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新しい鍵


 皆の装備がアップグレードされた。タロウとリンネは早速外で戦闘をしたがっているがもう夕方だ。


「明日外で水牛相手に戦闘をしよう。今日は遅いからもう外に出ないぞ」

 

 そう言うとタロウもリンネも尻尾を振ってくれる。物分かりがいいのは本当に助かるよ。


「分かったのです。それで主はこれからどこに行くのです?


「うん、公園で会った親子がいただろう。そのお父さんがやっているというお店に行こうと思うだけどその前にちょっと自宅に戻って梨とイチゴを取ってからだ」


 別宅から一度自宅に戻り、倉庫から取り置きしている梨とイチゴ、ついでにお茶の葉をいくつか箱に入れるとトンボ帰りで渓谷の街に戻り、そのまま教えてもらったレストランを目指す。


 教えてもらった場所は南北に伸びている広い通りと交差して東西に伸びている通りの中にあった。通りを歩いていると中程で『ラビーン』という名前が書かれた木の看板を見つけた。ここだ。近づくとテラス席がある。これならタロウも大丈夫だな。ログハウス風のレストランだ。


 ラビーンって確か渓谷って意味もあったなそう思いながらテラス席に座ると俺たちに気がついたのか給仕の女性に続いて公園で見たお父さん、ディロンさんが後ろからやってきた。


「こんにちはなのです」


「ガウ」


「こんにちは。教えてもらったので来ました」


「こんにちは。先日はありがとうございました。息子がフェンリルに触れることが出来たって大喜びでした」


 彼は店のオーナー兼コックをしているそうで、息子さんはディーン君と言うそうだ。


「そうですか。今日もここにいますのでよかったらまた撫でてもらってもいいですよ。タロウ、いいよな?」


 そう言うともちろんとばかりに尻尾をブンブンと振ってくる。ただ残念ながら子供は今はここにいないと言うことなので、この街でタロウを見つけたらいつでも声をかけてもらっていいですよと言ったあと、自宅から持参した梨とイチゴ、お茶が入っている箱をどうぞと親父さんに渡す。親父さんに渡してから椅子に座り直すとリンネが膝の上に飛び乗ってきた。


「こんなに?ありがとうございます」


「自宅で採れたものなんで遠慮なくどうぞ」


 お土産を渡したあとでこの店のおすすめ料理を聞くと羊の肉のスープがお勧めだというのでそれを注文する。


「今日のお代は要りませんから」


 俺が注文をした後でディロンさんが言った。


「いえいえ、それはまずいでしょう。払いますよ」


「お店にお誘いしたのはこちらです。その上にこんなに沢山のお土産をもらってますし。次回からはちゃんといただきますので」


 まるでリアルの会話だよ。ディロンさんが折れそうにないので今日はお言葉に甘えて店の奢りになった。


「明日は何をするのです?」


 ディロンさんと給仕の女性が中に入ると膝の上に乗っているリンネが聞いてきた。テラスの上で横になっているタロウも顔をこっちに向けた。


「明日は朝は外で水牛を倒そう。午後からは自宅で合成でもしようかな。トリガーが溜まったらまた試練の塔でNM戦をやるぞ」


 そう言うと2体とも尻尾を振り回してくる。戦闘大好きな2体だからな。俺もキャンペーン期間中はしっかり経験値を稼ごうと思ってる。渓谷の街に来てからはレベルを上げるための必要経験値が増えているし、このキャンペーンをしっかり利用するつもり。


 注文した羊の肉のスープは美味しかった。匂いも臭みがなくて食べやすい。しっかりと全部食べ終えると、そのタイミングで店の中から親父さんが出てきた。


「ご馳走様でした。美味しかったです」


「それはよかった。他にも美味しい料理があるのでまた是非来てください」


 ありがとうございますと椅子から立ち上がったところでディロンさんが近づいてきた。


「これは息子が公園で見つけてきたものです。こちらで調べたらプレイヤーさんには必要なアイテムだと言うことがわかりました。私たちが持っていても仕方がありませんからタクさん、どうぞ使ってください」


 彼がそう言った直後、脳内でAIのミントの声がした。


(『第5層の鍵を手に入れました』)


 ん?第5層の鍵?3層じゃないのか?そう思って端末を見ると確かに『第5層の鍵』となっている。


「これ、頂いていいんですか?」


 端末を見ていた俺が顔を上げて聞いた。


「どうぞどうぞ。私たちには使えません。タクさんなら使えるでしょう」


「ありがとうございます」

 

 お礼を言って店を出たところで何だったのです?とリンネが聞いてきた、


「うん、『第5層の鍵』ってアイテムだったよ」


「第3層とは違うのです。第5層だから強い敵がいるのです」


「ガウ」


 リンネとタロウがそう言うので俺は立ち止まってAIのミントに聞いてみた。


(これは試練の塔でのNM戦のトリガーです。第5層の鍵を使うNM戦は人数は25名、戦闘時間は4時間となります)


 うへっ、第3の鍵とは全然違うぞ。以前やった黒翡翠の欠片みたいなものだろう。25名で4時間。どう考えても強いNMじゃないか。そしてだ、今手に入れたのが第5層の鍵ということは第4層の鍵もあるってことになるのかな。


 端末を見ると情報クランの連中もこの街にいる。俺はすぐにクラリアに通話をしてスタンリーとマリアもいれば誘って俺の別宅に来てくれと伝言をしてから渓谷の街の別宅に戻った。


 自宅に戻るとすぐに4人がやってきた。マリアはタロウを撫で回していたが俺が話を始めるとすぐにテーブルにやってきた。


「タクは間違いなくこのゲームで最もNPCから好かれているプレイヤーだろう」


 俺が話を終えるとスタンリーが言った。他の3人もそれは間違いないという。俺は違うだろうと思ったが俺が言う前に俺の膝の上に乗っているリンネが4人に顔を向けた。


「当然なのです。主を嫌いな人はどこにもいないのです。一番なのです」


「ガウガウ」


 言い過ぎだろう?そう思うが4人はその通りだと言っている。自分では活動範囲が狭いからそれはないと思うのだが。むしろタロウとリンネが「持っている」従魔なんじゃないか。


「実は第4層の鍵は出ているんだ」


「えっ?そうなの」


 びっくりしたよ。攻略クランが1個持っているらしい。情報クランは持っていないが彼らによれば他のプレイヤーで第4層の鍵を持っている人が何名かいるという。


「第4層の鍵についてはスタンリーらを含めて全員が魔獣からのドロップなの。第3層の鍵については魔獣からのドロップ以外に採掘から入手できることも確認済みよ」


 スタンリーによると第4層の鍵を使ったNM戦は人数15名、制限時間は2時間だそうだ。


 3層の鍵のNMは5人で30分。比較的討伐しやすい。第4層の鍵になるとNMが強くなって難易度があがる。つまりある程度レベルが高いプレイヤーを対象にしているのだろう。だからフィールドの魔獣からのドロップにしているんじゃないかな。でもそう考えると俺がもらった第5層の鍵はどうなるんだ?


「第5層の鍵は別枠じゃないか。つまりドロップアイテムじゃなくてちょっとしたクエストの報酬になっているんだろう」


 そうだろうな。俺はレベルが上がったと言っても上級レベル36だ。そして目の前にいる4人は41だ。レベルが判定基準なら俺じゃなくて彼らが手にするはずだ。


「それで5層の鍵のNM戦が25名で4時間。以前の黒翡翠の欠片と同じく今回のキャンペーンでの最強のNMかもしれないわね」


 マリアが言うとその可能性はあるぞという。このキャンペーンのNM戦は3層、4層、そして5層という3種類のトリガーを用意しているという見方だ。


 5層よりも上になるとそのNM戦の戦闘時間は4時間以上になって現実的じゃないと4人が言っている。


「それでその5層の鍵を使ったNM戦だが、俺たちも参加させて貰えるということでいいのかな?」


「もちろん。だから連絡したんだよ。俺1人では当然無理だし他に知り合いもいない。お願いします」


 スタンリーに言うとこっちからお願いしたいところだと言われた。こっちは俺とタロウとリンネ。あと22枠は2つのクランにお任せします。そう言うと4人からお礼を言われたよ。


「4層の鍵のNM戦をする前提で考えていたんだけど。5層が出てきたから若干スケジュールを変更しよう」


 スタンリーがそう言って話始めた。3層ならいつ挑戦してもまず負けないだろう。ただ4層、そして今回の5層となるとNMが段違いに強くなっている可能性がある。特に5層の鍵のNM戦はかなりの強敵になる。


「なので4層、5層のNM戦はキャンペーンの最終日に挑戦したい。その前にできるだけ装備を強化しておくんだ。できれば3段階だが無理だとしても最低でも1段階は強化してから挑戦したい」


 なるほど。装備を強化することでレベルアップに相当する強さになる。全員が3段階は難しいけど強化しているのとしていないのとではこちら側の攻撃力に差が出るのは間違いないよな。それに加えて俺たちはレベルも上げないとな。2つのクランのトップパーティのレベルは41だ。どこまで上がるかはわからないが1つでも上げておいた方が良いだろう。


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