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もしもの冬にある結末を  作者: 糸伏
始まりの旋律を
3/8

3話 戦慄を求める人はなぜ

眠っている間、夢を見た。小さい私が雪菜と手を繋いで仲良くお花畑を走っている夢を。そんな現実があるはずもないのに・・・


目を開けるとまだ雪の中に私は倒れていた。だけど雪の中で気を失っていて体力がないのか体を動かすことが出来なかった。その時私の近くを通ったのか人が駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか。そんなところで倒れてしまってい...」

私はその人の顔を見て動けなくなった。駆け寄ってきてくれた人は雪菜だったからだ。私は驚いた。


「雪菜がなんでここにいるの?」

雪菜は少し驚いた様子で


「えっ。詩歩だったの?なんで詩歩がここで倒れてたの?」

と答えた。それよりもなんでここに雪菜がいたんだろう?と私は思った。


「私は雪菜を探そうとしたんだけどあの建物の場所もわからなくて、道を歩いてたら何も食べてなかったから倒れちゃったの。」


「私と一緒にいることを拒んだのに私のことをなんで探していたの?」


私が考えたように返された。それはそうだよね。だけど雪菜なら共感してくれるだろうと思ったから、


「私雪菜と別れてからずっと考えていたの。どうしてこんな事になっちゃったのか。そう考えていたら多くの人たちが戦争で悲しんでるのを見て雪菜と一緒にこの無駄な争いを止めたくなったの。」


と言った。

雪菜は一瞬迷ったような素振りを見せたけどすぐに答えてくれた。


「分かった。前いた家は今は使えないから私についてきて。」


私はそのまま雪菜の後ろについていった。体力があまり残っていなかったけど雪菜に肩を貸してもらいながら歩いた。しばらく歩いていると周りが木々で囲まれた森に入った。私はこっちで合ってるのか不安になって雪菜に聞いた。


「雪菜、こっちで道あってるの?」


そう聞くと雪菜は迷わずに答えてくれた。


「こっちで合ってるの。見つかっちゃいけないから前の家には行けないの。」


そう言われたけど私は誰に見つかっちゃいけないのかは聞かなかった。多分前の建物で雪菜を探していた人に見つからないようにかなと考えた。その森を進んでいくとある建物が見えてきた。

 そこは前の無機質な建物と違って木で作られていて温かみのあるような建物だった。雪菜がその建物を見ながら言った。


「ここが新しい家だよ。ここは前とは違って見つかりづらいから大丈夫だよ。」

雪菜はそう説明すると家の中に入っていった。私は雪菜のあとを付いてその中に入った。家の中は前とは違って家具が揃っていてキッチンもありきれいだった。中にあった椅子に座り私が話し出そうとした時、”バーンッ”と音がし扉が勢いよく吹き飛んだ。


「ここにいたのか。道理で気づかなかったわけだ。そこの奴についてって正解だったな。」

あの人はあの建物にいた人だ。なんでここがわかったの?私がつけられていたの?


「あんたわかり易すぎるんだよ。普通あの建物に人が入ってくるはずもない。つまり誰かに会うために来たんだろ。じゃそいつは始末させてもらうか。」

私は慌てて聞いた。


「待って。雪菜が何をしたの?」


「決まってるだろ。理由はお前だよ。雪菜が敵なのにそれを知っても尚お前を連れてきたからだ。お前は戦争のために作られた兵器なのにな。だから前ら二人をまとめて始末する。」


雪菜が私を連れてきたのがいけなかったの?私のせいなの?そう思った次の瞬間男の人は動いていた。私はあまりの速さに何もすることが出来ず男が持っている剣を振りかざすのを見ることしかできなかった。男は剣をそのままの勢いで何のためらいもなく雪菜に刺した。雪菜は一瞬目を見開いて何が起きたか理解できずにいた。


「まずは一人目だな。」


そう男は言うと雪菜から剣を抜いてついていた血を振り払った。


「...雪菜?...雪菜!?」


私が駆け寄って雪菜のことを触ると雪菜は私を見て言った。


「詩歩はひとりじゃないよ、詩歩以外にも同じ思いの人はいるから一人で抱え込まないでね。」


そう言って雪菜は動かなくなった。血が胸から流れ出て止めることが出来なかった。床が濃い赤色で染まった。私は何も考えられなかった。

それを見た男は私の横で言った。


「これで一人始末完了。後はもうひとりを始末すればだな。」


その瞬間私の胸が怒りで染まった。この人は雪菜を殺しても平気でいる。それが許せなかった。私は今まで使いたくなかった力を使った。相手はその瞬間に動けなくなり何が起こったかわからないと目を見開いた。そして私はキッチンゆっくりと歩いておいてあったナイフを持ちそのまま男の体に突き刺した。”ズブズブ”という柔らかい感触とともにナイフは男の体の中に入っていった。そしてためらいもなく私は男の体からナイフを抜いた。ナイフを抜かれると男は雪菜の血で染まった床に倒れ込んだ。私は手で持った血のついたナイフを見て我に返ってしまった。私は人を殺してしまった。残ったのは悲しさと虚しさだけ。もう偽善者みたいに争いを止めようなんてきっとやってはいけないんだ。私は力なくその場を立ち上がり、家を出でフラフラと行き先もなく歩き始めた。




詩歩が家を出ていった後誰かが立ち上がった。


「うぅ。やっぱりスパイなんてやってられるか。標的を殺したのはいいが裏切り者に刺されるとは。裏切り者は臆病で人を殺すこともできないって聞いていたんだかな。今すぐ報告をして始末してもらわないと、あのまま何をしでかすかわからないな。」


そう男は言い、家を出てどこかへ歩いていった。

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