2話 再開を、動き出す
雪菜に手を引かれて連れてこられた場所はきれいな花畑だった。
その中にポツンと、違和感がある無機質な建物があった。私は雪菜と一緒にその建物の中に入った。建物の中にはシンプルなデザインの椅子とテーブルがあった。周りはものが整頓されてきれいだった。
「私は今ここで暮らしてるの。毎日きれいな花が見れて心が安らぐでしょ。あんなところにいるよりここで一緒に過ごそうよ。」
そう雪菜は優しく聞いてくれた。私はすぐにもうんって答えたかった。
「でも、私は・・・」
この場所にいてはいけない気がする。この場所にいたら争いがここまで来るかもしれない気がした。だけどそれは雪菜には言わない。余計な心配はかけさせたくない・・・
「どうしたの?ここに詩歩もいていいんだよ?」
「だけど私はここにいてはいけない気がするの。だからここをでていく。」
「そうなの・・分かった。」
私はそのまま建物をでていった。本当は雪菜と一緒にいたかった・・・
外は夏なのに雪が降っていた。花畑に雪が積もって花が埋もれていた。この景色は雪菜と二人で見たかった。これからは一人でこの景色を見ていくんだ。私はそのまま白銀の世界を歩いていった・・・
雪の中を歩いているとあの戦場に戻ってきてしまった。だけど結局なんで私達は戦争に送り出されていたのか。戦争に何の意味があるのだろうか。でも今はもうそんなことなんか忘れていまおう。私は一人で歩いていこう。これからどうしよう。このつまらない争いをやめさせる方法を考えようかな。だとしたらどうしよう。暴力は嫌いだし・・・話し合いもしてくれなさそうだし・・・
そこまで考えていたところで誰かに声をかけられた。
「お前、そこで何をしているんだ。ここに送られてきたのならちゃんと役に立て。」
声をかけてきたのはここに送られた兵士みたいだった。こんな時まで争いに追われる。もう一人で旅でもしようかな。ここは穏便に済ませたいな。
「いや違うんです。少し迷い込んでしまって。」
「じゃぁさっさとどっかいけ。邪魔だ、巻き込まれるぞ。」
「はい。すみません。」
私はまた戦場を離れて雪の中を一人で歩いた。一人は少し心細いけど誰も私と一緒にいたがらないに決まっている。だから私が一人でこの世界を変えるしかないんだ。でもあの時雪菜と一緒にあそこにいる選択をしたら二人で一緒に入れたのかな。もう今後悔しても遅いんだ。
私はそのままあたりをさまよっていた。やることは決めたのだがどうやってその目的を達成しようかわからないから。私のこの力を使ってこの争いの首謀者を止めようかな。いやなるべく話し合いで争いをやめさせたい。だけどあの施設の場所はどこにあるんだろう。私はそこにいたけどここに送られるときは目を隠されて連れてこられたから。たぶんあれは送られた人が戻れないようにと裏切られた時の保険だったのかもしれない。そう考えるとあの施設の人たちはすごい頭が良いのかもしれない。だったらこっちも誰かを味方につけて対抗すればいい。そうするなら雪菜のところにまた会いに行って協力してもらえばいいかな。でも雪菜とあんな風に別れて協力なんてしてもらえるかな?・・・とりあえず一度戻ってみればいいかな。
私は雪菜がいたあの建物に戻った。だけど人の気配がしなかった。雪菜どうしたんだろう・・・
「ゆきな?いるならあけて。話したいことが・・・」
あれ?おかしい。ここまで言っても出てこない。私は少し嫌な予感がした。ドアを開けてみると人の気配がなかった。少なかった家具も壊されていた。あれ?誰かが机の下で倒れてる。その瞬間嫌な予感がした。急いで確認してみると雪菜と一緒に戦場にいた人だった。まだ息はしてるみたい。何でこの人が雪菜の家に・・・だけど雪菜がいない。どこに行ったんだろう。まさかこの人に襲われて逃げたのかも。そうだとしたら何でこの人は襲いに来たんだろう。仲間のはずなのに。雪菜がどこかにいるなら探しに行かなくちゃ。私はドアを開けて外に出ようとした。その時誰かに声をかけられた。
「お前はなぜここにいる。なんのようだ。」
うそでしょ。この家に人が他にもいるなんて気づかなかった。だけどここで雪菜に会いに来たと答えたらダメな気がする。
「いや、私はここに建物があるから誰かいるのかなと思って入ってみただけです。勝手に入ってすみません。」
「だったらもう入ってくるな。それとここに来る時、女がそっちに走って行かなかったか?」
「いえ来ませんでした。私一人だけです。」
「ならいい。でてけ。」
私はそう言われてドアを開けて外に出た。外はまだ雪が降っていた。どうしよう。あの人は雪菜を探してるみたい。あの人が雪菜を見つける前に私が見つけないと。私は雪が降り注ぐ道を歩いた。
たぶんそれから2日は歩いた。足も疲れ切ってもうあまり歩けなくなっていた。だけど雪菜があの人に見つかる前に見つけないと。雪菜がひどい目にあっちゃう。重い足を頑張って動かしていると遠くに光が見えた。そこに向かって歩いてみると街があった。中は人で賑わっていて、私達がやっていた争いなんか知らない様子だった。ここまでは争いの火がきてなくてよかった。もしかしてここに雪菜はいるのかな?あたりを見渡してみると雪菜らしき人影は見えなかった。やっぱりここにはいないのかな・・・
そう思ってあたりを歩いていると街を出てしまっていた。雪菜はどこにもいないのかな。そう思い私は街から離れた。またずっと歩き続けなければいけない。すでに雪はやんでいて歩きやすかった。だけど疲れないわけではなく、歩いているうちに疲れてしまった。まだ溶けていない雪にそのまま倒れこんでしまった。体が動かせない。もうこのまま倒れたままでこの世界から逃げ出そうかな。そう思うと自然に目を閉じてしまった・・・