自宅で作戦会議なのです
ひょんなことから第5層の鍵を入手してそれを使ってキャンペーンの最終日、4日後の午後にNM戦をやることになった。やるからには勝ちたい。そのためにはレベル上げと強化だ。
翌日から俺たちは渓谷の外での戦闘に時間をかける。タロウとリンネは外で戦闘ができると気合い十分だよ。平原の小屋から外に出ると目につく水牛を片っ端から倒して反対の山裾を目指し、そこからまた平原に戻っては敵を倒すということをほぼ丸1日やって第3層の鍵を2つ入手した。
次の日も同じことをして鍵を2つ入手する。その間畑の見回りはランとリーファに任せたよ。次の日も同じ様にやって鍵を2つ入手したけどレベルは上がらなかった。
3日間で第3層の鍵を6つ手に入れた俺たちは試練の塔でNM戦を6回する。その結果緑と赤の神魂石が2個ずつ。紫が1個、そして茶色が1個手に入った。それと同時にレベルが37に上がった。
赤の神魂石をタロウのスカーフに使った。これでタロウのスカーフは3段階の強化が終わる。紫はリンネだ。リンネも2段階強化した。俺は緑を2個使って片手剣の1本の素早さの強化が終わった。茶色は俺たちでは使い道がないがとりあえず端末に保管する。今は不必要でも将来は分からないからね。幸いにしてお金にはそれほど困っていないのでバザールで売る必要もないし。
「これでタロウもリンネもまた強くなったぞ」
「ガウ」
「タロウとリンネも強くなったので主をしっかりとお守りするのです」
流石に3日間連続でフィールドで戦闘を続けるのはきつかった。タロウとリンネは全然疲れていない様だけどな。
第4層の鍵のNM戦は最終日の午後1番でやって、それから休憩を挟んで第5層の鍵を使ったNM戦をやることになった。俺たちは第4層のNM戦には出ない。
その最終日の午前中、最後のあがきと平原に出て魔獣を倒していると第3層の鍵が1個でたのでそのまま試練の塔でNM戦をやったら紫色の神魂石がドロップした。
これでリンネのスカーフが3段階の強化が終わった。従魔が強くなった。強化が終わって自宅に戻ってきたときは午後1時前だった。攻略クランと情報クランの合同パーティが今からNM戦に挑戦するのだろう。
その間に畑の見回りをして農業ギルドに卸し、それからランとリーファと一緒に遊んでいると端末が鳴った。
「主、お電話なのです」
「ありがと」
「第4層の鍵を使ったNM戦が終わったわ。今からタクの自宅でNM戦の打ち合わせをしたいんだけどいいかしら?」
「もちろん。待ってるよ」
22名が入れて話が外に漏れないとなると俺の自宅が一番いいだろう。待っていると顔見知りの22名が庭に入ってきた。タロウとリンネが庭でお出迎えだ。ランとリーファは俺の両肩に乗って入ってきた仲間に手を振っている。従魔達は皆サービス精神が旺盛だ。
「いつも悪いな」
「全然。ここなら周りを気にしなくてもいいしね」
「いや、本当にその通りなんだよ。オフィスは人の出入りが結構あるんだよ」
スタンリーとトミーがそう言ってくるけどこっちは本当に全く気にしていない。全員がここには何度も来ているので適当な場所に腰を下ろしてリラックスモードだよ。
「第4層のNM戦は攻略クランから2パーティ、情報クランから1パーティの合同メンバーで何とか勝利したよ」
「おお、おめでとう」
スタンリーが第4層の鍵を使ったNM戦の話をしてくれる。反省会の意味合いもあるので他のメンバーも彼の話を聞いていた。
「相手はキングワイルドバイソン、平原にいる水牛の上位版だった。身体が大きく突進と角、後ろ足の蹴りが攻撃パターンだ。とにかく体力が多い。1時間40分かかったよ」
狂騒状態にもなって闘技場、サークル内を走り回って突っかかってくるらしい。誰かがスペインの闘牛みたいだと言ってイメージが湧いたよ。最後は爆弾を投げて倒し切ったそうだ。
「正直装備を強化していなかったら時間切れになっていた可能性がある」
「ドロップはやっぱり神魂石だった?」
「その通り。神魂石が10個でたよ」
10個は多いな。彼らはそれで早速メンバーの強化をしてからここにやってきたそうだ。
「嫌らしかったのは、4層のNMはヘイトがすぐに移動するんだ。魔法使いが魔法を撃つとそっちをターゲットにする。ヘイトの溜まり方が普通とは違っていた。」
「それは厄介だな」
「その通りよ。私たちのパーティも参加してたんだけどマリアやワビスケが何度もターゲットになっていた。その度にパラディンが前で耐えてくれたから事故はなかったけどね」
ヘイトの揮発性が高いというかすぐにヘイトが抜けるというか。なのでダメージを与えたプレイヤーに対して攻撃をしてくるので魔法を撃った直後に前衛が剣や殴りでヘイトを移動させながら戦ったそうだ。
その辺りはここにいるトップクランなら連携もうまくいくだろうが野良で15名集めたとしたら大変なんじゃないか?俺がそう言うとその通りだとトミーが言った。
「第4層の鍵を持っているプレイヤー達は当然全員が挑戦した。聞いている限りでは今の時点で勝利したのは俺たちを入れて4パーティで残り16パーティは勝てていない」
つまり4層の鍵は全部で20個出たってことになるのかな。これが多いのか少ないのかは分からないが。
「それでこれからやる第5層の鍵を使ったNM戦だ。どんなNMが相手なのか分からないが、相手が誰であってもタロウとリンネはヘイトをほとんど稼がないから2体には好きに攻撃させた方が良いと思う」
スタンリーが言うと任せるのです。とタロウの背中に乗っているリンネが言う。タロウも尻尾を振ってガウと吠えている。うん、問題ないな。
それ以外のプレイヤーについては僧侶と魔法使いは基本パラディンの背後に位置を取って後ろから攻撃、フォローする。他の前衛についてはできるだけ連続して攻撃をすることでヘイトを分散させようと言った後でスタンリーが俺の方を向いた。
「タクは蝉があるから攻撃されても問題ないだろう。それとあまりにタゲがふらつくのならタロウの王者の威圧を頼む」
「レベルが37とまだ低いけど蝉張って頑張るよ。タロウの王者の威圧は様子を見て使う様に言うよ」
それでいいと言うスタンリー。
「それで申し訳ないけど爆弾はないのよ。さっきの4層のNM戦で投げちゃったから」
「まぁ何とかなるんじゃないか」
俺の蝉で耐えるしかないなと思ってそう言うとリンネが言った。
「問題ないのです。主に任せれば安心なのです」
「ガウガウ」
リンネとタロウが任せろと言ったのでじゃあそうしようと言うことになった。おいおい大丈夫かよ。
その後強化状況のすり合わせをする。両クランのメンバーは武器については最低でも2段階の強化は終わっていて、中にはフル強化しているプレイヤーもいる。パラディンはリックもジャックスも防具で3段階の強化を終えているそうだ。
「パラディン以外の前衛は防具を強化できていない。それでタクはどうなってる?」
「タロウは体力、リンネは知力。ともに従魔のスカーフを3段階強化済みだ。俺は素早さが上がる片手剣は3段階まで強化したけど力が上がる片手剣は強化できていない。防具はまだ手付かずだよ」
「タロウとリンネの強化が終わっているのは大きいな。タクも素早さマックスなのはでかいぞ」
トミーが言った。確かに俺の従魔達は大きなダメージソースだからな。この2体は強化しなくてもレベル以上の強さがあるのは間違いない。
「タクはレベル37だがバンダナやHQの腕輪、忍靴がある。実質40近いレベルだろう。問題ないな」
だといいけど。
最後に戦利品の分配だ。これは以前のNM戦と同じくまず俺が欲しいのを選んで、不要なものを他のメンバーで分配することになる。ベニーについては4層のNN戦に勝利したときには各自の端末にベニーが入ったので問題ないだろうということだ。
「4層で出たのは神魂石とベニーだけだったの?」
「そうなのよ。武器、防具、アイテム系は全然出ていないのよ。神魂石を取るためのNM戦って感じ。でも神魂石が出たら武器、防具を強化できるからプレイヤーから不満は出ていないわね」
こういう分析は情報クランの仕事なんだよな。仕事が早いよ。
打ち合わせが終わると各自が薬品などの確認をしてからこの場で23名でアライアンスを組むとそのまま試練の街に飛んだ。
23名と従魔2体が試練の街を歩くと注目を浴びる。
「トップクラン2つとフェンリル忍者だ」
「NM戦にしちゃ多いな」
「また違うトリガーを見つけたのか?」
「たまたま一緒に行って中で別々になるんじゃない?」
等という声が聞こえてくる中、タロウとリンネを見つけた女性プレイヤーの声も聞こえてくる。
「タロウちゃんよ」
「タロウちゃん、リンネちゃん、頑張ってね」
「任せるのです」
「ガウガウ」
2体ともきちんと返事をするんだよな。えらいよ。
皆の注目を浴びながら俺たちは試練の塔の中に入っていった。
『第5層の鍵を使って戦闘フィールドに飛びますか?』
俺が転送盤に乗ると脳内で声がしてウインドウが現れた。はいをタップするとその場にた23名と2体の従魔がフィールドがある場所に飛ばされた。
 




