表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/275

NM戦に勝って強化しました

 

 キャンペーンも中盤に差し掛かっていた。平原の小屋に飛ぶと数組の新しいプレイヤーが打ち合わせ用のテーブルに座っている。俺たちが転送盤に現れたのをみて声をかけてきた。タロウとリンネがいるから目立つからね。


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 俺が挨拶を返すとちゃんとタロウとリンネも挨拶をする。


「タクはレベル幾つなんだい?」


「35だよ。そっちは」


「俺たちは36。この周辺の水牛のレベルは40だろう?何とかやれると思ってね。35だときつくないかい?」


「従魔達が優秀なんでね。なんとかやれているよ。やばくなったらここに逃げ戻ったらいいしね」


 そう言ってタロウとその背中に乗っているリンネを撫でてやる。


「なるほど」


 彼らによれば、プレイヤー同士での情報交換や公式の掲示板の書き込み等で、上級36になったら平原の小屋をベースにすると良いいう話になっているそうだ。35以下だと厳しいと言う話になっている。レベル差が5あるから厳しいという事なんだろうな。個人的にはガンガン挑戦したらいいと思うけどね。やられちゃってもゲームだし。でもそう思ってるだけで言わないよ。ゲームのやり方は個人の自由だから。こっちも好きにやっているし。


「NM戦はやってるの?」


「2戦やった。神魂石が3つ出た」

 

 やっぱりNM戦で勝利したら神魂石1個はドロップ確定なんだな。


「タクはやったの?」


「まだだよ。鍵を2つ持ってるんで近々挑戦してくるよ」


 そろそろ外に出るよと言って小屋を出た俺たち。目的地はこの前と同じ、反対側の山裾だ。ただし今日は山裾から奥に進みたい。


「タロウ、背中に乗っていいかな?」


「ガウ!」


 尻尾をブンブン振って応えてくれる。しゃがんだタロウの背中に俺が乗るとその前にリンネが座った。


「向こうの山裾まで突っ走れ!」


「レッツゴーなのです」


「ガウ」


 一吠えすると平原を走り出した。水牛を避けながら草原を走るタロウ。風が気持ちいいよ。戦闘をせずに走って俺たちは山裾に着いた。タロウから降りるとしっかりと労わってやる。今日はこの山裾に沿って北に進むつもりだ。敵のレベルも上がるだろうから行けるところまで行ってみよう。


 しっかりと休んでから攻略を開始する。進んでしばらくの間は水牛のレベルが41なのでこれは問題なく倒せる。戦闘になるとタロウとリンネが生き生きするんだよな。タロウなんて走ってきているのにまるで疲れていないほどに元気だよ。


 水牛を倒していると『第3層の鍵』をドロップした。これで3回挑戦できる。鍵を手に入れたと言うとタロウもリンネも大喜びしてくれる。


「主、この調子で沢山集めるのです」


「ガウガウ」


「よし、頑張るぞ」


 さらに水牛を倒しながら進んでいくとレベルが42、時に43が現れだした。ただこっちにはタロウとリンネがいる。レベル差は従魔2体で何とか頑張ってもらうにしても43を倒すのは結構時間がかかる。今のレベルだとここまでが限界だろうな。これ以上先に進むにはこっちのレベルを上げないといけない。


 途中で休憩を挟みながら昼過ぎまで水牛の魔獣を倒していた俺たちはそこから転移の腕輪を使って自宅に戻ってきた。この腕輪があるから奥まで進めるんだよな、本当に使い勝手がいいよ。


 結局この日は『第3層の鍵』は1つだけのドロップだったけど合計で3つになった。宝箱は1つ出てベニーが入っていた。ライバルもいなかったのでそれなりに経験値も稼げた。


 自宅でランとリーファの相手をしてリラックスできたと思ったので縁側から立ち上がると同じ様に精霊の木の根元と枝でリラックスしていたタロウとリンネが寄ってきた。


「ガウ」


「タロウが出撃だと言っているのです」


「その通り。試練の街のNM戦をやってみようか」


 俺が言うと激しく尻尾を振るタロウ。トリガーが3つあるんだし一度経験してみよう。使わないと勿体無いしね。


「やるのです。タロウとリンネでとっちめてやるのです」


 2体ともやる気満々だな。俺は2体と一緒に試練の街に飛ぶと試練の塔に向かった。入り口には以前もいたNPCが立っていて俺たちを見ると話しかけてくる。


「トリガーを持っているな。NMに挑戦するのか?」


 そうですと言うと門を開けてくれた。以前マリアンヌという神官が立っていた塔の中の中央には転送盤がある。広いホールには数組のプレイヤーが立っていた。どうやらトリガーを持っている1人が転送盤に乗ると、同じパーティメンバーがその場から飛ばされる様で全員が並ぶ必要がなさそうだ。次々と人が消えていくのでNM戦のフィールドは複数あるのだろう。俺はソロなのでタロウとリンネと一緒に並んで順番を待つ。タロウとリンネは塔の中に入った時から周囲の注目を浴びている。


「タロウちゃんよ」


「リンネちゃんかわいいね」


 女性プレイヤーがそう言っている声が聞こえてきていた。列に並んでいると俺たちの前のパーティの男性プレイヤーが振り返った。


「ソロで挑戦?」


「ソロと言っても従魔がいるからな。何とかなるかなと思ってるんだよ」


「初挑戦か。頑張れよ」


 聞くと彼らはもう2度ほど挑戦してそうだ。神魂石狙いでトリガーが手に入ると挑戦すると言っている。強化するとその違いが分かる程だそうだ。俺はまだ何も強化していないから楽しみだよ。


 話をしている間も次々とプレイヤー達が転送盤から消えて列が進んでいく。前にいたパーティ達が転送盤から消えた。次が俺たちだ。隣にいるタロウとその背中に乗っているリンネを見ると普段と変わらない。興奮している様子もない。この2体はいつも自然体なんだよな。


 俺たちが転送盤に乗ると脳内に声が聞こえてきた。


『第3層の鍵を使って戦闘フィールドに飛びますか?』


 その後にウインドウにはい、いいえの表示が出た。もちろんはいをタップすると同時に俺たちは飛ばされた。


 飛んだ先は円形の闘技場の入り口だった。5段ほど降りていく階段があってその先が闘技場、戦闘スペースになっていて中央に大きな羊の魔獣が1体立っている。


(キングホーンシープです)


 なるほど。平原にいる羊の上位版ってとこか。


 俺が空蝉の術を唱えるとリンネが強化魔法をかけてくれる。2体とも敵を見た時から戦闘状態だ。


 階段を降りて俺が手裏剣を投げて戦闘が始まった。ファーストタッチを取ったので当然こっちに向かってくる。その間にタロウとリンネが左右に散って態勢は整った。


 羊の突進を蝉でかわして刀を振るとそれに合わせてタロウが蹴りを入れる。その反対側からはリンネが精霊魔法を撃つ。体力は多いが脅威になるほどじゃない。対峙している感覚だとNMのレベルは今相手をしている43の水牛よりも少し上のレベルに感じる。これなら倒せるぞ。リンクはしないし目の前の敵に集中すればいい。体力は多いだろうけどこっちにはタロウとリンネがいる。俺じゃないぞ。2体の従魔達だよ。


 タロウもリンネもヘイトを稼がないので俺がNMのターゲットになることが多いが忍者のジョブスキルの素早さと蝉とでノーダメで攻撃を回避しながら刀を振り回して相手の体力を削っていった。


 結局狂騒状態にならないまま20分程で討伐に成功する。羊のNMが消えると闘技場の中央に宝箱が現れた。


「勝ったのです。主、すぐに宝箱を開けるのです」


「ガウガウ」


 タロウもリンネも現れた宝箱に大喜びだよ。もちろん俺も喜んでるよ。宝箱を開けると脳内にAIのミントの声がした。


「50,000ベニー、緑の神魂石を手に入れました」


「よし!」


「主、何が入っていたのです?」


 うるうるした目で見つめてくるタロウとリンネ。


「うん。お金と緑の神魂石があったぞ」


「父上が持っているのと同じのが出たのです。やったー!なのです」


 そうだ。隠れ里で見たのと同じ物だろう。手に取って見せてやると興味津々といった感じで石を見る2体。宝箱が消えるとそこに転送盤が現れそれに乗った俺たちは地上、試練の塔の外に出た。


 その後再び塔の中に入って鍵を使ってNM戦を2戦する。結果は3戦全勝だった。手にいらたのはベニーの他には緑の神魂石、紫の神魂石、それと赤の神魂石だった。悩んだが緑は俺、紫はリンネ、そして赤はタロウにしよう。赤と緑を逆にして俺が体力、タロウが素早さにしようかと迷ったんだけど。おそらくタロウは敵対心も低くそうそうタゲがいかない。となると体力、STRを上げた方が良い気がするんだよね。タロウのことを考えて決めて、緑は俺の刀に使うことにする。自分はどっちでもよかったからこれで問題ないだろう。


 渓谷の街の別宅に戻った俺は庭で2体を前にして話をする。


「3つ出ただろう、素早さが上がる緑は俺が使う。体力が上がる赤はタロウだ。そして知性が上がる紫はリンネ。、これでいいかな?」


「ガウ!」


「それでいいのです。これでリンネは強くなるのです」


「その通りだ。リンネもタロウも俺も、皆強くなるぞ」


 その後渓谷の街にある強化屋さんに出向くとカウンターにいたドワーフの職人に強化を依頼する。


「知ってるかもしれないが1つの武器、防具で強化は3回まで。同じ色の石しか使えないからな」


 強化をする前にドワーフの職人が教えてくれた。俺は事前に聞いていたけどわかりましたと答えると彼に従魔のスカーフ2つと刀を一本。それと神魂石を3つに加工賃の150万ベニーを渡す。ちょっと待ってろと奥に引っ込んで、5分程で戻ってきた。


「出来上がったぞ。これが体力が上がる効果があるスカーフだ」


 まずそれをタロウの首に巻いた。次に知性が上がる効果がついたスカーフをリンネの首にする。最後に素早さが上がった刀をもらった。


「ありがとうございました」


「ありがとうなのです」


「ガウガウ」


 後で気がついたがNM戦を3戦してレベルが1つ上がって上級レベル36になっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ