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渓谷の街の別宅にて

 俺がレストランで聞いた話を4人にしている間、黙って話を聞いている彼ら。渓谷の別宅の庭のテーブルに5人で座っている。タロウはウッドデッキで身体を横にしてリラックスしていて、リンネは俺の膝の上に乗っていた。


「タクの好感度の高さについては十分に理解しているつもりだけど、こうやって話を聞くとまた驚かされるな」


「私たちは店やギルドのNPCから情報を取るけどタクは街の中にいる普通のNPC達からの情報が多いわよね。だからと言って私たちがそれをしても良い情報は取れないんだけど」


 俺が話終えるとスタンリーとクラリアが感心した声でそう言っている。こっちは普通に会話をしている中でそんな話が出てきただけだから自分で積極的に情報を取ろうとはしていないんだよな。


「だからこそ有益な情報が取れているんだろう」


 トミーが禅問答みたいなことを言ってるぞ。俺はそれは俺じゃなくて従魔達が原因じゃないかと言ったんだが4人はプレイヤーである俺だという。


「主は人気があるから当然なのです」


「ガウガウ」


 リンネとタロウも俺だと言っている。4人はそうだよねと2体の従魔達を見ながら言っていた。1対6じゃ勝てないよ。


「次の街がドワーフが多くいる山の街と呼ばれている所で、そのおおよその場所は分かった。ただかなり先にあるんだろう。平原の小屋からドワーフの街の入り口までの間にもう1箇所くらいセーフゾーンがありそうだよな」


 スタンリーが言ったけど俺には分からない。


「どうしてそう言えるんだ?」


「森小屋の時を思い出してくれ。森の街からの途中、ちょうど中間辺りに森小屋を作って転送盤を置いていただろう?あれは次の土の街への距離が長いから途中に作っていたんじゃないか。平原の小屋にも転送盤がある。つまり次の街へは距離があるんじゃないかと思ったんだよ」


 説得力がある説明だよ。確かに25装備は森小屋で売っているけどそれ以外にあの小屋は森の街と土の街との中間点になっていた。全部で3箇所あるセーフゾーンの2つ目の場所にあの小屋がある。渓谷のエリアでも渓谷の街から2つ目に平原の小屋がある。となるとそこから先にもう1つセーフゾーンがあって、その先に次の街があると考えることができる。


「最低でもあと1つのセーフゾーンがあるというスタンリーの考察は正鵠を得ている気がするわ。となると山の街周辺の平原にいる魔獣のレベルはかなり高いわね」

 

 そう言ったクラリア。おそらく上級レベル50以上はあるんじゃないかと。彼女が言うと周りからいい線だろうという声が出た。彼らは今レベル42だ。あと6つ7つレベルを上げないと攻略できないと言うことだよな。38の俺からみればまだまだずっと先の話だよ。


「そして山の街の奥にも魔獣がいるんでしょ?平原とはまた違う魔獣がいそうね」


 マリアが言う。確かに洞窟や山となると水牛とは違う魔獣、それも上級レベル50以上の魔獣がいそうだよ。草原で50レベル以上だとすると、山の街に入ってからその奥に進むんだから平原よりもさらに高いレベルの敵がいるってことになる。


 彼らは前から次のセーフゾーンを探すと言ってたけど今回次の街の情報が手に入ったことで探索のモチベが上がるよと言っている。彼らのレベルなら45、46程度の敵なら倒せるだろう。アライアンスを組めばもう少し上のレベルでも大丈夫そうだ。攻略組のこの2パーテイは全員が武器、防具を3段階まで強化したらしい。相変わらずすごいよ。


「レベル45以上の敵からの強化石のドロップ率はそれ以下のレベルの敵に比べると明らかに上がっているんだ。これは情報として開示しているんだよ」


 へえ、プレイヤーのレベルではなくて相手のレベルなのね。4人によると45の敵を1日相手にすると2個から3個は間違いなくドロップするそうだ。44以下の敵とそれまで同じ時間やっても落とさない日が多かったのに比べるとドロップが全然違うと言っている。


「こっちのレベルが42。敵が45とレベル差は3しかないが相手の体力が多いので討伐は簡単じゃない。2体リンクしたらギリギリだろう。でも神魂石の出る確率が上がっている。やる気になるよ」


 トミーが言っている。


 レベル45の敵を倒そうと思うとこっちも42、43まで上げないといけない。平原の小屋の周辺が40、41だ。いずれにしても次のセーフゾーンの探索は両クランにお任せだよ。俺たちはまず40を目指そう。


 山の街の話が終わったところで俺は特別引換券の話をした。テイマーギルドでは知らないと言われたんだよと言うとクラリアやマリアはこれから先の街で使える券かもしれないという。


「実は俺もそうじゃないかと思っているんだ。家の割引券だって開拓者の街に来て使えたしね」


 ただトミーはその可能性が一番高いだろうが、それとは別に検証して欲しいことがあると言ってきた。


「タクのレベルは38だっけ?40になったらもう一度テイマーギルドや他のNPCに話かけてくれないか? こちらのレベルが低いとNPCが対応しないのは何度も経験している」


 なるほど、それは考えていなかったな。プレイヤー側のレベルに応じてNPCが対応を変えてきた事は確かにある。


「その可能性もあるね。一応レベルが上がるごとにあちこちで話をしてみるよ」


 テイマーギルドと決まった訳じゃないからあちこち話をするのは必要だろう。もちろん今のレベル38でも話かけた方がいいな。


「ところで平原の小屋のレイアウトの応募はどんな感じ?」


 明日が投票締め切り日になっている。俺はすでに自分が気に入ったレイアウトに一票を投じていた。投票した時点でそのレイアウトは第3位だったよ。


「サイトを見たら分かるでしょうけどすごい数の応募よ。ただここに来て上位10人とそれ以外で投票数が2分されてきているわね。上位10人のレイアウトから決まるんじゃないかしら」


「俺たちの予想以上に盛り上がっているんだよ」


 情報クランが主催したレイアウト投票が好評そうでよかった。とりあえず半年間という期限で第1位になったレイアウトにするそうだ。それ以降はまたプレイヤーの意見を聞きながらやるらしい。こう言う遊びができるのもPWLの良いところだと思う。


 第3陣の話になった。彼らはすでに外部サイトやすでにPWLをプレイしている知り合いから情報をしっかりと入手している様で皆クエストをこなしながらレベルを上げているそうだ。今のところは、彼らが自主的にクエストやレベル上げをしているので、第2陣がお手伝いする場面は少ないらしい。もっとも第2陣に守られてPLをしたところで名声が低いと後で苦労することを皆知っている。最初は辛いけど地味にやるしかないんだよな、とトミーが言った。俺は地味なレベル上げやクエストが苦にならなかったけど、そうじゃない人もいるだろう。でもそれが結局一番の近道なんだよ。


「情報クランは第3陣のフォローというかお手伝いをするとは思うけど攻略クランはどうなの?」


「攻略クランとしては第3陣からメンバーを入れる予定はないんだ。第1陣、俺たちと第2陣のプレイヤーで十分活動できる。これ以上人が増えると色々大変になるしな」


「決して彼らを蔑ろにしているとかじゃないのよ。攻略クランとしての活動から見たら第2陣の人たちまでで十分じゃないかというのがクランメンバーの意見なのよ」


 スタンリーとマリアが言ったけど確かに攻略クランとうたっている以上そうなるのかな。今は情報が溢れているから先人と同じ事をする。先人の後追いという流れになっているんだろう。これは第2陣でもそうだったから仕方がないのかな。俺だって以前やっていたゲームではそうだった。逆に違うことするのを許さないという雰囲気まであったし。


 PWLは自由度が高い、好きなことができるゲームだ。先人の後を追うのもよし、好きな事をするのも良し、ゲームを楽しめばいいんですよ。



 彼らと別れると折角渓谷の街にいるんだから少し経験値を稼ごうとギルドに向かう。タロウとリンネは外で戦闘ができると知って大喜びしているよ。俺もSTRを強化した刀がどうなったか見てみたい。


「リンネとタロウで水牛さんをぶっ倒してやるのです」


「ガウ!」


 こんな調子だ。実際この2体に任せておけばそうそう危ない場面にはならないからいいんだけどね。


 平原の小屋に飛んで平原に出た俺たちは、3時間程平原でそこらにいる水牛を倒して経験値稼ぎをして自宅に戻ってきた。レベルは上がらなかったけど問題ない。タロウとリンネはスカーフを強化したことで彼らの攻撃力と魔法の威力がアップしているし、自分自身も素早さは体感済みだけど力が上がって刀を振った時のダメージが大きくなっているのが実感できた。討伐時間が以前よりも少し短くなっていた。強化の効果が実感できたよ。


 また少し強くなった。ただだからと言って過信は禁物だ。森の忍具店のシーナさんが言ってたけど、基本忍者は避けたり躱したりしながら戦うジョブだ。刀のダメージが増えたと言ってそれに頼っちゃいけないな。気をつけよう。


「敵をぶったおしたから爽快なのです」


「ガウガウ」


 自宅に戻るとそう言って俺の膝に乗ってきたリンネと隣でゴロンと横になるタロウ。ランとリーファは肩に乗ってゆっくりと羽根を動かしている。


 友人が来てくれるのも嬉しいけどこうやって自分と従魔達だけでのんびりするのも好きなんだよな。



 小一時間ほどそうやってのんびりとしてからこの日の活動を終えた。


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