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採掘スキル


 この日はリンネの実家に行く日だ。俺がログインするのを待っていたのかリンネが飛びついてきた。


「今日は畑の見回りをしたらリンネのお里、父上、母上のお家に行くのです」


「おう。覚えてるぞ」


 そう返すと早速畑に行くのですと急かしてくるリンネ。タロウ、ラン、リーファと一緒に畑の収穫、果樹園とビニールハウスの収穫をして農業ギルドに卸してから新しい種を蒔く。従魔達がしっかりと水やりをしてからビニールハウスで遊ぶ。リンネも遊ぶ時はしっかりと遊ぶんだよな。うん、それでいいんだぞ。


 しばらくすると4体の従魔達が俺のもとにやってきた。


「いっぱい遊んだか?」


 ランとリーファがサムズアップするのを見てビニールハウスを出ると妖精達に留守番を頼んだ俺は、タロウとリンネを連れて開拓者の街を出てリンネの実家、隠れ里を目指す。


 坑道をワープしてから山沿に歩いていくと東屋があり、その先のダミーの岩をくぐると隠れ里に続くトンネルになる。そこにユズさんが立っていて俺たちを出迎えてくれる。これもいつもの事だ。


「タクさん、タロウちゃんこんにちは。リンネちゃん、お帰りなさい」


「ただいま帰りました。なのです」


「ガウガウ」


 挨拶を終えるとリンネは両親に会いに行くというので俺がOKするとそのまま村の中の祠を目指して駆け出していく。俺たちは村長の家に顔を出した。


 村長のクルスさんともすっかり馴染みになっている俺たち。いつも通りに村長の自宅に招かれてそこでお茶を飲みながら雑談をする。タロウは広い庭でゴロンと横になっていた。これもいつもの事だ。


「新しいエリアには慣れましたかな?」


「なかなか厳しいエリアになっていますよ。苦労しそうです」


「プレイヤーは大変ですね」


 いつものお土産を渡した後、そんな話をしながらユズさんも入れて3人でお茶を飲んでいる。和室の奥にある床板の上には俺が作った4体の置物が置かれている。上手く作れた置物を村長さんと祠にいるリンネの両親に差し上げたんだよね。


 神魂石の話をすると二人ともその様な石は見た事もないし話を聞いたこともないと言っている。隠れ里のNPCが何か情報を持っているとは思っていないので彼らの答えを聞いてもそうだろうなと思うだけだ。ただ、知らないと言った村長がその後を続けた。


「大主様なら何かご存知かも知れませんね。長きを生きておられますから」


 なるほど。前回この村を訪れた時は石の話はしていなかった。今日聞いてみよう。村長との話が終わるとお礼を言ってその自宅を出た俺とタロウは隠れ里の祠に足を向ける。灯籠に囲まれている参道を歩いていると向こうからリンネが走ってきてタロウの背中にジャンプし、もう一度ジャンプして俺の頭の上に飛び乗った。相変わらず器用だな。


「お父さん、お母さんはお元気だったか?」


「はいなのです。両親はどちらも元気なのです。リンネも元気なのです」


「うん、リンネもタロウも元気なのは知ってるぞ」


「ガウガウ」


 参道を歩いて祠の前にいくとリンネの両親である2頭の九尾狐が待っていた。祠の隅に4体の置物がしっかりと置かれている。俺が自宅から持参したお供えものをするとリンネの父親である大主様が言った。


「リンネは素直に育っておる。タクの教育の賜物だな。礼を言う」


「いえいえ。リンネもタロウも素直で良い従魔達です。普段の畑仕事も外での戦闘もどちらも頑張ってくれているので大助かりです」


 俺がそう言うと両親の表情がにこやかになった様に見える。


「時に少し伺いたいことがあるんですが」


 俺はそう言ってから新しいエリアでは神魂石というものがどこかで取れるらしいという話をする。その色についても知っている限りの情報を伝えた。黙って聞いていた2体の九尾狐。俺が話し終えるとしばらくしてから父親の大主様が口を開いた。


「この隠れ里がある山にはいく筋かの坑道があるのは知っておるだろう?」


 もちろん知っている。そのうちの1本が開拓者の街に通じている坑道だ。


「今では山裾の街や土の街が採掘の中心になっておる。ただ以前はこの山の坑道からも沢山の鉱石が採れた。その時に色のついた石が出たという話は聞いたことがある」


「なるほど」


 大主様が前足を左右に振った。するとそこに緑色の石が現れた。大きさは握り拳程度で綺麗な緑色をした石だ。手に取ってもよいぞと言われたので手を伸ばして緑色の石を持ってみる。見かけ以上に重い。そして近くでみると独特の光沢をしている。


 これが神魂石なのか。俺が手に持って見ていると大主様が言った。


「この石はその時に坑道で採れたものをこの祠に奉納してくれたものだ。タクが探しているのはおそらくこの石だろう。我らが知っているのはこの山の坑道から出たことがあるという話だけじゃ」


「それでも十分です。新しい坑道だけじゃなく古い坑道にまだ残っているかも知れません」


 ありがとうございますと石を大主様の前に戻す。


「必要なら持っていって構わんぞ」


「いえいえ、結構です。これはこの祠に奉納されたもの。それに自分で探すのも楽しいんですよ」


 ここで貰ったとしても嬉しくはない。やっぱりゲームなんだから自分で苦労して見つけた方が喜びもひとしおだろう。神魂石の現物を見ただけでも十分に意味がある。


「主は自分で綺麗な石を見つけるのです?」


 俺と同じ様に緑の神魂石を見ているリンネ。


「そうだよ。もちろんリンネとタロウにも協力してもらうけどね」


「ガウガウ」


「任せるのです」


「リンネ、貴方の主のタクのお手伝いをしっかりとするのよ」


「はいなのです、母上」


 最後にもう一度お礼を言って祠を後にする。リンネは両親に来月また来るのですと挨拶をしていた。


 その足で隠れ里のコンビニ、キクさんの店に顔を出してポーションを補充する。例によって沢山野菜を貰ったよ。断ってもいつもくれるので最近は素直にもらうことにしている。


「色の付いた石?う〜ん、私は見たことがないね」


 ダメ元で聞いてみたからこのキクさんの答えは予想通りだったよ。村人にも聞いてみてあげるよと言うのでお願いしますと言って店を出た俺たちは最後にもう一度村長さんとユズさんにお礼を言ってから村を出て坑道を歩いてダミー岩を抜けて外に出てきた。


「主はお空を飛ぶ腕輪を使わないのです?」


 いつもは村に続くトンネルの中で転移の腕輪で自宅に戻っているからリンネが不思議がっている。


「そうなんだよ。今日はこの山にある坑道の中で採掘してみようかと思って。リンネのお父さんが言っていただろう?あの石はこの坑道から採れたものだって」


 俺の説明に納得したリンネとタロウ。俺が坑道で採掘している間周辺の警戒を頼むよというと任せるのですというリンネ。タロウも尻尾をブンブン振って任せろという仕草をしてくれる。


 山裾に沿って歩いていると小さな坑道があった。以前の坑道は光った場所をツルハシで叩くと石が採れたがここは光ってる場所が全く見つからない。とりあえず適当に何ヶ所か壁をツルハシで叩いてみるが何も採掘できない。すぐに何かが手に入る訳じゃないだろう。気長にやろう。


 坑道を見つけると中に入ってツルハシで壁を叩いてみる。その間タロウとリンネはしっかりと周囲を警戒してくれていた。


「異常なしなのです」


「ガウ」


 うん、きちんと報告もしてくれる。賢い従魔達だよ。目に入る坑道の壁を適当にツルハシで叩くが全く採掘できない。神魂石どころか鉄鉱石も何もない。衰退した坑道というのがよく分かる。魔獣が生息しているのと同時に採掘量も減ったことでほとんど採掘が止まったんだろう。


 山裾に沿って歩いていると転送盤のある坑道に着いた。普段なら中の転送盤を使って反対側の出口に飛ぶんだけど今日は久しぶりに中を歩いてみようと思う。この坑道には魔獣が生息している。


「主は壁を叩いて採掘するのです。タロウとリンネで敵を蹴散らしてやるのです」


「ガウガウ」


「頼むよ」


 レベル70制限のエリアとは言えタロウとリンネなら問題ないだろう。俺は一応蝉を張ってから坑道の中に入っていった。転送盤を越えて奥に入っていくと早速魔獣が襲ってくるがタロウとリンネがあっという間に倒してくれた。これなら安心だな。


 左右の壁をツルハシで叩くが相変わらず何も採掘できない。ここも坑道の壁はどこも光っていない。光ってたら転送盤を開通させる時に気がついているはずだしな。この坑道も完全に枯渇しちゃったのかと思って叩くとミントの声がした。


(鉄鉱石を2つ入手しました)


 あれ、光ってない場所からも採れるんだ。これは朗報だが同時にどこを掘ればいいのか目印がない。適当にやるしかないのかな。それとも何かのスキルが上がったら目印が見える様になるんだろうか。


(ミント、光っていない場所からも採掘できたんだけど)


(はい。最初から光っているのは山裾の洞窟だけです。他の鉱山では採掘ポイントは光っていませんが採掘スキルが上がると光が見える様になっています)


 採掘スキルなんてのがあったのか。採掘自体を全くしていなかったから知らなかったぞ。


(わかった。俺の採掘スキルは?)


(タクの採掘スキルは5です)


(スキルが幾つになったら光が見える様になるんだい?)


(それは鉱山、坑道によって異なります。ちなみに今いる坑道ではスキル30で光りだします)


(そうなんだ。ありがとう。採掘スキルを上げるにはどうしたらいい?)


(採掘スキルは採掘すると上がっていきます。ある程度スキルが上がったところで強い敵がいるエリアにある坑道で採掘すると良いでしょう)


 つまりだ、今鉄鉱石が採れたのはまぐれだったってことだ。まずはスキルを上げるか。

坑道をツルハシでとんかちやりながら俺たちは反対側、開拓者の街のある盆地のエリアに出てきた。坑道を出た時の採掘スキルは7になっていた。適当にツルハシを当てているだけなんだけど数をこなしたからかな。


 採掘スキルが低い時はどこの坑道で掘っても同じだろう。要はスキルを上げるにはひたすらに掘り続けるしかない様だ。スキルが上がる。具体的なスキルのレベルはAIのミントは教えてくれないが50になったら一度渓谷のエリアの洞窟に出向いてみようかな。それまでは掘りまくってスキルを上げるぞ。


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― 新着の感想 ―
こんだけNPCやプレイヤー間で関わりを大切にさせてるゲームなら、NPCからの情報(もしくは他プレイヤーがNPCから仕入れた情報)を聞いてないと発生せず、かつスキルレベルが一定以上とかいう採取品やイベン…
探しても見つからないんじゃなくてスキルが足りてなくて誰にも見えてないってことなのかな
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