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別宅は安かった


 V.UP明け、開拓者の街の自宅でログインした俺は早速運営からの通知のウインドウを立ち上げた。後で聞いた話だとV.UPは当初予定していた時間よりも長くかかったみたいで最終的にV.UPが終わったのは朝の5時過ぎだったそうだ。24時間後を待っていたプレイヤー達はそれまでずっと待っていたらしいよ。俺は寝ていたけど。


 渓谷の街やテイムした従魔の成長率については特に説明がなく、説明があったのは新しく設置されるバザールについてだ。


 バザールについてというタイトルをタッチすると説明が出てきた。


・バザールは開拓者の街で週に1度。毎週日曜日の午後1時から午後9時までの間開催されます。その期間は開拓者の街にバザール会場というゲートが現れます。そのゲートを潜るとバザール会場となります。バザールのエリアは各ギルド別に分かれていますのでご興味のあるギルドのエリアを訪問して商品を探してください。


・開拓者の街を訪れた事があるプレイヤーであればレベルに関係なくバザールに出品をすることができます。


・バザールに出品を希望するプレイヤーはウインドウからバザールのタブを開いて出品するをタッチしてください。1回の店舗使用料は2,000ベニーです。出品を申しこんだ時点で2,000ベニーが自動的に所持金から引き落とされます。一度に出品できるアイテムは20個。途中の補充や交換に制限はありません。ただし直接戦闘で使用可能な武器、防具、アイテムをバザールで販売することはできません。ただしポーション類は販売可能です。


・出品にあたっては店舗で販売する商品を決め、その価格を決めることで商品が店舗に並ぶ様になります。尚、この作業は店舗でしか行えません。店舗の椅子に座ることで出品のためのウインドウが開きますのでそれに従って作業をしてください。


・出品手続きが終わるとプレイヤーはバザール会場にいる必要がありません。



 説明ではこうなっていた。習うより慣れろ。一度出品してみればやり方もわかるだろう。


 

「主、お手紙は読み終わったのです?」


 俺がウインドを閉じるまで傍で大人しく待っていた4体の従魔達。できた子達だよ。


「うん。じゃあ畑に行こう」


「ガウガウ」


「行こう、なのです」


 リンネとタロウは吠え、ランとリーファはサムズアップしてくる。


 何があってもルーティーンは変えたらダメだよね。収穫をし、種を蒔いて水をやる。収穫した農作物を農業ギルドに持ち込んだ時に農業ギルドマスターのネリーさんにバザールの出品について相談してみた。この日からタロウとリンネも一緒に農業ギルドに顔をだした。2体とも初めての場所で顔を左右に振ってキョロキョロしているぞ。


「本音を言うと引き続き全部こっちに売って欲しいところだよ。精霊が育てている農作物や果実は特別品になって世界中から売ってくれと話が来ているんだ。タクが個人的に食べる分まで売ってくれとは言わないよ。でもバザールでの出品は考えてくれないかね。今までタクの畑で採れた野菜や果物を買ってくれているレストランの連中はバザールには入れないからね」


 NPCとは思えないほどの対応力だな。そこまで言われてギルドに売る数量を減らせないよ。


「分かりました。畑で採れた農作物をバザールに出品するのはやめますよ」


「そうしてくれると助かるよ。悪いね」


 ネリーさんの表情が明るくなったよ。


「いえいえ、気にしないでください」


「主の従魔達がお手伝いをして作った野菜や果物は美味しいのです。ギルドに沢山売るからギルドは主に沢山お金を払うのです」


 リンネが言うとそうだね、こっちのお願いを聞いてくれたから何かお返しをしないとだめだよねと言って今回から俺の農産物のギルドの買い取り価格を一律で5%上げてくれた。まるでリアルだよ。


「いいんですか?」


「タクの従魔に言われちゃね。それにバザールへの出品もこっちからお願いして取り下げてもらった。それに応えるのは当然だよ」


 リンネ。グッジョブだぞ。


 

 農業ギルドから戻ってくるとランとリーファに留守番を頼んで俺達は渓谷の街に飛んだ。ギルド奥から中に入るとそこは予想通り冒険者ギルドになっていてホールには椅子とテーブルが置かれていて多くのプレイヤーが集まっている。

 

「賑やかなのです」


 頭の上からリンネの声がする。


「だよな。まずはマップ作成クエストを受けて、テイマーギルドを探そう」


 ギルドのカウンターでマップ作成の受けストを受けて外に出るとそれまでとは全然違う風景が目の前にあった。大きな通りが走り道路脇には建物が並んでいる。南側を歩いてみるとその草原にはログハウス風の家がいくつも建っている。城壁も城門もない。エリアボスを倒して出てきた洞窟の出口からすでに渓谷の街だった。

 

 その南の山には俺たちが出てきた洞窟以外に3つほど新しい洞窟があるのが目に入ってきた。あれは何だろう。何か採掘しているのかもしれないな。


 一通り南側を見てから今度は北に向かって市内を歩いていく。渓谷の間の街なので東西の幅は短く、南北に長い作りになっていた。テイマーギルドは一番西側の通りの南のハズレにあった。


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 扉を開けて中に入るとカウンターに猫族の女性NPCが2人座っている。テイマーギルドの受付は猫族。これはブレないな。


 受付の2人はジャスミンさん、ハーブさんだと自己紹介された。彼女達はカウンターを回ってこちらにくるとタロウとリンネを撫でる。2体とも尻尾を振っていて嬉しそうだ。しばらく撫でていた2人、立ち上がると俺に顔を向けた。


「タロウもリンネもタクさんによく懐いていますね。テイマーギルドとしてアドバイスすることはありません」


 従魔達との親密度が下がっていないとは思っていたけどこうやってプロからそれを聞くと安心するよ。


「主は良い人なのです。タロウもリンネも主と一緒にいるのが大好きなのです」


「よいご主人と巡り合ってよかったね」


 ハーブさんが言うとリンネがはいなのですと答え、タロウは尻尾を振りながらガウガウと吠えている。


 お礼を言ってテイマーギルドを出た俺たちはマップを作成しながら街の中を歩いていると端末が鳴った。タロウの背中に乗っているリンネが条件反射で声をかけてくれる。


「主、お電話なのです」


「おう、ありがと」


 相手はクラリアだ。通りの端に寄って通話ボタンを押した。


「どうした?」


「今渓谷の街でしょ?」


「そうそう。マップ作成クエストを受けてテイマーギルドに顔を出したところだよ」


「別宅は買った?」


「いや、まだ。というかこの街にも別宅があるんだ」


「街の南側にあるログハウスが別宅になっているのよ。森の街みたいな感じ。ただこちらは買取りだけどね」


 そう言ったクラリア。


「買取りか。高いの?」


「それが安いのよ。私たちのオフィスタイプ、大人数用で1,000万、普通のサイズなら500万よ」


「なるほど。それなら買えるな。じゃあ先にそっちを押さえようか」


「そうしてくれる?」


 情報クランと攻略クランは別宅のログハウスを購入したらしいので買う時はその近くにしてくれという連絡だった。通話を終えると再び南に移動する。そこに1軒だけ色の違う建物がある。おそらくあれが受付のある建物だろうとあたりをつけて顔を出すと予想通りだった。


 別宅の広さが大と小の2種類あり、1パーティなら小で十分ですよとアドバイスを受ける。別宅が安い理由を受付のNPCに聞くと渓谷の街は出来たばかりの新しい街なので多くの人たちにこの街に住んでもらいたいということから低価格に設定してあるんですという説明を受けた。ただ転送盤については他の街と同様100万だったよ。これは仕方がないか。


 お金を払ってこの街でも別宅を手にいれることができた。場所は2つのクランの隣というか裏側にした。新しい家を建てて転送盤を設置し終えたタイミングでクラリアとトミーがやってきた。


「ガウガウ」


「いらっしゃいませなのです。主の新しいお家でゆっくりしていいのです」


 庭で遊んでいたタロウとリンネが2人を出迎えてくれる。トミーがありがとうなと言ってタロウとリンネを撫でてから俺に顔を向けた。


「近くに買ってくれてありがとう。これでまたこそこそ打ち合わせができる」


 こそこそ打ち合わせするんだなと俺が言うと内密の打ち合わせはタクの自宅か別宅。これは攻略クランと情報クランとの間の共通理解なんだよと笑いながらトミーが言った。


「タクはまだ街の中を全て歩いていないでしょ?」


 クラリアの言葉にその通りと頷く俺。今まさにマップ作成クエストを受けたところだよと言う話をすると2人が顔を見合わせてからトミーが言った。


「実はな。この渓谷の街には武器屋も防具屋も無いんだ」


「えっ?マジ?」


 街の中に武器、防具を扱っている店が無いのかよ。驚いていると彼が続けて言った。


「売っている店はないがその代わりというか、PWLで初めての店が登場した」


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― 新着の感想 ―
初めての店、、、なんだろう、、、? 飲食店はある。武器防具屋は当然ある。各ギルド関係の道具の店とかもあるだろうし。物件販売はある。 家具屋はあったっけ? フィールドでテイムしたモンスターってわざわ…
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