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新しい街を見つけた


 スタンリー達攻略クランのメンバー22名は5隻の船に乗って下流を目指していた。神官を乗せた船を中央に配置してその船を囲む様に前と後ろに2隻ずつの船を配置。そこには前衛と魔法使いが乗って周囲を警戒しながら進んでいく。回復手段のある神官を全員で守りながら攻略を進めるという作戦だ。川の中は安全だというが湖が近い。万が一を想定して神官の船をを中央に配置していた。


 1日ちょっと川を下っていくと湖に出た。その手前で野営をしていたメンバー。以前来ているスタンリーが船の上から右の陸地沿いに進んで行こうという指示を出すと同時に船の配置を一部変更する。陸地側に神官が乗っている船と魔法使いが乗っている船2隻を配置し、湖側に前衛が乗っている船を3隻配置した。湖岸ぎりぎまで森が迫っている。今のところは砂の岸が見えない。湖岸は岩場になっていた。


「今までは幸いにして魔獣が襲ってこなかった。ここからは間違いなく湖の中から魔獣が襲ってくるぞ。各自気をつけよう」



 しばらく進むと湖から魚が飛びだして襲ってくるが盾ジョブとウォリアーら前衛ジョブの対応でダメージを受けることなく進んでいった彼らは日が暮れる前に湖岸の岩場にボートを寄せた。


「岩場になってるから森から隠れることができる。交代で休んで夜が明けたたらまた進もう」


 各自が岩場を背にして座って食事をとり、しっかりと休憩する。22名を3つに分けて交代で休んだ彼らは夜が明けると同時に再び船に乗って右手に陸地を見ながら湖の中を進んでいく。


 途中で何度も魚の魔獣が襲ってくるがそれらを退治し、野営をしながら進むこと4日目。相変わらず湖は広く対岸は見えない。


「水の中に何かいる。大きい」


 サーチを使って警戒をしていたハンターの女性、ミゾレが声を上げた。時刻は昼。


「この船以外の4隻は岸につけてくれ。おびき寄せる」


 ハンターの声を聞いたスタンリーがすぐに指示を出す。4隻は向きを岸に変えて岩場に船をつけると全員が上陸した。ここも岩場になっているので背後から襲われる可能性が低い。攻略クランに所属しているだけあって岩場に上がった全員がすぐに戦闘準備を終えてそれぞれのポジションについた。


「ジュンとラオウで背後を警戒して!」


 岩場に上がったサブマスのマリアが声を出した。


「分かった」「了解」


 ハンターのジュンとウォリアーのラオウの2人が岩場の影から背後を警戒する。


「異常なし」


 その声を聞いたマリアが顔を湖に向けた。スタンリーが乗っている船が船首をこちらに向けたまま湖の上を漂っている。ただいつでも全力で漕げる準備はしている。


「来るわよ!」


 小船に乗っているハンターが声を上げた。その声でオールを漕いでいる2人が今度は船首側に向かって全力で漕ぎ始めた。すると船から30メートルほど先の水面から半魚人が姿を現した。浮かんでいる小船を目指して追いかけてくる。


「サハギンNM。以前倒したのよりも大きい。それと背後に5体仲間を引き連れている」


 近くに来てより詳しいサーチができたミゾレの声を聞いたマリア。


「ジャックス、ボスを頼むわよ。他のパラディンはお付きをお願い」


「任せろ。俺がNMのヘイトを取る。あとは頼むぞ」


「分かった」


「任せろ」


 攻略クランにはパラディンが4人いる。実力トップのジャックスがボスのタゲを取り、残りの3人がお付きのサハギンのタゲを取ることになった。他の3人のパラディンもジャックスほどではないが攻略クランのパラディンをやっている事もあり装備も良く、PSも高い。


 全力で船を漕いでいたスタンリーが岩場に船を接岸、5人全員が降りて船を収納した直後にサハギンNMと仲間のサハギン5体が水面から立ち上がって上陸してきた。ジャックスの挑発から戦闘が始まった。敵のヘイトは連動している様でジャックスがボスのタゲを取ると残りの5体もジャックスに向かってくる。それを3名のパラディンが1体ずつ剥がして自分に向かせた。


「ボスのレベルが上級20、お付きは16よ」


 AIから情報を聞いたマリアが声を出す。誰が何も言わなくともまずはお付きから倒していく攻略クラン。常に攻略の最先端を走ってクランとして集団活動を何度もしていることもありチームワークが良い。


「虎NMより弱いぞ。いけるいける」


 周囲から声が飛ぶ中、ジャックスが耐えている間にお付きを順に倒していく他のメンバー達。5人でボスとお付き5体を相手にするのは大変だが22名のメンバーがいればそれほど苦労しない。ジャックスは虎NMで得た装備に回復の腕輪を装備している。それに加えて同じメンバーの神官のルミがジャックスのフォローについているので大崩れしない。


 パラディンがタゲを取っていた3体を倒すとさらに2体のタゲをジャックスから剥がしてタゲを取りスタンリー始め前衛ジョブのメンバーで体力を削って倒す。ボスのNM1体になると全員が総攻撃を始めた。


 総攻撃を受けたNMはその場で強烈な水鉄砲をパラディンに撃った。背後の岩がなかったら吹っ飛ばされるところだが岩に背を打ちながらもその水鉄砲に耐えるジャックス。すぐに神官からヒールシャワーが飛んでくる。


「こいつも水鉄砲かよ」


「狂騒状態になってるわよ。気をつけて」


 自分も精霊魔法を打ちながらマリアが声を出す。狂騒状態だったが22名のトップクランのメンバーの総攻撃を喰らってボスNMはしばらくすると体力がゼロになって光の粒になって消え、その場に大きな宝箱が現れた。


「「勝ったぞ!」」


「よっしゃぁぁ」


 宝箱の蓋を開けたスタンリーが端末を翳して全てのアイテムを収納すると宝箱が消えた。


「池のサハギンNMよりも強かったがこっちも強くなっている。レベルはもちろんだが装備の質も上がっていた。ジャックス始め全員が自分の仕事を全うしてくれたから勝てたな」


 消えた宝箱の場所から全員が固まっている場所にやってきたスタンリー。そう言って全員を労ってから続けて言った。


「少し休んで探検を続けよう。日が暮れるまでにできるだけ進みたい」


 岩場の背後から魔獣が襲ってこないとも限らない。短い休憩時間で水分などを補給し終えると全員が再び船を浮かべ、戦闘前と同じ配置で右手に陸地を見ながら湖の中を進んでいった。


 そろそろ日が暮れてきたかと思った頃、彼らの目の前に街が見えてきた。湖が湾曲していて湖岸まで森が迫っており近くに行くまで見えなかったのだ。


「新しい街だ!」


 5隻の小舟が湖から街に近づいていくとその桟橋に大きな船が係留されているのが目に入ってきた。


「でかい船だ」


「50人は乗れるんじゃね?いやもっとか」


「もっとだろう。7、80人は余裕で乗れそうだな」


 桟橋に小船をつけて桟橋に上がるととそこにいたNPCが2人近づいてきた。2人とも人族だ。


「あんた達はプレイヤーかい?」


「そう。森の街から川と湖をこの船で漕いでやってきた」


 リーダーのスタンリーが代表して答える。


「途中で半魚人に襲われなかったかい?」


 別のもう1人のNPCが聞いてくる。


「でかい半魚人1体とお付きというのかな、5体。全部で6体の半魚人が襲ってきたよ。彼らを倒してここに来たんだ」


「あいつを倒したのか!」


「それはありがたい。まぁ街に入ってくれ」


 2人のNPCに続いて22人のメンバーが桟橋からゲートを潜って街の中に入っていった。

街に入ったところで前を歩いていた2人のNPCが立ち止まって後ろを振り返る。


「ここは水の街。街に入りゃわかるがあちこちに川が流れている。大きな川の中にあるいくつかの中洲を橋で繋いで街になっていると考えてくれりゃあいい」


 メンバーがなるほどと頷いている中、マリアが前に出てNPCに聞いた。


「さっき半魚人を倒してありがたいと仰っていたけど。彼らがいて不自由な事があったんですか?」


「ああ。あんた達も桟橋に停泊している大きな船を見ただろう?あの船はこの水の街と森の街とを結んでいる定期船なんだよ。森の街からこの街までは道がない。森の中は危ないしな。船が唯一の交通手段なんだよ。湖には魚の魔獣がいるがあの魚であれば船は問題ない。以前はここと森の街を1日1往復して人や荷物を運んでいたんだ。ただいつからかこの湖に半魚人の化け物が住み出してな。あいつらは船によじ登ってきて乗客を殺しまくったんだよ。だから船を出せなくなって森の街との交流が途絶えていたんだよ。今回あんたたちがあいつを倒してくれたのならここと森の街との定期船を復活できる」


「うまく考えているな」


 NPCの話を聞いていたスタンリーがつぶやいている。NPCが俺たちはこれから定期船の再開準備にはいるからここでお別れだ。そう言って彼らは桟橋の方に戻っていった。彼らと別れた目の前には橋があった。別の中洲に繋がっている橋だ。


「とりあえずギルドを見つけて転送盤を記録しよう。それと彼らの話をもう一度後で確認していつから定期船が動くのかの確認、オフィスが借りられるかどうかの確認。街の探索と手分けしてやろう。今日はもう遅いから明日からやろうか」


 スタンリー以下全員が冒険者ギルドで転送盤の登録を済ませた後、全員一旦森の街に戻っていった。



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