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2-2 先遣隊救出

静かな夜だ。開け放した窓から入ってくる風は、九月に入ったとはいえ残暑。まだ暑い。オレは自分のベッドにひっくり返り、貰ってきた破片をこねくり回していた。この破片の火星エンジンは、泊まっていたホテルの庭に展示されるまで、どんな経緯があったのだろうか。グアムの飛行場で鹵獲されたのか。撃墜された後、回収されたのか。ペア(クルー)が生き残っていればいいが。


譲治からは、グアムに一緒に行こうと誘われていた。日程も八月の終わりだから、オレが隊長をしているボーイスカウトの夏キャンプも終わっているし、行こうと思えば行けたんだ。だが彼は、金持ちの親が多い私立大学。こちらは保護者が低所得で有名な公立大学の庶民。金持ちに混じって遊びに行くには、庶民としての劣等感以下で反発以上の違和感があったから、人生初の海外旅行のチャンスを見送ったのだ。第一、グアム上陸などは我が帝国陸軍守備隊増援のための逆上陸以外は認めん。


しかし、やっぱり少しヤバいなあ。この遺物。


オレはどうしても、危機感と多少の恐れを感じてしまう。それは、かつてオレが手にしたモノで、とんでもない目にあっているからだ。


あれは去年の夏の終わりだった。大学の単位が足りない俺は、何とか進級の危機を乗り越えるために、夏の短期の講座を緊急で履修した。それが韓国から来た萩原先生の「欧州神秘思想史」。それを受けたあたりからオレは霊界の騒動に巻き込まれたんだ。あの時は戦艦「陸奥」の砲塔のメダルで、「陸奥」の地獄に引き込まれたんだ。この破片を手にした瞬間のあの映像。ここで寝たら、また引き込まれたりして。まあ、厳重に封印する感じで格納しておけば、影響無しで済むかもしれない。そう思ってオレは、何か布で包もうと思ったが、適当なのがない。ボーイスカウトのネッカチーフの記念品の在庫を取り出してぐるぐる巻きに破片を包み、書棚の下の引き出しの奥に、厳重にしまいこんだ。だが、それだけだと少し不安に思えたので、空いたクッキーの缶に入れてから引き出しに格納し直した。これで安心。さて寝るとするか。

オレは枕元のスタンドのスイッチを手探りで入れると、日常ルーティーンの読書を始めた。少し暑いが、今日も良い夜だ。


***********


うーん、何だこりゃ。たしかオレ、寝てたはずなんだけどなあ。


いつも通りの静かな夏の夜で、山本周五郎の小説を読んでて寝落ちしたはずなんだが、なぜか気が付けば、オレは広々とした木の床の上に立ってる。眼が覚めたとき、頭を下げた状態で気が付いたので、立っている足元は、いつものスニーカーを履いてるのが見える。寝たときはパジャマだったのに、ボーイスカウトのソックスに半ズボン。ボーイスカウトの制服で頭にはベレー帽を被っているようだ。木の床と入っても室内ではなく、さんさんと照りつける太陽の下。こんな広い木の床では、まるで空母の飛行甲板・・・。

まだ寝ぼけて混乱してる頭で、視線を徐々に上げてみた。すると、木の床の間に、金属の輪っかが規則的に配置されている。そして引かれた白線。

「アイボルトと誘導線じゃんか。まるで旧海軍の空母の飛行甲板だ・・・まさかな」

恐る恐る、さらに視線を上げていくと、その甲板の先に眼に入ったのは、信じられないことに空母の島型艦橋だった。大型で中央に細めの傾斜した煙突。艦橋前面の三連装25ミリ機銃座。後部の発着艦指揮所。


ああオレはまた空母「隼鷹」に来ちまった。この霊界の海に浮いている空母「隼鷹」に。戦艦「陸奥」の騒動以来、また何かに巻き込まれちまったんだ。あの火星エンジンのせいで。


あーあ。「海軍特別救助隊」の召集だ。



最後まで、読んで頂けたことに感謝いたします。



続きも、楽しみにしてください。



この作品は、


元就出版社から出版されている(海軍特別救助隊 戦艦「陸奥」救済作戦)の続編になります。


興味を引くことがあれば、ご購入いただければ幸いです。


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