表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/275

装備を更新しました


 シーナさんとモトナリ刀匠らから上忍の25装備は森小屋以外では売っていないということが確認できた。となると次は森小屋に行って実際にどんな防具や刀が売っているかのチェックだ。


「主はどれを買う予定なのです?」


 森の街の東門から転送盤のある釣り小屋に向かって歩いているとタロウの背中に乗っているリンネが聞いてきた。


「どれにしような。先ずはどんなのが売っているのか見ないとね」


「どれを買っても強くなるとお店の人が言っていたのです。主が欲しいのを買えば良いのです。タロウとリンネがしっかりとお守りするのです」


「ガウガウ」


 タロウも歩きながら尻尾をブンブンと振っている。


「そうだな。うん、ありがとうな」


 タロウにリンネ、もちろんランとリーファもだが、従魔達は俺に対してネガティブな態度や発言をして来ることがない。おかげでゲームを楽しめているよ。


 セーフゾーンにある釣り小屋から森小屋に飛ぶとその中にある打ち合わせ用のテーブルにはパーティメンバーだと思われるプレイヤー数組が座っているのが目に入ってきた。


「フェンリル忍者だ」


 という声の後テーブルから声をかけられる。


「25装備を買いにきたのかい?」


「そうそう。上忍の装備もここでしか手に入らないって聞いてね。どんなのがあるのか、いくらなのか見にきたんだよ」


 声をかけてきたプレイヤーは自分は知らない男性だが同じゲームをしている仲間だ。話かけられたらちゃんと答えるよ。


「そっちは?」


「俺たちはまだ23なんだよ。ここをベースにレベル上げさ」


「なるほど」

 

 と言うとリンネが頑張るのですと彼らに声をかけた。リンネに声をかけられて歓声を上げてありがとうと言うプレイヤー達。リンネはどこでも人気者だよな。


 挨拶を終えて打ち合わせをしている彼らと離れて反対側にあるカウンターに足を向けるとエルフの女性がいらっしゃいませと声をかけてきた。


「上忍用のレベル25の装備を見たいんだけど」


「はい。こちらになります」


 そう言ってNPCがカウンターの上に置いたのは武器の刀が2種類と防具の忍装束が2種類だ。カウンターはそれほど高くなくてタロウも見ることができる。


 刀の方は柄の部分の色が異なっており1つは黒でもう一つは濃い紫色だ。忍装束も同じ様に黒と濃い紫色の2種類がある。リンネは俺の頭の上から刀や防具を覗き込んでいるし、タロウも首を突き出して見ている。


 黒い方は力が上がる付帯効果があり、濃い紫の方は素早さが上がる付帯効果があるらしい。これは刀も防具も同じだとNPCのエルフの女性が説明してくれる。


 値札を見ると黒も紫も同じ価格だ。


 装束:300万ベニー(上下セット)

 刀:150万ベニー(1本の価格)


 となっている。やっぱりいい値段がするよ。ただ今の手持ちのお金で買えない事はない値段だな。


「これ、刀を黒と紫の1本ずつ買うってことはできますか?」


「できますよ」


 おっ、それなら決まりだな。装束は力が上がる、おそらくSTRが上がる黒色のにして刀はそれぞれ1本買おう。バンダナの効果もあるからこれが良さそうな気がする。STRが上がる事で一撃のダメージが上昇するだろう。そして刀で忍者の特性であるAGIも上がって素早く動ける。


 手持ちのお金の多くを使うことになるが農業でまた稼げばいいか。それよりもこの装備を手に入れて自分が強くなる方が大事だよ。レベルを上げて良い装備を手にするのはゲームの基本だし。


「装束は力が上がる黒にして刀は黒と紫のを1本ずつ買おうと思うがどうだ?」


 一応タロウとリンネの了解も取らないとなと思って聞いてみた。タロウはガウと言って尻尾を振っている。リンネは俺の頭の上に乗ったまま、


「主が決めることに間違いはないのです」


 と言ってくれた。これで決まった。その場でお金を払うと端末に買い物が収納された。それをボタン1つ押すと着替えが完了だ。刀は右手に黒、左手に紫を持つことにする。


「格好いいのです。また強くなったのです」


「ガウガウ」


 俺の新しい格好を見て喜んでくれる従魔達。装備を新しくした俺は森小屋を出るとそのまま森の中に入って新しい装備で魔獣を相手にしてみる。新しい装備の威力は想像以上だった。バンダナの効果もプラスされているだろうがそれでも今までとは動きが数段よくなり、刀のダメージも上がっているのが実感できる。


「新しい装備に変えてよかったぞ。また少し強くなった」


「少しじゃないのです。主はずっと強くなったのです。でかしたのです」


「ガウガウ」


 リンネとタロウが新しい装備を褒めてくれる。森の奥で数体の魔獣を倒してその威力を確認した俺たちは満足して自宅に戻った。

 


 木のダンジョンで手に入れたアイテムについて情報クランと攻略クランに販売を頼んでから3日後、4人が自宅にやってきた。

 

 庭から入って来た4人は縁側に置いてある従魔達の置き物を見つけてそれに顔を近づける。タロウやリンネはもちろん、ランとリーファも縁側にやってきた。


「タクが作ったのかい?よくできてるじゃないの」


「本当、皆の特徴がよく出てるわね」


 スタンリーとマリアがそう言う。クラリアやトミーも同じ様なことを言いながら4体の置き物を見ていた。


「主は何をやっても一番なのです。置き物はリンネもタロウもランもリーファも皆気に入っているのです」


 リンネがどうだと言わんばかりの口調だ。俺が撫でてやると尻尾をブンブンと振り回してくる。一通り置き物を見てから全員が縁側に座り、クラリアが俺に顔を向けた。


「タクも装備を変えたのね」


「そうなんだよ」


 俺はそう言ってから森の街の忍具店のシーナさんから聞いた話、試練の街のモトナリ刀匠から聞いた話、それから森小屋での話を4人にする。


「聞いている限りウォリアーと同じくSTR系、AGI系の2種類なんだな」


 そう言ったスタンリー。ジョブによって特徴が異なっているものが用意されているらしく、例えばハンターの場合はSTRとDEXがあるという。攻撃力を上げるか器用さを上げて命中率を上げるのか。そこはプレイヤーの個性が出るところだよな。


「それでタクのドロップ品だけど、全部売れたわよ」


「おお、ありがとう」


「希望者が多くて取り合いになったわ」


「そうなの?」


 そこまでなるとは思っていなかったぞ。


「すでに買っていた人は別にして買おうかどうか迷っている人は多いのよ。そんな時に1割安く手に入るとなればこれを機会に手に入れようと考えるのが普通よね」


 突撃の片手剣は情報クランのパラディンのリックが。森の杖はマリアが買った。そして遠隔命中の腕輪のHQは情報クランのヘンリーが買ったのだと教えてくれた。情報クランと攻略クランが一緒に集まって皆で話し合いをしたらしい。マリアが言うには希望者で抽選をした結果だという。


「即金で払える人に限定したの。そしてマリアが言った通り希望者で抽選をして今の3人が手に入れたのよ」


 ハンターの腕輪はお金が高いこともあり買えるのはヘンリーだけだったらしい。彼はマイスターで合成のプロだ。合成職人がお金持ちなのは皆知っているしね。抽選で勝ったマリアやリックもしっかりと金策をして貯めていたんだな。


 ということで俺の手元に900万ベニーが入ってきた。刀と装束で使ったお金以上の入金になって一気に財布が潤ったよ。


「エリアのレベルの上限に達しているのでエリアボスを探さないといけないがそれと同時に装備の強化も必要だ。俺たちはしばらく森小屋をベースに探索をしつつ経験値を稼ぎながら金策もするつもりなんだよ」


 スタンリーが言うとクラリアが情報クランも森小屋をベースにして活動をする予定だという。時にバラバラに、時に合同で森の奥の探索を進めて行きながら装備を強化することで2つのクランで決めたらしい。魔獣のレベルの分布から見て森小屋から森の奥に進んだあたりにエリアボスがいるんじゃないかという目星をつけているのだと言う。


「ボスを探しつつ金策をしメンバーの装備を強化する。その過程で印章200枚のNM戦もやるつもりだよ」


 確かに200枚のNM戦のドロップは魅力的だよな。


「タクは25になったしどうする?一緒に動く?」


「俺は農業や合成や釣りをして、その合間に印章集めの目的でそこらの魔獣を倒すよ。エリアボスの探索はプロにお任せしますよ」


「お任せしますよ、なのです」


 それまで黙って俺の膝の上に座っていたリンネが俺の言葉を復唱する。リンネもタロウも今俺が言った活動方針で問題がないらしい。


「もちろん何かあったらいつでも協力するよ。タロウもリンネも強いからね」


 俺が4人に言うとその時は頼むよと言ってきたがリンネが違うのですと言う。


「主が一番強いのです」


「ガウガウ」


「そうだね。リンネちゃんとタロウちゃんの主のタクは強いよね」


 マリアが言うとその通りなのですと尻尾を振るタロウとリンネ。


 4人が帰った後で俺はそばにいる従魔達に言った。リンネは俺の膝の上に乗っているしランとリーファは肩に乗っている。


「さっきも言ったけどこのエリアの上限のレベルになったから明日からはのんびりするよ」


 そう言うとタロウはガウガウと吠え、ランとリーファは座ったままサムズアップをする。


「主の好きにするのです。皆主についていくのです」


 リンネがそう言ってくれたのでリンネを始め従魔達の背中を撫でてやる。


「うん、ありがとうな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
両手で違う効果の武器を持つ!二刀流のロマンですね!! 忍者は不遇な場面が多いみたいだけど、両手に違う効果の武器が持てるなら、整えることができれば能力的には他職を引き離すタイミングが結構ありそう。 だ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ