5 ミルフィーユと王太子の出会い
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「ひっく、ひっく、おかあさま………!!おとうさま………!!うわあああぁぁぁん!!」
その日、ミルフィーユはアフォガード侯爵夫人に連れられて初めてのお茶会に出ていた。そこではたくさんのご令息やご令嬢に嫌味を言われた。女の子なのに眼鏡をかけているのはよくないだとか、庶子の分際でこの席につけるのは恵まれたことだから、地べたに這いつくばって喜べだとか、庶子と同じ空気を吸いたくないだとかだ。
幸いにも、ミルフィーユの嫌がらせは1時間ほどで露見し、王妃と侯爵夫人によって虐めっ子たちは親と共に厳しい制裁を受けることとなったが、ミルフィーユは心に深い傷を負った。
よって、2人に大丈夫だと言って庭園の奥深くに逃げ込んだミルフィーユは眼鏡を外してうずくまって泣きじゃくっていた。
ーーーがさっ、
「ひいぃっ!いやっ!こないでっ!!いやっ!!みーちゃんの方に来ないでっ!!」
「大丈夫だよ。僕は怖くないから、ね?」
これがミルフィーユとルイボスの初めての出会いだった。
うずくまって決して顔を見せようとしないミルフィーユを上から抱きしめたルイボスは、ずっと見知らぬミルフィーユに優しい声で語りかけ、はちみつ色の髪の少女ミルフィーユを抱きしめ続けたのだ。
「ひっく、ひっく、ごめ、ごめん、なさい。お、およう、ふく」
30分間泣き続けたミルフィーユが次に顔を上げたミルフィーユが見たのは、涙と鼻水でぐずぐずになった少年のお洋服だった。
「いいよ、大丈夫。ねえ、その代わりに君のお顔を見せてくれるかな?」
「………みーちゃん見せちゃだめなの。ーーーだから、特別だよ?秘密にできる?」
「あぁ、できるさ。僕は王子さまだからね」
そう言ってもらって安心して顔を上げたミルフィーユの濡れた瞳を見たルイボスは、息を飲んだ。彼が見たのは、陽光に照らされてきらきらと輝く、自分と同じはずなのにもっと綺麗なものに見える、王家の象徴、アメジストの瞳だった。
「綺麗………、」
その言葉を受けてびっくりしたミルフィーユもまた、意志の強い自分と同じアメジストの瞳に感動していた。そして、くしゃっとした年齢相応の笑みに、ミルフィーユはそれから王妃と侯爵夫人が2人のことを探しに来るまで、ずっと彼の笑みに見惚れていた。
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