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採掘は続く


 神魂石、通称強化石については情報クランの別パーティが盆地の坑道をはじめあちこちで採掘しているがまだ石は見つかっていないらしい。魔獣からのドロップも確認できていないそうだ。


「強化石はもう少し先で手にいれることができて、それを渓谷の街で強化する様になっているのかもしれない」


 ここまで姿を見せないとなるとその可能性が高いのかな。ただそうと決まった訳じゃないので情報クランは引き続き坑道のチェックはするそうだ。隠れ里のリンネの両親がそれを持っていたということから考えてまだあの坑道には採掘されていない神魂石があってもおかしくないと言っている。確かにその可能性は十分にあるよ。


「クランにも神魂石の情報を買うから教えてくてというプレイヤーの問い合わせは来ているの。でも私たちも今のところ手持ちの情報が全く無いって説明しているのよ」


 強化をする店がある。そこに顔を出すと強化するための石を持ってきたらやってやるぞと言われる。じゃあその石を集めればいい。それでそれはどこにあるんだ?どこから手に入るんだ?とプレイヤーが考えてその情報を情報クランから手に入れようとするのは自然な流れだよな。ただ今回はまだ情報クランもその情報を掴んでいない。


 話をしているとどうやらその神魂石を実際にこの目で見ているのは今のところ俺だけみたいだ。隠れ里の大主様が見せてくれたがそれ以外に情報は無い。


 エリアが進むと一筋縄では攻略できない様になっているな。


「あまりに簡単に攻略が進んだら面白くないだろう?俺はこう言う展開は好きなんだよ」


 トミーが言うと他の3人も苦労するのも攻略の楽しみよね。なんて言っている。


「苦労して困っているのなら主を頼るのです。主にはできないことはないのです」


 今まで俺の膝の上に乗って黙って尻尾を振っていたリンネが言った。おいおい、俺はできないことばかりだぞ。そう言ってもリンネは主は何でもできるのです。と譲らない。庭で寝ていたタロウや妖精達までそうだそうだと言わんばかりの仕草をしてくる。止めてほしいんだけど。


「困ったらタクに頼ればいいのよね」


 マリアが煽ってくるぞ。


「そうなのです。主に任せれば安心なのです」


 やっと分かったかという表情をしているリンネ。本当に勘弁して欲しいよ。


 

 小屋を見つけたのだからそこを拠点に経験値を稼ぐのかと思っていたら両クランはそれはまだ早いのだと言った。


「2パーティで無理して進んでやっと見つけた小屋だ。1パーティとして考えると俺たちのレベルだとまだ早いんだよ。だから経験値稼ぎは最初のセーフゾーンの周辺になる。その方が結局効率的なんだよ。それに転送盤があるからあの小屋にはいつでも飛べるしな」


 探索目的なら複数のパーティが組んで行動するのは有りだ。ただ経験値は減る。2つ目のセーフゾーンが見つかった時点で探索から経験値稼ぎに切り替えて活動をする方がはレベルアップが早いという考えだそうだ。うん、理解できるよ。


 最初のセーフゾーン付近の羊のレベルが36から37、今彼らが34なら最初のセーフゾンをベースにして東方面の敵を倒すのが今のレベルに合っているんだろうな。34のレベルでレベル40台の敵はきついのは間違いない。俺でもわかる。


 そしてだ、最初のセーフゾーン周辺の敵のレベルからみると俺たちのレベル31はまだまだ厳しいと言う事だ。あと2つくらいあげないとセーフゾーンまで行けないだろう。そこまで行けるのはもうちょっと先の話だな。


 攻略の話が終わると雑談だ。公式やネット情報を見ない俺は、彼らとの色んな話が情報源になっている。


「来週のバザール。タクは店を出して出品するのかい?」


「そのつもり。前回従魔の置物を買えなかった人がいたからね。今回は結構作った」


 トミーと話をしているとリンネが尻尾をブンブンと振り回す。


「主が作った従魔の置物は人気なのです。沢山売ってがっぽりと儲けるのです」


 リンネが言っていることも間違ってはいないが、表現がストレートすぎるぞ。4人はリンネの性格というか表現の仕方に慣れているので笑っていたよ。



「第三次募集が正式に発表されたのよ」


 それは知らなかった。クラリアによると公式HPにアップされたらしい。昨日から募集を開始し、3週間後に締め切ってから抽選をするそうだ。


「募集は1万人強。これは事前情報通りね。ネットによるとすでに10倍以上の申し込みが来ているんだって」


 相変わらずPWLは大人気だよ。世の中に沢山のVRMMOゲームが存在するが常に上位にランクされているPWL。実際にプレイすればその魅力に取りつかれるのは間違いないと思う。


「公式ではこれが最終募集だとは書いていないのよ。何か考えているのかも知れないわね」


 この世界は広い。サーバーを強化したらまだまだ人を受け入れられるだろう。その辺も考慮しているんじゃないかなとスタンリーやトミーが言っている。自分がやっていて楽しいゲームだからいろんな人がこのゲームをプレイしてその良さを知ってもらうのは賛成だよ。もちろん人が増えて動作がカクカクしたりレスポンスが遅れたりするのは困るけど、運営もその辺はちゃんとバランスを取ってやるだろう。


 明日から1つ目のセーフゾーンを基点にしてそこで数日活動するという彼らが帰っていった。彼らは経験値稼ぎだけどこっちはこっちで盆地の坑道の採掘や農業、そして合成とやることがてんこ盛りだ。


 翌日畑の収穫と換金、新しい種を植えた俺はランとリーファに留守番を頼むと開拓者の街の外に出た。今日はまずは盆地の坑道に行って採掘をするつもりなんだよ。


「主、参るのです」


 先にタロウに乗っているリンネが言った。


「タロウ、頼むぞ」


 リンネの後ろ、タロウの背中に乗った俺が声をかけるとガウと一声吠えたタロウが駆け出した。盆地を駆け抜けた俺たちはあっという間に南の山裾の坑道に着いた。いつもならここから入ってすぐの場所にある転送盤を使って反対側に飛ぶんだけど今日は違う。


「警戒を頼むぞ」


「ガウ」


「任せるのです。ばっちりなのです」


 2体の返事を聞いた俺はツルハシを手に持って坑道の中に入っていった。すぐに転送盤が見えたがそれを無視して奥に進むとコウモリの魔獣が襲いかかってきたがリンネが魔法を撃って討伐する。それを見た俺は両側の壁を見ながらゆっくり進んでいく。しばらく歩くと坑道の壁が光っているのが見えた。採掘ポイントだ。前は全く光が見えなかったが採掘スキルが30になると見える様になるんだな。スキルがもっと上がるとまだ今は見ることができない光が見える様になるかもしれない。採掘場所を見つけるのはスキル依存だと考えるとスキルを上げた方が多くの採掘ポイントを見つけられる筈だよな。


 背後はタロウとリンネに任せておけば安心だ。今も後ろから、


「痛いのを食らえ、なのです」

 

 と言いながら魔法を撃っているリンネの声が聞こえてきている。タロウがモグラを蹴飛ばしている音も聞こえているし採掘に専念できるぞ。


 安心して採掘できるのはいいが採れるのは相変わらず鉄鉱石がメインでたまに他の鉱石だ。ただこれは採掘のスキル上げだと割り切ってしまえば何が採掘できようが関係ない。俺は壁に沿って光っているところを見つけるとツルハシを下ろしていた。


 おかげでこの坑道で採掘を初める前に30だった採掘スキルは33にまで上がっていた。この調子で頑張ろう。途中でタロウとリンネに大丈夫かと聞いたけど2体とも全然問題ないという返事が返ってきた。


「敵をぶっ倒すのは爽快なのです」


「ガウ!」


 うん、戦闘好きなお前たちだもんな。機嫌良く倒してくれているのならなによりだよ。


 奥に進んでいくと反対側から人がやってきた。よく見ると情報クランのメンバー達だ。坑道探索組があるって聞いていたけど彼らだな。5人1パーティで活動をしてる様だ。全員自宅のパーティで会っている顔見知りだよ、


「やあ、タク」


「こんちは」


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 挨拶をするとその場で少し話をする。彼らは山裾の街側にあるセーフゾーンから順に坑道をチェックしているらしい。ただ神魂石はまだ見つかっていないそうだ。情報クランの別動隊は土の街の坑道、鉄の扉があってボス戦に通じている坑道を採掘してるらしい。


「そう簡単に見つかる代物じゃないってのはわかっている。その代わりそれを見つける事ができたら喜びもひとしおだぞ」


 そう言ったのは情報クランのフェルナンドというメンバーだ。彼に言わせると先頭に立って攻略をするよりもこういう地道な情報収集や検証が好きで情報クランに入って活動をしてるらしい。他のメンバーも皆同じでコツコツと情報を集めるのが好きな人ばかりだそうだ。意外と楽しいんだぜ、なんて言っている。楽しいのが一番だよ。所詮ゲームなんだから。


「攻略に関する情報収集はクラリアとトミーらのパーティに任せておけば問題ない。俺たちは好きでこっちをやってる。適材適所だよ」


 確かにやりたい事ができているのならそれが一番だよね。話をするとメンバーの1人の採掘スキルが45で他のメンバーも40程あるらしい。それでも出ないのか。


「まだこの山に無いと決まった訳じゃない。全ての坑道をチェックしないとな」


 そりゃそうだ。それに彼らによると一度採掘した場所も時間が経つと違う石が採掘されることもあるらしい。なので一回の調査で結論を出す予定はないそうだ。


「朝から晩まで坑道にこもっている訳じゃないけどここしばらくはこれが活動のメインになりそうだよ」


「頑張るのです。タロウとリンネも応援するのです」


 そう言ったリンネ、タロウも尻尾をブンブン振って応援している。


「おう、タクの従魔達に応援されちゃあ頑張らないとな」


 またな、と彼らは俺たちがやってきた方向に進んでいった。


「俺たちも頑張って向こう側まで進むぞ」


「わかったのです。主はトントンしながら進むのです」


「ガウ」

 

 情報クランのメンバーと別れてから坑道の壁で光ったところにツルハシを下ろしながら進んでいったけど狙っている出なかった。ただ坑道を反対側に抜けた時点で採掘スキルは35にまで上がっていた。今の時点では採掘スキルが上がってくれたのが一番嬉しい。神魂石はレア中のレアなんだろう。簡単には出ないよね。


 坑道を出た俺たちは転移の腕輪で自宅に戻ってくると工房で採掘した鉱石をインゴットにする。鍛治スキルも少し上がったがインゴットにしているのが鉄鉱石やら亜鉛鉱といったポピュラーな鉱石が多いせいかスキルが20で止まっている。鍛治スキルは今のところ頑張って上げるつもりはないのでこのまま放置だな。


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― 新着の感想 ―
撒菱作りで28まで鍛治スキル上がっていたような、、、記憶違いでしたらすみません! 強化出来るのが待ち遠しいです!(^^)
このゲーム、情報源はNPCで、あまり関係なさそうなところから巡り巡ってヒントが出たりしてるけど、今回はあまりNPCに書込みしてないのかね
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