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7 ミルフィーユの与える罰

  ーーーガーン!!


 そして、周囲がその状況に身を取られた瞬間、大きな音を立てて慌てて転がり込んできたまあるい身体つきの乱入者がやってきた。誰かが豚とつぶやいた気がした。


「も、申し訳ございませーん!!」


 叫んだのは金髪に青い瞳をもったコロコロした良い年の男で、名をアーモンド公爵という。そう、カカオの父親だ。


「うちの馬鹿三男が飛んだ御無礼を働いたと聞き、はぜ参じました!!して、うちのバカ息子は何を!?」

「ミルフィーユとの婚約を公衆の前で堂々と破棄し、濡れ衣を着せようとした。以上だ」

「ーーーこんの、馬鹿息子ー!!」


 ーーーガコッ!!


 いい音が鳴って、カカオ・アーモンドの身体が宙を舞った。

 周囲は、ぷくぷく丸い豚がガリガリの顔だけは良い無能に体当たりしたことに唖然とした。


(………おのおデブさま(お義父さま)にもあんな力があったのね。意外だわ)

「公女殿下になんてことをしてくれたんだ!!我が家はもうお終いだー!!」

「………………そこまで気になさる必要はございません。彼との婚約は元々乗り気ではありませんでしたし………」

「こんのバカ息子ー!!」


 ーーードスッ!!

 ーーーズサー………、


 今度はアーモンド公爵の身体もろとも吹き飛んでいった。ミルフィーユは地獄絵図を眺めながら、ぼーっとしていた。


 ーーーガン!!


「はあ、はあ、カヌレ!!あなた大丈夫ですの!?庶子の醜女眼鏡を虐めると聞いていたのですが、大変な事態になっていると王家から連絡が………、ひいぃっ!!」


 今度やってきたのはキャンディ()伯爵夫人だ。未亡人で今はカヌレの実の兄が伯爵をしている。そして、彼女はこの場で最もやらかした女というレッテルが貼られる言葉を言って、王太子ルイボスに睨まれている。


「………虐めてやる予定だったという“庶子の醜女眼鏡”というのは、誰のことだ?キャンディ元伯爵夫人」

「え、あ、あ、アフォガード侯爵令嬢で、ですわ。しょ、庶民の血が流れる汚れた分際で公爵家に入ろうとする、愚かな、」

「母さまは黙って!!」


 キャンディ伯爵夫人の言葉に、カヌレはプルプルと震えながら、必死になって叫んだ。

 だが、もう遅い。彼女は言ってしまった後だ。ここからはもう後の祭り。怒り狂ったルイボスの独壇場と化してしまうだろう。ミルフィーユは大きく溜め息をついて、一応死人が出ないように振る舞うことにした。被害者は出るだろうが、それはまあご愛嬌だ。


(はあー、ルー君が出てきたせいで、面倒くさいことが増えたわ)

「キャンディ元伯爵夫人、わたくしに言いたいことがあるのならば、直接わたくしの目を見てお話くださいな。後々面倒なことになりますので」

「め、目を見てって穢れた人間の目なんて………、………ーーーはい!?」

「お気づきになられたのでしたら、以降お口を慎むように」


 伯爵夫人は首振り人形のように首を振り回し、一目散に娘を置いて逃げ帰っていった。なんともまあ娘を救いにきた母親とは思えない行動だ。


「ルー君、悪いけれど、わたくしの好きなように裁かせてもらうけれど、構わないかしら?」

「あぁ、構わない」

「あ、あの、公女殿下!!お願いがございます!!」

「なあに?」


 地べたに頭を擦り付けたまあるい物体ことアーモンド公爵が、ぷるぷると震える声で必死になって話しかけてきたのを受け、ミルフィーユは一応話を聞くことした。


「我が公爵家は、カカオを勘当にし、無一文での国外追放を命じます!!なので、領地の4分の1と侯爵家への降格でお許しください!!」

「………わたくし、そこまで冷酷無慈悲ではないのだけれど………。あなたがそこまで重い罰を望むのならそうしても良いわ」


 ミルフィーユは自分が考えていたよりも重い罰を所望した公爵にほとほと呆れながらも、こくんと頷いた。


「はっ、ありがたき幸せ!!」

(………これって『幸せ』なのかしら?)


 はあーっと大きく溜め息をついたあと、ミルフィーユはカヌレへと視線を向けた。


「あなたにも罰を与えるわ。あなたは貴族位を剥奪の上、ずっと夫婦としてカカオと共に行動をすることを命じます。わたくしに婚約破棄を叩きつけてまで一緒になりたいのだったら、とーっても幸せな罰よね。おめでとう、カヌレ嬢。あぁでも、婚姻祝いはあげられないからごめんなさいね」

(ふふふっ、今まで虐められてきた人間を裁くのはスカッとするわね。あぁー、でも、これ(カヌレ嬢の罰)って罰になるのかしら?真実の愛の前では苦労も幸せって言うものね………)


 満面の笑みで幸せそうに告げたミルフィーユの純粋な親切心からきた言葉を、死刑宣告を受けたかのような顔をして聞いたカヌレが、『この鬼畜が!!』と叫びかけたのは言うまでもない。

 そして、会場内にいた人間までもが皆カヌレの意見に賛同したのは、ミルフィーユの知らぬところで起きた出来事だ。

読んでいただきありがとうございます♪

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