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従魔達はヘイトを稼がない


 それから1週間後、俺たちは印章200枚のNM戦を2戦やったがどちらも勝つ事ができた。それもタロウの王者の威圧を使わないで勝ったんだ。すごいよ。


 参加プレイヤーの多くの装備が25装備に変更されたことでここまで変わるのかという程の違いがあったよ。それは俺も同じだった。新しい装備と武器で刀の威力は実感できる程強くなっているし身体もずっと素早く動ける。それとダンジョンボスからゲットした森の精霊のバンダナだ。これが25装備の能力をさらに上乗せしていた。


 NM戦の前の打ち合わせの時、今回はできるだけタロウの王者の威圧のスキルを使わないでやってみよう、一人でも死に戻りが出たらその時点でタロウのスキルを使うということにする。爆弾もとりあえず使用しない方向でやってみようということになった。


「値段が高い25装備の実力の検証、それと狂騒状態でのNMの動き。これをしっかりと把握したいのよ」


 情報クランはこの印章200枚のNM戦の情報を公開したいと考えている。そうすることで多くのプレイやーが挑戦しようという気になるかららしい。俺は知らなかったがネットやこのゲーム内の掲示板では印章100枚、200枚のNM戦はプレイヤースキル以外に空蝉の術や強力な従魔達のサポートがないと勝てないのではないかという話になっているそうだ。


「後続組も続々と上級ジョブに転換してレベルをあげている。これからは高レベルの上忍も増えるでしょう。空蝉の術があれば必ず勝てるNMじゃないけど蝉があれば楽になるのは間違いない。ただそれだけじゃなくて各自がしっかりと装備を揃えて準備をすれば勝てるということを知って欲しいのよ」


 そう熱く語ったクラリアだがそれはこのNM戦に参加する情報クランの他のメンバー、そして攻略クランのメンバーも同じだった。


「俺たち専用のNMじゃない。攻略組としては攻略して後は知らないというのではなく得た情報は情報クランからしっかりと流すことで多くのプレイヤーにNM戦を楽しんでもらいたいんだよ」


 皆大人だよ。その考えには俺も賛同するよ。皆が挑戦すれば他にもっと良いやり方が見つかるかもしれないしね。



 戦闘が終わった後試練の街に戻ってきて攻略クランのオフィスで話をしている俺達。


「25装備が充実するとずっと難易度が下がるわね」


「これなら俺たち以外のプレイヤーでも勝負できるな」


「上忍の空蝉の術は必須だろう」


「なかったら神官の負担が大きくなるよな。蝉で耐えている間に各自が回復できるとリスクが減る」


 戦闘が終わった後試練の街に戻ってきて攻略クランのオフィスで話をしている俺達。


 今回はNMの虎の狂騒状態も見ていた。狂騒状態になるとNMは全身を震わせて咆哮をあげるとターゲットを持っている相手に強烈な蹴りか頭突きをしてくる。NMはヘイトを稼いでいるプレイヤー順に攻撃をしてきた。一撃を繰り出すと次は2番目にヘイトを稼いでいたプレイヤーを探して突撃してくる、次は3番目。攻撃を繰り出すとヘイトはリセットされる様で前衛が終わると後衛に対してヘイトが向けられる様だ。


 ただ攻撃は物理攻撃なので後衛にヘイトが向かった時にパラディンやウォリアー達が壁を作ってNMの攻撃を受け止めたので死に戻りは1人もいなかった。


 このヘイトのリセットと移動の法則を見つけたのはクラリアだった。彼女は攻撃に参加しながらタイムキーパーと全体の動きを見る役割もしていたこともあり、プレイヤーでヘイトを稼いでいるのが誰かというのを大まかに把握していたらしい。いや、すごいよ。


 ヘイトを取った順をジョブで言うと両パラディンが最もヘイトを稼いでいて、ついでタロウ、その次がウォリアー、マスターモンクそして上忍の俺。この3つのジョブは皆ほぼ同じヘイトだろう。近くにいたプレイヤーに襲ってきたからな。そして驚いたのはリンネだ。あれだけ攻撃していたのに虎NMのヘイトが向かない。その後後衛に攻撃をしようとしたところで俺たちが総攻撃をしてNMを倒したのでリンネと魔法使いと神官のどれがヘイトを稼いでいたのかは分からないが少なくとも前衛の連中よりはずっと低いということがわかった。精霊士や神官以上にガンガン魔法を使って撃っていたリンネは後衛連中と同じか、それ以下かもしれない。

 

 スタンリーやトミーによるとこのNM戦に参加している後衛の連中は皆普段からヘイト管理に気をつけているので闇雲に魔法を打ち続ける人はいないのだという。ヘイト管理もPSの1つだよね。リンネはヘイト管理はしてないだろうけど九尾狐の特性なのかな。俺に取っては助かるけど。


 2戦やってNMのパターンを掴んだ。これで情報を公開できると情報クランの連中は喜んでいる。


「それにしてもだ、タクの従魔達は2体とも敵対心が低いな」


 トミーが言うと皆頷いた。皆最初にタロウを攻撃するのかなと思っていたよと言っている。タロウはほぼ休みなく攻撃を続けていたからね。


「従魔には敵対心マイナスが最初からあるのかもしれないな」


「おそらくそうだろう。タロウもリンネもあれだけ派手に攻撃してもジャックスやリックよりもヘイトを稼いでいないんだからな」


 スタンリーが言った。


「リンネちゃん、今日の虎は強かった?」


 マリアが聞いた。俺の膝の上で横になっていたリンネは膝の上でミーアキャットスタイルになるとマリアに顔を向ける。


「主もタロウもリンネもずっと強くなっているのです。だから今日の虎さんは強くなかったのです」


「ガウガウ」


 俺の隣でゴロンと横になっていたタロウが起き上がって尻尾を振りながら吠えた。その通りだと言っている。吠えるとまた横になる。リンネの言葉を聞いていた情報クランのトミーとクラリア。


「25装備はNMとのレベル差を詰めるほどに優秀な装備だということになるな」


「それも情報を公開する時に付け加えましょう。どうして25装備がこれほど高いのか納得できる理由の1つになるから」


 印章NM戦に2戦とも勝利したその戦利品は今までのと同じだった。装備を揃えていないプレイヤーがそれを手に入れたことで情報クラン、攻略クランのメンバーの殆どが全身25装備で固めることができた様だ。これで攻略が一段と楽になるよと言っている2つのクラン。


 従魔のスカーフが2つ出たので俺は1つだけもらった。これで4体の従魔全員が常時青色のスカーフを首につけていることができる。もう1つの従魔のスカーフはテイムしている参加メンバーの一人が手に入れた。忍靴も2つもらったので1つは山裾の街のヤヨイさん、もう1つは第3の街のドワーフの親父さん夫婦に渡すつもりだ。


 2つのクランによればこれで一旦虎NM戦は終了とし、今後は森小屋の奥の探索に注力していく予定らしい。このエリアのどこかにエリアボスがいて次のエリアへ続くルートがあるはずだ、それを見つけるんだと気合十分のメンバー達。


「装備もよくなったし今以上に奥まで進めると思う。まずはセーフゾーンを探すことになるだろう。もちろんその前にエリアボスがいる可能性もあるが、今までの探索で日帰りできる範囲には何もないことは分かっている。奥に進むには転移の腕輪がない前提になっているだろうからセーフゾーンがあると見ているんだよ」


 スタンリーの言う通りだろう。彼らは攻略のプロ集団だ。頑張ってもらおう。



 新しくもらった忍靴をヤヨイさんとドワーフの親父さんと奥さんに渡したら二人とも喜んでくれた。


「新しい装備を調べると勉強になるのよ。これは売り物にせずに私の勉強の教材にさせてもらうわ」


 ヤヨイさんはそう言い、ドワーフの親父さんは渡した靴を手に持ってじっくりと見てから短く、


「ありがとう」


 とだけ言った。もう慣れてるから問題ないよ。代わりに奥さんが丁寧にお礼を言ってくれたよ。



 翌日から2つのクランが森小屋をベースにして共同で探索を開始したというメッセージがトミーから入ってきた。 俺は農業をし、釣りをし、そして窯業をしている。最近では自分の窯で作る皿やコップの品質が上がったと自分でも思う様になったし実際に窯業ギルドに持ち込んでも買い取り価格が上がっている。ちなみに窯業スキルは40になっていた。もちろん置き物も自作している。従魔の置き物はすでに第三世代になっていた。スキルが上がって作るたびにより当人達に似てくるんだよ。過去作った従魔達の置き物は倉庫に飾ってある。


 スキルが上がったことで従魔達の置き物もいろんなポーズを取っているものが作れる様になっていた。複雑な形もスキルが上がると上手く作れるんだよね。こうして倉庫には4体の従魔の置き物が少しずつ増えていった。


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