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神魂石が出た


 この日は日曜日。バザール開催の日だ。


 ログインすると畑の見回り。それが終わると俺は縁側に腰掛けた。ビニールハウスの中でしっかりと遊んだランとリーファは今は小舟に座って身体を揺らせている。タロウとリンネは俺のそばでゴロンと横になっていた。リンネが縁側でゴロンとなるのは珍しいんだよな。大抵は俺の膝の上から頭の上に来るんだが時々こうやって縁側でゴロンとすることがある。決して機嫌が悪いとかじゃない。それは当人に聞いているから大丈夫なんだよ。


「たまにはここでゴロンとするのも気持ちがいいのです。でも一番は主の膝の上なのです」


 そう言ってくれてるので安心している。端末を取り出すとそこにしっかりと出品予定の置物や食器が入っているのを確認した。


「今からバザールに行くぞ」


 しばらく縁側でのんびりしてから言った。


「ガウ」


「行くぞ。なのです。沢山売りまくってがっぽりと儲けるのです」


「そうだな。たくさん売れるといいな」


 俺はタロウとリンネの背中を撫でてやると立ち上がった。すぐにリンネが頭の上に飛び乗ってきた。


「レッツゴーなのです」


「行こうか」


 ランとリーファにお留守番を頼むとサムズアップして応えてくれた。いつも悪いね。


 2度目なのでやり方は覚えているぞ。それにしても3回目になってもポールが立っている入り口付近にプレイヤーが集まっている。お目当ての品物があるんだろうな。


 バザール会場に入って窯業エリアを選択するとそのエリアに飛ばされた。


(タクの店舗は2番です)


 おっ、前回よりも1つ上がってる。このエリアでの店の数が減ったのか、それとも俺たちが早く来たのか。2番のテントに入ってテーブルの上に置物や食器を並べて準備をしている間タロウとリンネは例によって俺の背中側、テントの奥で戯れあっていた。


 1時前になると窯業エリアのテントも賑やかになった。パッと見た感じだと第1回と同じくらいの数の店が出ている。時間があったらあちこちの店を覗いてみよう。



 バザールの開始時間になった。と思ったらいきなり俺のテントに20人ほどのプレイヤーが押し寄せてきた。ほとんど女性だがちらほらと男性プレイヤーもいる。皆従魔の置物を買いにきたお客さんだった。それにしても開催していきなり?と思ったら従魔の置物を買ってくれた女性プレイヤーが教えてくれた。


 第1回目のバザールの後修正が入っていて、バザール開催1時間前になると各自の端末のバザールをタップすると出店リストという欄が出てくる。そこを開くと今日のバザールで誰がどこで出品しているのかが見られる様になったらしい。何を出品しているかまでは見えないが場所と名前は知ることができる。検索方法もエリア別に検索もできるしプレイヤーの名前を検索しても出てくる様になっているそうだ。


「タクは先週はお店を出してなかったでしょう?今週はどうかなと思って見てみたらタクの名前が窯業エリアにあったのよ。だから従魔達の置物が売られてるんじゃないかと思ってやってきたの」


 なるほど。納得したよ。毎度あり。


 今回は4体の従魔の焼き物、置物を60セット程持ってきているが次から次へと売れていく。その合間にお皿やカップも売れる。


「皆沢山買うのです。沢山買うと主もタロウもリンネもがっぽりと儲かるのです」


「ガウガウ」


 お店に来てくれるプレイヤー達にど直球で話しかけるリンネ。それがまた可愛いらしい。俺の店で品物を買ってくれたプレイヤーのほとんどがリンネとタロウと一緒にスクショを撮りたいと言い、2体とも毎回それに応じてくれている。ウハウハになる為にタロウもリンネもしっかりとサービスしてくれているよ。


 60セット程持ち込んだ置物は4時前には完売してしまった。その後も数名のプレイヤーが置物はありませんかとやってきたが売り切れました。またバザールで出品しますと言って帰ってもらった。それにしてもここまで売れるとはね。


「当然なのです。主の従魔は皆有名なのです。主の次に有名なのです」


 俺の次?それは絶対に違うがリンネはそう思っている様だ。隣を見るとタロウも尻尾を振っている。リンネの言う通りだと思っているみたいだ。2体とも勘違いしているぞ。有名なのはお前達だからな。


 5時前になっていつもの4人がやってきた。今日の午前中まで最初のセーフゾーンを中心に経験値稼ぎをしていたらしい。それで上級レベル36まで上がったそうだ。すごいな。


「いや、本当に根詰めてやったんだ。戦闘好きな俺たちでも最後はきつかった」


 スタンリーが笑いながら言っている。戦闘大好きスタンリーがきついってどれほど敵を倒しまくってたんだよ。


「それでだな。出たんだよ。強化石が」


 周りを見て近くに誰もいないのを確認してからトミーが言った。


「えっ?本当?」


 クラリアらのパーティが水牛を倒したら神魂石がドロップしたらしい。


「最初のセーフゾーンから東方面の敵を倒して経験値稼ぎをしてたの。そしたら水牛の魔獣がこっちを見つけてやってきたのね。相手はレベル40だから時間がかかったけど何とか倒したと思ったらメンバーの端末に茶の神魂石が入ってたのよ」


 彼らが予想していた通り魔獣からでも神魂石を入手する方法があったんだ。ただ渓谷の街の周辺にいる羊じゃなくてその奥の水牛なのか。そう思っていると俺の考えていることが分かったのかトミーが俺に言う。


「水牛から出たが羊から出ないとは限らない。いずれにしてもドロップ率はかなり低い。これはこちらのレベルに関係があるのかも知れないが、まだ証明はできないんだよ」


 こっちのレベルが上がる、つまり討伐適正レベルになるとドロップ率が上がる可能性もあるってことか。でもそうなると羊は既に適正レベルになっているぞ。


 俺がそう言うとその通り。だから羊からはでないかもしれない。ただ今の段階で羊からはドロップしないとはまだ言い切れないと言う。ドロップ率が極端に低い可能性もある。


 確かにそうだ。採掘についても今のところは採掘できていないがこれも場所とスキルの関係があるのかも知れない。どこか別の坑道で検証する必要があるだろう。でも俺はその前に採掘スキルを上げないとどこに行っても一緒だろうけど。


 情報クランは神魂石が出たという情報は販売するつもりだそうだ。


「でもさ、その情報を買っても上級レベル40の敵からでしょう?プレイヤーがすぐに俺もとはならないじゃない」


「もちろんそうよ。でも神魂石が水牛の魔獣から出た。この情報だけでもプレイヤーのモチベは上がるでしょ?」


「情報を集め、公開するのが俺たちの仕事だよ。その後どうするかはプレイヤーの判断だ。レベルを上げるのか突撃するのか、あるいは採掘に賭けてみるのか。好きにすればいいと思っている。大事なのは確かに神魂石が存在したということを皆が知ることなんだ」


 トミーがそう言った。彼らの話を聞いていたスタンリーとマリアもその通りだと言っている。確かに全然その姿を見せなかった石が見つかったとなれば話題にもなるしプレイヤーのモチベは上がるだろう。


「タクは当面採掘組かい?」


「そうなるかな。もちろん経験値稼ぎもするけどまずは採掘スキルを上げてあちこちの坑道を探してみるつもり。タロウとリンネがいるので魔獣のいるエリアでも彼らに任せれば採掘に専念できるし」


「敵を蹴散らすのはタロウとリンネにお任せなのです。主は壁に向かってトントンしていればいいのです」


「リンネの言う通りだが、その言い方だと俺が全く戦闘に貢献できていないみたいだぞ」

 

 俺が言うと4人が笑った。


「リンネとタロウがいたら何も問題ないよな」


 スタンリーが言うと我が意を得たりとリンネが言った。


「その通りなのです。リンネとタロウに任せると安心なのです」


 彼らは俺の店に来る前にクランメンバーが出品している店に顔を出してきたそうだ。


「3回目のバザールだけど相変わらず人が多いわよ。特に裁縫エリアと彫金エリアは回を重ねるたびにお店が増えているの」


 なるほどショッピングが好きな女性プレイヤー狙いだろうな。クラリアによると皮革エリアも人気があるらしい。それ以外のエリアの店の数については大きな変化はないそうだ。


「タクの作った従魔達の置物も人気みたいね」


 タロウを撫でているマリアが言った。当人は1回目に従魔達の置物を買ってくれている。


「そう60セット以上作って大丈夫だろうと思っていたら全部売れて足りなくなったよ。また作ってバザールに出品するよ。ここまで人気があるとは想像以上だった」


「最初のバザールで置物を買ったプレイヤーが話をしてそれが女性プレイヤーを中心に広まっていったのよ。まだまだ買う人がいるわよ。しっかり作っておいた方が良いわね」


 クラリアもマリアも女性同士の連絡ルートを持ってそこからいろいろと情報を仕入れているらしい。その中に従魔の置物も話題になっているんだと教えてくれた。


「となるとそれなりの数を作っておいた方が良さそうだ」


「主、ガンガン作るのです。作れば作るほど売れて稼げるのです」


「そうだな。リンネの言う通りだ。沢山作ってしっかり儲けよう」


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