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ミノタウロス戦


「ミノタウロスだ」


「そうきたか」


「テイムしたいが無理だな」


 飛ばされた先は第3層の鍵で飛んだ先と同じ様に見えるが円形の闘技場の中央には羊ではなく首から上はツノが生えている牛で首から下は人間の体をしている魔獣、ミノタウロス1体が大きな両手斧を持って立っていた。バトルアクスというのかな。両側が刃になっている武器だ。体長は2メートル以上あるだろう。闘技場の中央で仁王立ちをしてこちらを睨みつけている。


 すぐに神官達が強化魔法をかける。俺にはリンネが魔法をかけてくれた。同時に空蝉の術を唱えて分身を4対出す。


「ガチの殴り合いになりそうだな」


「あの斧はまともに食うと一撃で死ねるぞ」


 戦闘の準備をしながらメンバーが思い思いに言っている。確かにあの斧でやられたら一撃で死に戻りしそうだ。


「タロウ、リンネ、あの斧に当たらない様にしろよ」


「ガウ!」


「タロウは分かったと言っているのです。リンネも気をつけるのです」


「よし、行こう!」


 スタンリーの声でパラディン2人を先頭に階段を降りて闘技場の中に入っていった。それに合わせてミノタウロスが2人に近づいてきたかと思うと持っている両手斧を横から振り回した。斧が盾にぶつかるガシッという音がしてジャックスの身体がふらつく。横からリックスが片手剣を突き出してNMの身体に突き立てると今度は斧をリックスに振り回してきた。それを盾で何とか受け止めるリックス。


「耐えられないことはないがきついぞ、これ」


「僧侶はパラディンのフォローを。斧を振り回す動作が遅い、他の前衛は斧に注意して攻撃開始だ」


 スタンリーの言葉で全員がフィールドに出るとミノタウロスを囲む様に位置取りし斧に注意しながら攻撃を始めた。俺も蝉を張ってパラディンの横で片手刀を振る。タロウは俺の横から蹴りを入れ、リンネは俺の後ろから精霊魔法を打ち始めた。


「リンネ。遠慮するな」


「はいなのです。ガンガンやるのです」


 体力が多いのだろう。攻撃を受けてもそれを気にせずに同じタイミングで斧を振り下ろしたり横に払ったりして攻撃してくる。ただモーションが大きいので俺は問題なく避けられる。パラディンの2人も途中から受け止めるのではなく受け流し始めた。横から見ていいても2人とも盾の使い方が上手いよ。


「ヘイトはふらついてないわよ」


 クラリアの声で魔法使いが精霊魔法を打ち始めた。ミノタウルスは物理と魔法の攻撃を受けながらもそれが効いていないかの様に表情ひとつ変えずにひたすらに斧を振り回してくる。これはこれで不気味で威圧感があるな。


 ただこっちの武器や魔法が当たっていることで間違いなく相手の体力は削っているんだよな。序盤は効果がなくてもこれを続けるしかないんだ。俺の仕事はとにかくNMのヘイトを稼ぐことだ。両手に持っている刀で太ももを集中的に攻める。


「1時間経過」


 タイムキーパーも兼ねているクラリアの声が飛ぶ。4分の1の時間を消化したがNMの挙動は今のところ変化はない。攻撃をしながら隣の2名のパラディンをチラッと見る。4名のパラディンが2名1組になって交代しながら盾役をやっているがいくら受け流しをしていると言っても継続的に攻撃を喰らっているので体力がかなり削られていそうだ。それに伴って僧侶の負担が大きくなってきている。魔力もそろそろ切れるだろう。


「しばらく俺が盾役になるからその間に回復を」


「タク、ナイスタイミングだ。しばらく頼む」


 俺はNMに対峙しながら大きな声を出しすとすぐにスタンリーから声が飛んできた。彼もそろそろだと思っていた様だ。分かったと返事をしてゆっくり後ろに下がる2名のパラディン。ヘイトを抜きながら下がっていく。しばらくは俺がNMのターゲットにならないといけない。幸いモーションが大きいので全部避けられている。避けた直後に刀を振って太ももに傷をつけていく。


 パラディンが前に戻ってきた。後衛もしっかりと魔力ポーションを飲んで回復したみたいだ。ただこいつはかなり体力が多い。1度の休憩で倒せるとは思えないんだよな。その際はまた俺が一時的に盾をしてその間に回復してもらおう。


 しばらくするとNMの斧を振るスピードが上がった。今までより早いモーションで斧を振り回してくる。


「気をつけて。振りが早くなってきてる」


 こっちは素早さだけは上げているんだ。それにバンダナや腕輪もある。これくらいなら耐えられる。実際まだ分身は1体も消されていない。


「2時間半経過」


「タク、メイン盾を頼む。パラディンは後衛を守ってくれ。後衛はしっかり回復を。そろそろ狂騒状態になる気がする」


「分かった。任せろ」


「主に任せろ、なのです」


 スタンリーの声が飛んで4人のパラディンが魔法使いと僧侶を囲む様に立つ。その前に俺が立って横にタロウ、そしてタロウの後ろにリンネが立った。依然としてNMは傷をつけられながらも斧を振り回している。こっちの攻撃が効いていないのかなと思うほどにリズムが変わらない。


 タロウは斧の動きを見切ってNMの腹に蹴りを入れ、リンネの魔法は常にNMの顔に命中している。結構削っているはずだと思った時、突然NMがジャンプして上から斧を俺に振り下ろしてきた。うおっ、と思った瞬間、分身が1体剥がされた。


「3時間経過。狂騒状態よ」


「タク、大丈夫か」


 誰かから声が飛んできた。


「問題ない」


 その後もジャンプしては斧を振り下ろしてくるが、振り下ろすとその直後に数秒硬直する。俺が気がついたと同時にクラリアの声がした。


「ジャンプ攻撃の後、硬直するわよ」


 その言葉で全員がNMがジャンプして硬直しているタイミングで攻撃を加えはじめた。俺はNMの正面に立ってひたすらに刀を振り回している。タゲがふらつく事だけは避けたい。ここは上忍の腕の見せ所だよ。蝉と素早さで避けまくり、躱しまくってやろうじゃないか。


「全力で攻撃だ」


 スタンリーの合図で魔法使いや狩人もヘイト無視で攻撃を始めた。NMはジャンプをして振り下ろしたり横に振り回したりするがそれを蝉と素早さで回避して蝉がなくなると詠唱して新たに4体の分身を出して対応する。相変わらず空蝉の術は神だよ。


 トミーの大剣がNMの足に大きな傷をつけてぐらっときた。その動きを見てさらに皆がヘイト無視で攻撃を加える。タロウは連続蹴りでリンネも底なしの魔力で魔法を打ち続けている。


 一斉攻撃が功を奏したのかそれからしばらくしてNMが地面に倒れ、光の粒になって消え、その代わり広場に大きな宝箱が現れた。


「「勝ったぞー!!」」


「「おおっ、やったぞ」」


 あちこちで勝鬨が上がる中、俺はとりあえず宝箱を開けて中のアイテムを端末に収納する。何かたくさん入ってきた気がするが中身のチェックは後だ。端末をしまうとタロウが身体を寄せてきて、リンネは俺の頭の上に飛び乗ってきた。


 嬉しい事に戦闘に勝ったことでレベルが1つ上がった。それとプレイヤー全員に10万ベニーの報酬が配られていた。


「5層鍵のNM戦だからか報酬も高いわね」


 確かに10万は高いけどそれくらい相手が強かったってことだよな。


「タロウもリンネもよくやったぞ」


「ガウガウ」


 俺に身体を擦り付けながら尻尾を振っているタロウ。しっかり撫でてやるよ。


「リンネも頑張ったのです。主の次に頑張ったのです」


 リンネは俺の頭の上でこちらも7本の尻尾をブンブンと振っている。


「うん。リンネも頑張ったな」


 宝箱が消えるとそこに転送盤が現れた。


「とりあえず出よう。タクの自宅で集合でいいか?あそこなら広いし人にも聞かれない」


「いいよ。先に行って待ってるよ」


「皆主のお家に来ると良いのです」


 リンネが言うと皆がそうさせてもらおうと言った。メンバーが順に転送盤から地上に戻り、最後に俺たちが転送盤に乗って地上に戻った時に脳内にアナウンスが来た。


『ワールドアナウンスです。今回の試練の塔でのNM戦で最強のNMがプレイヤー達によって倒されました』


 ワールドアナウンス案件だったのか。と同時に第5層の鍵より上位の鍵はやっぱりなかったんだ。久しぶりのワールドアナウンスを聞いたな。


「主が一番強い敵を倒したのです」


 頭の上から声がする。隣にいるタロウもガウガウと尻尾を降りながら吠えていた。


「俺だけで倒したんじゃないからな。タロウやリンネ、そして皆で戦って倒したんだよ。一番強い相手も倒したし、家に帰ろうか」


「はいなのです。お家に帰るのです」


「ガウ」


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