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木のダンジョンに挑戦しよう


 上級レベルが20になったので俺は森の街にあるシーナさんの忍具店に顔を出した。


「こんにちは、タク。上級レベルが20になったんだね」


 店の扉を開けて声をかけると奥からシーナさんが出てきて俺を見るなり言った。タロウとリンネもしっかりと挨拶をしている。


「そうなんですよ。上級レベルが20になりました」


 ひょっとしたら新しい装備の話が出るかもと期待して次の言葉を待っていたが出てきた言葉は、


「レベルが上がると強くなって攻略が楽になる。引き続き頑張りなよ」


 だった。


 まだ俺のレベル上忍20だと装備更新のタイミングではないみたいだ。他のジョブでも20では新しい装備が紹介されなかったというので当然の結果といえばそうなんだけど少しは期待していたんだよ。


 またお邪魔しますと店を出た俺たち。


「主はこれから何をするのです?」


 タロウの背中に乗っているリンネが聞いてきた。

 シーナさんの店の前で立ち止まった俺はタロウとリンネを見る。


「森の街の近くにダンジョンが見つかっているだろう?一度行ってみようと思っているんだ。どうかな?」


「ガウ!」


「行くのです。ダンジョンで敵を倒しながら前に進むのです」


 タロウとリンネがすぐに返事をする。戦闘ができるのならダンジョンでもいいのかな?とにかく2体の従魔がOKなら問題ない。


 森の街を出るとタロウの背中に乗った俺とリンネは森の中を走って一気にダンジョンの入り口までやってきた。そこは一目で周囲とは違っている太い木が立っている。上を見上げると高さは周囲の木の高さと変わらない。これもゲームならではの仕様なんだろう。


 数名のプレイヤー達が入り口にいたがタロウに乗ってきた俺たちを見て皆びっくりした表情になって、その次には口々にいいなぁと言っているのが聞こえてきた。なんだか申し訳ないね。でも許してくれよ。


「タクもこのダンジョンに挑戦するのかい?」


 集まっているプレイヤーの1人が聞いてきた。俺は話かけてきたプレイヤーの名前は知らないが相手は俺の名前を知っているみたいだ。


「そうなんだよ。初めて挑戦するんだけど中は広いらしいね」


 タロウから降りた俺。早速リンネが頭の上に乗ってくる。


「広い。そして視界がよくないんだ」


 彼が言うとやりとりを聞いていた他のプレイヤー達も話をしてくれる。


「ありがとう。助かるよ」


「ありがとうなのです」


「ガウガウ」


 リンネとタロウが挨拶をするとおおーと言う声が出た。お礼を言った俺たちは大木に大きく開いている穴から中に入ると、外からは見えなかったが中に入ったところにNPCがいて俺たちを見ると端末をここにかざしてくれと言う。


「このダンジョンは上に上がっていく。気をつけてな」


 お礼を言って前に進むと一瞬目の前が暗転したかと思った次の瞬間に俺たちは広い森の中に立っていた。


「これがダンジョンの中なのです?」


 頭の上に乗ってミーアキャットポーズで左右をキョロキョロと見ているであろうリンネが言った。尻尾が左右に揺れるからわかるんだよ。


「これからダンジョンを攻略するがタロウもリンネも大丈夫か?」


「ガウ」


「大丈夫なのです。リンネは強くなってダンジョンは平気になっているのです」


 第二の試練で洞窟をクリアしたのとレベルが上がったからかな。暗いところは苦手なのですと言っていたのが懐かしいよ。


 俺は頭に乗っていたリンネを地面におろすと、その場に座っている2体の従魔を見る。


「低層は敵のレベルが低い。1層で上級レベル12、2層で上級レベル13だそうだ」

 

 そこで話を切って2体を見ると尻尾を振って俺を見ている。うん、理解してくれているな。


「そこでだ。俺たちは今上級レベル20だ。ということで8層か9層くらいまではタロウの背中に乗って一気に進みたい。敵を倒さずにひたすらに上に上がる階段を探す。戦闘は上の層に登ってからになるがいいかな。タロウには負担がかかるが大丈夫か?」


「ガウ!ガウ!」


 今まで以上に大きく尻尾を振っているタロウ。仕草を見るに任せろと言っているな。


「問題ないと言っているのです。タロウに任せるのです」


「分かった。タロウ頼むぞ」


「ガウ!」


 俺はリンネに顔を向ける。


「敵を避けて進むがどうしても逃げられない時はリンネ、魔法で倒してしまえ」


「倒してしまえなのです。やってやるのです」


「よし、行くぞ」


 腰を下ろしたタロウの背中に乗ると俺の前にリンネがちょこんと座った。ゆっくりと起き上がると森の中に向かって駆け出した。


「真っ直ぐに行こう!」


「分かったのです!」


 森の中の木々の間を疾走するタロウ。左右を見ると上級レベル12クラスの魔獣の姿が見えるが俺たちは一才無視をして進んでいく。タロウの駆けるスピードが早いので追いつかない。奥まで走って左右を見ているとすぐに上に上がる階段を見つけた。


 階段を上がったところで休憩を取る。聞いていた通り階段の下にも上にも転送盤がない。できれば転送盤があるという10層から11層の階段まで一気に行きたいところだ。


「問題ないのです。行くのです」


 リンネは乗ってただけだから元気だよな。それは俺も同じなんだけど。タロウを見ると尻尾を振りながらガウと吠えている。


「タロウも大丈夫だと言っているのです。まだまだ走れるのです」


「じゃあ頑張ろう」


 しっかりと休み、時にはサーバントポーションをかけながらダンジョンを進んでいった俺たちは予想よりも短い時間で8層に到着した。8層は上級レベル19相当だ。俺たちは20だ。行けるっちゃ行けるかな。ただ7層から目に入る敵の数が多くなっていた。フロアも広くなり生えている木々の数も多い。


「余裕なのです。タロウの足に追いつける敵はいないのです」


「ガウ!」


 タロウも尻尾を振りまくっている。


「じゃあ行けるところまでタロウに乗って行こう。ただここでしっかり休むぞ」


 タロウとリンネの気配感知を利用して敵がいない方向を選んでフロアを進んで行く俺たち。景色は1層からほとんど変化がない。起伏はあるが基本は森の中を進んでいく。敵のレベルは当然上がっているんだろうけど、いかんせん戦闘を避けているので自分ではまだ確認できない。


 8層は戦闘をせず、9層では2度ほどリンネが正面にいる魔獣に魔法を撃っていずれも一発で倒し、俺たちはダンジョンの10層にやってきた。


「タロウ、頑張ったな」


「ガウガウ」


「主のために頑張ったと言っているのです」


「うん、リンネも良い魔法だったぞ」


「当然なのです。リンネの魔法は強いのです」


「そうだな」


 そう言ってリンネとタロウを撫でてやる。10層に上がる階段でしっかり休んだ俺たちはいよいよダンジョンの攻略を開始する。予想ではここは上級レベル21の敵が徘徊していることになる。レベル差が1つだけなので街の外での戦闘を経験している俺たちから見ると大丈夫だとは思うけど気は抜けないよ。


 端末を見ると時間的にはまだまだ大丈夫だ。余裕がある。


「ここからは敵を倒しながら進もう。頼むぞ」


 俺が2体を撫でながらそう言うとタロウもリンネも尻尾をブンブンと振って応えてくれる。戦闘好きな従魔だからな。それにお前達が頼りなんだぞ。


 目の前にはまるで森の街の郊外と言った風景が広がっている。ただ違うのは小山がありいく筋も川が流れていることだ。ここがダンジョンの中とは思えない程に作り込まれている。


 空蝉の術3を唱えた俺の行こうかという声で起き上がったタロウ。リンネはその背中に乗っている。階段を上がったところからフロアに足を踏み出した。


 9層を駆け抜けた時から想像すると、このフロアは四つ足の魔獣と獣人が徘徊しているフロアでその強さが一段上がっていると見る。


 進み出してすぐにタロウが低い唸り声を上げた。すぐにタロウから飛び降りたリンネも魔法を撃つ姿勢になる。すると木々の間から黒い虎が姿を現した。ただタロウが普通の威圧を唱えるとその虎の動きが緩慢になる。そこにリンネの魔法、タロウの蹴り、俺が少しだけ刀を振って問題なく敵を倒す。猛獣系相手にはタロウだよ。


「タロウ、その調子で頼むぞ」


「頼むぞ、なのです」


 フロアの中には一応土の道があるが蛇行しており左右の木々の間や時には木の上から敵が襲いかかってくる。ただタロウと時にリンネの気配感知があるので不意打ちを喰らうことはない。3人、いや1人と従魔2体だけど全く問題ないね。


 ただフロアには宝箱があったりすると聞いていたがその姿が全く見えない。9層まではひたすら駆け抜けてきたこともあるので宝箱が見つからないのはわかるけど10層も今の所その気配がない。やっぱり道から外れた方がいいみたいだ。どうしようかな。宝箱を探して道から外れるか、それともこのフロアは普通にクリアして11層で探すか。


 悩んだ末にこの10層は道なりに進むことにする。上に行くほど宝箱があった時の中身が良い物だろうし。まずは当初の目標である10層から11層に上がったところにある転送盤の登録だ。うん、目的を忘れちゃいけないよ。


 それから3時間ほどかけて俺たちは当初の目標である11層に上がったところにある転送盤を登録することができた。これで次回からはいきなり11層から攻略できるぞ。


 タロウとリンネは9層、10層でしっかり戦闘をしてストレスを発散できたのか尻尾を振って機嫌が良い。


「転送盤も登録できたから帰ろうか。今度はこのフロアから攻略するぞ」


「分かったのです。お家に帰って休むのです」


「ガウ」


「その通りだ。ランとリーファが留守番してくれている家に帰ろう」


 転送盤で1階のダンジョンの入り口近くまで飛べたのを確認してから転移の腕輪で開拓者の街の自宅に戻った俺たち。


 久しぶりにがっつりと戦闘をして疲れたよ。



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