1-4 桜花隊救出へ
グラマンの一撃目は、横滑りで難なくかわしたが、これをどれだけ続けられるかが、勝負だ。
「戸田!絶対に高度を上げるな!雷撃のつもりで超低空だ!」
機長の叱咤が飛ぶ。
「さあ、もう一回来るぞ!」
楠田二整曹は、再び攻撃をかけてくるグラマンとの間合いを、緊張しながら計っていた。またもや、6丁のコルトブローニング12.7ミリ機銃を、引き金を引きっぱなしで突っ込んでくる。
「グラマン、セットした!」
楠田二整曹の報告に、瞬時に反応した操縦員は、右フットバーを蹴るように踏んだ。軸線がずれて、機は横滑りを起こす。ツツツとグラマンから伸びてきた曳光弾のアイスキャンディーのシャワーは、またもや左にそれていく。
(よし!うまいぞ!今回もかわした!)
そう楠田二整曹が思った途端、そのアイスキャンディーが向きを変えて、まっしぐらにコチラに進んでくる。グラマンめ!射撃を修正しやがった。
ガンガンガンと、12.7ミリ機銃弾の嵐が、一式陸攻を包み込んだ。左主翼から胴体前部に掛けて次々と破壊と暴力が襲う。操縦席のプレキシガラスの天蓋が、被弾で破壊されて粉々になり、叫び声と衝撃が操縦席に満ちる。
永井上飛曹はスロットルを目いっぱい引いて、エンジン全開で零戦を突っ込ませていく。もうグラマンは一撃目を終えて引き起こし、再度態勢を立て直してから二撃目に入るところだった。周囲を見渡すが、グラマンは単機のようで、他に敵戦闘機は見当たらない。このグラマンを追い払うことだけに集注すればいいのだ。
しかし、1000メートルの高度差と距離が随分とあったから、グラマンを阻止するのは難しい。20ミリ機銃を撃ち尽くした今、残る7.7ミリ機銃で有効弾を送り込むまでには、中攻は撃墜されてしまうだろう。
(威嚇射撃で、けん制すれば、あきらめるかもしれんな)
そう思った永井兵曹は、仰角をかけて7.7ミリ機銃を発射した。有効弾などは送り込めないが、敵戦闘機の周囲に曳光弾を降らせれば、攻撃を中止する可能性があるからだ。
敵の戦闘機が後ろに回って射撃してくる中を、漫然と攻撃しつづける戦闘機パイロットはいないからだ。
「こら!グラマン!気が付け!」
永井上飛曹は、射弾を散らしながら、グラマンを曳光弾で包み込んだ。二撃目を終えて引き起こすグラマン。二撃目では中攻に命中弾が出た様子だ。火災が生じないのだけが救いである。
7,7ミリ機銃の残弾を撃ち尽くす頃になって、やっとグラマンは永井上飛曹の零戦の存在に気が付いた。慌てて回避機動を取り、左に切り替えして避退していく。よほど驚いたのであろう。反撃を試みることなく引き返していく。もしも反撃をしてきたら、全ての気銃弾を撃ち尽くしてしまった永井上飛曹には、攻撃する手立てはなかったのだ。