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新しい街?


 1週間のキャンペーンが終わった。NM戦に勝利をした翌日、畑の世話を終えるとタロウとリンネを連れて自宅がある開拓者の街のテイマーギルドに顔を出した。


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 ギルドの扉を開けて中に入ると受付嬢のアンナさんとキャシーさんが立ち上がって俺たちを歓迎してくれる。


「タクさん、お久しぶりですね」


「従魔達との関係も全く問題ありませんね」


 挨拶が終わるとアンナさんがタロウとリンネを見て言った。


「主は良い人なのです。タロウもリンネもランもリーファも皆主が大好きなのです」


「ガウガウ」


 タロウの背中に乗っているリンネが言うとタロウもそうだと尻尾を振りながら吠えてくれる。ギルドの2人によると俺と従魔達との信頼関係はマックスだそうだ。よかったよ。


「良い主に育てられていますね」


 キャシーさんが2体の従魔を見ながらそう言うと顔を上げた。


「それで今日は?」


 と聞かれたので俺は特別引換券の話をする。テイマーギルドでは関係ありますかと聞くと2人とも首を左右に振った。新しい従魔でももらえるのかなと思ってたけど違ったよ。ちょっとだけ期待してたんだけどね。


 じゃあどこで使えるんだろうか。


 この街じゃない可能性もあるのか。まだ見つかっていない新しい街で使えるかも知れないな。以前入手した特別割引券もゲットした次の街で使えたし。引き続きいろんなNPCに聞いてみるけどこの先の街で使うかもしれないと頭に入れておこう。あとのお楽しみだよ。


 テイマーギルドを後にした俺たちは自宅から渓谷の街に飛んだ。そこにある強化屋さんに顔を出してNM戦で手に入れた赤の神魂石を使って強化してもらう。強化屋さんはプレイヤーで結構混んでたよ。考えること、やることは皆同じだよな。


 刀は3段階。防具は1段階の強化をした。これで武器の片手刀2本の強化はコンプした。あとは防具を2段階強化するだけになった。


「主がまた強くなったのです」


「ガウガウ」


 強化された装備を見ているリンネとタロウ。


「お前達も強くなっているんだぞ」


 そう言うと尻尾を振る2体の従魔。俺は尻尾を振っているリンネを見ながらいつになったら8本になるんだろうかと考えていた。7本になってから結構時間が経っているしタイミング的にはそろそろ増えてもいいんだけど。過去の例を見ていると何かイベントがあった時に尻尾が増えている。ダンジョン戦でボスを倒したり第5層の鍵でNMを倒したりしているがその程度のイベントじゃダメなんだろうか。


「主、どうしたのです?」


「ガウ?」


 俺が強化屋の前でずっと立ち止まってそんな事を考えているとタロウに乗っているリンネの声がした。タロウも心配そうな顔で俺を見ている。


「ごめんごめん。ちょっと考え事をしてたんだけどもう大丈夫だよ」


 そう言ってタロウに乗っていたリンネを抱き抱えると嬉しそうに尻尾をブンブンと振る。タロウも身体を尻尾を振りながら体を擦り寄せてきた。


 俺はそのまま渓谷の街を歩いて第5層の鍵をくれたディロンさんのレストラン『ラビーン』に顔を出した。


 ウッドデッキに上がると俺たちを見つけたディロンさんと息子のディーン君がやってきた。


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


「これはタクさん。こんにちは」


「おじさん、こんにちは」


「はい、こんにちは。今日ディーン君はお店にいるんだね。よかったらフェンリルのタロウを撫でてやってくれるかい?」


「いいの?」


 ディーン君が出てきて撫でたらダメだよなんて言わないよ。タロウも尻尾を振っているし問題ない。俺がいいよというとディーン君はウッドデッキで横になっているタロウの横にしゃがみ込んでその背中を撫で回し始めた。マリアと違ってゆっくりと撫で回しているな。タロウも子供の好きにさせているみたいだ。元々人懐っこいタロウだからこうやって撫でられるのも当人は気に入っているんだろう。


 俺はタロウを撫でているディーン君から店主のディロンさんに顔を向けた。


「先日いただいた第5層の鍵を使った戦闘で無事勝利しましたのでその報告とお昼ごはんを食べにきました」


「それはそれは、わざわざご丁寧にありがとうございます」


「主が一番強かったのです。タロウとリンネも頑張って敵を倒してやったのです」


 膝の上に乗っているリンネが店主のディロンさんに言うとそうですか、よかったですねと答えている。


 昼のランチを注文するとディロンさんは店の中に入っていたがディーン君はずっとタロウを撫で回している。


「おじさん、フェンリルは強いんでしょ?」


 撫でながら俺を見て話しかけてきた。


「もちろんだよ。フェンリルのタロウは強いぞ。リンネも九尾狐で強いんだぞ」


「ドワーフが沢山住んでいる山の街の近くにいる魔獣よりも強いのかな」


 ん?ドワーフがいる山の街?何だそりゃ?新しい街か?


「ドワーフ達が住んでいる山の街ってのがあるのかい?」


 俺は思ったことを口に出して聞いてみた。


「うん。この前店に来たドワーフのおじさんがお父さんに言ってたのを聞いていたんだよ。ドワーフが多くいる山の街ってのは山の中にあるらしいんだけど、その街の入り口の周りとか街の奥には強い魔獣がいるんだって」


 ディーン君の話を膝に乗っているリンネも耳をピンと立てて聞いている。タロウも撫でさせながらも耳を立てていた。


「その山の街ってどこにあるのかい知ってるかい?」


 そう言うとうんと答えるディーン君。


「北の平原のずっと先だよ」


 あの平原の先に山の街があるのか。確かに次の街があってもおかしくないよな。ただあの平原は広いんだよ。そう思っているとデイロンさん自らランチをテーブルまで運んでくれた。俺はお礼を言ってから洞窟の街のことについて聞いてみる。


 ディロンさんはもちろん知っていますよと言い、私は行ったことがないですけどと前置きをしてから話し始めた。今や俺だけじゃなくタロウもリンネも聞き逃すまいと耳を立てながら顔を向けていた。ディーン君が言っている通りこの店にやってきたドワーフから聞いたのだと言う。


「渓谷の街を出て北に進んで大きな平原に出ると、左側の山裾に沿ってずっと北に進んでいくと山裾にドワーフが多く住んでいる山の街の入り口になる大きな洞穴があるそうです。洞穴の前には石で作った門があるのでそこを入っていくと街の中に入れるという話です」


 新しい街の情報だ。平原をどれくらい歩くのかはわからないが北側の山裾、キャンペーンの時に俺たちが経験値稼ぎをしていた山裾をずっと進んで行くと街の入り口があるんだな。ディロンさんによれば、山の街にはドワーフが多いがそれ以外の種族の人たちも住んでいるそうだ。


「その街の奥にも強い魔獣がいるってことですか?」


「そうみたいですよ。詳しいことは聞いていませんが山の街の奥や街の外には強い魔獣が徘徊しているそうですよ」


 山の街の外とは平原のことだろう。そこの魔獣のレベルは高いというのは分かる。そして山の街の奥にあるであろう洞窟にはまた高レベルの魔獣がいるってことか。草原は水牛だけど洞窟の奥になるとまた違う魔獣がいるかもしれない。この情報はいつもの4人には言わないと。


 ディロンさんとの話が終わるとランチに手をつけたがこれがまた美味い。あっという間にペロリと平らげたよ。


「主は美味しそうに食べていたのです」


「うん。美味しかったぞ」


 リンネは俺の仕草で分かったみたいだ。いや、本当に美味しいんだよ。


「おじさん、ありがとう」


 食事が終わったタイミングでタロウの横にしゃがんでいたディーン君が立ち上がるとお礼を言ってきた。よくできた子供だよ。


「いっぱい撫でたかい?」


「うん。またお店に来た時は撫でてもいい?」


 俺がいいよと言う前にタロウが尻尾を振ってガウと吠えた。その仕草で分かったのだろう。おじさん、また来てねと言うとニコニコしながら店の中に入っていった。


 昼食代の支払いを済ませると俺たちは渓谷の街の別宅に足を向けた。店を出る前にクラリアにメッセージを送っていたから別宅で待ってればいつもの4人がやってくるだろう。


「主、山の街に参るのです」


 通りを歩いていると頭の上に乗っているリンネが言う。隣でタロウもガウと吠えているがその前に俺たちが強くならないとな。


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