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神魂石


 2日半かけて渓谷の街のマップクエストを終えた俺は北門から外に出た。久しぶりの戦闘ってことでタロウとリンネの気合の入れ方が半端ない。


「ぶっ倒してやるのです」


「ガウガウ」


 街を出てすぐのところはライバルパーティも多いので奥へ進んでいく。羊さんのレベルが32になった辺りまでくるとライバルの数が減ってきた。ただそれでもなかなかレベルが上がらない。28から29に上がるまで相当数の敵を倒さないといけない。NEXTの必要経験値が増えているよ。


 ようやく俺たちはこの日上級29になった。タロウとリンネもレベルが上がって満足している。夕刻に街の外から渓谷の街の別宅に戻ってくるとそれを待っていたかの様にいつもの4人が別宅にやってきた。マリアは早速タロウを撫で回している。聞くと彼らもやっと上級レベル31になったそうだ。


 この街の別宅は森の街と同じくログハウス風になっていて庭があり、そこには木製の椅子とテーブルが最初からセットしてある。その椅子に4人が座り、俺はウッドテラスに腰掛けた。それを見てタロウとリンネが近寄ってきた。タロウは俺の横でウッドデッキの上でゴロンと横になり、リンネはウッドデッキに腰掛けている俺の膝の上に乗ってきた。両手で2体の背中を撫でてやると嬉しそうに尻尾を振る。これを見るのが好きなんだよな。


「まだ神魂石を手に入れたという報告はないんだ」


 そう言ったトミー。南側にできた新しい洞窟ではプレイヤー達が採掘をしているが採掘できる鉱石は今までと変化がないそうだ。


「渓谷の街に強化屋さんがあるからと言って街の近くで石が採れるとは限らないだろうし、採掘以外の入手方法があるのかもしれない」


 情報クランが公開した強化に必要となる神魂石のリストは俺も買って持っている。


 赤の神魂石:力(STR)

 緑の神魂石:素早さ(AGI)

 茶の神魂石:体力(VIT)

 青の神魂石:器用(DEX)

 白の神魂石:精神(MND)

 紫の神魂石:知性(INT)


 強化費用は一律で1回50万ベニー。自分のジョブ的に言えば上忍は赤と緑だろう。従魔のスカーフはタロウが赤と緑、リンネは白と紫かな。タロウは茶も関係するがもともと避けてるから優先度は低い。


 当たり前の話だけどこの情報も売れに売れているそうだ。


 「タクの場合はHQの腕輪2つに全ステータスがアップするバンダナを持っている。他のプレイヤーと比較すると既にある強化されているとも言えるぞ」


 スタンリーが言うと他の3人がそういえばそうだと頷きながら言った。俺も彼に言われて気がついたよ。確かに運が良かったこともあってHQの腕輪2つとバンダナをゲットできている。いつも身につけてるからそんなもんだと思ってたけど言われてみたらそうだよな。


 と言う事は急いで強化に走らなくっても良いってことになるのかな。もともと急ぐ気はないけど神魂石で強化できるって言う話が出た時から当たり前の様に自分も強化するものだと思い込んでいたよ。いかんいかん。足元を見ないと。


 別に急ぐ必要はないよね、こっちはソロなんだし。そう考えるとかなり気分が落ち着いてきたぞ。


「俺たち攻略クランとしてはもちろん強化アイテムとしての神魂石は欲しい。ただそれを探すのを第一の目標にはしていないんだ。森の街の近くの木のダンジョンをクリアしてタクが装備しているバンダナが手に入れば全ステータスが上がるのはわかっている。強化よりもよっぽど確実だしお財布にも優しい。だからダンジョンクリアを目指すつもりだよ」


 確かにその通りだ。クリアするごとに記録がリセットされるものの、エリアのレベル上級25制限といっても攻略クランの連中ならそれほど苦労しないだろう。情報クランも同じ様にそっちを狙っているんだよと言っている。


「このエリアに来てレベルの上がりが鈍くなっているというのもあるのよ。モチベーションを保つには違う事をした方がいいでしょうし。ダンジョンと新しいエリアの探索を交互にする感じかしら」

 

 補足する感じでマリアが言った。


 ゲームを作業にしなくて楽しみながらやろうと言うのが攻略クランのポリシーだ。色々なことをやってみるのは大事だよね


 新しい街の状況をある程度掴んだこともあるんだろう、情報クランも攻略クランも一息ついている様に見える。


 ここにいる俺以外の4人の意見は新エリアは当分武器、防具を売っている店は無く、強化によって自分の装備を強くしながら開拓を進めていくエリアになっているのではないかということらしい。


「25装備の価格はかなり高い。エリアが変わってせっかく高いお金を払って買った装備や防具が無駄になるとプレイヤーサイドから不満が出るのは間違いない。なので武器を強化する前提で森小屋であの高値で売っていたのではないかな」


 スタンリーがそう言ったところでクラリアがその解釈は恐らく正解よ。と言ってから続ける。


「話は変わるけど、私たち以外に印章200枚の虎NM戦に勝利したプレイヤーが出たの」


「ほう」


 思わず俺とスタンリー、そしてマリアの3人がクラリアに顔を向けた。トミーは当然知っている。クラリアの言葉に頷いていた。


 彼女が間接的に聞いが話では死闘となってかなりの死に戻りが出たらしいが最終的にNMを倒すことに成功したそうだ。勝利したプレイヤーが周囲に情報クランが公開した情報があったからNMを倒す事ができたと言ってくれていることもあり200枚の印章NM戦の情報が売れているのだという。


「俺たちが売り出した情報で準備をし、俺たちの情報を参考にして戦闘して勝利する。情報クランとしてはこれ以上嬉しいことはないな」


 トミーが言っているがその気持ちもわかる。それにしても情報クランも攻略クランもこのゲームをしているプレイヤーに対する貢献度がでかいよな。もちろんテンプレ的なものに頼らずにゲームをしているプレイヤーもいるだろう。でもこういう方法がありますよという意味でテンプレ、1つのアイデアを提示している。NM戦にしてもそうだし、新しい街へのルートにしてもそうだ。


「でも嬉しいよね、そうやって皆が次々とクリアしていくのって」


 マリアが言っているがその通りだよ。運営側も苦労はするが、準備をきっちりすればクリアできる設定にしているはずだ。今回はその準備というのが25装備を装備するって事じゃないかな。


 俺がそう言うと他の3人もそう言うことだろうと言う。


「このエリアに来ると分かる。上級25装備が極めて優秀だってことがな。むしろ前のエリアではこの25装備は過剰とまでは言わないがそれに近いくらいに突き抜けている。どうしてここまで高いんだろうと思っていたが、それを装備して初めて虎NMの攻撃を受け止められ、自分たちの攻撃が彼らに通る様になっているのだと思う。森小屋では汎用性の高い武器や防具を売っていたんだな」



 攻略クランは明日から木のダンジョンに再挑戦をするそうだ。情報クランはチームを分けて、引き続き神魂石や強化の情報を収集するグループと印章200枚の虎NMをクリアしたパーティに詳しい話を聞くグループ、市内の情報収集するグループに分かれて活動をする。


「タクはどうするの?」


「俺はこの街の窯業ギルドで新しい窯を買ったんで、自宅で焼き物を作ってみようかなと思ってる。今週末のバザールに備えてね」


 そう言うとそれまで黙って横になっていたリンネとタロウが起き上がると、タロウは俺に体を寄せてきて、リンネは俺の膝の上でミーアキャットポーズになった。


「主はタロウやリンネ、ランとリーファの置物を作ってお店に出してくれるのです。皆買うのです」


「ガウガウ」


「私は買うわよ」


 マリアが言った。即答だよ。それを聞いたタロウがブンブンと尻尾を振っている。


「出すのは従魔の置物だけ?」


「いや、置物以外にお皿や食器も出そうかなと思ってる」


 クラリアの問いに答えると情報クランで使う食器を買おうかな、なんて言ってくれたよ。彼女がそう言うとマリアもそれもいいですね。と言っている。どうやら2つのクランは来客用の食器や陶器製のコップを買ってくれそうだ。そっちも作らないと。


 俺は彼らとの話が終わると渓谷の街の別宅から開拓者の街の自宅に飛んでログアウトした。明日からは自宅の工房にいる時間が長くなりそうだ。


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― 新着の感想 ―
リンネの親に挨拶に行くのはまだですか 焼いた人形渡したら怒られたりするのかしら
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