その7
且つて世界には人に関する法が存在していた。
AIが政治を取り仕切るようになりその法は消え去ったのである。
AIは如何に平等で効率よく社会を動かしていくかで作られたのである。
つまり、人は社会を効率よく動かす部品として扱われることで平等なのだ。
恐らくそうなってしまったのだろう。
三歳で適性を受けその結果で称号が与えられ、一部の特殊なギフテッド以外は全員同じ施設へと送り込まれるのだ。
学校も。
仕事も。
同じ適性検査の結果で分配される。
ある意味においては究極の平等である。
しかし。
人は心を持つ生き物で他人を愛する助けるなどの気持ちを持つ一方で、不正や他人を押し退けても自らを利しようとする考えも浮かぶ。
そこに関してスルーすることも恐らくはどちらにも加担しない平等なのだろう。
蓮は密かに人の法の復活を考えていたのである。
人が人を殺めても。
人が人に危害を加えても。
何もなく…死ねばモノのように処理される社会が正しいと思えなかったからである。
探偵の紋章を得て多くの事柄を見て蓮はそう考えるようになっていたのである。
名探偵の紋章
高校の体育館小火を解決して探偵の称号のレベルが7になった。
順調にレベリングが出来ている状態である。
が、蓮はそれでも毎日青夜と共に高校へと通っていた。
そこでゆりとも合流するのである。
ただ何故か小火の案件の時に出会った朱雀章が時折教室に姿を見せ
「お、来てるな」
と休憩中に4人で話をするようになった。
これも今までには無かったことである。
学校の教室に入っても挨拶もない。
声を掛け合って話をすることもない。
つまり、他人に対して無関心。
関係が希薄だったのである。
だが蓮は文月親子と出会う事で、青夜は蓮と出会う事で大きく変わり出していた。
ゆりと章を交えた4人以外には今も誰も話をしてはいないのだがフッと視線を向ける生徒が何人かはいた。
授業が始まるチャイムが鳴り、蓮も青夜もゆりもタブレットを出して章が
「じゃ、俺行ってくる」
と足を踏み出した瞬間に戸口から鷲尾惣が姿を見せた。
「土方様、案件が入りました」
…。
…。
青夜とゆりと章は同時に蓮を見た。
デジャヴである。
蓮は前に立った惣をため息交じりに
「それで、案件というのは?」
と聞いた。
惣は頷き
「品川駅の駅長に変な手紙が届けられたそうです」
と告げた。
蓮は顔を顰めると
「変な手紙?」
と聞いた。
青夜は横で聞きながら
「…今回は幽霊騒動じゃないみたいだな」
と小さく安堵の息を吐き出した。
ゆりは彼に
「そんなに幽霊騒動多いの?」
と聞いた。
青夜は自ら騒動を起こした身としては心苦しいものの静かに頷いた。
惣はそんな彼らの遣り取りに目を向けることもなく
「はい、一応預かってまいりました」
と胸元から手紙を出した。
極々普通の封筒に便箋である。
蓮は表と裏を見て
「宛名も差出人もない」
と呟いた。
それに青夜は胸を張ると
「事務称号持ちだったら失格だな」
とハハッと笑った。
章は苦笑しつつ
「そう言う問題じゃないだろ」
とビシッと突っ込んだ。
それに関しては周囲の誰もが「確かに」と思わずシンクロして突っ込んだ。
タブレット授業は既に始まっているが5人の会話が気になっていない人間は誰もいなかった。
蓮は彼らの視線に気付くと
「これは不味いかも」
と心で呟くと立ち上がり
「取り敢えず、中身は学校を出てから」
授業の邪魔になるし
と告げた。
TPOを気にする蓮であった。
ゆりも鞄を持て
「だよね」
と蓮について歩き、章も
「だよな」
と続いた。
青夜は鞄を手に歩きながら
「何故、2人ともが付いてくる」
と心で冷静に突っ込んだ。
彼らが教室を去ると全員が出て行った戸口を見ており、同時にそれに全員が気付くとバツが悪そうに直ぐにタブレットへと視線を戻した。
東川崎高校の校門前に止めていた車に蓮を始めとして青夜にゆりに章は乗り込んだ。
蓮は助手席に座り封書から紙を取り出した。
『挨拶状 最初は田畑駅へ』
ゆりは後ろから覗き込み
「挨拶状」
と呟いた。
蓮は息を吐き出すと
「最初は田端駅って書いているから田端駅でこの手の手紙を探せってことだと思うから」
田端駅へ行ってくれる?
と惣に告げた。
惣は目を閉じて開けると
「かしこまりました」
と答えアクセルを踏んだ。
章は後ろから
「で?何か分ったのか?」
と聞いた。
蓮は首を振ると
「挨拶状ってことだけしかわからないから指示通りに動くしかないと思って」
と答えた。
青夜は腕を組むと
「確かに」
と答えた。
彼らが住んでいる川崎から田端までは車で一時間程度である。
午前10時前くらいに到着すると蓮は駐車場にとめられた車から降りて田端駅へと向かった。
そこの改札にいた駅員に
「すみませんが、こんな手紙が来ていませんでしたか?」
と先程の手紙を見せて問いかけた。
駅員は「落としものですか?」と尋ねた。
が、それに惣が
「探偵の紋章の持ち主です」
手紙が来たかどうか調べてください
と告げた。
駅員は慌てて
「はい」
と答えると改札から出て駅長室へと向かった。
駅長室から男性が出てくると首を振って
「いえ届いておりません」
と答えた。
蓮はそれに
「では駅構内を調べさせてもらいます」
と言い、待機していた青夜とゆりと章を見た。
三人は頷くと
「「「了解」」」
と答え改札の中に入ると手分けしてホームの中を調べ始めた。
蓮はホームの椅子などを調べながら
「なるほど」
最初の手紙は誰かが手にしないと始まりもしないけど
「その後は何処かにおいていけば探してくれるってことなんだ」
と呟いた。
それを計算して手紙の主は最初の手紙を品川駅に届けたのだ。
蓮は冷静に
「手の平の上で踊らされているってことか」
と呟いた。
だが、レベリングの依頼である。
止めるわけには行かなかった。
すると、反対側ホームの駅名看板の下に手紙が張りつけられているのをゆりが見つけ
「みっけ!」
あったわよー
と叫んだ。
蓮も惣も青夜も章も全員が彼女の元へ行き、セロファンテープで貼りつけられていた手紙を剥がした。
蓮は封筒から便箋を出して目を細めた。
大きな文字で『3』と書かれ、その下に『次は新橋駅へ』と書かれていた。
青夜は目を細めて
「意味が分からない」
と呟いた。
ゆりも首を振ると
「私も」
と答えた。
蓮も苦笑しつつ
「俺もだけど、取り敢えず次は新橋駅だね」
と惣を見た。
惣は頷いて
「了解しました」
と答えた。
5人は新橋駅へと向かった。
本当は電車の方が短いのだが、次があった場合も考えての車移動であった。
新橋までは30分足らずである。
蓮たちは新橋駅へ行くと最初に駅員に確認をとり、田畑駅と同様に手紙を探した。
するとやはり駅名の下に貼られており、蓮はそれを手にすると中から便箋を出した。
同じように『2』と大きな文字で書かれ『次は小伝馬町駅へ』と書かれていた。
蓮は「行くしかないね」と告げた。
章は両手を上げて
「踊らされてるー」
とぼやいた。
蓮は笑って
「正にその通りだよ」
と答えた。
ゆりも青夜も章も驚きながら蓮を見た。
蓮は封書を見せながら
「この手紙の主は誰か分からないけれど探し始めた人間は途中で止めないと確信しておいていってるんだと思う」
もしかしたら
「探偵の称号の人間が探すと予測しているのかもしれない」
と告げた。
ゆりは笑って
「まさかー」
と答えた。
章はガクブルと震えながら
「おいおい、何で?」
まじ?
「冗談?」
と聞いた。
蓮は封書を見て
「本当のところは分からないけど…他の紋章だったらこんな意味不明な手紙を取り合わないだろ?」
こんな手紙を懸命に探す称号なんて探偵の称号ぐらいしか俺は思い浮かばない
と告げた。
青夜は「確かに」と告げた。
「幽霊騒動や原因不明の小火騒動…摩訶不思議な事を調べて解き明かすって感じだよな」
他にはない称号だな
ゆりはう~んと唸りながら
「そう言われるとそうね」
でも私だってそうだけど
「探偵の称号なんてあること自体知らないし」
土方君くらいでしょ?
「探偵の称号持ってるの」
と告げた。
蓮は文月四季の言葉を思い出しながら
「確かに探偵の紋章を彼は作ったって言っていたから…AIシステムに最初からあったわけじゃないと思うけど」
だとしたら
「俺の近辺の人間がこの手紙を出したってことになる」
と心で呟いた。
惣は一度目を閉じて開けると
「土方様」
と名を呼んだ。
蓮は携帯を見ると
「11時前か」
次は小伝馬町だから
「着いて手紙を見つけたらお昼にしよう」
と告げた。
青夜は一瞬「え」と言ったものの、ゆりと章は「了解!」と頷いた。
蓮は惣を見て
「次は小伝馬町駅にお願いします」
と告げて足を踏み出した。
小伝馬町駅は車で15分程度であった。
…。
…。
蓮は直ぐに到着すると
「近かった」
と呟いた。
東京都内を良く知っている訳ではない。
それこそ探偵の紋章を手に入れてから東京都心にお邪魔したくらいなのだ。
時計を見て
「11時半前か」
と蓮は呟き集まっている三人を見た。
青夜は笑むと
「だよな」
俺一応東京都心で働いていたから
「ごめん、言おうと思ったけど」
と告げた。
ゆりは蓮の肩を叩き
「私も知らなかったから問題なし」
と告げた。
章は感心したように
「ちけーな」
本当に
とぼやいていた。
蓮は笑むと
「だよな」
と言い
「じゃあ、次のところでお昼にしよう」
近くても11時半くらいにはなるし
と告げた。
それに全員が頷いた。
小伝馬町駅の中に入り再び手紙を探し始めた。
するとやはり駅名の下に貼っており、蓮は便箋を取り出した。
『2 “』の『”』の上にバツ印があり『次は品川駅へ』と書かれていた。
最初に手紙が渡された場所である。
青夜はそれを見ると
「そろそろ終わって欲しいけど」
まだ続くんだ
と呟いた。
蓮も頷いて
「そうだね」
まだ続きそうだね
と答え、惣を見ると
「品川駅へお願いします」
と告げた。
大体20分程度であった。
蓮も青夜もゆりも章も誰もが駅名看板の下だと思い車から降り立つとゆりが
「じゃあ、さくっと手に入れてお昼にしましょ」
11時40分だから丁度良いわ
と告げた。
蓮も頷いて
「そうだよね」
と答え、駅の構内に入って全員が目を細めた。
路線入り組んでる。
が、東京へ殆ど着たことがない三人の感想であった。
青夜は冷静に
「取り敢えず手前の1番からと奥の15番から一人ずつ調べて、15の向こう側の東海道新幹線を2人で見るって感じだな」
と告げた。
蓮もゆりも章もコクコクと頷いた。
蓮は我に戻ると
「じゃあ、俺は15番から見ていく」
と告げた。
青夜はそれに
「だったら1から俺な」
と告げた。
ゆりと章は
「「じゃあ、新幹線に行ってくる」」
というと東海道新幹線の乗り場と向かって中へと入っていった。
蓮も15番乗り場へ向かって足を進めた。
意外と広いので駅名看板を探すだけでも時間が掛かった。
しかし、手紙はなかったのである。
30分ほどかけて看板を見て回ったがどこにもなかったのである。
最初に入った高輪口の手前に集まり顔を見合わせた。
蓮は「でも手紙はきっとこの構内にある」と告げた。
「つまり違うところだってことだと思う」
既に12時を過ぎている。
蓮は全員を見ると
「取り敢えずリセットする意味でご飯食べよう」
と告げた。
それには青夜もゆりも章も大きく頷いた。
ゆりは笑顔で
「東京で食事なんてしたことない」
と告げた。
章も頷いて
「俺も」
と答えた。
蓮は笑って
「俺も弁当だったから」
と答えた。
青夜はずっと東京で仕事をしていたので食事をしたことはある。
ただ場所が違うのだ。
青夜が住んでいたのは新宿の方で勤めていたのも新宿であった。
なので品川の方へは殆ど着たことがなかったのである。
惣は目を閉じて開けると
「こちらにレストラン街がございます」
と蓮たちを誘った。
ガイドブックの代わりも出来るという…マルチな鷲尾惣であった。
品川駅舎内にあるレストラン街で蓮たちは和食のレストランに入りランチを頼み、食事をした。
元々お金を払うシステムはないので食べ終わるとそのまま店を出て蓮は周囲を見回すと
「駅舎内も調べて行かないといけないかもしれない」
と告げた。
かなり広い構内である。
だが、やるしかないのだ。
蓮は三人を見ると
「ホームはもう見ているから先の西口から乗り場じゃない方を見て行こう」
と告げた。
「今回は全員で歩きながら見て行こう」
それに全員が頷いた。
4人は西口前に立ち見回しながら右手へと歩いた。
端まで行ったら左へ向かっていくという正にローラ作戦であった。
そんな4人の姿を見ても無関心に通り過ぎていく人々がいる。
AI政治システムになって本当に人と人の絆は薄まり、人に関心のないことが当たり前になっている。
蓮はそんなことをフッと感じながら一緒に懸命に手紙を探す青夜やゆりや章を見て笑みを浮かべた。
こういう人の繋がりが…心を温かくするのだ。
青夜は蓮を見ると
「なに笑ってるんだ?」
見つけたのか?
と聞いた。
蓮は首を振ると
「いや、ただ…少しだけこの手紙の主に感謝しているかな」
と告げた。
それにゆりが
「えー、何言ってるの!?」
振り回されているのに
と腕を組んで告げた。
章も苦笑しつつ
「確かにな」
と答えた。
が、蓮は彼らを見ると
「でも、何となく皆と宝探しをしているみたいでさ」
こういう経験したことがないから
「こういうの悪くないって思えて」
と告げた。
それに関しては青夜もゆりも章も顔を見合わせると苦く笑った。
確かに手紙探しだが、全員こういう経験はないのだ。
章はさっぱりと
「まあ、これが手紙じゃなくて本当の宝なら良いけどな」
と告げた。
全員が同時に笑った。
気を取り直して再び足を進め、中央改札の手前でゆりが足を止めると
「アレ!」
とポストの横に立っている白い標柱と手前の銀の解説板を指した。
そこに手紙が張られていたのである。
蓮は手に取り便箋を取り出した。
そこには『 』…つまり空白と『次は鶯谷駅へ』と書かれていた。
蓮は標柱を見て
「0Km…品川って山手線の起点なんだ」
と呟いた。
そして、蓮は惣を見ると
「じゃあ、鶯谷駅にお願いします」
と告げた。
30分ほど掛かり鶯谷駅に着くと今度は駅名の下にあった。
蓮はそれを手に取り便箋を出すと小さく息を吐き出した。
「これで終わりみたい」
便箋には『3』と書いており『宜しく!』と書かれていたのである。
蓮は惣を見ると
「取り敢えず全てを回収したけど」
問題は何を意味しているかってことだよね
と告げた。
惣は暫く目を閉じて立ち尽くした。
その後、目を開けると
「お願いします」
と答えた。
蓮は頷いて
「この手紙を持って帰って考えてみる」
と告げた。
ゆりは頷いて
「じゃあ、そこは頑張って」
探偵の紋章の領分だね
と告げた。
章も腕を上げて
「頑張れ!」
と告げた。
惣の車で全員学校へ戻ると既に太陽は傾き夕刻の様相を見せていた。
ゆりと章は学校からそれぞれ帰宅の途につき、蓮と青夜はアパートへと戻った。
手紙は全部で6枚。
だが、最初の挨拶状は恐らく探し出させるための切っ掛けの意味しかないのだろうと蓮は判断していた。
問題は残りの5枚である。
田端駅の『3』
新橋駅の『2』
小伝馬町駅の『2』と『“』の×
品川駅の『 』
最後は鶯谷駅の『3』
意味が全く分からない。
蓮は息を吐き出し
「何だろう」
と呟いた。
その実、こういう謎かけはあまり得意ではないのだ。
というか、これまでは物理現象や科学現象と言った事務称号のレベリングで知り得た知識を活用できるものだった。
今回の案件はそれが全く、実に全く役に立たないモノだったのだ。
ふむぅと唸りながら手紙を見ている蓮を同居している文月輪廻は少し頭を傾げて見つめ
「蓮、悩んでる」
と近寄り
「輪廻、役に立てる?」
と聞いた。
蓮はそれに顔を向けると手紙を5枚見せて
「これの意味を考えているんだ」
と告げた。
輪廻はじっと見つめ
「…」
数字と駅、だけしか、輪廻、解らない
と答えた。
蓮は笑むと
「俺も、今は同じだけど」
意味があるんだと思うんだ
と答えた。
「もう少し考えてみるよ」
ありがとう
輪廻は頷いて
「輪廻、応援する」
と告げた。
「頑張れ、蓮」
蓮は笑顔で頷いた。
「ありがとう」
陽はゆっくりと西の地平へと沈み、夕食の時間となった。
蓮とチョコンと座っている輪廻の元に文月四季がやってきた。
「輪廻に土方君、夕飯だが」
蓮はハッとすると「あ、はい」と答え立ち上がると
「すみません、今行きます」
と言って輪廻を見た。
「行こうか」
輪廻は頷いて
「夕飯、食べて、また応援する」
と笑みを浮かべた。
何時も青夜の部屋で食事会をしているのだ。
蓮と輪廻と四季が入ると全員が興味深そうに蓮を見た。
神楽勇武がにこやかに
「土方君、何やら困っているそうだね」
わからなければヒントをお教えしますよ!
「これでも歴史に詳しいですからねー」
と告げた。
蓮は冷静に
「え?これは歴史に関係しているのか?」
と考えた。
蓮自身は余り関係が無いような気がしているのだが…意味が分かってないので確信がない。
四季は蓮を見ると
「ん?」
何か悩み事があるのか?
と聞いた。
それに青夜が
「あー、いえ」
それが暗号ってやつぽい感じです
と告げた。
四季は笑むと
「暗号か」
と言い
「土方君、人の知恵を借りるというのは大切なことだぞ」
特に先人の知恵はな
と告げた。
蓮は座っている面々を見回し
「んー、でも」
と言ったものの
「…そうですね、このままじゃ埒が明かないかもしれない」
と思うと踵を返して部屋と戻り紙を持って戻った。
「実はこれです」
それを奥で座っていた蒼槻きずなが立ち上がって近寄り紙を見て
「あー、なるほど」
と言い
「最初は挨拶状とスタートで…残り5枚で…ほう、そういうことか」
と呟き、ふっと笑みを浮かべると
「君への挨拶状だな」
と告げた。
それに蓮と青夜はきずなを見た。
きずなは意味深に笑みを浮かべた。
蓮はハッとすると驚いて
「わかったんですか!?」
本当に!?
と叫んだ。
きずなは腕を組んで
「小説に使えそうな茶目っ気暗号だな」
と答えた。
…。
…。
茶目っ気ってそんな分かりやすい暗号じゃないと思うけど、と蓮は心で突っ込んだ。
青夜も目を細めて
「うっわ、俺全然茶目っ気とか思えねぇ」
しかも一発見て分かるってどんなだよ
と心で突っ込んだ。
蓮は紙を見て
「…うーむ」
と声を漏らした。
きずなは手紙の一つを指差し
「素直に手紙を置いてた駅名と数字を見れば分かる」
と告げた。
蓮は田端駅の紙を置いて
「これは3で田端駅」
と呟いた。
「素直に考えたら駅だけど…それは全部に当てはまるから平仮名かな」
とすれば
「た」
続いて新橋駅の紙を置くと
「これは2だから」
同じようにすると
「ん」
と呟いた。
3枚目の小伝馬町の手紙を置くと蓮はハッとした。
「まさか、これも2だから」
で
「だけど…“は消すから」
て…か
4枚目は品川駅の空白。
蓮は最後の手紙を出して
「それでこれが鶯谷駅で3だから」
い
「だよね」
と告げた。
瞬間に青夜が立ち上がり
「あぁあ!!探偵だ!」
蓮の紋章じゃん!
と叫んだ。
蓮は「なるほど、それで挨拶状で宜しく!だったんだ」と言い
「でもこの品川駅をどうして入れたんだろ」
空白なのに
と告げた。
きずなは笑むと
「きっと意味があるんだろ?」
と告げた。
「この手紙だけ他と違っていたってことはないか?」
蓮はそれに
「ありました」
他は駅名看板の下でしたけど
「これだけ0Kmポイントの解説の上に貼られていました」
と告げた。
「ってことは、0に意味があるってことか?」
四季は冷静に
「これは俺の分野じゃないからお手上げだけどな」
と告げた。
輪廻は四季を見ると
「父、解らない」
輪廻も、わからない
「一緒」
だから、応援する
とニコッと笑った。
四季はウルウルすると輪廻を抱き締め
「わからない父をフォローしてくれる上に応援までしてくれるなんて優しい子に育ったな」
と感激した。
親バカである。
輪廻は冷静に
「応援、蓮、だから」
と答えた。
四季は輪廻を抱き締めながら
「いやいや、土方君にでも輪廻は優しい子だ」
と告げた。
ブレのない親バカバカであった。
勇武は苦笑しつつ
「私も確かに専門外ですねー」
お手上げです
「しかし、蒼槻君は凄いですね」
一目でわかったんですから
と答えた。
咲良家康は静かに笑むと
「小説の紋章を持っていますから」
謎かけはある意味専門という事になりますね
と告げた。
青夜も見ながら
「ってことは、数字として考えたら」
と呟いた。
蓮は頷き
「32203…か」
と告げた。
この数字から連想できるものはない。
「後で調べてみます」
それに、きずなは頷いた。
食事を終えて蓮は部屋に戻り番号を調べた。
幾つかのヒットがあった。
chやIbなどの番号が付いた製造ナンバーや郵便局番号だ。
手紙だったの郵便局番号なのかもしれない。
一番可能性は高いが確信はない。
蓮はパソコンの画面を見つめて
「んー」
他にも気になるものがもう一つあった。
市町村番号である。
「郵便局番号なら富山県だけど」
市町村番号なら島根県か
「もしかしたら西から来た探偵っていうのもあり?」
蓮はそんなことを呟きつつ惣には
「暗号は探偵…俺への挨拶状でした」
と報告した。
惣は目を閉じて開けると
「不正などの告発ではないようですので了承しました」
と答え
「暗号を解いたという事で紋章レベルが上がりました」
と告げた。
紋章のレベルは上がり8となった。
それより少し前に東京駅から1人の少女が新幹線に乗り西へと立ち去った。
少女の名前は一色颯希と言い西日本で唯一の探偵の称号の持ち主であった。
但し…推奨以外の称号を無理やり選んだド貧乏の探偵だったのである。
今回、東京に出てきたのも貯めて貯めて生活資金ギリギリの中からであった。
彼女は椅子に座り目を閉じると
「探偵の称号を作ってくれた…誰か」
ありがとう
と笑みを浮かべ
「明日からお茶漬けだけど、楽しかった」
と呟いた。
翌日、全国新聞の一角にある記事が載っていた。
蓮はそれを見ると目を見開いたのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




