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リンネの仲間


 この日、開拓者の街の俺の自宅にはルリとリサ、そしてそれぞれの従魔達がいた。彼女達もレベル85になって試練を受けて消化しているところらしい。そればっかりというのはゲームを楽しめないと試練もしつつ他のこともしているんだと言う。


 ちなみに2人は2,300体倒せと言われたそうだ。今でようやく半分クリアしたところらしい。


「もう少し多いかなと思っていたから上出来よ」


「そうそう。毎日インしてたわけでもないから十分ね。第一の試練もゆっくり消化するつもり」


 俺を入れて3人が縁側に座っていてその前の庭ではうちの4体の従魔達とギンとクロとが一緒に遊んでいる。ランとリーファも初対面のギンとクロとしっかりと仲良く遊んでいるのを見て安心したよ。従魔同士という絆でもあるんだろうか。


 彼女達によると2,300体と予想より少なかったのはイベントNMでワールドアナウンスを1つ貰っているのも関係があるのかもしれないと言うことだ。ゲームへの貢献度が基準の1つになっているのなら当然それも考慮されるだろう。それ以外に金策の為に結構クエストをしていたそうだ。ワールドアナウンスよりもクエストの消化率じゃないのかな。知らんけど。


 今日はこれからルリとリサと一緒に隠れ里に行くことになっている。2人に隠れ里の話した時に是非一度連れて言ってくれと前から言われていたけどなかなかタイミングが合わなかったんだよ。彼女達は口が硬いしそれに従魔がフォックスだからまるっきり無関係って訳でもないんだろうと思って話をしたんだよね。


「そろそろ行こうか」


「はいなのです。参るのです」


 待ってましたとばかりにリンネが即答して俺の膝の上に飛び乗ってきた。ランとリーファはお留守番だ。行ってくるよと声をかけると手を振ってくれる。妖精達は一つ一つの仕草が可愛いんだよな。


 開拓者の街を出て3人と4体の従魔で盆地を歩いて坑道を抜けると右に曲がって山裾を歩いていく。


「隠れ里ってリンネちゃんの故郷でしょ?ギンとかクロも関係あるのかしらね」


「どうだろうか。狐という括りじゃ同じだけどね」


「ギンとクロも歓迎されるのです。間違いないのです」


「リンネちゃんがそう言うのなら安心ね」


 そのギンとクロはお互いの主の首に巻きついて尻尾を振っている。テイムした時からこのポーズだ。リンネが俺の頭の上に乗りたがるのと同じだな。


 坑道を抜けてセーフゾーンの東屋を記録したあとは山裾に沿って歩いてカラクリ岩を抜ける。ルリとリサもびっくりしていたがそれが普通の反応だよ。


 通路を抜けた里の入り口にユズさんが待っていた。これもいつもの事だ。


「今日は新しい従魔さんがいるんですね。狐さんは大主様のお仲間ですから歓迎されると思いますよ」


 ユズさんの言葉にルリとリサは安堵の表情をし、ギンとクロは尻尾をブンブンと振り回して感情を表している。とりあえず嫌われていない様でよかったよ。


 先にお参りに行こうと皆で参道を歩いて祠に着くとリンネの両親が待っていた。それを見て走っていくリンネ。


 リンネが母親に身体をスリスリしている横で父親がこちらを向いて言った。


「シルバーフォックスとブラックフォックス。いずれも我らと同じ仲間だ。歓迎するよ」


 その言葉にお礼を言うルリとリサ。ギンとクロも尻尾を振って喜んでいる。それを目を細めてリンネの父親。


「娘ほどではないがそのフォックス2体にも少しだけ力を与えておいた。今以上に役に立つだろう」


「本当?!」


「「 ありがとうございます」」


 ルリとリサがお礼を言っている。遅くなったけど連れてきてよかった。


 俺はいつものお供えを終えるともうしばらく両親といるというリンネを置いて他のメンバー、従魔達と一緒にクルス村長の家を訪ねた。


「村の守り神は九尾狐ですが狐自体が村の人にとっては大切な動物という認識です。」


 和室でお茶をご馳走になりながら村長の話を聞いている3人。従魔3体は庭で横になって休んでいる。ここの隠れ里の大主様と呼ばれているリンネの父親がギンとクロも何かを授けたと言っているが見た限りだとわからない。リンネみたいに尾が増えると一目瞭然なんだけど。


「九尾狐ってこの里以外でいるんですか?」


 リサが村長に聞いた。


「どうでしょうか。私は聞いたことはないですな」


 村長さんが知らないだけかもしれない。こちらのレベルというか理解に合わせていつも微妙な回答をしてくるんだよな。


 その後は村で唯一のコンビニ(?)、キクさんの店に顔を出す。いつもの通りポーションを渡してお礼に沢山の野菜をもらう。貰いすぎだと言っても一向に量が減らないんだよね。


「これって私たちも買うことができますか?」


 リサがそう言って手に持っているのは村の女性達が着ている服だ。厳密には服の上に羽織るポンチョの和風版と言った感じか。ローブよりもずっとカジュアルな感じになっている。手で持つととしっかりとした生地でそれでいて軽いらしい。街の中で着る私服にしたいのだという。


「もちろん」


 そう言ってキクさんが奥からいろんなサイズと色の和風ポンチョと持ってきた。2人は色々と手に取って羽織ってみたり色目をチェックしたりしている。リアルでもそうだけど女性は買い物が長い。というか選びそうで選ばない。今も2人でこっちかな、いややっぱりこの色もいいわねとか言っているのが聞こえてきた。


 結局彼女達は2つずつ買ったみたいだ。迷うくらいなら両方買えばいいのにと最初から思っていたが女性の買い物心理とはそう単純なものではないらしい。


「どうしようかなって考えている時間が楽しいのよ」


「そうそう。いくらゲームのお金だって言ってもね。買い物をするという行為はリアルもゲームも同じよ」


 よくわからない。ゲームで自分が生き残るためなら高い武器や防具を躊躇いなく買うのに何故に私服の買い物には時間がかかるのか?


「タクも女性と付き合ったら女性の買い物心理がわかるわよ」


「はいはい。それでもう買い物はいいのかな?」


「うん。ありがとう」


 毎度ありというキクさんの言葉を背中に聞いて俺たちは店を出た。ちなみにキクさんの店の中にいる時、タロウは店の外の道の上でゴロンと横になっていてギンとクロはお互いの主の首に巻きついて一緒に買い物に付き合っていた。ご苦労さん。


 村の中を歩いていると祠からリンネが走ってきて俺の頭の上に飛び乗った。


「また来月も来るのです」


「もちろんだよ。約束しているからな」


「ありがとうなのです」


「月に1度だっけ?また行きたくなったらお願いしてもいい?」


「そりゃ問題ないよ」


 最後に村長さんとその娘のユズさんにお礼を言った俺たちは隠れ里を出るとカラクリ岩から外に出る。


 ルリとリサが早速従魔の力を確かめたいというので里を出たところの森にいる魔獣を相手にしてみたがレベル制限のせいか、それともそれを差し引いてもこちらのレベルが高いからなのか効果が良くわからないという2人。


 結局開拓者の村から試練の街に飛んでその郊外でやってみることになった。そこでやったら一目瞭然だった。女性二人が自分の武器や魔法の威力が昨日と全然違っているのだという。ギンとクロが掛けるバフの効果が段違いに上がっていると教えてくれた。


「少しだけと大主様が言ってたけど少しじゃないわね。全然違う」


「そうそう、これは楽よ試練の消化も今よりもスピードアップするわ」


 とりあえず2人とも喜んでくれているのでなにより。


「当然なのです。父上が手を抜くことはないのです」


 2人の話を俺の頭の上で聞いていたリンネが言う。


「そうよね。リンネちゃんのお父さんが力をくれたんだものね」


「ありがとうね」


「お安いご用なのです」


 いやいや、お前が力を与えた訳じゃないだろうが。でもまぁリンネがいてくれたからだこそだよな。


「リンネのお父さんとお母さんは立派な九尾狐だからな」


「そうなのです。父上と母上はすごいのです。リンネも頑張るのです」


「おう、無理せずに頑張ってくれ」


 ルリとリサは今度また隠れ里に行く時にはきちんとお礼をするけどその前に行ったらよろしく伝えておいてくれと言われた。もちろんちゃんと言っておきますよ。



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