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別宅を買った


「スタンリーの読みが正しかったわね」


「ああ。それにしても見事にレンガ作りだな」


 俺たちが立っている道の前には大きな川が流れている。川幅は20メートル程でそこに橋がかかっていてその橋の向こうにレンガ作りの城壁に囲まれている街の入り口が見えていた。目の前の川の水は右から左、東側から西側にゆっくりと流れている。今までの流れとは逆だ。


 ここから見る限り土の街のある場所は森に囲まれている広いサバンナと言った感じだ。自分たちが立っている城門から見てそのずっと奥から煙が立ち昇っているのが見える。


 橋を渡って城門をくぐると今までの街とは違った風景が目の前にあった。建物が全てレンガ造りになっている。日本で言うと明治時代に作られた建物が並んでいる感じだ。レンガ造りの建物でレンガとレンガの繋ぎ目は白く、窓枠も白で統一されていて絶妙なコントラストになっている。森の街や水の街がログハウス風の建物だったのでこの景色は新鮮だ。ところどころに低木が生えている。サバンナの低木を残しまま街を作っている様だ。


「これはこれで新鮮な景色ね、しかも綺麗な街並みね」


 マリアが言っているが俺も全く同じ感想だよ。


 タロウもリンネも街の中に入ることができたので大喜びだ。リンネは俺の頭の上に乗ってキョロキョロしている。体を動かすたびに7本の尻尾が頭に擦れるから分かるんだよ。リンネじゃなくてもキョロキョロするよな。なんせ新しい街なんだから。タロウも横を歩きながらも尻尾と顔を左右に振っている。


「主、煙が出ていた土の街に着いたのです。」


「そうだよ。今までとは雰囲気が違う街だな」


「綺麗な街を探検するのです」


「うん。でもその前にまず冒険者ギルドに行ってからだぞ」


 街にいるNPCはドワーフが多い。今までエルフが多い街だったからこれも新鮮だ。先頭を歩いているクラリアが屋台のおっちゃんと話している声が聞こえてきた。おっちゃんはドワーフだ。


「なぜかこの一帯だけが森じゃない。俺たちの祖先がここの地面を調べたら良質の土だった。だからこの地に住んで街を作ったって聞いてる。街の奥に行けば採掘場や工場があるよ」

 

 先駆者達が木を切ってこの街を作ったのではなく最初から木が少ないエリアだったんだ。市内にある冒険者ギルドもレンガ作りの建物だった。全員がここで転送盤の登録をする。


「転送盤に乗っても森小屋は目的地として出てこないな」


 情報クランの1人が確認していた。森の街の釣り小屋の様などこか他の場所にあるのかもしれない。もちろん無い、転送できないという可能性もあるよな。


 全員が転送盤を登録したところで一旦解散となった。情報クランと攻略クランはオフィスを探してから一旦森の街に戻り、仲間を連れてくるという。俺達は例によって市内をブラブラしながらテイマーギルドと住居を探すことにする。


「一度通ったルートだ。出会う敵のレベルや種類もわかっている。情報クランと一緒に移動をするつもりだし道中は問題はないだろう」


 スタンリーとクラリアのパーティはこのまま土の街の探索をし、一緒にやってきた情報クランのもう1つのパーティメンバーが一旦戻ってから攻略クランと自分のクランのメンバーを案内して森の中を歩きながらこの街を目指すことになった。


「俺はテイマーギルドを探して、あとはこの市内をうろうろするよ」


 お互いに連絡を取り合おうと情報クラン、攻略クランと分かれた俺たちはギルドの受付で市内のマップ作成クエストを受けるとギルドをでた。


 大通りを歩いていくと奥にテイマーギルドの看板を見つける。


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 俺が扉を開けると先に入っていくタロウとリンネ。後からこんにちはと中に入ると受付に2人の猫人の女性、NPCが座っていた。ドワーフが多いこの街でもやっぱりテイマーギルドのNPCは猫人なんだな。うん、予想通りだよ。


「こんにちは、タクさん」


 ここの受付のNPCはイサベルさんとマルタさん。テイマーギルドの受付は猫人。これはどの街でも変わらない。そしてテイマーギルドが中心地から少し離れた場所にあるのもどの街でも同じだ。


「タロウとリンネはどうですか?」


 カウンターを回って2体の従魔に近づいてきた2人に聞いた。タロウは後ろ足座りで尻尾を振っているし、リンネも同じ様に床の上に後ろ足座りをしている。


「2体とも元気ですよ。タクさんとの親密度も最も高いレベルですね」


 おお、それは嬉しいな。


「当然なのです。タロウもリンネも主の事が大好きなのです。良い主なのです」


「ガウガウ」


 2体がそう言ってくれる。しっかり撫でてやるよ。タロウとリンネを撫でながらこの街で従魔達と一緒に泊まれる宿がありますかと聞くと水の街と同じくこの街で別宅が持てると教えてくれた。


 場所を聞いてお礼を言ってテイマーギルドを出たところで端末が鳴った。


「主、お電話なのです」


「うん、ありがと」


 相手はクラリアで別宅を押さえたからいつもの通り攻略クランの隣を買ってくれと言う。ちょうど今からそこに行くつもりだったんだよと言って通話を終えて教えてもらった不動産屋に行って契約をする。別宅は水の街と同じ金額、2,000万ベニーだった。もちろんさらに100万ベニーを支払って転送盤も一緒に買う。


 場所は路地を入った2軒目、攻略クランの隣にする。別宅もレンガ造りだった。外装はレンガだが家の中はちゃんと普通に作られていた。そりゃそうだよな、中も剥き出しのレンガで2,000万ベニーならぼったくりだよ。庭は今までの別宅と同じで早速タロウとリンネが庭で遊び回っている。そのうちに攻略クランと庭を繋げるのだろうが今は隣はいない様だ。市内の探索に出かけているんだろう。


 別宅を買った。転送盤も揃えた。これで土の街にも拠点ができたぞ。



 翌日、自宅でルーティーンの畑の見回りを終えるとタロウとリンネと一緒に土の街の別宅に飛んだ。待ち構えていた様にマリアが玄関に来て今から庭を繋げていいかなと聞いてきた。もちろんこっちに異存はない。


 しばらくして庭と庭とがつながると隣からマリアとスタンリーがやって来た。マリアはタロウを撫で回し、スタンリーは庭にある椅子に座った。


「昨日は市内を少し見てきた。街の奥に行くとレンガ工場があり、その奥は採掘場になっていた。街は結構大きいぞ」


 なるほど。


「街の外には出てみたの?」


「それは今日からやるつもりだ。とりあえず街の周辺の探索だな。この土の街のある場所だけがサバンナの様だが周囲は全て森だ。今までの森の探索と同じだろう。魔獣のレベルはわからないが、おそらくトミーの推測通りここは水の街と同じレベルだと思う」


 スタンリーと話をしていると向かいの別宅からクラリアとトミーがやってきた。それを機会にマリアもタロウから離れて庭のテーブルにやってきた。4人が庭の椅子に座り、俺はウッドデッキに腰掛ける。するとタロウが横にやってきて身体を擦り付けながらゴロンと横になった。リンネは座った俺の膝の上に移動してくる。


「この街の情報は明日販売するの。すでに相当数の予約が来てるのよ」


 情報クランでは販売する資料を絶賛作成中らしい。プレイヤーからみると新しい街が見つかったとなれば行ってみようぜってなるからな。


「ただ水の街の周辺も完全に調査が終わっていない。その中でのこの土の街の発見だろう?木のダンジョンも攻略しないといけないし、ここ当分はいくつかのチームに分かれて活動するつもりだよ」


 情報クランのメンバーを3つに分けて活動するらしい。大変だなと俺が言うとクラリアもトミーもそれが楽しいんだと言う。


「情報クランにいるメンバーは皆情報を集めてそれを整理するのが好きな連中だ。俺も含めてそれがこのゲームをしている楽しみだと言える」


 ゲームの楽しみ方は色々だ。やっていて苦痛じゃなければそれが一番だよな。


 クラリアによると武器屋や防具屋には顔を出したが上級装備は10までしか売っていなかったらしい。水の街の状況と同じだと言う。


 情報クラン、攻略クランのメンバーのレベルは上級20、俺たちは上級18。土の街の周辺ならなんとかなりそうだな。奥に行くとわからないけど。


「うちのメンバーがこの街にやってきたらあの森小屋の周辺も調べてみるつもりなんだよ」


 ああ、それもあったな。森の中の池の小島にポツンとある森小屋。あえて小屋にしている理由があるはずだ。あの森小屋周辺についてはスタンリーら攻略クランに期待しよう。タクはどうするんだと聞かれたが俺はいつもと同じ。適当に経験値を稼ぎながら農業をし、たまに釣りをするつもりだと答えた。このパターンは今のところ変える気はないんだよね。


「タクは今のままのパターンを続けてくれた方がまた何か見つけてくれそうな気がする」

 

 クラリアが言うと他の3人もその通りだと言っている。期待されても困るんだよ。偶然見つけてるだけなんだから。


「主に任せるのです。安心なのです」


 それまで黙っていたリンネだが最後にこれが言いたかったみたいだ。まぁいいけど。



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