといい、ランとリーファはサムズアップで応える。リンネは俺の膝の上でミーアキャットポーズになると言った。


「よろしくなのです。主のお家は広いのでゆっくりしていくといいのです」


「彼女はリアルで美術大学の学生さんなの」


 なるほど。どおりでセンスのある綺麗なイラストだったなと納得する。でもその彼女がなんで俺の家に?


 彼女は今現地でまさにテーブルや椅子、鉢の花などを設置しているところだという。


「今までのギルドや小屋の中と違って渓谷の小屋の中は観葉植物があったりテーブルや椅子も丸や四角じゃなくて楕円形やS字のテーブルだったりと雰囲気が全然違っているの。ちょっとした小物や観賞用の絵、棚なんかも設置されてるわ」


 うん、確かにサイトでみた彼女のレイアウトもそうなってたな。知り合いのマイスターに頼んで家具を作ってもらったり自分も木工スキルがあるので自作したりもしているそうだ。


「それで今日はお願いがあってきました。実は小屋に置く棚にタクさんの従魔達の置物を置かせてもらえないかって」


「従魔達の置物?」


 まさかの依頼だよ。


「主、ここは受けるのです」


「ガウ」


 リンネもタロウも話を聞いてすぐに受けろと言っている。ランとリーファもサムズアップしていて従魔達は問題なさそうだ。ただ受ける前に確認しないと。


「嬉しい話なんだけどさ、個人の置物をそこに置いてもいいの?俺が置いたら他のプレイヤーから俺のも置いてくれなんてことにならない?」


 皆が俺も私も、なんて言い出したら収拾がつかなくなるんじゃないかと心配するがそれは問題ないとクラリアとトミーが言った。


「まずタクが作る従魔達の置物は大人気だ。それが飾られることに反対するプレイヤーはいないだろう。それに万が一俺も私もとなったらその時点でタクの置物を撤去する。まずはやってみようってことなんだよ。これはシモーナの希望でもあるしな」


 彼らによると俺の焼き物以外でもバザールの木工エリアで見た売値2,000万の木彫りのフクロウ。木工のマイスターのケンが作ったあの1メートル程の高さの木彫りのフクロウも小屋に置くそうだ。


「盗まれないのかな?」


 俺の焼き物は良いとしてあの木彫り、2,000万で売ってたよな。欲しい人が持っていきそうだよ。


「それは大丈夫なの。シモーナさんをレイアウトの責任者として登録したら彼女以外の人は設置されている物を小屋の外に持ち出せないシステムになっているのよ。なのでタクの従魔の置物も盗まれる事はないわよ」


 そう言うことになっているのか。シモーナによるとあの小屋は打ち合わせや休憩以外に憩いの場にするというコンセプトで考えたそうで、リラックスできるアイテムを小屋の中に置いて攻略の合間の息抜きとして鑑賞してもらおうという意図があるそうだ。うちの従魔達がリラックスアイテムになるのかどうかは分からない。この3人に言わせると間違いなくそうなると言っているけど。


「そういうことなら協力させてもらうよ。どうせなら新しいのを焼いてみよう」


「ありがとうございます」


「主の焼き物を楽しみに待つのです」


 今日、明日で作るので出来あがったら彼女に連絡するということにしてフレンド登録をした。少しずつだけどフレンドの数が増えていってるよ。


 その後少し雑談をした俺たち。小屋での作業があると先にシモーナが自宅から出て行ってクラリアとトミーは残った。



「攻略は進んでいるの?」

 

 いつもの2人が残ると聞いた。


「簡単じゃない。俺たちも攻略クランも上級レベル42で平原を探索しているがなかなかセーフゾーンが見つからないんだよ。奥に進むと敵のレベルは上がっているし数も増えている」


「運営は攻略に時間かけさせるつもりみたいよ」


 トミーとクラリアが言った。ただ東に伸びていた山はある程度先にいくと北方向にカーブしている。レベルが上がって先まで探索した結果見えてきたらしい。


「最終的には広い草原は東西の山に挟まれた形で北に伸びている。それから見てもセーフゾーンが平原の真ん中にあるとは思えない。次の街が北の山裾の先だというので俺たちも北の東の山裾を探索しているところだ。それがなければ西側の山裾を調べる」


 彼らによると当初は南側の探索をしていたが山の街の情報を得たので方針を変更したそうだ。普通に考えたら平原の小屋と次の街の間とを結んだ線上にセーフゾーンがあるはずだよな。


「今までは攻略クランとは探索の方向が被らない様に相談して別々に行動していた。ただ今回は最終目的地が見えているので共同で北の山裾に沿って攻略しようという話をしているんだよ」


 トップクラン2つでアライアンスを組んだらかなり奥まで進めるだろう。メンバーのほぼ全員の強化も終わっているという話だし。彼らは上級レベルが42だ。俺たちの38よりも高い。攻略はお任せしよう。


「ところで今度のバザールはどうするの?お店を出す予定?」


「そのつもりだよ」


「タクの従魔達の焼き物は人気があるからな」


 どこまで続く人気かは分からないが買えなかった人がいるのは事実なのでとりあえず従魔達の置物が売れ残るまでは引き続き作成して出品するつもりだ。せっかく買おうとしてくれている人がいるのにもう売りませんとは言えないよ。



 情報クランは次のバザールから神魂石の売り物が出るんじゃないかと予想しているそうだ。キャンペーンで結構な石がドロップしたが自分たちが使わない石をバザールで売りに出すプレイヤーがいるだろうとみていてバザール当日はその他のカテゴリーにクランメンバーを派遣するのだと教えてくれた。


「でも相場が立ってないだろう?いくらくらいの価値があると見てるんだい?」


 神魂石は店売りが可能で、その場合の買取価格は色に関係なく一律80万ベニーなんだよと教えてくれた。あの石は店に売れるって初めて知ったよ。でもよく考えたら譲渡可能なんだから店売りできるのが普通か。俺はそこまで考えなかったけど。


「おそらくバザールで売り物が出たとして、その販売価格は100万から150万くらいになると思うの。価格に幅があるのは石の色によって販売価格が変わると思っているからよ」


 

 トミーやクラリアによれば、プレイヤー側から見てSTRが上がる赤やAGIが上がる緑は他の石に比べると需要が多い。特に赤の神魂石は前衛ジョブなら欲しい石だ。需要と供給のバランスで石ごとに価格が変わると見ているそうだ。プレイヤーの間では赤、緑、白、紫の神魂石が人気があるらしい。それに関連するジョブを選んでいる人が多いからな。


「強化をする装備が200万とか300万だ。それから考えると石の値段が100万という設定は理解できる。それに実際強化するのとなると1つの石あたり50万の費用がかかる」


「なるほど」


 フィールドでのドロップ率については敵のレベル45以上と44以下という線引きはどうやら間違いないという2人。


「3つ目のセーフゾーンが見つかったらその周辺の敵のレベルは45以上だろう。運営は石集めの拠点として使うことも考えているのだろうな」


 実際バザールで神魂石が売られているとしていくらで売られているのか値段だけはチェックしておこう。俺の場合はあと赤色だけだけどバザールで売っているとしても買うよりは自分の実力で手にいれたい。ゲームだしわざと遠回りするのもありだよね。



 彼らが自宅から出ていった後は工房にこもって平原の小屋に陳列する従魔達の焼き物を作った。大勢の人が目にすると思うといつも以上に慎重になるよ。いや、今まで適当にやっていたという事じゃないんだけど。


「どうだ!」


 窯から取り出した4体の置物は自分が見てもなかなかの出来だ。


「主、見事な出来栄えなのです」


 出来上がった焼き物を見たリンネが俺の頭の上で言った。タロウやラン、リーファも喜んでくれている。彼らが喜んでくれたのでこれを平原の小屋に提供することにしよう。


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